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さらば工場長!暁に死す! 最終話
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過去にいったことで歴史がちょっと変わってしまった
私のお菓子工場は縁切寺さんが工場長となっていた
そうなると私のポジションは一体なにになるのか?
とりあえずワラにもすがる思いで縁切寺さんに事情を話してみた
「なんだと・・・?ここは貴様の工場で過去にいったことで歴史が変わっただと、そんなバカな話信じられるか!」
「本当なんです!おかげで自分が何者かもわからずに工場長としてのアイデンティティーがぐたぐたなのです!助けてください!」
「そう言われてもな・・・貴様はとなりの弁当工場の工場長だろう」
あ、工場長は工場長なのですね、なら細かいことはどうでもいいや
(さすが工場長、適応力高いのです)
コンベアを抜けると○○だった
「工場長、巨人さん弁当のラインが調子悪いんですが」
「そうか、ちょっとコンベアとめて点検してみるから」
「はい止めマース」
弁当工場に勤めて1日、俺は工場長だった
いろいろと細かい違いはあると思うが多分問題ない大切なのは今だ
お菓子が弁当に変わったところでそれは些末なことだ
現に小清水さんも山口さんも水元さんも宇田川さんもこの弁当工場にいるのだ
「小清水さんもうちょっとかかりそうだからしばらく止めておくよう伝えてきて」
「はーいわかりましたー」
いや~よかったよかった本当に、元の世界とほとんど同じですねこれは
信頼する小清水さんもいるしなにも問題ないようです
「うッス!小清水の姉御!どうしたんですかい?」
「おう山口か工場長のヤロウに頼まれごとをされたんだがあのエロ中年低賃金でコキ使いやがって許せねえぜ」
「うッス!小清水の姉御に山口の姉御!なんの話しですかい?」
「おう水元か、工場長のエロ中年が許せねえって話でよ、あのやろういつか地獄のローラーにぶち込んでやるぜ」
「マジッスか!さすが小清水の姉御やることがえげつねえッス!」
「うッス!小清水の姉御に山口の姉御に水元の姉御!なんのお話ですかい?」
「おう宇田川か、小清水の姉御が工場長を地獄のローラーにぶちこむからあんたも協力しな」
「うッス!操作盤の人に伝えてくるッス!」
ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ・・・
「操作盤の人ー、工場長のヤロウを地獄のローラーにぶち込むので準備おなしゃス!」
「はーいわかりましたー」
地獄のローラーとは!!商品規格を満たしていない弁当等をコンベアを通してプレスし廃棄するための機械だ!!
誤って巻き込まれれば命を落とすことから地獄のローラーという俗称で呼ばれていた!!!
「よし、どうやら直ったようですね」
「工場長ちょっと来てもらえますか?」
「おや宇田川さん、どうしましたか?」
「こっちでも機械トラブルが・・・」
「そうですか、わかりましたいきましょう」
工場長が宇田川に着いていった先には地獄のローラーと小清水たちがいた
「よっしゃお前ら!工場長を胴上げだー!」
「おー!」
ワッショイワッショイ!
「ちょ!?いきなりなにするんですか!?」
ワッショイワッショイ!地獄のローラーワッショイ!ゴウンゴウンゴウン・・・
「なんの脈絡もなく地獄のローラーに工場長をかけるとか正気ですかあなたたちは!?」
工場長はいつにもましてなにが起こってるのかわからなかった
パニックに陥ってる間に工場長は既に地獄のローラー行きのコンベアに乗せられていた
「足がローラーに飲まれていくっ!」
鋼鉄製の二本のローラーに足を捕られる・・・その隙間は僅か2センチ
生身の人間が通過すれば全身の骨は砕け数秒で死に至る
工場長の死の秒読みが開始された
足を捕られた工場長を確認すると小清水ら四人はその場を離れた
人間が潰されるむごたらしい場面など見たくはなかったのだろう・・・
(足の骨がっ!砕ける!なんだよこれっ!?なにが起きてるんだよっ!)
メキメキと不気味な音を立てながら工場長の足の骨は砕かれ肉は潰され血しぶきはあちこちに飛び散る
「いってえええええええ!!!いてええよおおお!!!血ぃい!!?血が出てるよ!!」
なぜあいつらは俺にこんなことをした・・・!?信頼していた人間のはずなのに・・・?
「工場長!大変なのです!」
「ラ、ラミエールさん・・・早く・・・助けて!」
「足が潰れて・・・!?回復するのですエンジェル・・・クレイジーダイヤモンドです!」
「おおっ!回復能力!こいつはグレートッスよ!」
が・・・ダメッ!ローラーに挟まれた部分はもどらないっ!
「痛い痛い痛い!結局痛い!」
「回復もダメなのです!ならばっ!」
ラミエールは工場長の手を掴み引っ張る!が、挟まった足を抜くことは不可能だった!!
「一度時間を止めるのです!」
「ローラーが止まっ・・・痛い痛い痛い!結局痛い!早くひっぱりだして!」
「すいません工場長、時間を止めたとはいえ現実には精神を加速させたようなものなので動けないです」
「じゃあどうするんですか!!?」
「考える時間はほぼ無限になるのです」
「そんなこと言っても・・・痛みが止まらないから!」
「ドブゴンさんを呼んでくださいです」
「無理!家においてきたから!」
「まずいのです・・・このままだと打つ手が・・・」
「ならっ足を切り落として!」
「時間を動かせばローラーは動き出すのです・・・その数秒で翼を出して足を切ることは至難の業なのです・・・」
「なんとか助かる方法はねえのかよ!」
「死ぬ前に歪みに入って別世界にいけばもしかしたら命だけは・・・」
「結局運まかせかよ!痛いっ!いたたたたっ!」
「ラミエールは調べてわかったことがあるのです!コンベアの固有振動が偶然コードを発生させて・・・粒子衝突が起こり異世界への歪みを作ったのです」
「いまそんなのどうでもいいから結論を言え!」
「前にも言ったのですが異世界で工場長が死んだ場合、全ての因果の輪から消滅して・・・」
「そんなのどうでもいい!早く助けろ!こっちは痛えんだよっ!!」
「お、落ち着いてくださいです!工場長の存在が無かったことになるのはダメなのです!」
「死んだあとのことなんて知らねえよ!今をどうにかしろって言ってんだ!」
痛みは・・・人の思考を、冷静さを失わせる
今この場でラミエールに罵倒を浴びせることになに一つメリットはない
しかしその当たり前のことも思い浮かばないほどに工場長の判断力は低下していた・・・
「早くしろ!今すぐ助けろ!」
「すいませんです、ラミエールにはどうすることもできないのです・・・」
「ふざけんなこのクソガキが!ふざけんな!殺すぞ!」
「ラミエールもできることならばどうにかしたいのです・・・けどどうしようもないのです」
「このクソガキが!死ね!今すぐ死ね!」
「うぅ・・・ぐぅうう・・・」
ラミエールは涙を流した、頭ではわかっていた工場長は今冷静さを欠いている
激しい痛みにより人格を失っているだけだと
しかし頭と感情は別物であって、ラミエールは優秀な知能と能力はもっていても精神はまだ幼い
激しい怒号、ましてそれまで一緒にいた相手に怒鳴り散らされれば心は傷つく
「なに泣いてんだよ!くそムカツクガキが!」
「うわぁああああ!!うわぁぁあああああんん!!」
押さえていた感情は堰を切ったように流れだし、ラミエールはしゃくりあげて喚いた
「うるせええ!!黙れ!泣き止めろ!できないならどっか行けクソが!!」
その場に居ることに耐えられなくなったラミエールは瞬間、文字通り一瞬で移動した、そこは天界
「うわぁあああああ!うぇぇえええええん!」
大声で泣き喚いていたラミエールだがそれも長くは続かなかった、時間にしてほんの数秒後・・・鳴き声はピタリと止んだ
「っ!?あれ・・・?私・・・なんで泣いてたんだろう・・・??」
ラミエールが消えてからの工場長に遡る、ほんの数秒前の出来事・・・
「あのクソガキ!本当にどっかいきやがった!ちくしょうぶっ殺してやる!」
ラミエールが消えた後も精神の加速は続いていた
無限に続く痛みが工場長を襲う!
「痛えええ!痛ええええ!痛えええええええ!!痛えええええええ!!痛えええええ!!」
ラミエールが消えて数時間、工場長は痛み叫び続けていた
ローラーの位置はまったく動いてない、厳密にはほんの僅か・・・肉眼で確認することは絶対に不可能なくらいのレベルでは動いている、物理的に表現をすることは困難なほど動いていなかった、位置が変化しているという概念でしかない・・・
数時間苦しんでも痛みの終わりは見えることはない
1年経過・・・ローラーは頚骨をすべて粉々に砕き膝蓋骨、ひざの皿に届いた
「別の痛みが来る!?痛ええええ!ちくしょう!!痛ええええよおおお!!」
工場長だけに流れる時間としての1年
さらに痛みの感覚が続く1年ならば体感時間としては10年にも20年にも感じる長さとなる
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
痛みはこの世で最も無慈悲で残酷だ、言い換えれば痛み以外は取るに足らないことなのだ
ヒマだとか退屈だとか寂しいとか悲しいとかダルいとか愛されたいとかそんなことで悩みあがく人間はクズでしかない
死ぬことですら際限なく続く激痛と比べたら救いだ
激しい痛みの前ではどんな人間でも屈服するしかない、普段偉そうに威張ってる人間だろうと誰にでも尊敬される人格者でも世界的宗教のトップでも金持ちも政治家も哲学者も痛みには敵わない、生物は生物というそれだけで不完全なものなのだ
「痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!!!!!」
工場長は無限に続く痛みをなぜ受けねばならないのか?
因果応報という言葉があるが、もしラミエールに罵倒を浴びせなければ少なくともこれから起こる地獄も回避できたはずだ
しかしそれは工場長が悪いわけではない、痛みで人格が変わることは生物である以上避けられない
工場長は、常に最悪を回避する努力を怠らなかった、にもかかわらず最悪は起きた
つまり、生きるということは圧倒的理不尽なのだ、どう生きようとどう考えようと努力しても人格が優れていても不幸になる奴は不幸になるのだ
「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」
大腿骨が全て砕かれたときには1億年が経っていた、冗談みたいな年数が経過した頃、工場長は世界を呪った
通常なら人は激しい苦痛に対しそれを止めるためのエンドルフィンなどの鎮痛ホルモンを分泌させる
しかし物質である以上物理法則には逆らうことはできない、脳内で生成されるには時間がかかりすぎた
痛覚を遮断できない無防備な脳にローラーは睾丸と亀頭陰茎と潰しにかかる
「ぎゃああああああああああ!!うがああああああああああ!!」
それまでよりさらに激しい痛みが工場長を蹂躙していく
ギャグマンガやアニメでキンタマを強打し痛がるシーンがあるが
時間をかけて潰される痛みはその比ではなかった
工場長もこれまで股間へのダメージはあったがそれまでの痛みが遊びに思えるほどの激しい痛みが300万年かけて続いた
「殺せええええええええ!!殺せえええええええええええええ!!」
ローラーは大腸を潰し、続いて腎臓、肝臓、胃と約1億年かけて内臓をミンチにしていく
胸骨、脊椎も半分以上失われた・・・しかしそれでも工場長は死ぬことができなかった
2億年苦しみ生かされ気絶することも気が狂うことも叶わない絶対的絶望に追い討ちをかけられる・・・
それは肺を潰されることだった
(呼吸ができない・・・声も出せない)
窒息の苦しさと痛みが同時にやってくる
(苦しい・・・!苦しい・・・!耐えらるはずない!)
言うまでもなく窒息は苦しく恐ろしい・・・通常なら5分で気を失い死に至るが
(これはダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!)
既に2億年以上の苦痛を味わった工場長は気付いた、今度はこの苦しさが数千万年単位で続けられることに
これまでの絶望をさらに上回ることなど想像していなかった「今が最悪」そこに疑う余地がなかったからだ
あらゆる最悪を想定して回避する工場長が2億年かけてもこんな簡単なことを想像できなくなるくらい苦痛は思考力を奪っていく
既に言葉も少し難しいものをつむぎ出すことは不可能になっている
(あばばばばばばば!!!!おびょびょびょびょびょびょ!!!!)
考えることが難しい、なにも考えられず「感じるだけの肉」となっていった
そのまま数千年が経過し下顎骨(かがくこつ)がローラーに接触したとき身体は全て失われ頭部のみになっていた
頭部は一千万年ほどかけて頭蓋骨と脳をじっくり潰してゆく
(おびょぼぶびゅろりょりょ!!ぼびゅりゅりょぶろるりょ!!!)
粉々に砕かれた頭蓋骨、かつて身体だったボロボロの人皮と骨、そこに付着する磨り潰された肉がコンベアを流れてゆく
コンベアを抜けると轢死体だった・・・
私のお菓子工場は縁切寺さんが工場長となっていた
そうなると私のポジションは一体なにになるのか?
とりあえずワラにもすがる思いで縁切寺さんに事情を話してみた
「なんだと・・・?ここは貴様の工場で過去にいったことで歴史が変わっただと、そんなバカな話信じられるか!」
「本当なんです!おかげで自分が何者かもわからずに工場長としてのアイデンティティーがぐたぐたなのです!助けてください!」
「そう言われてもな・・・貴様はとなりの弁当工場の工場長だろう」
あ、工場長は工場長なのですね、なら細かいことはどうでもいいや
(さすが工場長、適応力高いのです)
コンベアを抜けると○○だった
「工場長、巨人さん弁当のラインが調子悪いんですが」
「そうか、ちょっとコンベアとめて点検してみるから」
「はい止めマース」
弁当工場に勤めて1日、俺は工場長だった
いろいろと細かい違いはあると思うが多分問題ない大切なのは今だ
お菓子が弁当に変わったところでそれは些末なことだ
現に小清水さんも山口さんも水元さんも宇田川さんもこの弁当工場にいるのだ
「小清水さんもうちょっとかかりそうだからしばらく止めておくよう伝えてきて」
「はーいわかりましたー」
いや~よかったよかった本当に、元の世界とほとんど同じですねこれは
信頼する小清水さんもいるしなにも問題ないようです
「うッス!小清水の姉御!どうしたんですかい?」
「おう山口か工場長のヤロウに頼まれごとをされたんだがあのエロ中年低賃金でコキ使いやがって許せねえぜ」
「うッス!小清水の姉御に山口の姉御!なんの話しですかい?」
「おう水元か、工場長のエロ中年が許せねえって話でよ、あのやろういつか地獄のローラーにぶち込んでやるぜ」
「マジッスか!さすが小清水の姉御やることがえげつねえッス!」
「うッス!小清水の姉御に山口の姉御に水元の姉御!なんのお話ですかい?」
「おう宇田川か、小清水の姉御が工場長を地獄のローラーにぶちこむからあんたも協力しな」
「うッス!操作盤の人に伝えてくるッス!」
ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ・・・
「操作盤の人ー、工場長のヤロウを地獄のローラーにぶち込むので準備おなしゃス!」
「はーいわかりましたー」
地獄のローラーとは!!商品規格を満たしていない弁当等をコンベアを通してプレスし廃棄するための機械だ!!
誤って巻き込まれれば命を落とすことから地獄のローラーという俗称で呼ばれていた!!!
「よし、どうやら直ったようですね」
「工場長ちょっと来てもらえますか?」
「おや宇田川さん、どうしましたか?」
「こっちでも機械トラブルが・・・」
「そうですか、わかりましたいきましょう」
工場長が宇田川に着いていった先には地獄のローラーと小清水たちがいた
「よっしゃお前ら!工場長を胴上げだー!」
「おー!」
ワッショイワッショイ!
「ちょ!?いきなりなにするんですか!?」
ワッショイワッショイ!地獄のローラーワッショイ!ゴウンゴウンゴウン・・・
「なんの脈絡もなく地獄のローラーに工場長をかけるとか正気ですかあなたたちは!?」
工場長はいつにもましてなにが起こってるのかわからなかった
パニックに陥ってる間に工場長は既に地獄のローラー行きのコンベアに乗せられていた
「足がローラーに飲まれていくっ!」
鋼鉄製の二本のローラーに足を捕られる・・・その隙間は僅か2センチ
生身の人間が通過すれば全身の骨は砕け数秒で死に至る
工場長の死の秒読みが開始された
足を捕られた工場長を確認すると小清水ら四人はその場を離れた
人間が潰されるむごたらしい場面など見たくはなかったのだろう・・・
(足の骨がっ!砕ける!なんだよこれっ!?なにが起きてるんだよっ!)
メキメキと不気味な音を立てながら工場長の足の骨は砕かれ肉は潰され血しぶきはあちこちに飛び散る
「いってえええええええ!!!いてええよおおお!!!血ぃい!!?血が出てるよ!!」
なぜあいつらは俺にこんなことをした・・・!?信頼していた人間のはずなのに・・・?
「工場長!大変なのです!」
「ラ、ラミエールさん・・・早く・・・助けて!」
「足が潰れて・・・!?回復するのですエンジェル・・・クレイジーダイヤモンドです!」
「おおっ!回復能力!こいつはグレートッスよ!」
が・・・ダメッ!ローラーに挟まれた部分はもどらないっ!
「痛い痛い痛い!結局痛い!」
「回復もダメなのです!ならばっ!」
ラミエールは工場長の手を掴み引っ張る!が、挟まった足を抜くことは不可能だった!!
「一度時間を止めるのです!」
「ローラーが止まっ・・・痛い痛い痛い!結局痛い!早くひっぱりだして!」
「すいません工場長、時間を止めたとはいえ現実には精神を加速させたようなものなので動けないです」
「じゃあどうするんですか!!?」
「考える時間はほぼ無限になるのです」
「そんなこと言っても・・・痛みが止まらないから!」
「ドブゴンさんを呼んでくださいです」
「無理!家においてきたから!」
「まずいのです・・・このままだと打つ手が・・・」
「ならっ足を切り落として!」
「時間を動かせばローラーは動き出すのです・・・その数秒で翼を出して足を切ることは至難の業なのです・・・」
「なんとか助かる方法はねえのかよ!」
「死ぬ前に歪みに入って別世界にいけばもしかしたら命だけは・・・」
「結局運まかせかよ!痛いっ!いたたたたっ!」
「ラミエールは調べてわかったことがあるのです!コンベアの固有振動が偶然コードを発生させて・・・粒子衝突が起こり異世界への歪みを作ったのです」
「いまそんなのどうでもいいから結論を言え!」
「前にも言ったのですが異世界で工場長が死んだ場合、全ての因果の輪から消滅して・・・」
「そんなのどうでもいい!早く助けろ!こっちは痛えんだよっ!!」
「お、落ち着いてくださいです!工場長の存在が無かったことになるのはダメなのです!」
「死んだあとのことなんて知らねえよ!今をどうにかしろって言ってんだ!」
痛みは・・・人の思考を、冷静さを失わせる
今この場でラミエールに罵倒を浴びせることになに一つメリットはない
しかしその当たり前のことも思い浮かばないほどに工場長の判断力は低下していた・・・
「早くしろ!今すぐ助けろ!」
「すいませんです、ラミエールにはどうすることもできないのです・・・」
「ふざけんなこのクソガキが!ふざけんな!殺すぞ!」
「ラミエールもできることならばどうにかしたいのです・・・けどどうしようもないのです」
「このクソガキが!死ね!今すぐ死ね!」
「うぅ・・・ぐぅうう・・・」
ラミエールは涙を流した、頭ではわかっていた工場長は今冷静さを欠いている
激しい痛みにより人格を失っているだけだと
しかし頭と感情は別物であって、ラミエールは優秀な知能と能力はもっていても精神はまだ幼い
激しい怒号、ましてそれまで一緒にいた相手に怒鳴り散らされれば心は傷つく
「なに泣いてんだよ!くそムカツクガキが!」
「うわぁああああ!!うわぁぁあああああんん!!」
押さえていた感情は堰を切ったように流れだし、ラミエールはしゃくりあげて喚いた
「うるせええ!!黙れ!泣き止めろ!できないならどっか行けクソが!!」
その場に居ることに耐えられなくなったラミエールは瞬間、文字通り一瞬で移動した、そこは天界
「うわぁあああああ!うぇぇえええええん!」
大声で泣き喚いていたラミエールだがそれも長くは続かなかった、時間にしてほんの数秒後・・・鳴き声はピタリと止んだ
「っ!?あれ・・・?私・・・なんで泣いてたんだろう・・・??」
ラミエールが消えてからの工場長に遡る、ほんの数秒前の出来事・・・
「あのクソガキ!本当にどっかいきやがった!ちくしょうぶっ殺してやる!」
ラミエールが消えた後も精神の加速は続いていた
無限に続く痛みが工場長を襲う!
「痛えええ!痛ええええ!痛えええええええ!!痛えええええええ!!痛えええええ!!」
ラミエールが消えて数時間、工場長は痛み叫び続けていた
ローラーの位置はまったく動いてない、厳密にはほんの僅か・・・肉眼で確認することは絶対に不可能なくらいのレベルでは動いている、物理的に表現をすることは困難なほど動いていなかった、位置が変化しているという概念でしかない・・・
数時間苦しんでも痛みの終わりは見えることはない
1年経過・・・ローラーは頚骨をすべて粉々に砕き膝蓋骨、ひざの皿に届いた
「別の痛みが来る!?痛ええええ!ちくしょう!!痛ええええよおおお!!」
工場長だけに流れる時間としての1年
さらに痛みの感覚が続く1年ならば体感時間としては10年にも20年にも感じる長さとなる
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
痛みはこの世で最も無慈悲で残酷だ、言い換えれば痛み以外は取るに足らないことなのだ
ヒマだとか退屈だとか寂しいとか悲しいとかダルいとか愛されたいとかそんなことで悩みあがく人間はクズでしかない
死ぬことですら際限なく続く激痛と比べたら救いだ
激しい痛みの前ではどんな人間でも屈服するしかない、普段偉そうに威張ってる人間だろうと誰にでも尊敬される人格者でも世界的宗教のトップでも金持ちも政治家も哲学者も痛みには敵わない、生物は生物というそれだけで不完全なものなのだ
「痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!痛いのはイヤだ!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!!!!!」
工場長は無限に続く痛みをなぜ受けねばならないのか?
因果応報という言葉があるが、もしラミエールに罵倒を浴びせなければ少なくともこれから起こる地獄も回避できたはずだ
しかしそれは工場長が悪いわけではない、痛みで人格が変わることは生物である以上避けられない
工場長は、常に最悪を回避する努力を怠らなかった、にもかかわらず最悪は起きた
つまり、生きるということは圧倒的理不尽なのだ、どう生きようとどう考えようと努力しても人格が優れていても不幸になる奴は不幸になるのだ
「殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」
大腿骨が全て砕かれたときには1億年が経っていた、冗談みたいな年数が経過した頃、工場長は世界を呪った
通常なら人は激しい苦痛に対しそれを止めるためのエンドルフィンなどの鎮痛ホルモンを分泌させる
しかし物質である以上物理法則には逆らうことはできない、脳内で生成されるには時間がかかりすぎた
痛覚を遮断できない無防備な脳にローラーは睾丸と亀頭陰茎と潰しにかかる
「ぎゃああああああああああ!!うがああああああああああ!!」
それまでよりさらに激しい痛みが工場長を蹂躙していく
ギャグマンガやアニメでキンタマを強打し痛がるシーンがあるが
時間をかけて潰される痛みはその比ではなかった
工場長もこれまで股間へのダメージはあったがそれまでの痛みが遊びに思えるほどの激しい痛みが300万年かけて続いた
「殺せええええええええ!!殺せえええええええええええええ!!」
ローラーは大腸を潰し、続いて腎臓、肝臓、胃と約1億年かけて内臓をミンチにしていく
胸骨、脊椎も半分以上失われた・・・しかしそれでも工場長は死ぬことができなかった
2億年苦しみ生かされ気絶することも気が狂うことも叶わない絶対的絶望に追い討ちをかけられる・・・
それは肺を潰されることだった
(呼吸ができない・・・声も出せない)
窒息の苦しさと痛みが同時にやってくる
(苦しい・・・!苦しい・・・!耐えらるはずない!)
言うまでもなく窒息は苦しく恐ろしい・・・通常なら5分で気を失い死に至るが
(これはダメ!ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!)
既に2億年以上の苦痛を味わった工場長は気付いた、今度はこの苦しさが数千万年単位で続けられることに
これまでの絶望をさらに上回ることなど想像していなかった「今が最悪」そこに疑う余地がなかったからだ
あらゆる最悪を想定して回避する工場長が2億年かけてもこんな簡単なことを想像できなくなるくらい苦痛は思考力を奪っていく
既に言葉も少し難しいものをつむぎ出すことは不可能になっている
(あばばばばばばば!!!!おびょびょびょびょびょびょ!!!!)
考えることが難しい、なにも考えられず「感じるだけの肉」となっていった
そのまま数千年が経過し下顎骨(かがくこつ)がローラーに接触したとき身体は全て失われ頭部のみになっていた
頭部は一千万年ほどかけて頭蓋骨と脳をじっくり潰してゆく
(おびょぼぶびゅろりょりょ!!ぼびゅりゅりょぶろるりょ!!!)
粉々に砕かれた頭蓋骨、かつて身体だったボロボロの人皮と骨、そこに付着する磨り潰された肉がコンベアを流れてゆく
コンベアを抜けると轢死体だった・・・
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