16 / 18
幽霊でも…。
幽霊になっても
しおりを挟む
どうやら、死んでしまったらしい…。
誰もいない夜の公園で、立ち尽くす女の人。長い柱の上で灯る街頭は、女をぼんやりと照らしていた。
「あぁ。おわってしまった。」
最近、楽しみが見つかり生きる意味を見出していた女は、人生の終了に悲観していた。
女は、仕事もぼちぼちで真面目に生きていた。貯金もして、結婚はしていなかったが好きな人が出来ていた。相手の自分を好きだという熱い眼差しは、今でも忘れられなかった。
すべてが順調だった。が、燃えるアパートに取り残されて亡くなった。その不規則な動きをする炎は、印象的だった。
「あぁ、どうしよう」
女は先の事を考えていた。死んだ事はしょうがない。しかし、これからどうしようか。天国への扉も今の所、開いていない。女は、思い出のあるこの街の中にいる。
とりあえず歩く事にした。公園に居ても仕方がないからだ。人のいる駅の方へ行こうか、そんな事を考えながら歩いていた。
見慣れた風景は、今となっては別の世界だった。風が吹いても感じる事はなく、落ちているゴミすら蹴ることができない。通り過ぎていく人の眼は、無関心そのものだった。
街頭が増え、店もたくさんある場所に来た。明るいその場所では、人は騒がしく動いていた。
「あぁ、この店。好きだったなあ。」
酒を呑みすぎて、怒られた場所。悲しく一人で呑んだ場所。それぞれの店を、独り言で思い出を語っていた。
「…。これ初めて見るなぁ。」
都会の真ん中で、一つ見たことのない店があった。比較的小さく、古そうだった。外にあるランプの火は、橙色でゆらゆらと揺れていた。
「なんだか、変わった店だな。ちょっと入ってみよ。」
その店は、人は全く寄り付かない雰囲気だった。もし生きていたら、こんな店は評価を調べる前に別の所へ行くだろう。
しかし幽霊なので、人の目を気にせず勝手に入ってみようと思った。気になったからだ。
「あれ?おかしい。」
壁を通り抜ける事が出来なかった。仕方なく、手で開ける事にした。
「いらっしゃいませ。」
ドアがキーと音を立てて開けられると、女店主と思われる人が出てきた。
「誰のこと?」
周りを見ると誰一人お客はいなかった。もちろん入ってくる人もいない。女を除いて…。
「あなた、亡くなった方ですよね?」
「あ、ハイ。そうです。」
~驚いた。幽霊を見る事のできる人がこの世にいるとは、思わなかった。
「ぜひ、あなたに食べてもらいたい物があります。ここへどうぞ。」
丁寧な喋りで、女をカウンター席へと誘導した。女は、そのまま黙って座った。
「幽霊でも、食べれます?」
「ええ。もちろん。私は、未来を予知する料理を作ります。」
「未来?」
人生が終わった女の人にとって未来などなかった。しかし、
「まだあります。あなたは死んでも、やることが残っています。」
「やること?わかりました。その料理食べてみます。」
「ありがとうございます。」
女店主は深々と頭を下げ、テーブルに水を置いた。不思議にそのコップも手に持つことができた。
厨房へと戻った店主は、金属の音を立てながら料理を作った。
「あぁ、そうか。死んだのか。」
まだ納得がいかない様子だった。そのため、まだこの世に魂が残っているのだろう、とも考えた。
「人生楽しかったですか?」
厨房からそう、質問が飛んできた。それに女は、
「はい、とても。特に趣味も最近見つかって。もっと生きていたかった。」
「…。そうですか。それは何よりです。」
そう答え、無言の空間となってしまった。
誰もいない夜の公園で、立ち尽くす女の人。長い柱の上で灯る街頭は、女をぼんやりと照らしていた。
「あぁ。おわってしまった。」
最近、楽しみが見つかり生きる意味を見出していた女は、人生の終了に悲観していた。
女は、仕事もぼちぼちで真面目に生きていた。貯金もして、結婚はしていなかったが好きな人が出来ていた。相手の自分を好きだという熱い眼差しは、今でも忘れられなかった。
すべてが順調だった。が、燃えるアパートに取り残されて亡くなった。その不規則な動きをする炎は、印象的だった。
「あぁ、どうしよう」
女は先の事を考えていた。死んだ事はしょうがない。しかし、これからどうしようか。天国への扉も今の所、開いていない。女は、思い出のあるこの街の中にいる。
とりあえず歩く事にした。公園に居ても仕方がないからだ。人のいる駅の方へ行こうか、そんな事を考えながら歩いていた。
見慣れた風景は、今となっては別の世界だった。風が吹いても感じる事はなく、落ちているゴミすら蹴ることができない。通り過ぎていく人の眼は、無関心そのものだった。
街頭が増え、店もたくさんある場所に来た。明るいその場所では、人は騒がしく動いていた。
「あぁ、この店。好きだったなあ。」
酒を呑みすぎて、怒られた場所。悲しく一人で呑んだ場所。それぞれの店を、独り言で思い出を語っていた。
「…。これ初めて見るなぁ。」
都会の真ん中で、一つ見たことのない店があった。比較的小さく、古そうだった。外にあるランプの火は、橙色でゆらゆらと揺れていた。
「なんだか、変わった店だな。ちょっと入ってみよ。」
その店は、人は全く寄り付かない雰囲気だった。もし生きていたら、こんな店は評価を調べる前に別の所へ行くだろう。
しかし幽霊なので、人の目を気にせず勝手に入ってみようと思った。気になったからだ。
「あれ?おかしい。」
壁を通り抜ける事が出来なかった。仕方なく、手で開ける事にした。
「いらっしゃいませ。」
ドアがキーと音を立てて開けられると、女店主と思われる人が出てきた。
「誰のこと?」
周りを見ると誰一人お客はいなかった。もちろん入ってくる人もいない。女を除いて…。
「あなた、亡くなった方ですよね?」
「あ、ハイ。そうです。」
~驚いた。幽霊を見る事のできる人がこの世にいるとは、思わなかった。
「ぜひ、あなたに食べてもらいたい物があります。ここへどうぞ。」
丁寧な喋りで、女をカウンター席へと誘導した。女は、そのまま黙って座った。
「幽霊でも、食べれます?」
「ええ。もちろん。私は、未来を予知する料理を作ります。」
「未来?」
人生が終わった女の人にとって未来などなかった。しかし、
「まだあります。あなたは死んでも、やることが残っています。」
「やること?わかりました。その料理食べてみます。」
「ありがとうございます。」
女店主は深々と頭を下げ、テーブルに水を置いた。不思議にそのコップも手に持つことができた。
厨房へと戻った店主は、金属の音を立てながら料理を作った。
「あぁ、そうか。死んだのか。」
まだ納得がいかない様子だった。そのため、まだこの世に魂が残っているのだろう、とも考えた。
「人生楽しかったですか?」
厨房からそう、質問が飛んできた。それに女は、
「はい、とても。特に趣味も最近見つかって。もっと生きていたかった。」
「…。そうですか。それは何よりです。」
そう答え、無言の空間となってしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
霊能者、はじめます!
島崎 紗都子
児童書・童話
小学六年生の神埜菜月(こうのなつき)は、ひょんなことから同じクラスで学校一のイケメン鴻巣翔流(こうのすかける)が、霊が視えて祓えて成仏させることができる霊能者だと知る。
最初は冷たい性格の翔流を嫌う菜月であったが、少しずつ翔流の優しさを知り次第に親しくなっていく。だが、翔流と親しくなった途端、菜月の周りで不可思議なことが起こるように。さらに翔流の能力の影響を受け菜月も視える体質に…!
ひみつを食べる子ども・チャック
山口かずなり
児童書・童話
チャックくんは、ひみつが だいすきな ぽっちゃりとした子ども
きょうも おとなたちのひみつを りようして やりたいほうだい
だけど、ちょうしにのってると
おとなに こらしめられるかも…
さぁ チャックくんの運命は いかに!
ー
(不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください)
下記は物語を読み終わってから、お読みください。
↓
彼のラストは、読者さまの読み方次第で変化します。
あなたの読んだチャックは、しあわせでしたか?
それとも不幸?
本当のあなたに会えるかもしれませんね。
クリスマスまでに帰らなきゃ! -トナカイの冒険-
藤井咲
児童書・童話
一年中夏のハロー島でバカンス中のトナカイのルー。
すると、漁師さんが慌てた様子で駆け寄ってきます。
なんとルーの雪島は既にクリスマスが目前だったのです!
10日間で自分の島に戻らなければならないルーは、無事雪島にたどり着けるのでしょうか?
そして、クリスマスに間に合うのでしょうか?
旅の途中で様々な動物たちと出会い、ルーは世界の大きさを知ることになります。
児童小説をどうぞ
小木田十(おぎたみつる)
児童書・童話
児童小説のコーナーです。大人も楽しめるよ。 / 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。
夜更かしな天使さま
雨宮大智
児童書・童話
冬のある晩、十才の少年シンクの元を天使さまが訪れました。その日から、シンクは天使さまと語らうようになったのです。「お休みなさい、天使さま」「お休み、シンク」眠りのベッドの中で語られる、シンクと天使さまの心温まるファンタジー。
ヒミツのJC歌姫の新作お菓子実食レビュー
弓屋 晶都
児童書・童話
顔出しNGで動画投稿活動をしている中学一年生のアキとミモザ、
動画の再生回数がどんどん伸びる中、二人の正体を探る人物の影が……。
果たして二人は身バレしないで卒業できるのか……?
走って歌ってまた走る、元気はつらつ少女のアキと、
悩んだり立ち止まったりしながらも、健気に頑張るミモザの、
イマドキ中学生のドキドキネットライフ。
男子は、甘く優しい低音イケボの生徒会長や、
イケメン長身なのに女子力高めの苦労性な長髪書記に、
どこからどう見ても怪しいメガネの放送部長が出てきます。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
「 Little Ballerina 」
egakukokoro
児童書・童話
電車の通勤の際に小さなやさしさにふれた体験を振り返り
ほっこり、じんわりした体験でしたので今回、執筆を試みました。
常日頃、日常生活を送る傍ら「助け合う」事から、離れてしまう今日この頃だとだと思いますが、
又、今はこういう時期ではありますが、束の間の間だけでも心にそっとやさしい灯火が灯りましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる