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第1章第2話 旅は道連れ、世は仮想現実
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次の日の朝、ルイスの情報を元に闇狐の占い館の前へやって来た3人。
緑の瓦屋根に赤い柱という中華な雰囲気の玄関ポーチには、赤く長い絨毯が伸びている。
その両脇には装飾が細やかで美しい壺や、ベンチが置かれていた。
なるほど、路地裏の扉は裏口だったのか。
春一は1人納得していた。
だから大男と一緒に入って行った闇狐が背後を取れたのか、と。
ルイス
「よ、よし、行くわよ……!」
ルイスは両手の拳をグッと握り、自身を鼓舞する。
春一
「俺達はここと裏口に待機してるから、何かあったら思いきり叫ぶか逃げるかしろよ?」
春一の言葉にクロードも頷く。
クロード
「必ず助けるからリラックスして自然に話せば良い」
ルイス
「分かったわ、自然に頑張ってくる……!」
そう言い残し、ルイスはガチガチに固まりながら中へ入って行った。
後ろ姿を見送り春一は苦笑いをする。
春一
「アイツ、自然にの意味分かってんのかなぁ?」
クロード
「大丈夫、ルイス殿ならしっかりやってくれるだろう」
その自信はどっから来るんだよ、と思ったが口には出さないでおく春一。
春一
「じゃあ俺裏口行くから、お前ここで待機な」
クロード
「了解、あまり無茶はするなよ」
春一は背中でクロードの声を聞くと、ヒラヒラと手を振り路地裏へ向かった。
クロードは出入口が見える物陰に隠れた。
その30分後、ルイスが出て来た。
クロード
「大丈夫か!?何もされていないか!?」
ルイス
「すごかったわ~!全部当てちゃうんだもの!」
頬を染め、興奮したように言うルイスにクロードは拍子抜けする。
クロード
「え、普通に占われただけなのか?」
ルイス
「ええ、特に変わった事は無かったけど……」
ルイスの言葉にクロードが首を傾げた時、春一がニヤニヤしながら戻って来た。
春一
「無事生還なご様子で」
ルイス
「彼、すごく良かったわよ~?聞き上手で優しくって!ズバズバ見抜かれちゃったし……本物なんじゃないの、やっぱり」
春一
「エセ占い師が良く使う、バーナム効果ってやつじゃねぇの?
誰にでも当てはまる事言って、さも当たってるかのように思わせるって心理学」
ルイス
「で、でもアタシ個人の事だって当てられたわよ!?」
春一
「それもコールドリーディングっつー心理学だろうよ。
入って来た時から椅子に座るまでの様子とか見た目、話し方、話の内容から色々観察して推測するんだよ。
どうせ優しくて聞き上手だからってつい色々話したんだろ?」
ルイスは腕を組み考える。
ルイス
「うーん、そう言われるとそうだったかも……喋り過ぎたのも否めないわね」
クロード
「何はともあれ無事で良かったが、尻尾出させられなかったな……」
春一
「ルイスが男だったからとか?」
春一の発言にルイスはムッとする。
ルイス
「ま!失礼ね!心は立派な乙女よ!?」
春一
「心がどうだろうと見た目が男なら売れねぇんだよ、アイツの競りは女の子ばっかだったんだから」
クロード
「だとしたら、我々ではどうにもならんな……女装する訳にもいかんし」
ルイス
「クロードさんの女装……ちょっと、いやかなり見たいわね」
真顔で頬を染めるルイスに、クロードは眉間に皺を寄せる。
クロード
「丁重にお断りさせていただく……!」
春一
「ンな事しなくたって、その辺の女に声掛けて行ってもらえば良いじゃん」
ヘラヘラと笑う春一にクロードは怒る。
クロード
「そんな危険な真似、一般人にさせられる訳無いだろう!?」
ルイス
「一般人でも速攻行くよう促されたアタシは何なの?」
ジトッと見られたクロードは、視線からルイスを外す。
クロード
「いやその、ルイス殿はお強いだろうという自信があった故……」
ルイス
「何それどういう意味……?」
春一
「とにかく背に腹は代えられねぇよ」
真剣な顔付きでそう言ったかと思いきや、急にニヤニヤする。
春一
「つー訳でこれからナン、じゃなくて声掛けに行ってきまーす!」
軽い足取りで立ち去る春一。
が、首根っこを掴まれる。
ルイス
「有名な占い師なんだからここで待ってたら女の子入って来るわよ。それで良いでしょ、わざわざ声掛けに行かなくたって良いじゃない。ねぇそうでしょ?ねぇ……?」
ずいっと春一の後ろから顔に近寄り、冷たい目で肩越しに見つめ早口で単調に畳み掛けるルイス。
春一
「は、はい、そっすね……」
まるでメデューサの如く冷たい気迫に固まる春一。
ルイスの提案で3人はしばらく店前の物陰に待機する。
数分後、ルイスの言う通り1人のチャイナドレスの女性が入って行った。
3人は顔を見合せ頷くと春一は裏口へ、クロードとルイスはその場で臨戦態勢を取る。
30分程して、何事も無かったかのように出て行く女性。
ルイス
「どういう事?ターゲットは女性なんじゃないの?」
クロード
「おかしいな、そのはずなのだが……」
顎に手を当て考え込むクロードの元に帰ってくる春一。
春一
「おっかしいなぁ~絶対連れてかれるって思ったんだけど」
ルイス
「なんか不謹慎ね」
クロード
「……大人の女性だったからかもしれん。競売にかけられていたのは皆少女だった」
クロードの呟きに春一は指を鳴らす。
春一
「それだ!」
ルイス
「とんだロリコン野郎の集まりね……!」
呆れ顔のルイスの発言に大きく頷く2人。
次は少女が入って行くのを待ち伏せる。
しばらくすると、チャイナドレスを着た少女が入って行った。
3人は顔を見合せ頷くと、先程と同じ作戦を実行する。
またしても30分後、女性と同様変わった様子も無く出て行く少女。
クロードとルイスは首を傾げる。
そこへ戻って来た春一。
春一
「おいテメェ!ガキんちょなら誰でも連れて行くんじゃねぇのかよっ!」
クロード
「いや、それを私に言われてもだな……」
春一
「チッ!どういう条件なら連れて行くんだよ、ったく……!」
その場にヤンキー座りをして不貞腐れる春一。
昨日の会場を思い出す。
ふと共通点が浮かんだ。
春一
「そういや、チャイナドレス着てる少女なんか1人も居なかったな……」
クロード
「確かにエルフ族やドワーフ族など異種族しか居なかったな!」
春一
「アイツの格好もここいらじゃあ物珍しいからな。だから狙われたんだろうよ」
ルイス
「こだわりのあるロリコンって変態度増すわね……」
呆れ顔のルイスの発言にまたも大きく頷く2人。
今度は異種族の少女が入って行くのを待つ。
緑の瓦屋根に赤い柱という中華な雰囲気の玄関ポーチには、赤く長い絨毯が伸びている。
その両脇には装飾が細やかで美しい壺や、ベンチが置かれていた。
なるほど、路地裏の扉は裏口だったのか。
春一は1人納得していた。
だから大男と一緒に入って行った闇狐が背後を取れたのか、と。
ルイス
「よ、よし、行くわよ……!」
ルイスは両手の拳をグッと握り、自身を鼓舞する。
春一
「俺達はここと裏口に待機してるから、何かあったら思いきり叫ぶか逃げるかしろよ?」
春一の言葉にクロードも頷く。
クロード
「必ず助けるからリラックスして自然に話せば良い」
ルイス
「分かったわ、自然に頑張ってくる……!」
そう言い残し、ルイスはガチガチに固まりながら中へ入って行った。
後ろ姿を見送り春一は苦笑いをする。
春一
「アイツ、自然にの意味分かってんのかなぁ?」
クロード
「大丈夫、ルイス殿ならしっかりやってくれるだろう」
その自信はどっから来るんだよ、と思ったが口には出さないでおく春一。
春一
「じゃあ俺裏口行くから、お前ここで待機な」
クロード
「了解、あまり無茶はするなよ」
春一は背中でクロードの声を聞くと、ヒラヒラと手を振り路地裏へ向かった。
クロードは出入口が見える物陰に隠れた。
その30分後、ルイスが出て来た。
クロード
「大丈夫か!?何もされていないか!?」
ルイス
「すごかったわ~!全部当てちゃうんだもの!」
頬を染め、興奮したように言うルイスにクロードは拍子抜けする。
クロード
「え、普通に占われただけなのか?」
ルイス
「ええ、特に変わった事は無かったけど……」
ルイスの言葉にクロードが首を傾げた時、春一がニヤニヤしながら戻って来た。
春一
「無事生還なご様子で」
ルイス
「彼、すごく良かったわよ~?聞き上手で優しくって!ズバズバ見抜かれちゃったし……本物なんじゃないの、やっぱり」
春一
「エセ占い師が良く使う、バーナム効果ってやつじゃねぇの?
誰にでも当てはまる事言って、さも当たってるかのように思わせるって心理学」
ルイス
「で、でもアタシ個人の事だって当てられたわよ!?」
春一
「それもコールドリーディングっつー心理学だろうよ。
入って来た時から椅子に座るまでの様子とか見た目、話し方、話の内容から色々観察して推測するんだよ。
どうせ優しくて聞き上手だからってつい色々話したんだろ?」
ルイスは腕を組み考える。
ルイス
「うーん、そう言われるとそうだったかも……喋り過ぎたのも否めないわね」
クロード
「何はともあれ無事で良かったが、尻尾出させられなかったな……」
春一
「ルイスが男だったからとか?」
春一の発言にルイスはムッとする。
ルイス
「ま!失礼ね!心は立派な乙女よ!?」
春一
「心がどうだろうと見た目が男なら売れねぇんだよ、アイツの競りは女の子ばっかだったんだから」
クロード
「だとしたら、我々ではどうにもならんな……女装する訳にもいかんし」
ルイス
「クロードさんの女装……ちょっと、いやかなり見たいわね」
真顔で頬を染めるルイスに、クロードは眉間に皺を寄せる。
クロード
「丁重にお断りさせていただく……!」
春一
「ンな事しなくたって、その辺の女に声掛けて行ってもらえば良いじゃん」
ヘラヘラと笑う春一にクロードは怒る。
クロード
「そんな危険な真似、一般人にさせられる訳無いだろう!?」
ルイス
「一般人でも速攻行くよう促されたアタシは何なの?」
ジトッと見られたクロードは、視線からルイスを外す。
クロード
「いやその、ルイス殿はお強いだろうという自信があった故……」
ルイス
「何それどういう意味……?」
春一
「とにかく背に腹は代えられねぇよ」
真剣な顔付きでそう言ったかと思いきや、急にニヤニヤする。
春一
「つー訳でこれからナン、じゃなくて声掛けに行ってきまーす!」
軽い足取りで立ち去る春一。
が、首根っこを掴まれる。
ルイス
「有名な占い師なんだからここで待ってたら女の子入って来るわよ。それで良いでしょ、わざわざ声掛けに行かなくたって良いじゃない。ねぇそうでしょ?ねぇ……?」
ずいっと春一の後ろから顔に近寄り、冷たい目で肩越しに見つめ早口で単調に畳み掛けるルイス。
春一
「は、はい、そっすね……」
まるでメデューサの如く冷たい気迫に固まる春一。
ルイスの提案で3人はしばらく店前の物陰に待機する。
数分後、ルイスの言う通り1人のチャイナドレスの女性が入って行った。
3人は顔を見合せ頷くと春一は裏口へ、クロードとルイスはその場で臨戦態勢を取る。
30分程して、何事も無かったかのように出て行く女性。
ルイス
「どういう事?ターゲットは女性なんじゃないの?」
クロード
「おかしいな、そのはずなのだが……」
顎に手を当て考え込むクロードの元に帰ってくる春一。
春一
「おっかしいなぁ~絶対連れてかれるって思ったんだけど」
ルイス
「なんか不謹慎ね」
クロード
「……大人の女性だったからかもしれん。競売にかけられていたのは皆少女だった」
クロードの呟きに春一は指を鳴らす。
春一
「それだ!」
ルイス
「とんだロリコン野郎の集まりね……!」
呆れ顔のルイスの発言に大きく頷く2人。
次は少女が入って行くのを待ち伏せる。
しばらくすると、チャイナドレスを着た少女が入って行った。
3人は顔を見合せ頷くと、先程と同じ作戦を実行する。
またしても30分後、女性と同様変わった様子も無く出て行く少女。
クロードとルイスは首を傾げる。
そこへ戻って来た春一。
春一
「おいテメェ!ガキんちょなら誰でも連れて行くんじゃねぇのかよっ!」
クロード
「いや、それを私に言われてもだな……」
春一
「チッ!どういう条件なら連れて行くんだよ、ったく……!」
その場にヤンキー座りをして不貞腐れる春一。
昨日の会場を思い出す。
ふと共通点が浮かんだ。
春一
「そういや、チャイナドレス着てる少女なんか1人も居なかったな……」
クロード
「確かにエルフ族やドワーフ族など異種族しか居なかったな!」
春一
「アイツの格好もここいらじゃあ物珍しいからな。だから狙われたんだろうよ」
ルイス
「こだわりのあるロリコンって変態度増すわね……」
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