工場長だけどベルトコンベアに乗ってたら異世界に着いた

中年の汗はねっとしていて気持ち悪い Aパート

ベルトコンベアーを抜けると○○だった

「工場長、新作お菓子のホワイトヘブンのラインが調子悪いんですが」
「そうか、ちょっとコンベアとめて点検してみるから」
「はい止めマース」

お菓子工場に勤めて25年、俺は工場長になった
今年で46歳になる、よくこういう言い方をするけど
今の年齢言えばいいといっつも思う、「今年で」ってこれいる？
そんなわけで工場長は45歳だ


「ちょっと時間かかりそうだからしばらく止めといてー」
「はーい伝えてきまーす」

信頼するパートの小清水さんに伝達を頼む
もう俺はベルトコンベアーに乗るのはやめようと思う
どうしても必要な場合だけちょこっと乗らなきゃならないときもあるけど
いつ動くかわからないから乗るのは一瞬にするようにしよう
これで安心だ

「あら小清水さんどこにいくの？」
「ちょっと工場長がホワイトヘブンのラインの点検に時間がかかるっていうから
しばらく止めてもらうように操作盤の人に伝えにいくところなの」
「そうなんだ、ところで小清水さん模様替えしたんだって？」
「そうそう、こういうのはのったらやってたらいつまで経っても終わらないから
タイミングを見計らってすぐ動かないとね」
「あーわかるわー、それでいい感じに配置できたら気持ちいいわよねー」
「あら山口さんに小清水さんなんの話？」
「あら水元さん、いま工場長がベルトコンベアに乗っててね、それを伝えに
あと小清水さんが模様替えでね、タイミングを見計らっていい感じに動かしたんだって」
「あら水元さんに山口さんに小清水さんなにやってるの？」
「あら宇田川さん、工場長がベルトコンベアの乗っててね、タイミングを見計らっていい感じに動かすって
なんかそんな話よ」
「そうなんだー」
ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ

「操作盤の人ー工場長がベルトコンベアに乗ったらタイミングを見計らっていい感じに動かしてー」
「はーいわかりましたー」

（うーむ、これはコンベアに乗っからないとよくわからないな・・・仕方ない一瞬だけ乗っかってすぐ降りよう
これならばそうとうなタイミングで動き出さない限りは大丈夫だろう）

よっ！と小声を漏らしながら工場長はコンベアに乗っかった
「工場長が乗っかった今だ！」
操作盤の人がコンベアを動かした

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・
「工場長が乗った瞬間に動いたよ！どんなタイミングなの！？」

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・
「まずい・・・すぐに降りようという心構えが裏目に出た！焦ってバランスを崩してしまった！」

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・ぐつぐつ
「そしてその先にはぐつぐつと煮えたぎった油の風呂が！工場長このままだとカラっとキツネ色になってしまう！
ただでさえギトギトに脂ぎった中年なのに！しかし考えようによってはカラっとキツネ色になったほうが
ギトギトするよりはさっくさくの中年として若者を中心にブームになるかもしれない！」

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・ぐつぐつ・・・
「よしここは覚悟を決めてさくさく中年工場長としてTikTokとかそういうので有名になろう！」

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・ぐつぐつ・・・ドボン！
「熱っ！煮えたぎった油が熱すぎる！これ死ぬやつ！今度こそ工場長死んじゃうよっ！」

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・ぼてっ！
「はぁ・・・はぁ・・・ひどい目に会いました・・・これまでならどっか違う場所に来てセースなはずなんですが
きつね色のさくさく中年工場長になってるじゃないですか・・・」

「ようこそ工場長」
「え？もしかしてまた別の場所に飛ばされたんですか？どこですかここは？」
「ここは天国です」

ベルトコンベアーを抜けると天国だった・・・