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新しい世界で
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「竹田、似合うよそれ。」
軽い服装で、出てきた竹田はありがとう、と一言。
「男の人が来ている服は、重たそう。」
まやは私にそう囁いてきた。
「あなた達の服は、こちらで洗って、干しておく。その服で当分過ごしなさい。それに、元の時代に帰れるまでいつまでもいてもいい。」
男はニコリと微笑んだ。
私は、本当に嬉しかった。家はあるが、そこで過ごすのは心配だったからだ。食べ物が底をついてしまったり、この時代の人にバレてしまったりすることはない。
あ…。
「竹田の家、どうする?あそこ、バレるんじゃ。」
「そうだ。荒らされたら、お母さんに怒られる。」
「あの山になにかあるのか?」
男はそう尋ねてきた。
「僕たちが一緒に来た物が…。」
「分かった。私達が、山を守る。誰も近づけさせないようにしておく。心配するな。」
男は、本当に優しかった。
「君ら、名前は?」
「私は、まや」
「僕は竹田雄馬です。」
「私は、ひなです。」
「そうか。何かあったら、他の者に聞きなさい。それと、私の息子と娘だ。」
そう言うと廊下から、先程まやから箱を受け取った女の子と、もう一人中学生くらいの男の子が立っていた。男の子は、女の子をかばうように立っていた。
「オカノカミと申す。こっちはハナだ。」
女の子は小さくうなずいただけだったが、おかのかみは私達に対して興味を示してくれていた。
共に暮らしていく仲間として、私達の名前を言った。
平安時代は古典でしかよく知らない。何が起こるのかこの時、全く想像がつかなかった。
私達は、部屋を一部屋用意されそこで寝泊まりすることになった。三人で一部屋。その部屋しかなく、同学年の男と泊まるのは気がひける。が、泊まらせてもらっているだけで幸運だった。文句は言えない。
するとそこに、おかのかみとはなが来たのだった。
「お返し。」
はなは、そう言ってまやに渡したのは、小さな石を集めたブレスレットだった。手作りらしく、少し不器用な結び目だったが、愛を感じた。
「ありがとう。」
まやは嬉しそうだった。
「ねぇ、君達の世界の事詳しく話して。よく知りたいんだ。」
「え?いいのかな。未来変わったりとか。」
「伝えるだけならいいんじゃない?」
まやは呑気そうに言う。
「大丈夫だと思う。」
竹田のその言葉で、私は伝えることにした。
「なるほど。まるで妖かしだな。信じられない。」
私達の文明について、大体話した。信じられない気持ちは分かる。
「もうそろそろ夜だ。急がないと。」
二人は、そそくさと立ち去ろうとした。
「何するの?」
まやはそう聞いた。外は暗くなってきており、火の燃える匂いがこちらまでくる。
「夜は、化け物が通る。」
そう一言。私は、夜のひんやりとした風が頬をなでた。思わず身震いをした。
「バケモノ…。」
「そうだ。門を閉め、火を一晩中焚き、父上を守らなきゃならない。」
「大丈夫かな。」
私達は、怖くなった。
「では、。」
そう言うと、二人は出ていってしまった。
「ただの噂だよ。そんな事実ないよ。」
「でも、化け物の話は、今でも伝わっている。付喪神の集団、百鬼夜行とか。」
「早く寝よう。」
まやは、布団を敷き、先に横になってしまった。まだ、夕ご飯は食べてないのに。
「お待たせして申し訳ない。」
お手伝いさんが、四角いお盆に乗せて、夕ご飯を持ってきてくれた。初めて食べる、純粋な和食。米や魚、野菜。どれもシンプルな味付けだったが、悪くはなかった。
これを毎日、おかのかみやはなは食べていると思うと、偉く感じる。現代(今)を生きる私達は、美味しさを求め過ぎ、好き嫌いを決めている。それが醜く感じた。
「まや、食べないの?」
「いらない。」
まやは、まだ寝ている。彼女は小刻みに揺れていた。
私は、布団の中にそっと手を入れ、白い手を握った。色々、不安があるのだろう。夏だというのに、冷たかった。
軽い服装で、出てきた竹田はありがとう、と一言。
「男の人が来ている服は、重たそう。」
まやは私にそう囁いてきた。
「あなた達の服は、こちらで洗って、干しておく。その服で当分過ごしなさい。それに、元の時代に帰れるまでいつまでもいてもいい。」
男はニコリと微笑んだ。
私は、本当に嬉しかった。家はあるが、そこで過ごすのは心配だったからだ。食べ物が底をついてしまったり、この時代の人にバレてしまったりすることはない。
あ…。
「竹田の家、どうする?あそこ、バレるんじゃ。」
「そうだ。荒らされたら、お母さんに怒られる。」
「あの山になにかあるのか?」
男はそう尋ねてきた。
「僕たちが一緒に来た物が…。」
「分かった。私達が、山を守る。誰も近づけさせないようにしておく。心配するな。」
男は、本当に優しかった。
「君ら、名前は?」
「私は、まや」
「僕は竹田雄馬です。」
「私は、ひなです。」
「そうか。何かあったら、他の者に聞きなさい。それと、私の息子と娘だ。」
そう言うと廊下から、先程まやから箱を受け取った女の子と、もう一人中学生くらいの男の子が立っていた。男の子は、女の子をかばうように立っていた。
「オカノカミと申す。こっちはハナだ。」
女の子は小さくうなずいただけだったが、おかのかみは私達に対して興味を示してくれていた。
共に暮らしていく仲間として、私達の名前を言った。
平安時代は古典でしかよく知らない。何が起こるのかこの時、全く想像がつかなかった。
私達は、部屋を一部屋用意されそこで寝泊まりすることになった。三人で一部屋。その部屋しかなく、同学年の男と泊まるのは気がひける。が、泊まらせてもらっているだけで幸運だった。文句は言えない。
するとそこに、おかのかみとはなが来たのだった。
「お返し。」
はなは、そう言ってまやに渡したのは、小さな石を集めたブレスレットだった。手作りらしく、少し不器用な結び目だったが、愛を感じた。
「ありがとう。」
まやは嬉しそうだった。
「ねぇ、君達の世界の事詳しく話して。よく知りたいんだ。」
「え?いいのかな。未来変わったりとか。」
「伝えるだけならいいんじゃない?」
まやは呑気そうに言う。
「大丈夫だと思う。」
竹田のその言葉で、私は伝えることにした。
「なるほど。まるで妖かしだな。信じられない。」
私達の文明について、大体話した。信じられない気持ちは分かる。
「もうそろそろ夜だ。急がないと。」
二人は、そそくさと立ち去ろうとした。
「何するの?」
まやはそう聞いた。外は暗くなってきており、火の燃える匂いがこちらまでくる。
「夜は、化け物が通る。」
そう一言。私は、夜のひんやりとした風が頬をなでた。思わず身震いをした。
「バケモノ…。」
「そうだ。門を閉め、火を一晩中焚き、父上を守らなきゃならない。」
「大丈夫かな。」
私達は、怖くなった。
「では、。」
そう言うと、二人は出ていってしまった。
「ただの噂だよ。そんな事実ないよ。」
「でも、化け物の話は、今でも伝わっている。付喪神の集団、百鬼夜行とか。」
「早く寝よう。」
まやは、布団を敷き、先に横になってしまった。まだ、夕ご飯は食べてないのに。
「お待たせして申し訳ない。」
お手伝いさんが、四角いお盆に乗せて、夕ご飯を持ってきてくれた。初めて食べる、純粋な和食。米や魚、野菜。どれもシンプルな味付けだったが、悪くはなかった。
これを毎日、おかのかみやはなは食べていると思うと、偉く感じる。現代(今)を生きる私達は、美味しさを求め過ぎ、好き嫌いを決めている。それが醜く感じた。
「まや、食べないの?」
「いらない。」
まやは、まだ寝ている。彼女は小刻みに揺れていた。
私は、布団の中にそっと手を入れ、白い手を握った。色々、不安があるのだろう。夏だというのに、冷たかった。
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