2 / 30
結婚初日の違和感
しおりを挟む
いつの間にかアトレーの邸にいて、私は夜着に着替え、一人になっていた。
今まで何をしていたのか覚えていなかったが、今から何をするのか思い出した。
逃げようと思いドアに向かったところで、アトレーと鉢合わせてしまった。
「待ちくたびれたかい。ソフィ。
遅くなってごめんね。悪友達がなかなか離してくれなくて。皆、君が綺麗だからやっかんでいるんだ。困った奴らだよ」
そう言いながら私を抱き上げ、ベッドに運んだ。
逃げようとしたが、軽く転がされ、のしかかられた。
アトレーは笑っていた。おととい見た姉との姿が頭に浮かび、叫びそうになったが、その口も塞がれてしまった。
体を這う手が気持ち悪く、泣いて抗おうとする私を弄ぶようにアトレーが勝手な事をする。
やっと終わったようでホッとしたら、また手を伸ばしてきたので、逃げようとしたら、強く引っ張られた。その内、眠ったか、気絶したらしい。気が付いたら朝になっていた。
朝遅くなってから、侍女がやって来て、身じまいを整え、朝食を持って来てくれた。
以前から仲良くしている侍女で、探るように私を見ている。
何も言う気が起らず、黙って出されたものをつついた。お茶だけをいっぱい飲んで、ずっとカップを見つめていた。
「ソフィ様、お茶のお代わりをお持ちしましょうか?」
「ありがとう。お願いするわ」
「アトレー様は王宮からの呼び出しがあり、朝早くにお出かけになっています」
ソフィは無言だった。アトレー様の話になると、いつも嬉しそうに話をしたがるのに、何も言わないのはおかしい。いぶかしく思いながら続けた。
「今夜のディナーはお祝いです。早目に着替えていただきますので、夕方にお伺いしますね」
「ありがとう。お願いするわ」
侍女のベスは、淡々と言うソフィの様子に違和感を覚えたが、疲れているのだろうと思い、そっと部屋を後にした。
他の使用人達から、どんな様子だったと聞かれたので、疲れてるようで、ちょっとぼんやりしている感じだったわ、と答えた。
皆、キャー激しかったのね、と喜んでいた。ベスは少し違和感を覚えていたが、いつもは快活な方だけど、やはりこういう時は疲れがたまるものなのか、と思っただけだった。
少ししてお茶を持っていき、夕方にまたお伺いします、と言ったらまた同じ言葉が返って来た。
「ありがとう。お願いするわ」
ちょっと気になり、言葉を添えた。
「何かしてほしい事がありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
すると、ベスが居るのに初めて気が付いたような顔をした。
「私、家に帰るわ」
「ソフィ様、どうかしたのですか。落ち着いてください。昨日から、ここがあなたの家です」
「ああ、そうだったわね。私、結婚したのだったわ」
「ええ、昨日が結婚式で、お二人共とても素敵で、幸せそうでしたわ」
ソフィが、目を見張ってベスの顔を見た。その目から、また光が消えた。
「ありがとう。お願いするわ」
なんだか怖い気がして、ベスは早々に部屋から退出した。
夕方になってベスが部屋を訪れると、ソフィはカップを持ったままぼうっとしていた。
「お支度を始めさせていただきますね」
声を掛けると、それなりに動いて反応するが、どうにもその反応が薄い。いつものソフィとは全く違う人間のようだった。結婚したばかりで疲れているとはいえ、これはおかしすぎた。
ベスは努めて明るい口調で話し掛けた。
「昨晩は、以前から用意していたナイトウエアのどちらを着たのですか?」
「ナイトウエア?」
「以前見せてくださったじゃありませんか。一日目にどっちを着るか、一緒に考えましたよね」
「さあ。何か着ていたと思うわ。ありがとう」
本当に、何かがおかしかった。べスは急いで支度を仕上げ、部屋を後にした。
今まで何をしていたのか覚えていなかったが、今から何をするのか思い出した。
逃げようと思いドアに向かったところで、アトレーと鉢合わせてしまった。
「待ちくたびれたかい。ソフィ。
遅くなってごめんね。悪友達がなかなか離してくれなくて。皆、君が綺麗だからやっかんでいるんだ。困った奴らだよ」
そう言いながら私を抱き上げ、ベッドに運んだ。
逃げようとしたが、軽く転がされ、のしかかられた。
アトレーは笑っていた。おととい見た姉との姿が頭に浮かび、叫びそうになったが、その口も塞がれてしまった。
体を這う手が気持ち悪く、泣いて抗おうとする私を弄ぶようにアトレーが勝手な事をする。
やっと終わったようでホッとしたら、また手を伸ばしてきたので、逃げようとしたら、強く引っ張られた。その内、眠ったか、気絶したらしい。気が付いたら朝になっていた。
朝遅くなってから、侍女がやって来て、身じまいを整え、朝食を持って来てくれた。
以前から仲良くしている侍女で、探るように私を見ている。
何も言う気が起らず、黙って出されたものをつついた。お茶だけをいっぱい飲んで、ずっとカップを見つめていた。
「ソフィ様、お茶のお代わりをお持ちしましょうか?」
「ありがとう。お願いするわ」
「アトレー様は王宮からの呼び出しがあり、朝早くにお出かけになっています」
ソフィは無言だった。アトレー様の話になると、いつも嬉しそうに話をしたがるのに、何も言わないのはおかしい。いぶかしく思いながら続けた。
「今夜のディナーはお祝いです。早目に着替えていただきますので、夕方にお伺いしますね」
「ありがとう。お願いするわ」
侍女のベスは、淡々と言うソフィの様子に違和感を覚えたが、疲れているのだろうと思い、そっと部屋を後にした。
他の使用人達から、どんな様子だったと聞かれたので、疲れてるようで、ちょっとぼんやりしている感じだったわ、と答えた。
皆、キャー激しかったのね、と喜んでいた。ベスは少し違和感を覚えていたが、いつもは快活な方だけど、やはりこういう時は疲れがたまるものなのか、と思っただけだった。
少ししてお茶を持っていき、夕方にまたお伺いします、と言ったらまた同じ言葉が返って来た。
「ありがとう。お願いするわ」
ちょっと気になり、言葉を添えた。
「何かしてほしい事がありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
すると、ベスが居るのに初めて気が付いたような顔をした。
「私、家に帰るわ」
「ソフィ様、どうかしたのですか。落ち着いてください。昨日から、ここがあなたの家です」
「ああ、そうだったわね。私、結婚したのだったわ」
「ええ、昨日が結婚式で、お二人共とても素敵で、幸せそうでしたわ」
ソフィが、目を見張ってベスの顔を見た。その目から、また光が消えた。
「ありがとう。お願いするわ」
なんだか怖い気がして、ベスは早々に部屋から退出した。
夕方になってベスが部屋を訪れると、ソフィはカップを持ったままぼうっとしていた。
「お支度を始めさせていただきますね」
声を掛けると、それなりに動いて反応するが、どうにもその反応が薄い。いつものソフィとは全く違う人間のようだった。結婚したばかりで疲れているとはいえ、これはおかしすぎた。
ベスは努めて明るい口調で話し掛けた。
「昨晩は、以前から用意していたナイトウエアのどちらを着たのですか?」
「ナイトウエア?」
「以前見せてくださったじゃありませんか。一日目にどっちを着るか、一緒に考えましたよね」
「さあ。何か着ていたと思うわ。ありがとう」
本当に、何かがおかしかった。べスは急いで支度を仕上げ、部屋を後にした。
1,218
お気に入りに追加
5,524
あなたにおすすめの小説
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました
榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。
私と旦那様は結婚して4年目になります。
可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。
でも旦那様は.........
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
目が覚めました 〜奪われた婚約者はきっぱりと捨てました〜
鬱沢色素
恋愛
侯爵令嬢のディアナは学園でのパーティーで、婚約者フリッツの浮気現場を目撃してしまう。
今まで「他の男が君に寄りつかないように」とフリッツに言われ、地味な格好をしてきた。でも、もう目が覚めた。
さようなら。かつて好きだった人。よりを戻そうと言われても今更もう遅い。
ディアナはフリッツと婚約破棄し、好き勝手に生きることにした。
するとアロイス第一王子から婚約の申し出が舞い込み……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる