31 / 47
第1章第4話 仮想現実武闘会
*8*
しおりを挟む
次の日の朝、屋敷の前でドルレアン兄妹に別れの挨拶をする。
春一
「はーあ、せっかく苦労して手に入れた釣竿も持ってかれちゃったな」
詩乃
「当たり前でしょ?あんな恐ろしい物、手元に置かれてても困るわ」
頭の後ろで両手を組み残念そうにする春一に、私は苦笑いする。
ジャンヌ
「君達を巻き込んでしまって大変申し訳無かった」
深々とお辞儀をするジャンヌさんにルイスさんが微笑む。
ルイス
「昨日からずっと謝ってばっかで、もう聞き飽きたわよ!」
クロード
「逆に良かったではありませんか。
一般人がターゲットにされていたら危なかったですよ」
春一
「おーい、俺も一般人なんだがー?」
クロード
「君は冒険者なのだろう?」
春一
「あっちゃー!すっかり忘れてやした!」
自分のおでこをペチンと叩く春一。
ジャンヌ
「そうだな、前向きに考えよう。
被害者が私の知り合いで良かった。
“仲間”と言うべきか。
そして兄上様の活躍があってこそだ」
自分に振られると思ってなくて完全に気を抜いていたジャンさんが、驚いたようにジャンヌさんを見た。
ジャン
「え、僕!?」
春一
「確かに術を解いてくれなかったら、俺らマジでヤバかったもんなぁ」
クロード
「確かに……」
クロード
「ジャン様、私達を救ってくださりありがとうございます!」
詩乃
「私からもありがとうございました!」
ルイス
「ジャンヌさんのお兄さんがアナタみたいな人で良かった!
ありがとう!」
みんなから頭を下げられ、ジャンさんは気まずそう。
ジャン
「ジャンヌの客人だったから助けただけだ!
べ、別に君達の為って訳じゃないから!」
ジャン
「……でもまあ、全員無傷で良かった……かもな……」
あーもう!典型的なツンデレ猫ちゃん!
私達4人はニヤニヤしてしまう。
ジャンヌさんは不思議そうな顔をしていた。
ジャンヌ
「また武闘会を見に来てくれ。その頃には必ず勝ってみせる!」
クロード
「勿論です!ずっと応援しております!」
ルイスさんは見つめ合い微笑む2人を、少し寂しそうに見ていた。
……本当に好きなんだな……。
春一
「お前、告んねぇの?ジャンヌに」
クロード
「こく?」
とんでもない爆弾を投下した春一に慌てる私。
詩乃
「な、何言ってんのよ!!!」
春一
「だって好きなんだろ?ジャンヌの事。
いつ告白すんだよ、今でしょ?」
ニヤニヤしながら話す春一に、真っ赤になるクロードとジャンヌさん。
クロード
「君は何を言っているのだ!?」
ジャンヌ
「ハリントンが、私を好き……?」
ジャン
「どういう事だ、それ……!」
一気に空気が悪くなる。
クロードは腰を曲げ、春一と目を合わせる。
クロード
「あのなぁ、確かに尊敬しているし好きか嫌いかで言えばものすごく好きだ。
だが恋人になりたいと思った事は無いぞ……!」
ルイス
「えぇ!?無いの!?」
黙って聞いていたルイスさんが1番驚いていた。
クロード
「無い、断じて無い。
一体何をどう見たらそんな考えになるのだ?」
詩乃
「へ、へぇ!あ、そうなんだー!
もう!春一ったら早とちりなんだからー!」
春一
「チェッ!つまんねぇーの」
ジャンヌ
「そうだよな、ハリントンが私の事を好いているだなんてありえないよな」
クロード
「ジャンヌ様にはもっと相応しい男が他に沢山居ますから」
ふとルイスさんを見ると、ほっと安堵した様子だった。
私の中にも安堵している自分がいた。
詩乃
「はい!じゃあもう出発!
お世話になりましたっ!!」
私は春一の腕を引っ張って先に行く。
これ以上爆弾は投下させない!!
春一
「ちょ、何だよ!引っ張んなって!」
クロード
「最後の最後まで失礼致しました……」
ジャンヌ
「気にするな。
気を付けて旅を続け、また元気な姿を見せに来い」
クロード
「はい!行って参ります!」
クロードは頭を下げた。
ルイス
「2人も元気でね!
そうだ、良かったら今度はアタシの宿にも遊びに来てちょうだいね!」
ルイスはリュックからチラシを出し、2人に渡す。
受け取った兄妹は頷いた。
クロードとルイスも駆け足で先に行く2人を追い掛けた。
ジャンヌ
「賑やかな仲間達だったな」
わちゃわちゃと喋りながら去って行く4人の後ろ姿を眺めながら微笑むジャンヌ。
ジャン
「……ジャンヌはどうなの?」
ジャンヌ
「え、ハリントンの事ですか?」
ジャン
「アイツはああ言ってたけど、ジャンヌはどう思ってるのかな、と……」
黙ったジャンヌは俯きながら屋敷に戻りかけ、振り向いた。
ジャンヌ
「……内緒ですっ!」
いたずらっ子のように笑うと、屋敷の中に入って行った。
ジャン
「え、それ何!?どっち!?」
ジャンは慌ててジャンヌの後を追った。
第4話 仮想現実武闘会 ~完~
春一
「はーあ、せっかく苦労して手に入れた釣竿も持ってかれちゃったな」
詩乃
「当たり前でしょ?あんな恐ろしい物、手元に置かれてても困るわ」
頭の後ろで両手を組み残念そうにする春一に、私は苦笑いする。
ジャンヌ
「君達を巻き込んでしまって大変申し訳無かった」
深々とお辞儀をするジャンヌさんにルイスさんが微笑む。
ルイス
「昨日からずっと謝ってばっかで、もう聞き飽きたわよ!」
クロード
「逆に良かったではありませんか。
一般人がターゲットにされていたら危なかったですよ」
春一
「おーい、俺も一般人なんだがー?」
クロード
「君は冒険者なのだろう?」
春一
「あっちゃー!すっかり忘れてやした!」
自分のおでこをペチンと叩く春一。
ジャンヌ
「そうだな、前向きに考えよう。
被害者が私の知り合いで良かった。
“仲間”と言うべきか。
そして兄上様の活躍があってこそだ」
自分に振られると思ってなくて完全に気を抜いていたジャンさんが、驚いたようにジャンヌさんを見た。
ジャン
「え、僕!?」
春一
「確かに術を解いてくれなかったら、俺らマジでヤバかったもんなぁ」
クロード
「確かに……」
クロード
「ジャン様、私達を救ってくださりありがとうございます!」
詩乃
「私からもありがとうございました!」
ルイス
「ジャンヌさんのお兄さんがアナタみたいな人で良かった!
ありがとう!」
みんなから頭を下げられ、ジャンさんは気まずそう。
ジャン
「ジャンヌの客人だったから助けただけだ!
べ、別に君達の為って訳じゃないから!」
ジャン
「……でもまあ、全員無傷で良かった……かもな……」
あーもう!典型的なツンデレ猫ちゃん!
私達4人はニヤニヤしてしまう。
ジャンヌさんは不思議そうな顔をしていた。
ジャンヌ
「また武闘会を見に来てくれ。その頃には必ず勝ってみせる!」
クロード
「勿論です!ずっと応援しております!」
ルイスさんは見つめ合い微笑む2人を、少し寂しそうに見ていた。
……本当に好きなんだな……。
春一
「お前、告んねぇの?ジャンヌに」
クロード
「こく?」
とんでもない爆弾を投下した春一に慌てる私。
詩乃
「な、何言ってんのよ!!!」
春一
「だって好きなんだろ?ジャンヌの事。
いつ告白すんだよ、今でしょ?」
ニヤニヤしながら話す春一に、真っ赤になるクロードとジャンヌさん。
クロード
「君は何を言っているのだ!?」
ジャンヌ
「ハリントンが、私を好き……?」
ジャン
「どういう事だ、それ……!」
一気に空気が悪くなる。
クロードは腰を曲げ、春一と目を合わせる。
クロード
「あのなぁ、確かに尊敬しているし好きか嫌いかで言えばものすごく好きだ。
だが恋人になりたいと思った事は無いぞ……!」
ルイス
「えぇ!?無いの!?」
黙って聞いていたルイスさんが1番驚いていた。
クロード
「無い、断じて無い。
一体何をどう見たらそんな考えになるのだ?」
詩乃
「へ、へぇ!あ、そうなんだー!
もう!春一ったら早とちりなんだからー!」
春一
「チェッ!つまんねぇーの」
ジャンヌ
「そうだよな、ハリントンが私の事を好いているだなんてありえないよな」
クロード
「ジャンヌ様にはもっと相応しい男が他に沢山居ますから」
ふとルイスさんを見ると、ほっと安堵した様子だった。
私の中にも安堵している自分がいた。
詩乃
「はい!じゃあもう出発!
お世話になりましたっ!!」
私は春一の腕を引っ張って先に行く。
これ以上爆弾は投下させない!!
春一
「ちょ、何だよ!引っ張んなって!」
クロード
「最後の最後まで失礼致しました……」
ジャンヌ
「気にするな。
気を付けて旅を続け、また元気な姿を見せに来い」
クロード
「はい!行って参ります!」
クロードは頭を下げた。
ルイス
「2人も元気でね!
そうだ、良かったら今度はアタシの宿にも遊びに来てちょうだいね!」
ルイスはリュックからチラシを出し、2人に渡す。
受け取った兄妹は頷いた。
クロードとルイスも駆け足で先に行く2人を追い掛けた。
ジャンヌ
「賑やかな仲間達だったな」
わちゃわちゃと喋りながら去って行く4人の後ろ姿を眺めながら微笑むジャンヌ。
ジャン
「……ジャンヌはどうなの?」
ジャンヌ
「え、ハリントンの事ですか?」
ジャン
「アイツはああ言ってたけど、ジャンヌはどう思ってるのかな、と……」
黙ったジャンヌは俯きながら屋敷に戻りかけ、振り向いた。
ジャンヌ
「……内緒ですっ!」
いたずらっ子のように笑うと、屋敷の中に入って行った。
ジャン
「え、それ何!?どっち!?」
ジャンは慌ててジャンヌの後を追った。
第4話 仮想現実武闘会 ~完~
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる