44 / 56
Chapter3
08 昆虫むりだぜ!
しおりを挟む
依頼内容の確認を終えて、俺たちは教会の宿泊所に泊まることになった。村に宿屋はないので時折訪れる旅人もここを利用することがあるそうだ。
俺たちの拠点とよく似た質素な建物で、清潔だしベッドもフカフカ。おかげでリゼロッテちゃんのことを心配しつつもぐっすり眠れたわけなんだけれど。
翌日早朝。俺は頼れる仲間たちによって簀巻きにされていた。
「ニーナ、よろしければ私のマントをお召しください」
「この盾固そうだからこれも持っときなよ」
「それはいいですね、ベルトで固定しましょう」
「兜はどうだ」
「おっ、いいじゃん! これなら頭をかじられても大丈夫だな!」
昨日の「俺が死んだら生き返るかどうかわかんねえ」発言がまだ尾を引いていたらしい。三人ともアイテムボックスから取り出した防具をせっせと俺に装着させていく。
そうそう、この世界にはアイテムボックスという超便利な収納があるんですよ!
見た目は俺がすっぽり入れそうなぐらいでっかい宝箱。使徒が立ち寄る武器屋や各地の教会にも置かれていて、収納した物をどこのアイテムボックスからでも自由に出し入れできる。クラウドストレージみたいな感じ。しかもタッチパネルに目録が表示されていて、リストから選んでタップするだけで目的のものを取り出せるという優れもの。
モンスターを倒してドロップした素材やアイテムも勝手にアイテムボックスに送られるからいちいち持ち歩かなくていい。こんなん現実でもほしい。
三人はそのアイテムボックスからじゃんじゃん防具を取り出しては俺に装備させてるってわけ。おかげで俺は雪だるま式に膨らんでいく一方だった。っていうかこんなに防具持ってたっけ?
「ちょっともう! マジでやめて!? 前が見えないし重すぎて一歩も動けねえのですが!?!?!?」
「でしたら私が担いでお連れいたしますので……」
「それじゃあ足手まといどころか文字通りお荷物じゃん!!!!」
自分の声が兜の中で反響してうるせえし。
「あの、使徒様方。ご準備の方はいかがでしょうか……」
扉の向こうからリゼロッテちゃんに控え目に声をかけられて、ようやく三人の手が止まった。
最終的に俺の装備は多少厚着をする程度で落ち着いたけれど、みんな不安そうな顔をしていた。気持ちはありがたいんだけど俺の体力じゃ鎧兜は着て行けねえよ……今日はこれから登山すんだぞ……。
夜明けと共に村を出る予定だったのに俺の装備にもたつき、礼拝堂に向かう頃にはすっかり空が白んでいた。見送りに集まってくれた村の人たちも待たせてしまったな。使徒のくせに遅刻してすんません。
「それでは、改めて我らがチョココロニー神に祈りを捧げ、願ってください」
「はい」
リュカに促されて、リゼロッテちゃんは礼拝堂に祀られた神の像の前にひざまづいた。俺たちの拠点にもある、例のでっかいスマホ像だ。
「いと尊き天上の神、チョココロニー様。か弱き信徒を脅かす悪しきもの共を滅ぼすために、どうかお力をお貸しください」
――お母さんを助けてくれない意地悪な神様になんて、本当は祈りたくない。
「えっ」
リゼロッテちゃんの祈りに反応してスマホ像がふわりと光る。ローブの内ポケットにしまっていた俺のスマホも連動してるみたいにぼんやり光った。それもまあ不思議だけど、それよりも。リゼロッテちゃんの声が副音声みたいにだぶって聞こえたのはどういうこと?
「どうかいたしましたか、ニーナ」
「いや、今……」
もしかして俺にしか聞こえなかったのだろうか。小首をかしげるリュカに説明したかったけど、あまりいい内容ではなかったので「なんでもない」と適当に誤魔化してしまった。気にはなるけど、これからモンスターを倒しに行かなくちゃいけないし。
祈りを終えて、いよいよ討伐に出立する。
村の入り口とはちょうど反対の方向、羊のような姿の家畜が放されている牧場を抜け、うっそうとした森に入っていく。リゼロッテちゃんの説明によると森を抜けた先は急な山道になっていて、山頂付近にボスがいるらしい。
依頼内容をまとめるとこんな感じ。
村の近隣一帯にはモンスター避けの結界が張られていた。にもかかわらず、本来この付近には生息していない超強いモンスターが山に巣食ってしまった。モンスターは徐々に繁殖し、じわじわと活動範囲を広げ、村にまで侵攻しつつある。増えた子モンスターと元凶の親モンスターを討伐すればミッションコンプリート。なぜ結界内にモンスターが現れたのか原因を突き止められたらなおヨシ。
リゼロッテちゃんは道案内として先頭に立っている。
村長に鍛えられてるって言ってたし、モンスターと戦うのも俺よりずっと慣れてるんだろうけど、細い腕を見てると不安になる。あと服装が。ちょっと。
昨日は村にいた他の女性たちと同じような格好だった。丈の長いワンピースとエプロンみたいなやつ。でも今は随分と思い切ったミニスカートで、上も胸元がどーんと開いている。二の腕まである手袋と膝丈のロングブーツは硬そうだけど、まじでこれで戦えるのだろうか。
「あの、リゼロッテさん。俺のマント着ます?」
俺のっていうかリュカのマントなんだけど。鎧兜は脱がせてもらえたけれど、リュカのマントをぐるぐると巻かれていた。ヒラヒラしてるけど案外丈夫だし、状態異常耐性があるらしい。
「ありがとうございます、ニーナ様。でもお気持ちだけで結構です。この装備は母のお下がりで、魔力が込められているからとっても頑丈なんですよ」
リゼロッテちゃんはにっこりと微笑んで、右手を胸元にあてた。
なるほど魔法な。肌がむき出しになっている部分も大丈夫なん?
この世界に来る前はCMとか広告を見て「超かわいいな~」と思って普通に興奮してたけど、実際にこうして目の前で着ているのを見ると心配でスケベ心が消える。
それに、リゼロッテちゃんの胸元にある赤黒い痣。あれが恐らく魔力痕というやつだ。
魔力痕は歳を取るごとに増えていき、命を削る。強い魔力を持つ人ほど増える速度が早いのだと昨晩リュカたちに詳しく説明してもらった。
リゼロッテちゃんの痣はそれほど大きくはない。使徒になれば消えるが、それなりに痛いのだそうだ。
リゼロッテちゃんは痣を気にする素振りも見せず、どんどん道を進んでいく。心配だけれど本人が気にしてないんだから俺がうだうだ考えても仕方ない。装備のことだってもし万が一何かあったら俺が守ればいいのだ。俺が! 絶対に! 守るぞ!
「ニーナ、お下がりください」
鼻息荒く決意を固める俺の腕をリュカが引く。少し遅れてスマホが戦闘開始の効果音を鳴らした。
早速モンスターのお出ましか! 昨日は何にもできなかったけど今日こそは! モンスターを倒す!
「リュカ、俺も戦う!」
「では私の背中を守ってくださいますか?」
「よっし! 任せて!」
いいよね背中合わせで戦うの。でも俺の目の前にはアルシュがいる。
今俺たちがいるのは森の中に長く伸びた一本道。先頭にいるリゼロッテちゃんとハオシェンがでかい猪型のモンスターと戦っている。その後ろにいるアルシュが投げナイフで援護しつつ、左右の森からモンスターが攻めてこないか警戒している。そして殿に控えているリュカはバックアタックに備えている。
なのでつまり。
「俺は全然役に立ってないな!?」
「いいえ、そんなことはございません。ニーナが応援してくださるだけで私どもは真に力を発揮できますので」
「それ遠まわしな戦力外通告じゃん!」
リュカともめている間に、猪型のモンスターはハオシェンの鉄拳であっさり倒された。
一息つく間もなく、ぶぅんと嫌な重低音が響いてきた。なんだろう、虫の羽音みたいだけど、虫にしては音がでかすぎやしないか。
「来ました! 山に巣食うモンスターの幼体です!」
「えっ、どこ!?」
リゼロッテちゃんの声にあわてていたら、アルシュが上空に向かってナイフを投げた。
俺も遅れて敵の姿を確認する。羽音を響かせて俺たちの頭上から襲い掛かってきたモンスターは。
――――――虫。
軽自動車ぐらいのサイズの。紫色の巨大カマキリだった。
アルシュの放ったナイフがカマキリの羽を切断する。バランスを欠いて失速したカマキリの腹めがけてリゼロッテちゃんがメイスを振り上げた。
「てやー!」
かわいい掛け声と共に振り下ろされたメイスがぶよぶよの腹を裂く。モンスターは「ギイイィ!」と耳障りな叫び声をあげて、リゼロッテちゃんめがけて巨大な鎌を振り下ろす。だがハオシェンの動きの方が早い。飛び蹴りで鎌の一撃を逸らし、その隙に体勢を整えたリゼロッテちゃんが二撃目を放つ。
「ええい!」
初撃と同じ場所を正確に狙って叩き込まれたメイスを振りぬくと、引っかかった内臓がずるりとこぼれ出た。たまらずに地面に落ちたカマキリの頭めがけてアルシュが刃の雨を降らせると、巨大カマキリは巨体をびくびくと痙攣させて絶命した。
突然ですが俺は焼きナスが嫌いです。
ナス自体は嫌いじゃないんだけど、焼きナスのドロッとしてつぶつぶしてる見た目がムリなんですよね。道で踏み潰されて死んでるバッタとかセミの腹から出てる内臓? 卵? みたいなのにそっくりじゃないですか。やばい。鳥肌。
焼きナスでデロデロになったリゼロッテちゃんに、ハオシェンが「村長代理、いい腕してんね」と声を掛ける。「恐れ入ります、私のことはどうかリゼロッテとお呼びください」とリゼロッテちゃんも笑って答える。
共闘した後のさわやかな会話って感じ。そんな仲間たちの姿と黒いもやになって消えていくカマキリを、俺は上空から見ていた。
なんていうのかな。体はそのままなんだけど魂だけ出ちゃってる感じ。初めて経験するから確証はないけど、これが幽体離脱ってやつ?
「ニーナ……ニーナ!? どうなさいましたか!」
直立不動のまま動かなくなった俺の肩をリュカが揺する。やばいな、このまま体に戻れなかったら死ぬのでは? この死に方はちょっと想定してなかった。
「ニーナ! お気を確かに!!!!」
ほんと。昆虫だけは。まじで無理。
俺たちの拠点とよく似た質素な建物で、清潔だしベッドもフカフカ。おかげでリゼロッテちゃんのことを心配しつつもぐっすり眠れたわけなんだけれど。
翌日早朝。俺は頼れる仲間たちによって簀巻きにされていた。
「ニーナ、よろしければ私のマントをお召しください」
「この盾固そうだからこれも持っときなよ」
「それはいいですね、ベルトで固定しましょう」
「兜はどうだ」
「おっ、いいじゃん! これなら頭をかじられても大丈夫だな!」
昨日の「俺が死んだら生き返るかどうかわかんねえ」発言がまだ尾を引いていたらしい。三人ともアイテムボックスから取り出した防具をせっせと俺に装着させていく。
そうそう、この世界にはアイテムボックスという超便利な収納があるんですよ!
見た目は俺がすっぽり入れそうなぐらいでっかい宝箱。使徒が立ち寄る武器屋や各地の教会にも置かれていて、収納した物をどこのアイテムボックスからでも自由に出し入れできる。クラウドストレージみたいな感じ。しかもタッチパネルに目録が表示されていて、リストから選んでタップするだけで目的のものを取り出せるという優れもの。
モンスターを倒してドロップした素材やアイテムも勝手にアイテムボックスに送られるからいちいち持ち歩かなくていい。こんなん現実でもほしい。
三人はそのアイテムボックスからじゃんじゃん防具を取り出しては俺に装備させてるってわけ。おかげで俺は雪だるま式に膨らんでいく一方だった。っていうかこんなに防具持ってたっけ?
「ちょっともう! マジでやめて!? 前が見えないし重すぎて一歩も動けねえのですが!?!?!?」
「でしたら私が担いでお連れいたしますので……」
「それじゃあ足手まといどころか文字通りお荷物じゃん!!!!」
自分の声が兜の中で反響してうるせえし。
「あの、使徒様方。ご準備の方はいかがでしょうか……」
扉の向こうからリゼロッテちゃんに控え目に声をかけられて、ようやく三人の手が止まった。
最終的に俺の装備は多少厚着をする程度で落ち着いたけれど、みんな不安そうな顔をしていた。気持ちはありがたいんだけど俺の体力じゃ鎧兜は着て行けねえよ……今日はこれから登山すんだぞ……。
夜明けと共に村を出る予定だったのに俺の装備にもたつき、礼拝堂に向かう頃にはすっかり空が白んでいた。見送りに集まってくれた村の人たちも待たせてしまったな。使徒のくせに遅刻してすんません。
「それでは、改めて我らがチョココロニー神に祈りを捧げ、願ってください」
「はい」
リュカに促されて、リゼロッテちゃんは礼拝堂に祀られた神の像の前にひざまづいた。俺たちの拠点にもある、例のでっかいスマホ像だ。
「いと尊き天上の神、チョココロニー様。か弱き信徒を脅かす悪しきもの共を滅ぼすために、どうかお力をお貸しください」
――お母さんを助けてくれない意地悪な神様になんて、本当は祈りたくない。
「えっ」
リゼロッテちゃんの祈りに反応してスマホ像がふわりと光る。ローブの内ポケットにしまっていた俺のスマホも連動してるみたいにぼんやり光った。それもまあ不思議だけど、それよりも。リゼロッテちゃんの声が副音声みたいにだぶって聞こえたのはどういうこと?
「どうかいたしましたか、ニーナ」
「いや、今……」
もしかして俺にしか聞こえなかったのだろうか。小首をかしげるリュカに説明したかったけど、あまりいい内容ではなかったので「なんでもない」と適当に誤魔化してしまった。気にはなるけど、これからモンスターを倒しに行かなくちゃいけないし。
祈りを終えて、いよいよ討伐に出立する。
村の入り口とはちょうど反対の方向、羊のような姿の家畜が放されている牧場を抜け、うっそうとした森に入っていく。リゼロッテちゃんの説明によると森を抜けた先は急な山道になっていて、山頂付近にボスがいるらしい。
依頼内容をまとめるとこんな感じ。
村の近隣一帯にはモンスター避けの結界が張られていた。にもかかわらず、本来この付近には生息していない超強いモンスターが山に巣食ってしまった。モンスターは徐々に繁殖し、じわじわと活動範囲を広げ、村にまで侵攻しつつある。増えた子モンスターと元凶の親モンスターを討伐すればミッションコンプリート。なぜ結界内にモンスターが現れたのか原因を突き止められたらなおヨシ。
リゼロッテちゃんは道案内として先頭に立っている。
村長に鍛えられてるって言ってたし、モンスターと戦うのも俺よりずっと慣れてるんだろうけど、細い腕を見てると不安になる。あと服装が。ちょっと。
昨日は村にいた他の女性たちと同じような格好だった。丈の長いワンピースとエプロンみたいなやつ。でも今は随分と思い切ったミニスカートで、上も胸元がどーんと開いている。二の腕まである手袋と膝丈のロングブーツは硬そうだけど、まじでこれで戦えるのだろうか。
「あの、リゼロッテさん。俺のマント着ます?」
俺のっていうかリュカのマントなんだけど。鎧兜は脱がせてもらえたけれど、リュカのマントをぐるぐると巻かれていた。ヒラヒラしてるけど案外丈夫だし、状態異常耐性があるらしい。
「ありがとうございます、ニーナ様。でもお気持ちだけで結構です。この装備は母のお下がりで、魔力が込められているからとっても頑丈なんですよ」
リゼロッテちゃんはにっこりと微笑んで、右手を胸元にあてた。
なるほど魔法な。肌がむき出しになっている部分も大丈夫なん?
この世界に来る前はCMとか広告を見て「超かわいいな~」と思って普通に興奮してたけど、実際にこうして目の前で着ているのを見ると心配でスケベ心が消える。
それに、リゼロッテちゃんの胸元にある赤黒い痣。あれが恐らく魔力痕というやつだ。
魔力痕は歳を取るごとに増えていき、命を削る。強い魔力を持つ人ほど増える速度が早いのだと昨晩リュカたちに詳しく説明してもらった。
リゼロッテちゃんの痣はそれほど大きくはない。使徒になれば消えるが、それなりに痛いのだそうだ。
リゼロッテちゃんは痣を気にする素振りも見せず、どんどん道を進んでいく。心配だけれど本人が気にしてないんだから俺がうだうだ考えても仕方ない。装備のことだってもし万が一何かあったら俺が守ればいいのだ。俺が! 絶対に! 守るぞ!
「ニーナ、お下がりください」
鼻息荒く決意を固める俺の腕をリュカが引く。少し遅れてスマホが戦闘開始の効果音を鳴らした。
早速モンスターのお出ましか! 昨日は何にもできなかったけど今日こそは! モンスターを倒す!
「リュカ、俺も戦う!」
「では私の背中を守ってくださいますか?」
「よっし! 任せて!」
いいよね背中合わせで戦うの。でも俺の目の前にはアルシュがいる。
今俺たちがいるのは森の中に長く伸びた一本道。先頭にいるリゼロッテちゃんとハオシェンがでかい猪型のモンスターと戦っている。その後ろにいるアルシュが投げナイフで援護しつつ、左右の森からモンスターが攻めてこないか警戒している。そして殿に控えているリュカはバックアタックに備えている。
なのでつまり。
「俺は全然役に立ってないな!?」
「いいえ、そんなことはございません。ニーナが応援してくださるだけで私どもは真に力を発揮できますので」
「それ遠まわしな戦力外通告じゃん!」
リュカともめている間に、猪型のモンスターはハオシェンの鉄拳であっさり倒された。
一息つく間もなく、ぶぅんと嫌な重低音が響いてきた。なんだろう、虫の羽音みたいだけど、虫にしては音がでかすぎやしないか。
「来ました! 山に巣食うモンスターの幼体です!」
「えっ、どこ!?」
リゼロッテちゃんの声にあわてていたら、アルシュが上空に向かってナイフを投げた。
俺も遅れて敵の姿を確認する。羽音を響かせて俺たちの頭上から襲い掛かってきたモンスターは。
――――――虫。
軽自動車ぐらいのサイズの。紫色の巨大カマキリだった。
アルシュの放ったナイフがカマキリの羽を切断する。バランスを欠いて失速したカマキリの腹めがけてリゼロッテちゃんがメイスを振り上げた。
「てやー!」
かわいい掛け声と共に振り下ろされたメイスがぶよぶよの腹を裂く。モンスターは「ギイイィ!」と耳障りな叫び声をあげて、リゼロッテちゃんめがけて巨大な鎌を振り下ろす。だがハオシェンの動きの方が早い。飛び蹴りで鎌の一撃を逸らし、その隙に体勢を整えたリゼロッテちゃんが二撃目を放つ。
「ええい!」
初撃と同じ場所を正確に狙って叩き込まれたメイスを振りぬくと、引っかかった内臓がずるりとこぼれ出た。たまらずに地面に落ちたカマキリの頭めがけてアルシュが刃の雨を降らせると、巨大カマキリは巨体をびくびくと痙攣させて絶命した。
突然ですが俺は焼きナスが嫌いです。
ナス自体は嫌いじゃないんだけど、焼きナスのドロッとしてつぶつぶしてる見た目がムリなんですよね。道で踏み潰されて死んでるバッタとかセミの腹から出てる内臓? 卵? みたいなのにそっくりじゃないですか。やばい。鳥肌。
焼きナスでデロデロになったリゼロッテちゃんに、ハオシェンが「村長代理、いい腕してんね」と声を掛ける。「恐れ入ります、私のことはどうかリゼロッテとお呼びください」とリゼロッテちゃんも笑って答える。
共闘した後のさわやかな会話って感じ。そんな仲間たちの姿と黒いもやになって消えていくカマキリを、俺は上空から見ていた。
なんていうのかな。体はそのままなんだけど魂だけ出ちゃってる感じ。初めて経験するから確証はないけど、これが幽体離脱ってやつ?
「ニーナ……ニーナ!? どうなさいましたか!」
直立不動のまま動かなくなった俺の肩をリュカが揺する。やばいな、このまま体に戻れなかったら死ぬのでは? この死に方はちょっと想定してなかった。
「ニーナ! お気を確かに!!!!」
ほんと。昆虫だけは。まじで無理。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
フリーター、ゴーレムになり異世界を闊歩する
てぃー☆ちゃー
ファンタジー
旧タイトル)オレはゴーレム、異世界人だ。あ、今は人では無いです
3/20 タイトル変更しました
仕事を辞めて、さあ就職活動だ!
そんな矢先に別世界へ強制移動とゴーレムへの強制変化!
こんな再就職なんて望んでません!
新たな体を得た主人公が異世界を動き回る作品です
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる