仮想現実の歩き方

第1章第4話 仮想現実武闘会

＊5＊

クタクタだったが、心は晴れやかなジャンヌ。
泥だらけで屋敷へと戻った。
階段から下りて来るところだったジャンと会った。

ジャン
｢おかえり、今日は随分と早いんだね｣

微笑みながらジャンヌの前に立つ。

ジャンヌ
｢只今戻りました、兄上様！今日は順番が早かったものですから｣

ジャン
｢そうだったんだ、お疲れ様。
おや？今日は武闘会帰りとは思えないくらい顔が明るいね？｣

ジャンヌ
｢実は今日やっと勝利したのです！こんなに嬉しい結果は久々です！｣

ジャン
｢そうか！やったじゃないか！おめでとう、今夜は祝杯を上げよう｣

妹の喜ぶ姿に顔が緩むジャン。

ジャンヌ
｢ありがとうございます！ハリントン達にも報告しないと！｣

ジャンヌ
｢でもまだ具合が悪いかもしれんな……｣

ジャン
｢そんな格好で病人の部屋に行かない方が良いんじゃないのかな？
先に風呂に入っておいで、ゆっくり浸かって体をほぐすと良い。
鎧も手入れしないとね。その頃には具合も良くなってるだろう｣

ジャンヌ
｢確かにそうですね！風呂に行って参ります｣

ジャンヌは一礼するとバスルームへ向かった。
先程までの笑顔が消え、顎に手を当てしばらく考え込むジャン。
そして客間へと向かった。
ノックもせず、ドアを開ける。
暗い部屋の中、ベッドで釣竿を持っている2人が目に入った。
ジャンはドアを閉め、鍵を掛けた。
そっと近寄り、両手で2人の頭を掴む。
目を瞑り、呪文を唱えるジャン。
虚無の顔は苦痛の表情へと変わった。