風流にみゐる

昔懐かし怖いハナシ

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拾ってきたもの

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 男は牛車を一台呼んでくれた。
「すまんが、それに三人乗ってくれないか。」
そう言われ、
「分かりました。」
と了解したが、一人用なだけに狭かった。竹田は降りたそうだったが、制服はこの世界では目立つ服装なため、歩くよりかは良かった。
「僕の隅でいい。」
女二人のために気をつかってくれた。
「そういえばこれ何?」
そう聞いた。まやは、土を被っていた黒い箱を持っていた。
「隠れたとき、土を掘ったら出てきた。なんか掘った跡があったから。」
「誰のかわからないんだぞ。持ってくんな。」
竹田は怒ったが、降りるわけにはいかなかった。
 外を隙間から見てみた。別の貴族が、遊びに来ていた。子供とお父さんらしい人が山へと入っていった。
 やっぱりどの時代でも、親子は仲がいいなあと思った。
 ゆったりと動く牛車は、使用人の掛け声と共に動いていく。段々、人の多い場所に近づいて来たのだった。
「どうやら、都に入ったようだよ。」
暖簾を軽く上げると、人が、行き交う道に出た。地は人の足によって、固められ、先程の風景とは違っていた。しかし、コンクリートというものはなく、まだ人工物だと思わない。
 すると、突然止まった。
「着いた。」
外を見ていた竹田は、そう言った。
 ゆっくりと降りた二人は、門の前で止まった。敷地がとても広かったからだ。
 門をくぐると、そこは大きな庭だった。和。池があり、鯉が優雅に泳いでいた。まやは初めて見たらしい。庭園は、とても素晴らしいかったが、屋敷はとてもびっくりした。
高床式であり、なんとオープンな館だろう。木からいい香りがする。それに、床がひんやりしていて気持ちがいい。
 外の廊下を通り案内されたのは、畳間だった。その部屋は、とても豪華で、中央には主人が座る場所があった。また御簾があり、恐らくその向こうには女の人がいるのだろう。
 少し緊張し、畳の上で正座して待った。木の柱一本一本、丈夫そうだった。一度、触りたかった物だ。
「こんにちは。」
竹田は、小さな女の子を見つけ、挨拶をした。彼女は、少し用心深そうにこちらをじっと見ていた。黒いショートヘアな髪型は、時代を感じさせるものだった。
「これあげるよ。」
まやは、持っていた箱を差し出した。中でゴロンと何かが転がったようだった。
「…。」
無言だったが、優しく受け取りどこかへ行ってしまった。
「いいのか?」
竹田は聞いたが、
「いいの。持ってても邪魔だから。」
そう軽く返答された。
「そういえば、ここの言葉分かるよね。平安だから、“うれしきことなり”とか言ってそうだけど。」
「確かにそうだね。どうなってるんだろうか。」
そう話しているうちに、男は三人の目の前に現れた。
「お待たせして申し訳ない。突然だが、未来というのはどんな感じなのか?」
竹田は頭を下げ、こうきりだした。
「この世界より、文明が進んでいます。例えば、物を動かすエネルギーとして、電気とかです。」
普通こう話すと、理解してもらえないのだろう。男もさっぱりだった。
「火を使わず灯りを灯したり、音を鳴らしたり、遠くの人と話したりできます。」
私は、話を噛み砕いて説明した。
「なんと!面白い。でも、どうやって?」
「説明が難しいです。」
そうか、と悲しそうだった。
「どうやって、ここに来たのか?」
ここは、私が話を続けた。
「急に意識が遠のき、気がついたらここに来ました。その時、青い鉱石が光っていたんです。ここに来たときそれは無くなっていました。」
「もしかしたら、タイムスリップの原因、それかも知れないな。」
男は不思議そうにそう言った。
「予言でも、青い石のことを言っていたんだ。」
「それを探せば、帰れるかもしれないね。」
まやは嬉しそうに話した。希望の光一筋、三人にはあった。
「見つかるまで、ここにいなさい。私は構わない。女房にも言っておく。
 だが、ここだけの秘密。人の噂はすぐに広まる。そうなれば、帝も来るだろう。世に広まるのはすぐだ。」
私とまやはお互い顔を見合い、喜んだ。竹田はすぐに、
「ありがとうございます。」
とお礼を言った。
「その格好じゃ、目立つ。是非うちの物を着てくれ。」
そう言うと、お手伝いさんと思われる、女の人がたくさん出てきた。
 私はまやと、竹田は別の部屋に案内された。

 私とまやは仕切りを一つ挟み、女の人に服を着させてもらった。とても風通しが良い、軽い格好だった。この季節はおそらく夏だろう。最高だった。




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