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episode03:王都トスカニーニ
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その日は、舞踏会用の新しいドレスを仕立てるために、仕立屋が王宮にやって来た。
「こちらが、王都トスカニーニで今一番流行のドレスでございます」
ピンクのレースの段がついている派手なドレスを掲げて仕立屋は自信満々に言った。
ところどころにパールが縫われていることが、ポイントらしい。
国の財政が悪化しない程度だったら何を買ってもいいとクノリスから言われているものの、ドレスが一体いくらするのか分からず買ってもいいものか悩んでしまう。
さらに、何着も着ていると何がいいのか分からずどんどん混乱してきてしまった。
結局、ミーナが「このドレスがお似合いでしたよ」と言っていた、若草色のドレスと黄色のドレスを一点ずつ購入した。
宝飾類に関しては、まだクノリスからプレゼントしてもらった物でつけていない物があるからと遠慮した。
仕立屋はもっと購入してもらえると思っていたらしく、少しばかり不満そうな表情を浮かべて帰って行った。
結局どうすればよかったのか分からず、夕食の際にクノリスへ今日の出来事を相談した。
どれだけ忙しくても、朝食と夕食はクノリスが一緒に食事を取ってくれる。
そのおかげか、リーリエもアダブランカ王国に来た頃よりは、クノリスと打ち解けることが出来ていた。
クノリスは最初の頃のように、無理に触ってこようとはしないので少しばかり安心して傍にいることが出来ている。
「気にする必要はない。欲しいと思った時に欲しいものを買えばいい」
リーリエの疑問に、クノリスは淡々と答えた。
「分かりました」
「で、君は一体何着のドレスを購入したんだ?」
「二着ほど」
「……なるほど。仕立屋が不満気な表情を浮かべるわけだな」
赤ワインを飲んだ後、クノリスはクスっと笑った。
「少なかったでしょうか?」
「俺は、財布の紐をしっかり結んでいる妻が女王になりそうで、非常に光栄だが」
「からかっていますね」
楽しそうな表情を浮かべるクノリスを、リーリエは睨みつけた。
「とんでもない。本心だ。節約は大事だからな」
やはりからかっているとしか思えないような態度で、クノリスは楽しそうに笑っているのを見て、次に、ドレスの仕立屋を呼んだ時には、盛大に買い物をしようと心に決めたリーリエだった。
「こちらが、王都トスカニーニで今一番流行のドレスでございます」
ピンクのレースの段がついている派手なドレスを掲げて仕立屋は自信満々に言った。
ところどころにパールが縫われていることが、ポイントらしい。
国の財政が悪化しない程度だったら何を買ってもいいとクノリスから言われているものの、ドレスが一体いくらするのか分からず買ってもいいものか悩んでしまう。
さらに、何着も着ていると何がいいのか分からずどんどん混乱してきてしまった。
結局、ミーナが「このドレスがお似合いでしたよ」と言っていた、若草色のドレスと黄色のドレスを一点ずつ購入した。
宝飾類に関しては、まだクノリスからプレゼントしてもらった物でつけていない物があるからと遠慮した。
仕立屋はもっと購入してもらえると思っていたらしく、少しばかり不満そうな表情を浮かべて帰って行った。
結局どうすればよかったのか分からず、夕食の際にクノリスへ今日の出来事を相談した。
どれだけ忙しくても、朝食と夕食はクノリスが一緒に食事を取ってくれる。
そのおかげか、リーリエもアダブランカ王国に来た頃よりは、クノリスと打ち解けることが出来ていた。
クノリスは最初の頃のように、無理に触ってこようとはしないので少しばかり安心して傍にいることが出来ている。
「気にする必要はない。欲しいと思った時に欲しいものを買えばいい」
リーリエの疑問に、クノリスは淡々と答えた。
「分かりました」
「で、君は一体何着のドレスを購入したんだ?」
「二着ほど」
「……なるほど。仕立屋が不満気な表情を浮かべるわけだな」
赤ワインを飲んだ後、クノリスはクスっと笑った。
「少なかったでしょうか?」
「俺は、財布の紐をしっかり結んでいる妻が女王になりそうで、非常に光栄だが」
「からかっていますね」
楽しそうな表情を浮かべるクノリスを、リーリエは睨みつけた。
「とんでもない。本心だ。節約は大事だからな」
やはりからかっているとしか思えないような態度で、クノリスは楽しそうに笑っているのを見て、次に、ドレスの仕立屋を呼んだ時には、盛大に買い物をしようと心に決めたリーリエだった。
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