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ソフィの妊娠
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女性二人が花を摘んで戻って来た。
久しぶりにソフィがリラックスした顔をしている。やはり、ここに来たのは正解だ。このまま気持ちがほぐれてくれたら、と祈るような気持ちで居た。
サイラスは友人のそんな様子を見ながら、嫁姑の問題だろうか、と想像していた。
ローラが、はい、プレゼントよ、と言いながら花束をサイラスに渡し、そして、ソフィを振り返る。
ソフィは、花束をもったまま、既に椅子に座っている。
「花束をアトレーにあげないの?」
その様子を見て不思議そうに尋ねた。
「王太子妃様、ありがとうございます。でも、ソフィの好きなようにさせて置いてください」
アトレーがローラの気遣いに感謝の言葉を述べるのを、ソフィはぼんやり見ているだけで、何も言わない。
その後、なんとなく白けた空気が漂い、ソフィ以外の三人は居心地が悪かった。
アトレーとソフィが帰って行った後で、二人は今日の事について話し合った。
ローラは彼女がアトレーの事を一言も話さなかったと言った。
アトレーの話題を出しても、全くの無関心で、まるで、遠くの国の今日の天気を聞いているようだったわ、と不思議なたとえをしたが、意味は伝わる。それほど無関心だったということだ。
二カ月前の彼女からは考えられない態度だ。
そしてもう一つ、気付いた事があった。帰宅する時にエスコートの手を出したアトレーを無視し、アトレーも、無視されるのをわかっているような雰囲気だった。
「結婚したばかりだけど、うまくいっていないみたいね」
「ストレスだそうだよ。なんのストレスかな」
「アトレーが嫌なんじゃないの?」
「まさか。そんなこと……」
「あると思うわ。私とあなたとアトレーの三人で、彼の方だけ一切見なかったもの。それよりも、あの半分眠っているような反応の薄さが気になるわ。彼女はちゃんと正気なのかしら」
友よ、いったい何があったんだ、王太子は心の中で呼びかけた。
同じような一カ月が過ぎた後、ソフィの妊娠が判明した。
これできっと、元に戻るだろうと屋敷中の者達が思い、喜んだ。しかしソフィはそれにも無関心だった。
何にも関心を示さず、ぼんやりと過ごし、アトレーとはほとんど関わらずに過ごした。
なにせ妊娠しているので、母体に負担を掛けてはいけないと医師から言い渡されている。ストレス源であるアトレーは接近を禁止されてしまった。
妊娠が分かって、ランス伯爵家の両親が大喜びでお祝いにやって来た。
そしてソフィの様子を見てショックを受けた。まさか、こんな状態になっているとは思ってもいなかったのだ。
手紙が来ないな、とは思っていたが、慣れるまでは色々と余裕がないだろうと思い、連絡が来るまで静観していたのだ。
あんなに好きだったアトレーを見るのも嫌になり、しかも豊かだったはずの感情が希薄になってしまっている。
自分たちの知らない娘と対している気分だった。
いったい何があったのか、と聞いても、ゲート伯爵家の人達もわからないと言う。
こんな事なら、変な遠慮などせず、どんどん押しかけて来ればよかった。
結婚式の前から思い返してみて、結婚式の日の様子が変だったのを、母親が思い出した。
妙にぼんやりしていて、疲れているのかと思ったが、それよりも今の状態に似ている。
まさか、その時から既に、こうなっていたのだろうか。
結婚式でも、笑顔が全く見られなくて心配していたのだ。珍しく緊張しているのかしらと思って、そう深く考えなかったけれど、今思うとおかしい。
あんなに楽しみにしていた結婚式なのに、前の日からずっと上の空だった。
何があったのかはわからないが、何かひどくショックを受けることがあったのだろう。
今は子供が産まれるのを待つしかない。子供が産まれれば、この状況から抜け出せるかもしれない。皆がそう期待していた。
久しぶりにソフィがリラックスした顔をしている。やはり、ここに来たのは正解だ。このまま気持ちがほぐれてくれたら、と祈るような気持ちで居た。
サイラスは友人のそんな様子を見ながら、嫁姑の問題だろうか、と想像していた。
ローラが、はい、プレゼントよ、と言いながら花束をサイラスに渡し、そして、ソフィを振り返る。
ソフィは、花束をもったまま、既に椅子に座っている。
「花束をアトレーにあげないの?」
その様子を見て不思議そうに尋ねた。
「王太子妃様、ありがとうございます。でも、ソフィの好きなようにさせて置いてください」
アトレーがローラの気遣いに感謝の言葉を述べるのを、ソフィはぼんやり見ているだけで、何も言わない。
その後、なんとなく白けた空気が漂い、ソフィ以外の三人は居心地が悪かった。
アトレーとソフィが帰って行った後で、二人は今日の事について話し合った。
ローラは彼女がアトレーの事を一言も話さなかったと言った。
アトレーの話題を出しても、全くの無関心で、まるで、遠くの国の今日の天気を聞いているようだったわ、と不思議なたとえをしたが、意味は伝わる。それほど無関心だったということだ。
二カ月前の彼女からは考えられない態度だ。
そしてもう一つ、気付いた事があった。帰宅する時にエスコートの手を出したアトレーを無視し、アトレーも、無視されるのをわかっているような雰囲気だった。
「結婚したばかりだけど、うまくいっていないみたいね」
「ストレスだそうだよ。なんのストレスかな」
「アトレーが嫌なんじゃないの?」
「まさか。そんなこと……」
「あると思うわ。私とあなたとアトレーの三人で、彼の方だけ一切見なかったもの。それよりも、あの半分眠っているような反応の薄さが気になるわ。彼女はちゃんと正気なのかしら」
友よ、いったい何があったんだ、王太子は心の中で呼びかけた。
同じような一カ月が過ぎた後、ソフィの妊娠が判明した。
これできっと、元に戻るだろうと屋敷中の者達が思い、喜んだ。しかしソフィはそれにも無関心だった。
何にも関心を示さず、ぼんやりと過ごし、アトレーとはほとんど関わらずに過ごした。
なにせ妊娠しているので、母体に負担を掛けてはいけないと医師から言い渡されている。ストレス源であるアトレーは接近を禁止されてしまった。
妊娠が分かって、ランス伯爵家の両親が大喜びでお祝いにやって来た。
そしてソフィの様子を見てショックを受けた。まさか、こんな状態になっているとは思ってもいなかったのだ。
手紙が来ないな、とは思っていたが、慣れるまでは色々と余裕がないだろうと思い、連絡が来るまで静観していたのだ。
あんなに好きだったアトレーを見るのも嫌になり、しかも豊かだったはずの感情が希薄になってしまっている。
自分たちの知らない娘と対している気分だった。
いったい何があったのか、と聞いても、ゲート伯爵家の人達もわからないと言う。
こんな事なら、変な遠慮などせず、どんどん押しかけて来ればよかった。
結婚式の前から思い返してみて、結婚式の日の様子が変だったのを、母親が思い出した。
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まさか、その時から既に、こうなっていたのだろうか。
結婚式でも、笑顔が全く見られなくて心配していたのだ。珍しく緊張しているのかしらと思って、そう深く考えなかったけれど、今思うとおかしい。
あんなに楽しみにしていた結婚式なのに、前の日からずっと上の空だった。
何があったのかはわからないが、何かひどくショックを受けることがあったのだろう。
今は子供が産まれるのを待つしかない。子供が産まれれば、この状況から抜け出せるかもしれない。皆がそう期待していた。
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