仮想現実の歩き方

白雪富夕

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第1章第5話 仮想現実でドッペルゲンガーに会ったら死ぬの?

*2*

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ロビーを歩き、出口に向かう。
ここは成田ですか?羽田ですか?って感じなんだが……。

ルイス
「アタシ、飛行機って初めて乗ったわ!こんな感じなのね~!」

クロード
「文明が発達した街だとは聞いていたが、まさかここまでだったとはな」

2人は初めての経験に高揚していた。

詩乃
「ちょっと発達し過ぎじゃないかな!?
ファンタジー世界に有るまじき光景だよ!?」

春一
「今まで汗水垂らして歩いて来たのは何だったんだろうな……。
たった30分で遠く離れた次の街に着いちまった……」

確かに!
こんな便利な物があるなら、最初から使えば良かったのに!

クロード
「この手の乗り物はネオタウンにしかない。
他の街はここまでの技術は持っていないからな」

次の街はネオタウンというらしい。
確かにこの飛行機の便は、ネオタウンとフォールフィエルテを行き来しているだけだった。
今後、色んな街とも繋がっていくのかなぁ。
何はともあれどんな街か楽しみにしておこう!



空港から出て電車に乗る。
……いや電車もあるんかい!というツッコミはしないでおこう。
ゆらり揺られて着いたのは、ネオタウンの中心部だった。
大きなレンガ造りの駅を出る。
行き交う人を見ると、あんまり私が居た世界と変わらない。
スーツとか着てる人居るし、学生もチラホラ。
こないだまでは私の格好の方が浮いていたのに、今はクロード達の方が浮いているように見える。

春一
「元の世界に帰ってきたみたいだ……!」

辺りを見回しながら、春一も私と同じ事を思ってたみたい。

ルイス
「2人が居た世界はここに似てるの?」

私達は首を大きく縦に振る。

クロード
「色々と見てみるか、他にも見所は沢山ある」

歩き出したクロードについて行く。
始めに見覚えのある赤いタワーの前に着いた。
青天に高く伸びた赤が映えている。

詩乃
「東京タワーだ!」

クロード
「あれはネオタワーだな。ネオタウンを象徴する建築物だ」

次に夜になったら賑やかになりそうな通りに来た。
ネオン街って言うのかな、こういうの。
まだ開店前なので人はまばらだ。

春一
「お!歌舞伎町じゃねぇか!懐かしい~!サナちゃん、元気かなぁ?」

詩乃
「……行くんだ、そういうの」

私はじとっと春一を睨む。

春一
「な、何だよその顔は!俺だっていい歳した大人の男だぞ?
ガキにゃあ分かんねぇかもだけど、可愛いネーちゃん達とパーッと飲みたくなる時があんだよ、たまには!」

私はぷいっとそっぽを向いた。
何がたまにはよ!
お気に入りの子が居るくせに!!

春一
「なーなー、クロード!今夜行ってみようぜ!」

クロード
「興味無い」

マントを掴んで揺らす春一の誘いを、躊躇いなく断るクロード。

春一
「おいおいウソだろ!?男は何だかんだ全員好きだろうが!」

ルイス
「残念でした~!クロードさんはアンタとは違うのよ!」

ドヤ顔するルイスさん。
全く……!男全員が興味あるとか思うなよっ!!
クロードがやれやれとかぶりを振る。

クロード
「春一、大人ぶりたいお年頃なのは分かるが、そういうのはもう少し大きくなってからだぞ?」

春一
「……そうだよ、未成年は門前払いだよ……!」

自分の姿を確認して、大きな溜息をつく春一。

詩乃
「はい、もう次のとこ行こ!」

そして大きなショッピングモールの前に来た。

クロード
「ここは街1番の大型商業施設だ。
このような建物をショッピングモールと呼ぶらしい」

春一
「知ってる知ってる!この手の事は俺達の方が詳しいかもな」

春一は親指で私と自分を交互に指した。
私は頷く。

詩乃
「せっかくだからちょっと入ってみようよ!」

ルイス
「そうね!行きましょ!」

私とルイスさんは腕を組んでモールに入った。
もう完全に観光客の私達。

春一
「女ってホントああいうの好きな。絶対ちょっとじゃ済まねぇよ」

クロード
「良いじゃないか、少しは息抜きになるだろう」



目移りしちゃう程の魅力的な店舗が連なっていて、ついはしゃぐ私とルイスさん。
ルイスさんは新鮮な目で見てたけど、私は懐かしさでいっぱいだった。
菜乃と2人で洋服見に行ったり、お揃いのアクセサリー買ったりしたなぁ。
春一は興奮する私達を呆れた顔で見ていた。

詩乃
「そんな顔してたら彼女とのショッピングデートで嫌われちゃうよ?」

春一
「可愛い彼女とのデートなら楽しいけど、ガキと野郎のはしゃぎっぷりを見て誰が笑えるかってんだ」

なんて失礼な奴!

春一
「さすがのクロードだって飽き飽きだろ、なっクロード?ってあれ?」

隣に居たはずのクロードはショーウィンドウの前に立っていた。

クロード
「ルイス殿、こういう服はお好みじゃなかろうか」

ルイスさんに振り返り、指を差す。
マネキンがキレイめのパンツスタイルで立っていた。
女性物だけど、ルイスさんも何の違和感も無く履けそう。

ルイス
「あーん!好きぃ!クロードさんったら分かってるわぁ~!」

春一
「アイツは何で本格的に株上げようとしてんだよ!」

声を荒らげる春一。

詩乃
「アンタみたいにゲスくないから、そんな事考えてないでしょ?
純粋な優しさを見習いなさいよ……!」

益々不貞腐れる春一。
ダメな男と良い男の完璧な比較だわ、これ。
しばらく練り歩く。
2階をウロウロしてた時、春一があるお店を指差した。

春一
「あれ、何の店だ?」

店前には【あなたの理想の姿、叶えます】と書かれた看板が立て掛けてあった。

ルイス
「本で読んだ事があるわ。自分のなりたい姿に変えてくれるんだって!」

春一
「うわー胡散臭ぇー!」

テンションが上がるルイスさんとは対照的に、苦笑いする春一。
なりたい姿?コスプレって事かな?

詩乃
「面白そう!入ってみようよ!」

私は3人の背中を押し、中に入る。
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