4 / 10
拾ってきたもの
しおりを挟む
男は牛車を一台呼んでくれた。
「すまんが、それに三人乗ってくれないか。」
そう言われ、
「分かりました。」
と了解したが、一人用なだけに狭かった。竹田は降りたそうだったが、制服はこの世界では目立つ服装なため、歩くよりかは良かった。
「僕の隅でいい。」
女二人のために気をつかってくれた。
「そういえばこれ何?」
そう聞いた。まやは、土を被っていた黒い箱を持っていた。
「隠れたとき、土を掘ったら出てきた。なんか掘った跡があったから。」
「誰のかわからないんだぞ。持ってくんな。」
竹田は怒ったが、降りるわけにはいかなかった。
外を隙間から見てみた。別の貴族が、遊びに来ていた。子供とお父さんらしい人が山へと入っていった。
やっぱりどの時代でも、親子は仲がいいなあと思った。
ゆったりと動く牛車は、使用人の掛け声と共に動いていく。段々、人の多い場所に近づいて来たのだった。
「どうやら、都に入ったようだよ。」
暖簾を軽く上げると、人が、行き交う道に出た。地は人の足によって、固められ、先程の風景とは違っていた。しかし、コンクリートというものはなく、まだ人工物だと思わない。
すると、突然止まった。
「着いた。」
外を見ていた竹田は、そう言った。
ゆっくりと降りた二人は、門の前で止まった。敷地がとても広かったからだ。
門をくぐると、そこは大きな庭だった。和。池があり、鯉が優雅に泳いでいた。まやは初めて見たらしい。庭園は、とても素晴らしいかったが、屋敷はとてもびっくりした。
高床式であり、なんとオープンな館だろう。木からいい香りがする。それに、床がひんやりしていて気持ちがいい。
外の廊下を通り案内されたのは、畳間だった。その部屋は、とても豪華で、中央には主人が座る場所があった。また御簾があり、恐らくその向こうには女の人がいるのだろう。
少し緊張し、畳の上で正座して待った。木の柱一本一本、丈夫そうだった。一度、触りたかった物だ。
「こんにちは。」
竹田は、小さな女の子を見つけ、挨拶をした。彼女は、少し用心深そうにこちらをじっと見ていた。黒いショートヘアな髪型は、時代を感じさせるものだった。
「これあげるよ。」
まやは、持っていた箱を差し出した。中でゴロンと何かが転がったようだった。
「…。」
無言だったが、優しく受け取りどこかへ行ってしまった。
「いいのか?」
竹田は聞いたが、
「いいの。持ってても邪魔だから。」
そう軽く返答された。
「そういえば、ここの言葉分かるよね。平安だから、“うれしきことなり”とか言ってそうだけど。」
「確かにそうだね。どうなってるんだろうか。」
そう話しているうちに、男は三人の目の前に現れた。
「お待たせして申し訳ない。突然だが、未来というのはどんな感じなのか?」
竹田は頭を下げ、こうきりだした。
「この世界より、文明が進んでいます。例えば、物を動かすエネルギーとして、電気とかです。」
普通こう話すと、理解してもらえないのだろう。男もさっぱりだった。
「火を使わず灯りを灯したり、音を鳴らしたり、遠くの人と話したりできます。」
私は、話を噛み砕いて説明した。
「なんと!面白い。でも、どうやって?」
「説明が難しいです。」
そうか、と悲しそうだった。
「どうやって、ここに来たのか?」
ここは、私が話を続けた。
「急に意識が遠のき、気がついたらここに来ました。その時、青い鉱石が光っていたんです。ここに来たときそれは無くなっていました。」
「もしかしたら、タイムスリップの原因、それかも知れないな。」
男は不思議そうにそう言った。
「予言でも、青い石のことを言っていたんだ。」
「それを探せば、帰れるかもしれないね。」
まやは嬉しそうに話した。希望の光一筋、三人にはあった。
「見つかるまで、ここにいなさい。私は構わない。女房にも言っておく。
だが、ここだけの秘密。人の噂はすぐに広まる。そうなれば、帝も来るだろう。世に広まるのはすぐだ。」
私とまやはお互い顔を見合い、喜んだ。竹田はすぐに、
「ありがとうございます。」
とお礼を言った。
「その格好じゃ、目立つ。是非うちの物を着てくれ。」
そう言うと、お手伝いさんと思われる、女の人がたくさん出てきた。
私はまやと、竹田は別の部屋に案内された。
私とまやは仕切りを一つ挟み、女の人に服を着させてもらった。とても風通しが良い、軽い格好だった。この季節はおそらく夏だろう。最高だった。
「すまんが、それに三人乗ってくれないか。」
そう言われ、
「分かりました。」
と了解したが、一人用なだけに狭かった。竹田は降りたそうだったが、制服はこの世界では目立つ服装なため、歩くよりかは良かった。
「僕の隅でいい。」
女二人のために気をつかってくれた。
「そういえばこれ何?」
そう聞いた。まやは、土を被っていた黒い箱を持っていた。
「隠れたとき、土を掘ったら出てきた。なんか掘った跡があったから。」
「誰のかわからないんだぞ。持ってくんな。」
竹田は怒ったが、降りるわけにはいかなかった。
外を隙間から見てみた。別の貴族が、遊びに来ていた。子供とお父さんらしい人が山へと入っていった。
やっぱりどの時代でも、親子は仲がいいなあと思った。
ゆったりと動く牛車は、使用人の掛け声と共に動いていく。段々、人の多い場所に近づいて来たのだった。
「どうやら、都に入ったようだよ。」
暖簾を軽く上げると、人が、行き交う道に出た。地は人の足によって、固められ、先程の風景とは違っていた。しかし、コンクリートというものはなく、まだ人工物だと思わない。
すると、突然止まった。
「着いた。」
外を見ていた竹田は、そう言った。
ゆっくりと降りた二人は、門の前で止まった。敷地がとても広かったからだ。
門をくぐると、そこは大きな庭だった。和。池があり、鯉が優雅に泳いでいた。まやは初めて見たらしい。庭園は、とても素晴らしいかったが、屋敷はとてもびっくりした。
高床式であり、なんとオープンな館だろう。木からいい香りがする。それに、床がひんやりしていて気持ちがいい。
外の廊下を通り案内されたのは、畳間だった。その部屋は、とても豪華で、中央には主人が座る場所があった。また御簾があり、恐らくその向こうには女の人がいるのだろう。
少し緊張し、畳の上で正座して待った。木の柱一本一本、丈夫そうだった。一度、触りたかった物だ。
「こんにちは。」
竹田は、小さな女の子を見つけ、挨拶をした。彼女は、少し用心深そうにこちらをじっと見ていた。黒いショートヘアな髪型は、時代を感じさせるものだった。
「これあげるよ。」
まやは、持っていた箱を差し出した。中でゴロンと何かが転がったようだった。
「…。」
無言だったが、優しく受け取りどこかへ行ってしまった。
「いいのか?」
竹田は聞いたが、
「いいの。持ってても邪魔だから。」
そう軽く返答された。
「そういえば、ここの言葉分かるよね。平安だから、“うれしきことなり”とか言ってそうだけど。」
「確かにそうだね。どうなってるんだろうか。」
そう話しているうちに、男は三人の目の前に現れた。
「お待たせして申し訳ない。突然だが、未来というのはどんな感じなのか?」
竹田は頭を下げ、こうきりだした。
「この世界より、文明が進んでいます。例えば、物を動かすエネルギーとして、電気とかです。」
普通こう話すと、理解してもらえないのだろう。男もさっぱりだった。
「火を使わず灯りを灯したり、音を鳴らしたり、遠くの人と話したりできます。」
私は、話を噛み砕いて説明した。
「なんと!面白い。でも、どうやって?」
「説明が難しいです。」
そうか、と悲しそうだった。
「どうやって、ここに来たのか?」
ここは、私が話を続けた。
「急に意識が遠のき、気がついたらここに来ました。その時、青い鉱石が光っていたんです。ここに来たときそれは無くなっていました。」
「もしかしたら、タイムスリップの原因、それかも知れないな。」
男は不思議そうにそう言った。
「予言でも、青い石のことを言っていたんだ。」
「それを探せば、帰れるかもしれないね。」
まやは嬉しそうに話した。希望の光一筋、三人にはあった。
「見つかるまで、ここにいなさい。私は構わない。女房にも言っておく。
だが、ここだけの秘密。人の噂はすぐに広まる。そうなれば、帝も来るだろう。世に広まるのはすぐだ。」
私とまやはお互い顔を見合い、喜んだ。竹田はすぐに、
「ありがとうございます。」
とお礼を言った。
「その格好じゃ、目立つ。是非うちの物を着てくれ。」
そう言うと、お手伝いさんと思われる、女の人がたくさん出てきた。
私はまやと、竹田は別の部屋に案内された。
私とまやは仕切りを一つ挟み、女の人に服を着させてもらった。とても風通しが良い、軽い格好だった。この季節はおそらく夏だろう。最高だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる