仮想現実の歩き方

白雪富夕

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第1章第6話 スクールスリラーナイトin仮想現実

*7*

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そっと目を開けると、明かりが眩しい。
そして私を見下ろす人体模型と骨格標本。

詩乃
「ぎゃあああああああああ!!!!」

急いで飛び起きる。
体に掛けてあったブランケットが床に落ちた。

ミゲル
「本日2回目のおはよう。はい、お水」

私に水の入ったビーカーを渡して、ブランケットを膝に掛け直してくれたミゲルさん。

ルイス
「詩乃ちゃん!」

コーヒーを飲んでいたルイスさんがビーカーを机に置き、ミゲルさんを押し退け抱きついてくる。
あわや水をこぼしそうになった。

詩乃
「ル、ルイスさん!」

ルイスさん越しにクロードと春一も見えた。

詩乃
「クロード!春一!」

クロード
「無事で何より」

3人を見たら目が霞む。
何だろ、この実家に帰ってきたような安心感は。
実際居たのは実家では無く理科室だけども。
四角い椅子を並べて、寝ていたようだ。
枕位置を人体模型達の足元にしないでほしかったな……。

春一
「ビーカーに入った水なんてめちゃめちゃ怪しいけど、大丈夫だぞ」

昨日に引き続き、またホワイトコーヒーを飲んでいる春一はニヤニヤ笑ってる。
確かに……こんなの理科の実験以外で使わないよね?
ビーカーに入った水を怪しみながら飲む。
……良かった、春一の言った通り普通に美味しいお水だ。

ミゲル
「詩乃ちゃん、俺も一緒に旅する事になったんだ。よろしくね!」

詩乃
「へ?そうなんですね!よろしくお願いします!」

ミゲル
「あれ?随分あっさり受け入れてくれるんだね?」

詩乃
「仲間は多い方が楽しいし、ミゲルさん優しいですし!」

ミゲル
「あははっ!ありがとう!俺の事はミゲルって呼んで?
敬語も使わなくて良いからね」

詩乃
「うん、分かった!」

ミゲル
「さてと、俺は旅支度でもするかなぁ。
そこのフラスコに入ってるコーヒー、好きに飲んで良いからね~」

ミゲルは私にそう言うと、隣の部屋へと入って行った。
あの部屋は理科準備室かな?

春一
「お前、優しくされたらすぐ信用するのやめろよ。
ジルの件があったろうが」

うぅ、確かに……。

詩乃
「き、気を付ける……」

春一
「ま、でもアイツは信用出来る奴だけどな!」

詩乃
「あれ?春一がそんな事言うなんて珍しくない?」

私の記憶の中ではアドルフさん以来だと思う、春一が懐いているのは。

春一
「ミゲルの奴、俺のコーヒーいけるって言って飲んだんだぜ!」

ミゲルって味覚音痴なのかな?
そんな事で懐く春一も春一だけど。
というか誰とでも仲良くなれる陽キャは苦手なのでは?
ミゲルは別という事なのかな?

クロード
「誰にでも良い顔をする人たらしなだけだろう」

ビーカーのコーヒーをすすりながら、不貞腐れ気味なクロード。

ルイス
「あらやだ、珍しいわね。クロードさんがそんな事言うなんて」

詩乃
「不貞腐れキャラは春一と被っちゃうよ?」

春一
「おい、誰が不貞腐れキャラだって?」

クロード
「不貞腐れてはおらん。奴の思想が受け付けないだけだ」

詩乃
「思想?」

クロードはそれっきり、喋らなくなった。
どうやらミゲルの事があまり好きじゃないみたい。
あんなに良い人なのにどうしてだろう?
ミゲルは自作というドラム缶風呂に入れてくれた。
初めて入ったけど、なかなか良かった。
ルイスさんの作ったご飯をミゲルがめっちゃ褒めてて、嬉しそうなルイスさん。
私達はミゲルと楽しく過ごしてたのに、クロードだけはずっと仏頂面。
そんなクロードにミゲルは特に気にしている様子は無かった。
私達と変わらない感じで話し掛ける。
クロードも大人だから一言二言会話するけど、特に会話を膨らませる事無く終了。
夜も深まり、私とルイスさんは理科室で、春一とクロードとミゲルは理科準備室で眠る事にした。
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