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122 公爵令嬢はイジメにあう

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 今日は、ケンがフィアンマ男爵領の仕事を持ってきている。

 ケンは、一応私の使用人って事で校内に入ってこれて、仕事の話以外にもちょくちょく普段の雑談もしている。

 「また背伸びた?」

 「少しだけ。
 フラン様はお変わりないですね。」

 「失礼ね!
 髪の毛なら伸びてるわ!」

 「ですね。
 相変わらず綺麗な髪です。」

 「今更ご機嫌取りしたって遅い!」

 こんな感じで、特に意味のない会話も結構している。

 ちょっと口数少なめで堅物そうだけど、私にはちゃんと笑顔で接してくれる優しい兄ちゃん的存在。

 そんなケンなんだけど、校内でジワジワとファンを増やしつつある。

 まぁ、魔法は使えないけどめっちゃ賢いし、何より見た目がいいからね。

 今も遠巻きにケンの事を見ている女性がチラホラ。

 「校内でケンのファンクラブが最近出来たらしいよ。
 男爵領でも元々人気あったし、そういうのは興味ないの?」

 「ないです。
 迷惑かけてこないならご自由に。」

 完全に無関心だね。

 「結婚とか考えてないの?
 もういい年頃じゃない。」

 「今は仕事が忙しいので。」

 「仕事が忙しいからこそ、私生活のサポートをしてくれる人が必要なんじゃない。」

 「補佐補佐が補佐してくれてるので問題ないです。」

 むーん、女の子にも興味ないのか?

 「誰か気になる女の子とかいないの?
 割とケンの周りには女性陣が寄ってきてるでしょ?」

 「自分はフラン様が気になります。」

 いっつもこれ。

 いくら麗若き女性領主が領主の仕事以外も大量に抱え込んでるからって、私の事ばっかり気にしてる。

 リッカ同様「今日くらい休んでください」としょっちゅう言ってくるし。

 私が休んだら、ケンが忙しくなっちゃうのにね。



 ケンが帰ったあと、クラスの女性陣何人かが私に近づいてきた。

 「あの、今日はケン様とどんな会話をなされたのですか?」

 「いつも通り、仕事のやり取りと雑談よ。
 気になる女性がいないかどうかとか。」

 「「「そ、それで、ケン様は何と?」」」

 「私の体調が気になるんですって。
 もう、私も子供じゃないんだから、困ったものよ。」

 「ケ、ケン様はどのような女性がお好きなのですか?」

 「「ぜ、是非教えてください!」」

 知らん。

 ケンは「ファンクラブに興味がない」とか言ってたし、それ正直に言ったら彼女たちガッカリするだろうね。

 こんな感じで、私がケンとやり取りした後、女性陣が私に駆け寄ってくるのが恒例行事。

 内容も全く進歩なし。

 ただ、ファンクラブの中でのケンの理想が勝手に出来上がっているようで、そこは何とか訂正している。



 ある日、上級生の女性三人から呼び出しを食らった。

 もしかして、女子でよくあるらしい「あなた生意気なのよ」的なやつだろうか?

 「あなた、ロナウド王子殿下という素敵な方がいらっしゃいながら、多くの男性に色目を使っていますわよね?
 生意気ですわ。」

 的なやつだった。

 マジかぁ、めんどくさいなぁ……

 「黙ってないで、何か言ったらどうですの?」

 「何かと言われましても、どうせどんな発言でも揚げ足取りしてくるでしょう?」

 「なっ、なんて態度ですの!?
 年上であるワタクシに向かって、そんなこと言って許されると思っていらっしゃるの!?」

 「貴方達こそ、この学校は階級が重視されるのご存知でしょう?
 私は国でも最古参の公爵家であり、男爵当主ですよ?
 この学校の生徒ではロナウド王子殿下の次に上位です。
 それがどういう事か分かりますか?」

 「なっ……
 ワタクシを馬鹿にするなんて……
 絶対に許せませんわ!!」

 と、扇子を持った手を振り上げた。

 打たれそうになるのもベタすぎる。

 でもって、ここで誰かが助けに来るんでしょ?

 「お前ら、こんな所で何やってんだ?」

 ほらね、お約束。

 って、よりによってジョニー先生が来るのかよ!?

 普通は乙女ゲー攻略対象が来るもんでしょうが!

 「「「ジョニー先生!
 この方が爵位を盾にワタクシ達を馬鹿にしてくるんですの!
 助けてくださいまし!」」」

 まぁ、言ってる事は間違ってはないけど。

 「何言ってるんだよ、フランドール嬢がそんなくだらん事する訳ねぇだろ?」

 あ、いや、したんですけど。

 「お前らこそ、一人に対して三人で喧嘩を売りに行くだなんて、淑女らしくねぇぞ?
 せっかくの美人が台無しじゃねぇか。」

 「!!!
 き、今日はこのくらいで許して差し上げますわ。」

 そう言って退散して行ったお三方。

 負け犬感すごいな。

 「ったく。
 おい、大丈夫か?」

 「何も問題ありませんでしたけど?」

 「何偉そうぶってんだよ。
 女ってのも面倒くせぇもんだな。」

 禿同。

 俺はシカトされてただけでイジメとは無縁だったからな。

 「この程度、自分でどうにか出来ないとダメでしょう?」

 「まぁ強がんな、まだまだガキなんだからよ。」

 「だから、なんで私ばかり子供あつかいするんですか!?」

 「オメェだけじゃねぇよ、生徒は全員ガキじゃねぇか。」

 ん?そう言う捉え方だったの?

 「じゃあ私ばっかり構ってくるのはなんでですか?」

 「オメェの場合は特別だよ。
 学力、魔法の実力が群を抜いてるクセに運動はからっきしで。
 自由研究や魔法の実験だけじゃなくて、寮長にかける迷惑の規模も桁違いだからな。
 んなもん、良い意味でも悪い意味でも目立ちすぎで目に付くに決まってんだろ。」

 ま、まぁ、生徒の中では目立つ方だとは思ってたけど、そこまで?

 「褒めるのも叱るのも先生の仕事だろ。
 俺は当然のことしてるだけだぞ?」

 くっ、一理ある。

 「オメェのやる事は基本的に応援してんだよ。
 まぁ、イタズラは程々にな。」

 ポンと頭に手を乗せて、クシャクシャしてきた。

 ……なんか言い込められた気もするけど、まぁ、今日はこのくらいで許して差し上げますわ。
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