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epilogue
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後日、正式にグランドール王国から奴隷制度を撤廃する旨と、エドナとノルフの処罰が決定したという手紙が届けられた。
数年前からエドナによって薬を盛られ続けていたレオポルド三世は、全ての権限をモルガナ妃ことエドナに任せていたこと。
そして、リーリエのことも本当にしっかりと教育していたのだと思い込んでいたことの謝罪が記載してあった。
アダブランカ王国からの支援金は、エドナとノルフが使い込んでおり、ノルフはモルガナ妃の治療費と生活費としてあてがっていたと供述しているらしかった。
回収された金は、グランドール王国の王宮に回収されたのち、困窮している国民達の生活の補助に使われるとのことだった。
「愛する人の為だったんですね……」
「そう言うと聞こえがいいな。奴らが、君を殺そうとしたことを俺は一生許すつもりはないが」
手紙の詳細を話すクノリスは、あの時のことを今でも思い出すとはらわたが煮えくり返るようだった。
「ダットーリオ殿下にもお伝えしないといけませんね。奴隷撤廃の国がまた一つ増えたと」
「もう既に伝えてある」
クノリスはリーリエの言葉に答えた後「それよりも、誓いの言葉はしっか覚えたか?どこからか風の噂で、練習なのに緊張してかんだって聞いたんだが」と悪戯っぽく笑った。
「やめてください!」
「本番はしっかりと言ってくれよ。お姫様」
「分かっています……なんだか、あなたと一緒に結婚式を挙げるかと思うと、今更緊張してきちゃって」
赤くなる顔を両手で隠して、リーリエは呟いた。
「そんな可愛いことを言ってくれるとは……」
クノリスがリーリエを抱きしめてキスをした。
***
満月の夜に結婚の儀式は決行された。
アダブランカ王国伝統の儀式を、受けながらリーリエは必死に覚えた誓いの言葉を頭の中で繰り返す。
式には、貴族たちの他に、平民達も招待してある。
ダットーリオも「やれやれ……まさかこんな近々に二回もアダブランカ王国に来ることになるとは」と式に参加をしてくれていた。
メノーラはあの後、しばらく監視される生活をしているようで、式典にも母親とボディーガードらしき男達に囲まれて登場し、非常に目立っていた。
リーリエのウェディングベールを持つ役目を果たしたのは、農夫ラッシュの孫娘マッシュだった。
「本当にお姫様だ!」
ドレスを着ているリーリエを見て、マッシュは嬉しそうにはしゃいでいた。
「今日はよろしくね」
「うん!」
マッシュは人生初の大役を果たすために、真剣な表情でリーリエのベールを優しく持った。
その様子をマッシュよりも真剣に見つめて神に祈るポーズを浮かべているのは祖父であるラッシュであった。
儀式は順調に進み、誓いの言葉を唱える時が来た。
「我、リーリエは、夫となるアダブランカ王国の英雄王であるクノリス王の永遠の伴侶となることを誓い、この国の繁栄を誓わんことをここに記す」
言い終えた後、リーリエは小さくため息をついた。
司祭は、リーリエが間違えなかったことに安堵し、今度はクノリスに言葉を投げかけた。
クノリスおも同じように誓いの言葉を言い、リーリエの方へと向いた。
「ここに二人を夫婦とみなし、グランドール王国とアダブランカ王国の繁栄を!」
会場の中で拍手喝采が沸き起こった。
クノリスはリーリエに誓いのキスを落とした後、「あの時君が助けてくれたこと、先日も助けてくれたことを心の底から感謝する。今の俺がいるのは、君のおかげだ」と囁いた。
「いいえ、それは私の台詞よ。あなたがいたから、私はここに立っている」
「一緒にアダブランカ王国を支えてくれるか?」
「ええ。もちろん」
リーリエが答えると、クノリスは再びリーリエの唇に口づけた。
【完】
数年前からエドナによって薬を盛られ続けていたレオポルド三世は、全ての権限をモルガナ妃ことエドナに任せていたこと。
そして、リーリエのことも本当にしっかりと教育していたのだと思い込んでいたことの謝罪が記載してあった。
アダブランカ王国からの支援金は、エドナとノルフが使い込んでおり、ノルフはモルガナ妃の治療費と生活費としてあてがっていたと供述しているらしかった。
回収された金は、グランドール王国の王宮に回収されたのち、困窮している国民達の生活の補助に使われるとのことだった。
「愛する人の為だったんですね……」
「そう言うと聞こえがいいな。奴らが、君を殺そうとしたことを俺は一生許すつもりはないが」
手紙の詳細を話すクノリスは、あの時のことを今でも思い出すとはらわたが煮えくり返るようだった。
「ダットーリオ殿下にもお伝えしないといけませんね。奴隷撤廃の国がまた一つ増えたと」
「もう既に伝えてある」
クノリスはリーリエの言葉に答えた後「それよりも、誓いの言葉はしっか覚えたか?どこからか風の噂で、練習なのに緊張してかんだって聞いたんだが」と悪戯っぽく笑った。
「やめてください!」
「本番はしっかりと言ってくれよ。お姫様」
「分かっています……なんだか、あなたと一緒に結婚式を挙げるかと思うと、今更緊張してきちゃって」
赤くなる顔を両手で隠して、リーリエは呟いた。
「そんな可愛いことを言ってくれるとは……」
クノリスがリーリエを抱きしめてキスをした。
***
満月の夜に結婚の儀式は決行された。
アダブランカ王国伝統の儀式を、受けながらリーリエは必死に覚えた誓いの言葉を頭の中で繰り返す。
式には、貴族たちの他に、平民達も招待してある。
ダットーリオも「やれやれ……まさかこんな近々に二回もアダブランカ王国に来ることになるとは」と式に参加をしてくれていた。
メノーラはあの後、しばらく監視される生活をしているようで、式典にも母親とボディーガードらしき男達に囲まれて登場し、非常に目立っていた。
リーリエのウェディングベールを持つ役目を果たしたのは、農夫ラッシュの孫娘マッシュだった。
「本当にお姫様だ!」
ドレスを着ているリーリエを見て、マッシュは嬉しそうにはしゃいでいた。
「今日はよろしくね」
「うん!」
マッシュは人生初の大役を果たすために、真剣な表情でリーリエのベールを優しく持った。
その様子をマッシュよりも真剣に見つめて神に祈るポーズを浮かべているのは祖父であるラッシュであった。
儀式は順調に進み、誓いの言葉を唱える時が来た。
「我、リーリエは、夫となるアダブランカ王国の英雄王であるクノリス王の永遠の伴侶となることを誓い、この国の繁栄を誓わんことをここに記す」
言い終えた後、リーリエは小さくため息をついた。
司祭は、リーリエが間違えなかったことに安堵し、今度はクノリスに言葉を投げかけた。
クノリスおも同じように誓いの言葉を言い、リーリエの方へと向いた。
「ここに二人を夫婦とみなし、グランドール王国とアダブランカ王国の繁栄を!」
会場の中で拍手喝采が沸き起こった。
クノリスはリーリエに誓いのキスを落とした後、「あの時君が助けてくれたこと、先日も助けてくれたことを心の底から感謝する。今の俺がいるのは、君のおかげだ」と囁いた。
「いいえ、それは私の台詞よ。あなたがいたから、私はここに立っている」
「一緒にアダブランカ王国を支えてくれるか?」
「ええ。もちろん」
リーリエが答えると、クノリスは再びリーリエの唇に口づけた。
【完】
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HINATAさん
コメントありがとうございます。
返信遅くなりまして申し訳ありません。
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