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エピソード 失われた記憶

初めの

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「さあ、いよいよ開店です。」
 今は潰れてしまったレストラン、[未来予兆]が開店した時だった。その主人は、最近ではあまりみない、いつも明るく誰に対しても感じが良かった人だった。
 だが主人の妻はというと、暗く、他人がとても好きではない性格の人だった。唯一、心を許せる人は、主人だけだった。
 だから、妻はいつもキッチンで料理を作るだけで、その料理は主人が運ぶ事が多かった。もちろん、主人も料理の手伝いもする。
 主人の感じが良かったため、常連客が多くいるほどだった。
 さて、この妻は主人の誕生日に、家(アパートの2階に住んでいた)あるランプをプレゼントした。このランプは、中に火をつけると、優しい明かりが灯る物であった。
 この素敵なプレゼントに感激した主人は、その夜の夕食のあとに、そのランプに火をつけた。
 そこにはランプを見守る、二人の姿があった。
 すると、ドアの方から「ピンポン」と音が立つのを聞いた。宅配の人であった。妻は、ある封筒を渡された。
 主人は、
「それは、私から。お前にとって、大切な物だ。私がいない時に見てくれないか。」
 主人はそう言って、またランプに目をやった。その目は、優しかった。微笑んでいた。いつもお客様に見せる顔ではなく、それよりも、愛情がこもっていたようだった。
 その時は夏だったことから、窓を開けておいた。しかし、その窓から、ものすごい風が吹いた。ランプはすぐに倒れ、ランプのドアが開き、すぐにカーテンに火が燃え広がった。外からは、火が燃えているのを見る事ができたが、運悪く誰も通っていなかった。
 主人はすぐに立つことができなかった。近くの酒が倒れ、中からアルコールがこぼれた。そこにも引火した。主人は、
「俺がいなくなっても、楽しく生きろ!」
力強い声を発した。
 外にある、ガスタンクにも引火してしまい、アパートのなかは一瞬で赤い光でいっぱいになった。と思うと、ドンと花火から聞こえるような音が聞こえた。大きな音だったが、妻は主人が巻き込まれた事に唖然としていた。
 妻は、宅配の人に連れられて外に出ていたため、助かった。
 妻は、燃えなかった金庫の中にあった通帳と残った主人からの手紙を持っていた。通帳は、主人が残した財産が多くあった。
 手紙には、
「俺がいなくなっても、人と仲良くな。レストランは俺のぶんも続けてくれないかな。その分、お金を君の為に貯めておいた。
 でも、するかしないかはお前に任せる。ただ、後悔と諦めはしないでくれよ。人生を楽しめ。」
 と太い、黒いペンで書かれていた。
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