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逃げる
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すると、ロボットは止まるとそこから黒いロケットを幾つも飛ばした。それが地面で大破するとそこから、人型のロボットが出てきたのだった。
二人の近くにも一つ落ち、そのロボットを見ると、道を変えそこから離れようとした。が、ロボットはすぐに気がつき、走って追いかけてきた。意外にも早く、さやかは逃げるのをやめ近くの庭にあった木刀を掴むと、思いっきり頭を殴った。クニは、さやかを見ることしかできなかった。動けなかったのだ。
「逃げるぞ。さやか。」
クニはそう叫ぶとさやかは、
「何言ってるの。コアを探すんじゃないの。」
「もういい。」
さやかは、必死に木刀を振り続けるが、機械の身体が凹むだけで何も変わらなかった。やがて、右腕を捕まれ、他のロボットも近づいてきたのだった。
「痛い痛い。」
ロボットは、さやかの腕を捻り骨を折ろうとした。
そこでクニは、走り寄るとさやかの左手を握った。その時のクニの表情は、真っ青で泣きそうだった。
二人は、再びあの廃墟に戻っていた。
「ごめん、動けなくて。さやかを助けるには、帰るしかなかった。」
クニは、深い呼吸をしながら石の上に座り、汗を地面に垂らし顔を下げた。
さやかは無言のまま、別の石に座った。無意識にポケットに手を入れると、あのビー玉が指に冷たく当たり、思わず手に取ってみた。するとそれは、赤く燃えるように光っていた。
「それ、どこで?」
さやかは、クニに手渡した。
「これが、コアだ。間違いない。」
「落ちてたから、拾ったんだ。」
クニは、もう一度確認した。すると興奮気味に、
「ありがとう。本当にありがとう。」
そう何度も繰り返した。
「後、三つ。それだけ行けば、みんな救われる。」
しかし、さやかは静かに立ち上がると
「そうなんだ。でも、次は一人で救ってよね。」
クニに背中を見せ、出口へ歩き出した。
「なんでだ。ここまで来て諦めるのか?」
「自分の意志で来たわけじゃない。それに、クニの弱気なところ、嫌い。」
それを聞いたクニは、何も言えずただ立ち尽くしていた。
さやかの前には、意志を感じたかのように出口が現れた。そこを出たら、いつもの日常に戻れる。そう思っていた。
「待って。さっきは本当にごめん。助けるべきだった。
でも、怖くて動けなかった。今までもそうだった。ここを見つけたときは、もう一人と一緒だった。調べて穴にコアを入れる必要があると分かった。だが実際、異世界に行くとどれも危険で、コアを簡単に集めることができなかった。」
「あそこに来たことあるの?」
「うん。でも、今回と同じく何もできなかった。それで、もうひとりも失うことになった。」
クニはさやかを呼び戻し、別の場所へ移った。そこは、土が山のように積まれていた。その周りは石で囲まれていた。
「墓?」
「そう。そして、四つの異世界へ行くには二人いなければならない。特別な力を持った人と。
そんな人を探すのに、あちこち探しまわったんだ。気がついたら、さやかの世界で諦めかけていた。もういいかなと思って。
でもさやかが俺を見つけてくれたとき、この人ならと思った。何もかも不器用な俺でも、この人とならと思った。」
「他の人でも、良かったんじゃない?」
「いや、さやかじゃないとだめなんだ。君と世界を元通りにしたい。だって…。」
クニは熱く語り、さやかは黙って聞いていた。さやかの暗かった表情が変わってきていた。
「俺も変わる。勇気出すよ。だから、もう一度チャンスをくれないか?次は絶対君を守る。死なせない。」
クニはそう言うと思わず、手を握った。さやかは驚き、手を離そうとしたが、その時二人の手の中から光が漏れてきた。そして、周りに入口が三つ出てきた。
「どうして。」
「二人入らなくても良くなった、のか?手を繋がなくても、入ることができる。」
クニは、一番近くに出てきた入口の前に立った。
「どうしても、行きたくないなら行かなくていい。君に死んでほしくない。だから、俺だけ行くよ。さっきはありがとう。」
クニは、深呼吸をした。震え、汗が体中から吹き出し、服で顔を拭いた。
すると、
「クニだけじゃ、頼りないから私も行く。お人好しなんて思わないで。私は、クニのその言葉に心を打たれたんだから。」
さやかは隣に立つと、笑顔を見せた。友達に見せる笑顔ではない別の笑顔だった。
クニは、少し俯いて目をそらしたが、すぐに前を向き
「一緒に行こう。」
そうして二人は、先の見えない入口へ入っていった。
二人の近くにも一つ落ち、そのロボットを見ると、道を変えそこから離れようとした。が、ロボットはすぐに気がつき、走って追いかけてきた。意外にも早く、さやかは逃げるのをやめ近くの庭にあった木刀を掴むと、思いっきり頭を殴った。クニは、さやかを見ることしかできなかった。動けなかったのだ。
「逃げるぞ。さやか。」
クニはそう叫ぶとさやかは、
「何言ってるの。コアを探すんじゃないの。」
「もういい。」
さやかは、必死に木刀を振り続けるが、機械の身体が凹むだけで何も変わらなかった。やがて、右腕を捕まれ、他のロボットも近づいてきたのだった。
「痛い痛い。」
ロボットは、さやかの腕を捻り骨を折ろうとした。
そこでクニは、走り寄るとさやかの左手を握った。その時のクニの表情は、真っ青で泣きそうだった。
二人は、再びあの廃墟に戻っていた。
「ごめん、動けなくて。さやかを助けるには、帰るしかなかった。」
クニは、深い呼吸をしながら石の上に座り、汗を地面に垂らし顔を下げた。
さやかは無言のまま、別の石に座った。無意識にポケットに手を入れると、あのビー玉が指に冷たく当たり、思わず手に取ってみた。するとそれは、赤く燃えるように光っていた。
「それ、どこで?」
さやかは、クニに手渡した。
「これが、コアだ。間違いない。」
「落ちてたから、拾ったんだ。」
クニは、もう一度確認した。すると興奮気味に、
「ありがとう。本当にありがとう。」
そう何度も繰り返した。
「後、三つ。それだけ行けば、みんな救われる。」
しかし、さやかは静かに立ち上がると
「そうなんだ。でも、次は一人で救ってよね。」
クニに背中を見せ、出口へ歩き出した。
「なんでだ。ここまで来て諦めるのか?」
「自分の意志で来たわけじゃない。それに、クニの弱気なところ、嫌い。」
それを聞いたクニは、何も言えずただ立ち尽くしていた。
さやかの前には、意志を感じたかのように出口が現れた。そこを出たら、いつもの日常に戻れる。そう思っていた。
「待って。さっきは本当にごめん。助けるべきだった。
でも、怖くて動けなかった。今までもそうだった。ここを見つけたときは、もう一人と一緒だった。調べて穴にコアを入れる必要があると分かった。だが実際、異世界に行くとどれも危険で、コアを簡単に集めることができなかった。」
「あそこに来たことあるの?」
「うん。でも、今回と同じく何もできなかった。それで、もうひとりも失うことになった。」
クニはさやかを呼び戻し、別の場所へ移った。そこは、土が山のように積まれていた。その周りは石で囲まれていた。
「墓?」
「そう。そして、四つの異世界へ行くには二人いなければならない。特別な力を持った人と。
そんな人を探すのに、あちこち探しまわったんだ。気がついたら、さやかの世界で諦めかけていた。もういいかなと思って。
でもさやかが俺を見つけてくれたとき、この人ならと思った。何もかも不器用な俺でも、この人とならと思った。」
「他の人でも、良かったんじゃない?」
「いや、さやかじゃないとだめなんだ。君と世界を元通りにしたい。だって…。」
クニは熱く語り、さやかは黙って聞いていた。さやかの暗かった表情が変わってきていた。
「俺も変わる。勇気出すよ。だから、もう一度チャンスをくれないか?次は絶対君を守る。死なせない。」
クニはそう言うと思わず、手を握った。さやかは驚き、手を離そうとしたが、その時二人の手の中から光が漏れてきた。そして、周りに入口が三つ出てきた。
「どうして。」
「二人入らなくても良くなった、のか?手を繋がなくても、入ることができる。」
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クニは、少し俯いて目をそらしたが、すぐに前を向き
「一緒に行こう。」
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