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第1章第6話 スクールスリラーナイトin仮想現実
*3*
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この街をもう出るのが名残惜しくて色々と見て回っていたら、お昼時になった。
私達はカフェに入る。
春一
「おいウソだろ!?ランタの野郎、金くれなかったのかよ!」
トマトスパゲッティの赤いソースを口の周りに付けながら、春一が対面に座るルイスさんに怒った。
ルイス
「誰のせいだと思ってんのよ!
アタシが要らないって言ったから許してもらえたみたいなとこあるからね!?」
オムライスを食べていたスプーンを置き、怒ってても身を乗り出して春一の口を拭いてあげるルイスさんの優しさよ……。
母性をしみじみ感じながら、ハンバーグを口に入れる。
春一
「社長のくせしてケチだな」
クロード
「今後のロイド殿との関係にヒビが入らなければ良いが……」
カレーを口に入れ、ランタさんを心配するクロード。
春一
「ファントムクリスタル守る為だったんだからしょうがねぇだろうが。
俺が時間稼いだからロイドが金くれたと言っても過言じゃねぇからな。
にしてもロイドから貰った額とランタが用意してた額、どっちの方が高かったんだろ……?」
詩乃
「ゲスい事考えないの!」
春一
「あ、そう言えばお前、コピーしたファントムクリスタルってどうしたんだよ」
春一に言われた私は、リュックから取り出し机に置いた。
詩乃
「持って来ちゃった……」
どうしようか迷った挙句、結局持って来てしまった。
春一
「おっ!でかした!売りに行こう!」
クロード
「偽物を売るのは犯罪だ」
春一
「えー?これだけ似てるなら本物として売れるんじゃね?」
クロード
「ファントムクリスタルはふたつと無い代物、どれだけ似ていても偽物は偽物だ」
詩乃
「やっぱり捨てるしかないのかぁ……」
ルイス
「でも、あれだけ頑張って作った物を捨てるって、ちょっとねぇ……」
ルイスさんの言う通り、これは私の努力の結晶。
どうしても捨てられなかった。
クロード
「持っている分には問題無いだろう。大事にしなさい」
クロードの言葉に安堵の溜息をつく私。
これは宝物として持っていよう。
春一
「チェッ!」
春一はお金にがめついなぁ……。
春一
「でもお前って、そういうのすぐどっかで無くしそうなタイプだよな」
詩乃
「失礼な奴だな!無くしませんー!春一の方こそ無くしそうですけどー!」
春一
「俺はそういう管理、徹底してんからな!第一、箱だって……!」
春一は自分のリュックを開け、中に手を突っ込む。
春一
「ほら!えっと……あれ?確かこの辺に……」
両手を入れ、本格的にリュックを探り始めた春一。
雲行きが怪しい。
クロード
「……春一?」
春一
「は?何だよ、あるよある!ちょっと奥に行っちゃってるだけだってば!」
と言う割にはかなり焦ってる様子。
春一のこめかみから伝う冷や汗が止まらない。
ルイス
「……無くした、とか言うんじゃないわよね……?」
フリーズする春一。
ジリジリと顔だけ動かし、私達を見る。
春一
「……お前ら、俺にドッキリでも仕掛けた?」
詩乃
「そんなの仕掛ける訳無いでしょ!?」
クロード
「もっとちゃんと探せっ!」
春一
「さ、探したってば……!」
ルイス
「貸しなさい!」
ルイスさんが春一のリュックをぶん取り、入念に探す。
しばらく探した後、ルイスさんが背もたれに背中を預けた。
ルイス
「……無い」
ルイスさんの短いひと言が、重く私達にのしかかる。
長い沈黙が続く。
クロード
「……どう責任を取るつもりだ……?」
春一
「……土下座?」
クロード
「馬鹿者っ!!貴様の土下座に価値などあるかっ!!
切腹に決まっているだろっ!?命が何個あっても足りぬがなっ!!」
ルイス
「100回生き返らせてあげるから、101回切腹なさいっ!」
春一
「ちょ!ちょっと待てよ!
ランタの家を出る前までは確実にあったんだよ!
その後の行動を思い出せばどっかに落ちてるかもしんねぇだろ!」
春一は必死に思い返す。
春一
「えーっと、レーヌの店に行って、それから……。
……そうだ、駅前の移動販売の店!
そこでジュース買った時に財布取り出した拍子に落ちたんだ!」
詩乃
「い、急ごう!」
私とクロードと春一は急いで店を出る。
ルイス
「えっ!?ちょ、お会計!」
駅前まで走って来た。
息が上がる。
春一
「あ、あれ、確かこの辺にあったのに……」
詩乃
「移動するから移動販売なんだよ……はぁ、遅かったか……」
クロード
「落ちているかもしれん、手分けして探すぞ」
私達はくまなく探す。
合流したルイスさんも目を凝らして探す。
低木の間、ベンチの下、急行待ちの踏切あたり。
こんなとこにいるはずも無いのに。
ああ!One more time,One more chance!
クロード
「……あったか?」
私達は力無く首を横に振る。
春一
「……ごめん、謝って済む問題じゃねぇけど、ごめん……」
さすがの春一も今回ばかりはしおらしい。
そんな春一に、私達は何も声を掛けられない。
その時、指輪からレーザービームのような赤い線が出た。
ルイス
「な、何なの!?」
私は指輪を顔に近付け、よく見てみる。
まるで何かの方向を指しているようだった。
春一
「……えっと、これはぁ、ハウル的な?動く城的な?」
クロード
「これを辿って行けば箱が見つかるかもしれん!」
詩乃
「そ、そんなまさかぁ……!」
もしそうなら春一の言った通り、本当に動く城的な事になってしまう。
ルイス
「今までの事を考えると、今回も指輪に従った方が良いのかもしれないわね」
私は親指を前に突き出す。
レーザーは真っ直ぐ前を指している。
詩乃
「たっちゃん、詩乃を箱の元に連れてって?」
春一
「甲子園ならぬ、な」
春一にしか通じないボケをかましたところで、私達は指輪に導かれるまま歩き出した。
私達はカフェに入る。
春一
「おいウソだろ!?ランタの野郎、金くれなかったのかよ!」
トマトスパゲッティの赤いソースを口の周りに付けながら、春一が対面に座るルイスさんに怒った。
ルイス
「誰のせいだと思ってんのよ!
アタシが要らないって言ったから許してもらえたみたいなとこあるからね!?」
オムライスを食べていたスプーンを置き、怒ってても身を乗り出して春一の口を拭いてあげるルイスさんの優しさよ……。
母性をしみじみ感じながら、ハンバーグを口に入れる。
春一
「社長のくせしてケチだな」
クロード
「今後のロイド殿との関係にヒビが入らなければ良いが……」
カレーを口に入れ、ランタさんを心配するクロード。
春一
「ファントムクリスタル守る為だったんだからしょうがねぇだろうが。
俺が時間稼いだからロイドが金くれたと言っても過言じゃねぇからな。
にしてもロイドから貰った額とランタが用意してた額、どっちの方が高かったんだろ……?」
詩乃
「ゲスい事考えないの!」
春一
「あ、そう言えばお前、コピーしたファントムクリスタルってどうしたんだよ」
春一に言われた私は、リュックから取り出し机に置いた。
詩乃
「持って来ちゃった……」
どうしようか迷った挙句、結局持って来てしまった。
春一
「おっ!でかした!売りに行こう!」
クロード
「偽物を売るのは犯罪だ」
春一
「えー?これだけ似てるなら本物として売れるんじゃね?」
クロード
「ファントムクリスタルはふたつと無い代物、どれだけ似ていても偽物は偽物だ」
詩乃
「やっぱり捨てるしかないのかぁ……」
ルイス
「でも、あれだけ頑張って作った物を捨てるって、ちょっとねぇ……」
ルイスさんの言う通り、これは私の努力の結晶。
どうしても捨てられなかった。
クロード
「持っている分には問題無いだろう。大事にしなさい」
クロードの言葉に安堵の溜息をつく私。
これは宝物として持っていよう。
春一
「チェッ!」
春一はお金にがめついなぁ……。
春一
「でもお前って、そういうのすぐどっかで無くしそうなタイプだよな」
詩乃
「失礼な奴だな!無くしませんー!春一の方こそ無くしそうですけどー!」
春一
「俺はそういう管理、徹底してんからな!第一、箱だって……!」
春一は自分のリュックを開け、中に手を突っ込む。
春一
「ほら!えっと……あれ?確かこの辺に……」
両手を入れ、本格的にリュックを探り始めた春一。
雲行きが怪しい。
クロード
「……春一?」
春一
「は?何だよ、あるよある!ちょっと奥に行っちゃってるだけだってば!」
と言う割にはかなり焦ってる様子。
春一のこめかみから伝う冷や汗が止まらない。
ルイス
「……無くした、とか言うんじゃないわよね……?」
フリーズする春一。
ジリジリと顔だけ動かし、私達を見る。
春一
「……お前ら、俺にドッキリでも仕掛けた?」
詩乃
「そんなの仕掛ける訳無いでしょ!?」
クロード
「もっとちゃんと探せっ!」
春一
「さ、探したってば……!」
ルイス
「貸しなさい!」
ルイスさんが春一のリュックをぶん取り、入念に探す。
しばらく探した後、ルイスさんが背もたれに背中を預けた。
ルイス
「……無い」
ルイスさんの短いひと言が、重く私達にのしかかる。
長い沈黙が続く。
クロード
「……どう責任を取るつもりだ……?」
春一
「……土下座?」
クロード
「馬鹿者っ!!貴様の土下座に価値などあるかっ!!
切腹に決まっているだろっ!?命が何個あっても足りぬがなっ!!」
ルイス
「100回生き返らせてあげるから、101回切腹なさいっ!」
春一
「ちょ!ちょっと待てよ!
ランタの家を出る前までは確実にあったんだよ!
その後の行動を思い出せばどっかに落ちてるかもしんねぇだろ!」
春一は必死に思い返す。
春一
「えーっと、レーヌの店に行って、それから……。
……そうだ、駅前の移動販売の店!
そこでジュース買った時に財布取り出した拍子に落ちたんだ!」
詩乃
「い、急ごう!」
私とクロードと春一は急いで店を出る。
ルイス
「えっ!?ちょ、お会計!」
駅前まで走って来た。
息が上がる。
春一
「あ、あれ、確かこの辺にあったのに……」
詩乃
「移動するから移動販売なんだよ……はぁ、遅かったか……」
クロード
「落ちているかもしれん、手分けして探すぞ」
私達はくまなく探す。
合流したルイスさんも目を凝らして探す。
低木の間、ベンチの下、急行待ちの踏切あたり。
こんなとこにいるはずも無いのに。
ああ!One more time,One more chance!
クロード
「……あったか?」
私達は力無く首を横に振る。
春一
「……ごめん、謝って済む問題じゃねぇけど、ごめん……」
さすがの春一も今回ばかりはしおらしい。
そんな春一に、私達は何も声を掛けられない。
その時、指輪からレーザービームのような赤い線が出た。
ルイス
「な、何なの!?」
私は指輪を顔に近付け、よく見てみる。
まるで何かの方向を指しているようだった。
春一
「……えっと、これはぁ、ハウル的な?動く城的な?」
クロード
「これを辿って行けば箱が見つかるかもしれん!」
詩乃
「そ、そんなまさかぁ……!」
もしそうなら春一の言った通り、本当に動く城的な事になってしまう。
ルイス
「今までの事を考えると、今回も指輪に従った方が良いのかもしれないわね」
私は親指を前に突き出す。
レーザーは真っ直ぐ前を指している。
詩乃
「たっちゃん、詩乃を箱の元に連れてって?」
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