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〜二章〜

12話

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 城を出てまず見えるのは、一面の芝生だった。
 この城はかなり大きいようだ。
 しかも、かなり高い城壁もあって、警備は厳重そうだ。
 馬小屋のようなものや、騎士の格好をした、獣人さんが打ち合いをしている。

 色々眺めているとき、コワ君から話しかけられた。

「まぁ、まずは身分の証明と服を選びに行かないといけませんね。」

 そうだった。
 今自分が裸なのを忘れていた。
 それにしても、服はどんな感じなんだろう。
 そういえば、私の荷物は全て一体どこに消えてしまったのだろう?
 色々終わったらコワ君に聞いてみるか。



 そんなこんなで、お城とはまた違った、小さいがそれでも気品のある豪華な家に連れてこられた。
 コワ君に案内されるがままついていくと、沢山の服が揃った衣類室のようなところについた。

「ここからなんでも選んでいいので、お好きに選んでくださいね」

 なんとも待遇がいい。
 絶対何かありそうだが、怖くて聞けない。
 今気にしても、何もなすすべがないので、気にするだけ無駄なんだけど。
 そんな事を思いながら、お言葉に甘えて服を見る。
 どれもこれも、よくあるラノベの貴族が来てそうな服がずらりと並んでいる。
 流石に、こんな服は着たくないな。

 どんどん奥へ進むと、服の豪華さがなくなってきて、庶民的な色で地味な目立たない服が置いてある。

 どちらかと言うとこっちの方が断然いい。
 だけど、もらえるならいいものをもらっておきたい。
 色々と悩んでいるところに、少し懐かしみのある服が並び始めた。

 地球のスポーツウェアのようなものから、着物やワイシャツ、野球部が使ってそうな部活の服など、こちらは靴も揃っているようだ。

 面白い。
 色々見て回ると、気に入ったものが見つかった。

 ランニング用っぽい服とズボン。
 青色と白色が混ざりそうで混ざっていない独特な色をしたウェアだ。
 靴もあり、こちらも軽量化されているのか、重さを感じない。
 試着してもいいようなので、着てみる。
 少し小さいと思っていたが、服が勝手に伸びて、自分の体にフィットする。
 いきなりでびっくりしたが、ここにはこんな技術があるのか。
 多分、魔法か何かだろう。
 服特有の肌に触れる感覚があると思っていたが、それがない。
 そもそも、重さがない。
 靴もそうだ。
 履いた感覚がない。
 少し動いてみる。
 体が異様に軽い、動きに無駄がなくなったみたいだ。
 自分で言うのもなんだが、本当に無駄がなく、キレがある。
 尚更欲しくなる。
 ここに置いてあると言うことはもらってもいいんだろうが、なんとなく不安がよぎる。
 気にしても無駄だろうけど、どうしても気になると言うのはやっぱりある。
 まぁ、貰うのだが。
 ランニング用のウェアだけだと、かなり異様なので、地味な色の上着をみる。
 こちらもかなり軽く、動きやすそうなものを選ぶ。
 
 かなり時間をかけてしまった。
 少し急ぎ足でコワ君に届ける。

「決まりました?
 かなりじっくり選んでいたみたいですが、いいのは見つかりました?」

「はい、私の元々の場所の服に似たようなものがありましたので、そういったものを選ばせてもらいました。」

「それは良かったです!
 ワタナベさんに手を尽くすように王からの指示なので、喜んでもらえるならこちらも嬉しいです!」

 笑顔が絶えない。
 改めて見ると中性的な顔をしているので、惚れる男子がいてもおかしくないくらいの美形だ。
 
「?何か顔に付いてますか?」

「いや、なんでもありません。
 次は身分の証明でしたか?
 案内よろしくお願いしますね。」

「はい!任せてください!」


 なんとか流せたようだ。
 見惚れてしまっていた。
 男の子に惚れる成人男性とか、かなり危ないな。
 気をつけよう。

 早速、選んだ服を貰った。
 着替えると、スーツのズボンがいつのまにかなくなっていた。
 まぁ、新しいものをもらったからなんの問題もないんだけど。
 少しモヤモヤを抱えたまま、コワ君についていく。



 少しすると何やら、沢山の人や獣人がいる場所に連れてこられた。
 
 私が辺りを見回していると、コワ君がさっそく紹介してくれた。

「ここは、国が経営している〈鑑定所〉ってところで、いろんな人の素質を図る場所なんだ。」

 なるほど、ここで身分を作るってわけか。
 色々みて回りたいが、コワ君が歩き出す。
 それについていくと、何やら水晶玉に手を置いて、いろんな色に光っているのが見えた。
 5人程並んでいるので、それの後ろに並ぶ。
 
 一体なんなのだろうか?
 そんな事を考えていると丁度よくコワ君が説明してくれた。

「ここは魔法測定の列だよ。
 あまり素質を持っている人は少ないけど、あの水晶玉で調べるんだよ。」

「成る程、ありがとうございます。」

「いえいえ。」

 自分のあれは魔法なのだろうか?
 ちょっと気になってた疑問がここで解決されるかも知れない。

 あと3人といったところで、何やら揉め事が起こっているようだ。

「何故僕に適性がないんだっ!
 この僕は大魔導士“レオル”の子孫だぞ!
 適性がないなんてありえない!」

「そのような事をおっしゃられましても、こちらも対応しかねます。
 水晶玉をお造りになられたのは、レオル様なので壊れるなどはないと思われます。
 残念だとは思いますが、魔術を諦めてお引き取り願います。」

「ふざけるなっ!
 これはこの水晶玉の故障だ!
 もっといい測定水晶玉が来るまでこの列は譲らないぞ!」

「そんな事を言われましても…」

 成る程、何処かのお坊ちゃんみたいだな。
 我儘で横暴で、育てた親の顔が見てみたい。
 私が顔を顰めるていると、コワ君が何やら受付さんに話をつけてくれたようだ。

「先にあの水晶玉で測定してもらえるそうなのでしてもらいましょう。」

「ありがとうございます。」

 本当に、何から何まで至れり尽くせりだ。
 列に並んでいたもう1人がいつのまにかいなくなっていたので、受付をされてもらおうとする。

「おいお前!」

 さっきのお坊ちゃんだ。
 絶対面倒臭くなるので、目すら合わせないようにしていたのに、なんで話しかけてくるのか…
 そう思いながら、返事をする。

「私でしょうか?」

「お前以外に誰がいるんだ?
 僕は列を譲らないといったはずだ。
 何故お前が受付を受けるんだ?」

「受付から許可をもらったかからです。
 貴方が壊れていると思っている水晶玉を使ってもなんの問題もないでしょう?」

 そう言って、そそくさと受付へと入る。
 何か文句を言っているようだが、無視をする。
 あれと関わるとかなりしんどいと、本能が拒否を示している。
 少し苛立ちを感じながらも、さっそく行った。

「水晶玉を軽く掴んでください。」

 受付さんから言われた事を指示通り行う。
 すると突然、強い光を放った。

 神々しさとは全くの別物の、化学反応による光のようなものだった。
 
「見たことのない光り方ですね…
 もしかして、オリジナルの属性でしょうか?」

 オリジナル?
 それなら、魔力級を作った時にもなんか聞いてあった気がする。
 うーん。
 謎が解けると思ったら少し、深まったような気がする…
 複雑な気持ちを持って受付を出ると、さっきのお坊ちゃんが立っていた。

「やはり、水晶玉は壊れていたんだ!
 お前のような、筋肉ダルマの戦士向きのやつが魔法なんか使えるわけがないだろう!」

 何といういちゃもん。
 華麗にスルーしてコワ君のところに向かう。
 コワ君が歩き出したのでそれについていく。

「無視をするなんて!
 覚えてろよ、僕に恥をかかせた事を後悔させてやるからな!」


 捨て台詞を言われたがあまり聞いていなかったので、無視を突き通す。

 今思ったが、やっぱりあいつみたいな人族もこの大陸にはかなりいるようだ。
 自分だけが目立つ事が無くなったのでよかった。
 
 コワ君も面倒くさかったのだろうか、かなり早歩きで次のところへ向かっている。
 そうして次についたのはさっきよりも人の多い何やら紙になにかを書いているところに来た。

「ここは、身分証明のギルド受付です。
 ここで自分の情報を書き込んでギルドカードに埋め込んで身分証明として使うんです」

 何だか、地球で言う市役所みたいなところだな。
 
依頼クエストを受けるとこのギルドカードにポイントが貯まっていくようになって、そのポイントで貢献度を調べて、ギルドの8段階階級のどれかに振り分けられるようになってます。
 因みに、8段階階級と言うのは、上からS・A・B・C ・D・E・F・Gの8つに分かれているギルド内での位です。」

 これは、異世界っぽいな。
 貢献度らしいから上げれるだけ上げていこう。
 依頼っていうとどんな物があるのだろうか?
 
「一体どんな依頼があるんですか?」

「そうですね…
 D以上になればモンスターや魔物の討伐依頼や駆除依頼が多くなってきますけど、それ以下はどれも雑用のようなものばかりですよ?」 

「なるほど、ありがとうございます。」

 やっぱり、モンスターなどは討伐依頼があるのか。
 危険なことはあまりしたくないな…
 
 そんな事を思っていると、自分の番が回ってきた。

「ここにかけるだけの情報をご記入くださいね。」

 言われるがまま、記入できる場所はすべて埋めた。
 職業や魔法の所属は分からないのでそう言ったところだけを開けて、受付に渡した。

「ありがとうございます。
 少しお時間かかりますので、お椅子にお掛けになってお待ちください。」

 言われるがまま、少し硬い椅子に座って少しの時間待つことになった。
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