50 / 191
41 公爵令嬢は授業を行う
しおりを挟む
昨日は帰ってからお父様に文句を言った。
先生になるだなんて聞いてない。
「言ってなかったからな。」
何故に。
「言ったからって、学童院に行きたいと思ってくれるとは限らなかったからな。」
先生なら面白そうだから行きたいと思ったよ。
じゃなくて、生徒のつもりで学童院に行ったら実は先生でしたとか、心や物の準備が出来ないでしょうが。
「物はフランなら現地調達出来るだろう。
それに、初の授業はとても良かったと聞いたぞ。」
たまたまだから。
次からはちゃんと相談して欲しい。
「フランだって何の相談もなく色々やっちゃってるじゃないか。」
くっ…
お父様は国王様に石焼き芋の作り方を教えたことを今だに根に持っている。
国王様、どうしても石焼き芋が食べたくて、こっそり作ってた所を家来に見つかってバレてしまった。
内緒にしてと言ったからって、自分で芋焼いちゃうとか、国王様お茶目かよ。
今日の授業は、全校生徒で身体測定。
実は、この国の体重計は魔導具として作られた物しかなくて、かなり貴重でお値段もぶっ飛んでいる。
この世界、文字と時間軸は地球とは違うけど、重さや長さなんかは同じだった。
だから私、作っちゃいました、魔法で。
昔の銭湯とかによく置いてあるあの形のやつ。
昨日夜遅く(リッカに注意される)まで作ったものが3台、今朝早く登校して何とか作れたのが1台、計4台。
昨日散々ぶつくさ言われたから、体重計の事はお父様には何も言わずに黙って持ってきた。
後で何を言われようがもう知らん。
当然、先生方はこの体重計を見てビックリ仰天してた。
一応この学童院専用の物だから、分解したり持ち出したりしないでねとかなり念入れしておいた。
これ作るの、めちゃめちゃ大変だったんだから、壊したり無くしたりされても二度と作らんぞ。
あと、中庭にあった大量の壁は邪魔くさかったから、うちのクラスのもの以外撤去。
代わりに身長計を作った。
綺麗だった芝が見るも無残な姿になってしまった。
我が家の庭の二の舞である、私のせいではない。
私のクラスは、昨日身長を測ってるから体重だけ。
身体測定は、年齢・生まれ月別に分けて計測。
6歳、7歳が多いけど、家庭の事情とかで10歳で入学する子とかもいて、物覚えが悪くて3年以上在学してる子もちらほらいたので、思ったより色んな年齢の子の情報がゲット出来た。
因みに、私全校生徒で3番目に小さかった、解せぬ。
午前中に身体測定が終わって、昼食の時間になった。
今日は私も皆んなと同じものを食べる事にした。
硬くて小さなパンがひとつと、薄い塩味の野菜スープ。
これだけ。
絶対足りない。
いつもの私の食事の半分ほど。
こんなんだから、皆んな背の割に体重が軽かったんだよ。
…じゃあ私の背が低いのはなぜ?
昨日の授業で言った通り、皆んなしっかりよく噛んで食べている。
私も満腹中枢を刺激するために、いつもより多く噛んでおります。
でも、腹八分目にもならなかった。
栄養バランスも悪い。
これは給食をどうにかしないと。
午後は普通通りの授業。
前半はベル先生が受け持ち、昨日と同じく字の読み方を教えている。
でも皆んな集中できてない。
手悪さしたり、落書きしたり。
前の席の子にいたずらしている子もいる。
これじゃあ覚えるのに時間が掛かりそうだ。
案の定、集中できてない子達は中々字を覚えられないようだ。
これも何とかしなくては。
ベル先生が授業をしているうちに、私はこっそりあるものを用意した。
量が多かったからちょっと大変だったけど、何とか私の授業までに間に合った。
あと、朝体重計作ったり壁無くしたりしてて魔力残量不安だったけど、魔力足りてよかった。
後半になって私が授業を受け持つ番になった。
私はまず、皆んなに机と椅子を教室の外に出すように指示を出した。
「フランちゃん先生、なにするのー?」
ふっふっふっ、それはこれからのお楽しみ。
机と椅子が出せたら、5人組を作ってもらう。
私含めて40人だから、ひと組は4人組だけど、全部で8組出来た。
その8組に、アルミで出来た薄い小さな板の束を渡す。
「これなににつかうの?」
「なんか字がかいてあるー」
「今配った板を床に並べて、それを5人組で囲ってください。」
言われた通りにアルミの板を並べて囲みガヤガヤ騒ぐ子供達。
ベル先生は何をするかわかってない様子で、黙って私を見ている。
「これからゲームをします。
私がこれから字を読み上げるので、その字が書かれた札を早い者勝ちで取ってください。
グループで一番札を取れた人には、明日私の手作りお菓子を用意してあげましょう。」
「「「「ええっ、ほんと⁉︎」」」」
「本当です。
ただし、一番たくさん札が取れた子だけですよー。
喧嘩をした人にもあげません。
皆んなで仲良く集中して、たくさんの札を取ってくださいね。」
「フランドール先生、いつのまにあのような物を用意されていたのですか。
8人の子に手作りお菓子だなんて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫です、私こう見えて料理得意なんです。
流石に全員分用意するのは大変なので、子供達で競い合って数を減らしてもらいましょう。
では初めますよー。
最初は『か』」
「えぇーっと、えぇーっと…」
「あった!」
「あれ、この字だったかなー?」
全グループが取れたようなので黒板に正解の字を書く。
「よっしゃー、せいかいだー!」
「うわーっ、まちがえたー。」
「正解した人はその札を持ってて、間違えた人は札を元の場所に戻してくださーい。
じゃあ次行きますよー、『れ』」
「よし、ゲットだ!」
「あれっ、どこだどこだ?」
「あー、この字しってたのにとられたぁ。」
皆んなワイワイきゃあきゃあ楽しんでる。
ご褒美で釣ったのは良くないのかもしれないけど、この調子ならご褒美なしでも全員が集中して授業を受けてくれるんじゃないかな。
場の札が10枚になったところで、今回は終了。
お菓子ゲットの8人が決まった。
「皆さん、よく頑張りました、お互いに拍手ー。
この8人には明日手作りお菓子をあげます。
明日のこの時間にも、このゲームをします。
ご褒美をするかは分かりませんが、しっかり字を覚えてたくさん札が取れるようになりましょうねー。」
「よっしゃ、めっちゃ字をおぼえまくるぞー!」
「つぎはアタシがかつんだからね!」
「おかしがなくても、ボクはかつもんね。」
皆んなには、頑張れば評価してもらえるって事、集中して楽しく学べば勉強が好きになるって事、「わからない」が「わかった」になった時の喜びを、私は知って欲しい。
「…フランドール先生はやっぱり凄いですね。
こんなに楽しそうに勉強をする子供達、初めて見ました。」
「勉強は面白いんです。
それを皆に知ってもらいたくて、頑張って考えました。」
「私も負けてられません。
皆んなが面白いと思う勉強方を考えます。」
「お互い、素敵な授業にしていきましょうね。」
授業中にギャーギャー騒ぐうちの教室を不審に思った先生が駆けつけてきて、昨日のようにベル先生が話を盛って伝えたため、再び院長先生が召喚されて、アルミ板文字かるたを大量に生産する羽目になり、今日もリッカを待たせることになった。
先生になるだなんて聞いてない。
「言ってなかったからな。」
何故に。
「言ったからって、学童院に行きたいと思ってくれるとは限らなかったからな。」
先生なら面白そうだから行きたいと思ったよ。
じゃなくて、生徒のつもりで学童院に行ったら実は先生でしたとか、心や物の準備が出来ないでしょうが。
「物はフランなら現地調達出来るだろう。
それに、初の授業はとても良かったと聞いたぞ。」
たまたまだから。
次からはちゃんと相談して欲しい。
「フランだって何の相談もなく色々やっちゃってるじゃないか。」
くっ…
お父様は国王様に石焼き芋の作り方を教えたことを今だに根に持っている。
国王様、どうしても石焼き芋が食べたくて、こっそり作ってた所を家来に見つかってバレてしまった。
内緒にしてと言ったからって、自分で芋焼いちゃうとか、国王様お茶目かよ。
今日の授業は、全校生徒で身体測定。
実は、この国の体重計は魔導具として作られた物しかなくて、かなり貴重でお値段もぶっ飛んでいる。
この世界、文字と時間軸は地球とは違うけど、重さや長さなんかは同じだった。
だから私、作っちゃいました、魔法で。
昔の銭湯とかによく置いてあるあの形のやつ。
昨日夜遅く(リッカに注意される)まで作ったものが3台、今朝早く登校して何とか作れたのが1台、計4台。
昨日散々ぶつくさ言われたから、体重計の事はお父様には何も言わずに黙って持ってきた。
後で何を言われようがもう知らん。
当然、先生方はこの体重計を見てビックリ仰天してた。
一応この学童院専用の物だから、分解したり持ち出したりしないでねとかなり念入れしておいた。
これ作るの、めちゃめちゃ大変だったんだから、壊したり無くしたりされても二度と作らんぞ。
あと、中庭にあった大量の壁は邪魔くさかったから、うちのクラスのもの以外撤去。
代わりに身長計を作った。
綺麗だった芝が見るも無残な姿になってしまった。
我が家の庭の二の舞である、私のせいではない。
私のクラスは、昨日身長を測ってるから体重だけ。
身体測定は、年齢・生まれ月別に分けて計測。
6歳、7歳が多いけど、家庭の事情とかで10歳で入学する子とかもいて、物覚えが悪くて3年以上在学してる子もちらほらいたので、思ったより色んな年齢の子の情報がゲット出来た。
因みに、私全校生徒で3番目に小さかった、解せぬ。
午前中に身体測定が終わって、昼食の時間になった。
今日は私も皆んなと同じものを食べる事にした。
硬くて小さなパンがひとつと、薄い塩味の野菜スープ。
これだけ。
絶対足りない。
いつもの私の食事の半分ほど。
こんなんだから、皆んな背の割に体重が軽かったんだよ。
…じゃあ私の背が低いのはなぜ?
昨日の授業で言った通り、皆んなしっかりよく噛んで食べている。
私も満腹中枢を刺激するために、いつもより多く噛んでおります。
でも、腹八分目にもならなかった。
栄養バランスも悪い。
これは給食をどうにかしないと。
午後は普通通りの授業。
前半はベル先生が受け持ち、昨日と同じく字の読み方を教えている。
でも皆んな集中できてない。
手悪さしたり、落書きしたり。
前の席の子にいたずらしている子もいる。
これじゃあ覚えるのに時間が掛かりそうだ。
案の定、集中できてない子達は中々字を覚えられないようだ。
これも何とかしなくては。
ベル先生が授業をしているうちに、私はこっそりあるものを用意した。
量が多かったからちょっと大変だったけど、何とか私の授業までに間に合った。
あと、朝体重計作ったり壁無くしたりしてて魔力残量不安だったけど、魔力足りてよかった。
後半になって私が授業を受け持つ番になった。
私はまず、皆んなに机と椅子を教室の外に出すように指示を出した。
「フランちゃん先生、なにするのー?」
ふっふっふっ、それはこれからのお楽しみ。
机と椅子が出せたら、5人組を作ってもらう。
私含めて40人だから、ひと組は4人組だけど、全部で8組出来た。
その8組に、アルミで出来た薄い小さな板の束を渡す。
「これなににつかうの?」
「なんか字がかいてあるー」
「今配った板を床に並べて、それを5人組で囲ってください。」
言われた通りにアルミの板を並べて囲みガヤガヤ騒ぐ子供達。
ベル先生は何をするかわかってない様子で、黙って私を見ている。
「これからゲームをします。
私がこれから字を読み上げるので、その字が書かれた札を早い者勝ちで取ってください。
グループで一番札を取れた人には、明日私の手作りお菓子を用意してあげましょう。」
「「「「ええっ、ほんと⁉︎」」」」
「本当です。
ただし、一番たくさん札が取れた子だけですよー。
喧嘩をした人にもあげません。
皆んなで仲良く集中して、たくさんの札を取ってくださいね。」
「フランドール先生、いつのまにあのような物を用意されていたのですか。
8人の子に手作りお菓子だなんて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫です、私こう見えて料理得意なんです。
流石に全員分用意するのは大変なので、子供達で競い合って数を減らしてもらいましょう。
では初めますよー。
最初は『か』」
「えぇーっと、えぇーっと…」
「あった!」
「あれ、この字だったかなー?」
全グループが取れたようなので黒板に正解の字を書く。
「よっしゃー、せいかいだー!」
「うわーっ、まちがえたー。」
「正解した人はその札を持ってて、間違えた人は札を元の場所に戻してくださーい。
じゃあ次行きますよー、『れ』」
「よし、ゲットだ!」
「あれっ、どこだどこだ?」
「あー、この字しってたのにとられたぁ。」
皆んなワイワイきゃあきゃあ楽しんでる。
ご褒美で釣ったのは良くないのかもしれないけど、この調子ならご褒美なしでも全員が集中して授業を受けてくれるんじゃないかな。
場の札が10枚になったところで、今回は終了。
お菓子ゲットの8人が決まった。
「皆さん、よく頑張りました、お互いに拍手ー。
この8人には明日手作りお菓子をあげます。
明日のこの時間にも、このゲームをします。
ご褒美をするかは分かりませんが、しっかり字を覚えてたくさん札が取れるようになりましょうねー。」
「よっしゃ、めっちゃ字をおぼえまくるぞー!」
「つぎはアタシがかつんだからね!」
「おかしがなくても、ボクはかつもんね。」
皆んなには、頑張れば評価してもらえるって事、集中して楽しく学べば勉強が好きになるって事、「わからない」が「わかった」になった時の喜びを、私は知って欲しい。
「…フランドール先生はやっぱり凄いですね。
こんなに楽しそうに勉強をする子供達、初めて見ました。」
「勉強は面白いんです。
それを皆に知ってもらいたくて、頑張って考えました。」
「私も負けてられません。
皆んなが面白いと思う勉強方を考えます。」
「お互い、素敵な授業にしていきましょうね。」
授業中にギャーギャー騒ぐうちの教室を不審に思った先生が駆けつけてきて、昨日のようにベル先生が話を盛って伝えたため、再び院長先生が召喚されて、アルミ板文字かるたを大量に生産する羽目になり、今日もリッカを待たせることになった。
0
お気に入りに追加
521
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる