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Episode03:I don't like you
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ジャンと暮らし始めてから二週間が経ち、ようやく英会話をスタートした。
英会話と言っても実際に教室に通うのではなく、Skypeという無料通話アプリを使用して、異国の地にいる外国人教師と一日三十分会話をするというものだ。
本当は、ビジネス英語も含めてしっかりした英会話教室に通った方がいいのではないかと、ジャンから提案があった。
しかし、仕事も生活も新しくなった今、習い事まで負荷がかかるのは勘弁してほしかった。
好きな場所と時間で三十分間のレッスンは、今のところ無理なく挑戦することができている。
仕事も残るはメイクアップアーティストのTOMOKAと打ち合わせをすれば、事業がスタートすることができるところまできた。
他人からすれば、何も問題はない、いやむしろ充実した日々を送っているように見えるだろう。
祖母の絹江も、萌衣が予想外に今の生活を楽しんでいるように見えるようで、自分がけしかけたにも関わらず驚いている様子だった。
ジャンの生活リズムに合わせているうちに、規則正しい生活を送るようになり、体調も良くなった。
気の流れがよくなってくると、身なりももう少し整えてみようかと思い始めるようになり、いつもより少し高価な洋服を買った。
ジャンから渡されたブラックカードはまだ使用していない。
いくら好きに使っていいと言われても、彼や彼の周りの人が稼いだお金を好き勝手使うのは、さすがに遠慮してしまう。
「最近綺麗になったんじゃない?」
荒巻に言われて「そうですか?嬉しいです」と返事をする。
「今一瞬結婚したことを後悔しちゃったよ」
「何を言ってるんですか、荒巻さん。奥さんに怒られますよ」
「にしても、本当雰囲気変わったよね。彼氏でもできた?」
荒巻の彼氏という言葉を聞いて返事に詰まった。
ジャンは、一族が決定した婚約者であり、彼氏ではない。
婚約者であるけれども、政略結婚なので恋愛と言われると、話はまた変わってくる。
「えっと……」
どうやって答えようと困っていると「ミス、シミズ」とジャンから声がかかった。
あまり機嫌のよさそうな声色ではなさそうだ。
一緒に暮らし始めてから、なんとなく機嫌のいい時と悪い時の声の判別が出来るようになってきた。
プライベートでは滅多に機嫌の悪そうな声を出すことはないので、仕事の時に規律をつくるため、あえて厳しさをだしているのかもしれないと萌衣は考えている。
「うわ、機嫌悪」
あいつ苦手なんだよな、偉そうだし。
荒巻は小さな声で呟き、萌衣の傍から離れて行った。
萌衣だって、最初は得意だったわけではない。
しかし、二人で一緒にいる時のジャンの顔を見れば、荒巻だってジャンのよさが分かるはずだ。
それに、この中でジャンの素顔を知っているのは、萌衣だけだと考えると少しだけ気分がよかった。
英会話と言っても実際に教室に通うのではなく、Skypeという無料通話アプリを使用して、異国の地にいる外国人教師と一日三十分会話をするというものだ。
本当は、ビジネス英語も含めてしっかりした英会話教室に通った方がいいのではないかと、ジャンから提案があった。
しかし、仕事も生活も新しくなった今、習い事まで負荷がかかるのは勘弁してほしかった。
好きな場所と時間で三十分間のレッスンは、今のところ無理なく挑戦することができている。
仕事も残るはメイクアップアーティストのTOMOKAと打ち合わせをすれば、事業がスタートすることができるところまできた。
他人からすれば、何も問題はない、いやむしろ充実した日々を送っているように見えるだろう。
祖母の絹江も、萌衣が予想外に今の生活を楽しんでいるように見えるようで、自分がけしかけたにも関わらず驚いている様子だった。
ジャンの生活リズムに合わせているうちに、規則正しい生活を送るようになり、体調も良くなった。
気の流れがよくなってくると、身なりももう少し整えてみようかと思い始めるようになり、いつもより少し高価な洋服を買った。
ジャンから渡されたブラックカードはまだ使用していない。
いくら好きに使っていいと言われても、彼や彼の周りの人が稼いだお金を好き勝手使うのは、さすがに遠慮してしまう。
「最近綺麗になったんじゃない?」
荒巻に言われて「そうですか?嬉しいです」と返事をする。
「今一瞬結婚したことを後悔しちゃったよ」
「何を言ってるんですか、荒巻さん。奥さんに怒られますよ」
「にしても、本当雰囲気変わったよね。彼氏でもできた?」
荒巻の彼氏という言葉を聞いて返事に詰まった。
ジャンは、一族が決定した婚約者であり、彼氏ではない。
婚約者であるけれども、政略結婚なので恋愛と言われると、話はまた変わってくる。
「えっと……」
どうやって答えようと困っていると「ミス、シミズ」とジャンから声がかかった。
あまり機嫌のよさそうな声色ではなさそうだ。
一緒に暮らし始めてから、なんとなく機嫌のいい時と悪い時の声の判別が出来るようになってきた。
プライベートでは滅多に機嫌の悪そうな声を出すことはないので、仕事の時に規律をつくるため、あえて厳しさをだしているのかもしれないと萌衣は考えている。
「うわ、機嫌悪」
あいつ苦手なんだよな、偉そうだし。
荒巻は小さな声で呟き、萌衣の傍から離れて行った。
萌衣だって、最初は得意だったわけではない。
しかし、二人で一緒にいる時のジャンの顔を見れば、荒巻だってジャンのよさが分かるはずだ。
それに、この中でジャンの素顔を知っているのは、萌衣だけだと考えると少しだけ気分がよかった。
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