1 / 24
1.アイリーン
しおりを挟む
「あ~、今日も疲れた~」
そう言って俺の隣にぐでーっとだらしなく座っているのは、幼馴染のアイリーンだ。
手入れの行き届いた綺麗な赤髪に、透明感のある真っ白な柔肌、そして聞いているだけで幸せになれる心地いい声。
細身にも関わらずしっかりと実った胸が、今にも俺に触れてしまいそうなくらいの距離にあってドキドキする。
どんな男でも虜にしてしまう超絶完璧美少女。それがアイリーンだ。
うん。俺の幼馴染は今日も可愛い。
そしてアイリーンは強い。桁外れに。
幼い頃から学院で剣の才能を認められ、将来は凄腕の剣士になるだろうと期待されていた。
二十歳になる今では世界トップクラスのギルド『月の騎士団』に所属し、その名を世界に轟かせている。アイリーンが、現在世界に四人しかいない剣聖になる日も近いだろうとの噂もあった。
天は二物を与えずという言葉がある。
あの言葉は全くの嘘だ。
アイリーンを見ればわかる。
アイリーンは可愛いし、強い。性格だって良い。ずっと一緒に育ってきたからわかるがアイリーンはとても優しい。ギルドに入って魔物と戦っているのも人々の笑顔を守るためだけにやっている。
そんなアイリーンを幼馴染に持てて俺は幸せ者だと思う。
アイリーンとは家が隣同士だった。
俺は十歳の時に両親を亡くしている。両親の遺産のおかげで生きていくことはできたが、よくアイリーンの家にお邪魔してご飯をご馳走になったり、アイリーンがうちへ来て遊んでくれたり剣を教えてくれたりと色々お世話になっている。
今日もいつものようにアイリーンがクエスト帰りにうちへ寄ってきてたわいもない会話をする。
「お疲れ様。今日はどんな魔物を倒してきたんだ?」
「今日はねー、『月の騎士団』総出でドラゴン退治」
「ドラゴンって……、まじか……」
ドラゴンといえば町一つ滅ぼす力を持つという、Sランクの魔物だぞ……。
さすがアイリーン。
特に怪我もせずにとんでもない偉業を成してきたようだ。
「うん。本当疲れた~。今日はぐっすり寝られそう」
ただ疲れはかなりきているようで、本当にしんどそうだった。
アイリーンは自分の肩を抑えながら首を回して、ほぐしている。
「大丈夫か? あんま無理すんなよ」
「だいじょぶだいじょぶ~。今は疲れてるけど、寝て起きたら全快だから!」
「アイリーンはそれでマジで全快するからなぁ……。ま、それならいいけど」
「ハルトは今日はどんな魔物を倒したの?」
「俺か? 俺はゴブリンを倒したぞ」
「おお! Eランクの魔物じゃん! やったね!」
アイリーンはパッと笑顔になり、俺のことを褒めてくれた。
俺も一応冒険者をしている。
ただ死ぬほど弱い。まじで弱い。クソ雑魚だ。
生まれつき魔法の才能が一切なかった。色々な属性の初級魔法に挑戦したのだが、どの属性も成功しなかった。
ならば剣を極めようと、アイリーンに剣を習ったのだが、剣の方も全くダメだった。素振りをしようとしただけで何度も手から剣がすっぽ抜けて、アイリーンに「剣はやめといた方がいいかもね……」と苦笑いされたほどだ。
しかしそれでもなんとか剣を練習し続けて今日やっとゴブリンを倒すことに成功したのだ。
「だろ? そのうち剣聖にでもなってみせるさ」
「あはは、それは調子に乗りすぎ」
と冷静にアイリーンにつっこまれる。。
「じゃ、疲れたしそろそろ帰って寝るね」
「ああ、ゆっくり休めよ」
「ほーい」
アイリーンは手をひらひらと振ってうちを出ていった。
いいなぁ。いつか、アイリーンみたいにギルドに入って仲間と一緒に戦いたいなぁ。
アイリーンを見ていると時々羨ましくなることがある。
あれほどの才能に恵まれた人生は一体どれだけ楽しいのだろうか。
仲間と笑い合い、ともに苦難を乗り越え、人々のために戦う。
ギルドに入って、そんなありふれた生活を送ることが、実は俺のひそかな夢だったりする。
まあ剣も魔法も使えない俺を入れてくれるギルドなんてどこにもないんですけど。
「アイリーン……」
俺は胸にかけてあるペンダントにそっと触れた。
これは幼い頃アイリーンがくれた大切なペンダントだ。
アイリーンの髪と同じ真っ赤な色の宝石がついている。
俺はアイリーンのことが好きだ。
どうしようもないくらい好きだ。
初めて出会ったその瞬間、恋に落ちた。
あの美貌に、あの剣の実力に、そしてすべてを包み込むようなあの優しさに。
恋に落ちずにはいられなかった。
アイリーンと一緒に過ごす時間が重なるごとに、アイリーンのことをもっと好きになっていく。
明日、俺は誕生日を迎えて、二十歳になる。
二十歳といえばもう立派な大人だ。
節目の歳ともいえる。
だから俺は明日アイリーンに告白しようと思う。
ずっと胸に秘めていたこの気持ちをアイリーンに伝えるのだ。
そう言って俺の隣にぐでーっとだらしなく座っているのは、幼馴染のアイリーンだ。
手入れの行き届いた綺麗な赤髪に、透明感のある真っ白な柔肌、そして聞いているだけで幸せになれる心地いい声。
細身にも関わらずしっかりと実った胸が、今にも俺に触れてしまいそうなくらいの距離にあってドキドキする。
どんな男でも虜にしてしまう超絶完璧美少女。それがアイリーンだ。
うん。俺の幼馴染は今日も可愛い。
そしてアイリーンは強い。桁外れに。
幼い頃から学院で剣の才能を認められ、将来は凄腕の剣士になるだろうと期待されていた。
二十歳になる今では世界トップクラスのギルド『月の騎士団』に所属し、その名を世界に轟かせている。アイリーンが、現在世界に四人しかいない剣聖になる日も近いだろうとの噂もあった。
天は二物を与えずという言葉がある。
あの言葉は全くの嘘だ。
アイリーンを見ればわかる。
アイリーンは可愛いし、強い。性格だって良い。ずっと一緒に育ってきたからわかるがアイリーンはとても優しい。ギルドに入って魔物と戦っているのも人々の笑顔を守るためだけにやっている。
そんなアイリーンを幼馴染に持てて俺は幸せ者だと思う。
アイリーンとは家が隣同士だった。
俺は十歳の時に両親を亡くしている。両親の遺産のおかげで生きていくことはできたが、よくアイリーンの家にお邪魔してご飯をご馳走になったり、アイリーンがうちへ来て遊んでくれたり剣を教えてくれたりと色々お世話になっている。
今日もいつものようにアイリーンがクエスト帰りにうちへ寄ってきてたわいもない会話をする。
「お疲れ様。今日はどんな魔物を倒してきたんだ?」
「今日はねー、『月の騎士団』総出でドラゴン退治」
「ドラゴンって……、まじか……」
ドラゴンといえば町一つ滅ぼす力を持つという、Sランクの魔物だぞ……。
さすがアイリーン。
特に怪我もせずにとんでもない偉業を成してきたようだ。
「うん。本当疲れた~。今日はぐっすり寝られそう」
ただ疲れはかなりきているようで、本当にしんどそうだった。
アイリーンは自分の肩を抑えながら首を回して、ほぐしている。
「大丈夫か? あんま無理すんなよ」
「だいじょぶだいじょぶ~。今は疲れてるけど、寝て起きたら全快だから!」
「アイリーンはそれでマジで全快するからなぁ……。ま、それならいいけど」
「ハルトは今日はどんな魔物を倒したの?」
「俺か? 俺はゴブリンを倒したぞ」
「おお! Eランクの魔物じゃん! やったね!」
アイリーンはパッと笑顔になり、俺のことを褒めてくれた。
俺も一応冒険者をしている。
ただ死ぬほど弱い。まじで弱い。クソ雑魚だ。
生まれつき魔法の才能が一切なかった。色々な属性の初級魔法に挑戦したのだが、どの属性も成功しなかった。
ならば剣を極めようと、アイリーンに剣を習ったのだが、剣の方も全くダメだった。素振りをしようとしただけで何度も手から剣がすっぽ抜けて、アイリーンに「剣はやめといた方がいいかもね……」と苦笑いされたほどだ。
しかしそれでもなんとか剣を練習し続けて今日やっとゴブリンを倒すことに成功したのだ。
「だろ? そのうち剣聖にでもなってみせるさ」
「あはは、それは調子に乗りすぎ」
と冷静にアイリーンにつっこまれる。。
「じゃ、疲れたしそろそろ帰って寝るね」
「ああ、ゆっくり休めよ」
「ほーい」
アイリーンは手をひらひらと振ってうちを出ていった。
いいなぁ。いつか、アイリーンみたいにギルドに入って仲間と一緒に戦いたいなぁ。
アイリーンを見ていると時々羨ましくなることがある。
あれほどの才能に恵まれた人生は一体どれだけ楽しいのだろうか。
仲間と笑い合い、ともに苦難を乗り越え、人々のために戦う。
ギルドに入って、そんなありふれた生活を送ることが、実は俺のひそかな夢だったりする。
まあ剣も魔法も使えない俺を入れてくれるギルドなんてどこにもないんですけど。
「アイリーン……」
俺は胸にかけてあるペンダントにそっと触れた。
これは幼い頃アイリーンがくれた大切なペンダントだ。
アイリーンの髪と同じ真っ赤な色の宝石がついている。
俺はアイリーンのことが好きだ。
どうしようもないくらい好きだ。
初めて出会ったその瞬間、恋に落ちた。
あの美貌に、あの剣の実力に、そしてすべてを包み込むようなあの優しさに。
恋に落ちずにはいられなかった。
アイリーンと一緒に過ごす時間が重なるごとに、アイリーンのことをもっと好きになっていく。
明日、俺は誕生日を迎えて、二十歳になる。
二十歳といえばもう立派な大人だ。
節目の歳ともいえる。
だから俺は明日アイリーンに告白しようと思う。
ずっと胸に秘めていたこの気持ちをアイリーンに伝えるのだ。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。
【完結】〝左利き〟のパーズ ~黒腕の追跡者~
宮杜有天
ファンタジー
賞金稼ぎギルド所属の賞金稼ぎであるパーズはギルドの支部に〝首〟の換金に来ていた。
そこでパーズは、以前より求めていた〝一ッ目〟と呼ばれる魔術師の情報を得る。パーズは仇討ちのために〝一ッ目〟を探していたのだ。
情報を得る替わりに、パーズは同じギルドの賞金稼ぎであるアートゥラと共に、ギルドが受けた依頼を頼まれることになった。
そして二人は、ギルドに仕事を依頼してきた魔導院の使いであるイェルラと共に、小さな村へと向かうのだった。
※昔に、とある公募に出したことのある作品をリライトしたものになります。
なので1話ごとのタイトルはありませんが、各話でぶつ切りにならないように気をつけています。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる