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〜一章〜

11話

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 少し肌寒い空間で目が醒める。
 ここは牢屋の中だ。

 あまり、心地よいとは言えないが、まあ不自由はない。
 でも暇なのには変わりない。
 何かすることはないだろうか?

 確かこの手鎖は体内の魔力を放出させない効果があるらしいから、魔素操作なら出来ると思う。
 監視の獣人さんにバレないように、小さな石を作り出す。

 成功だ。

 やっぱり魔素操作なら使うことが出来るらしい。
 しかしまぁ、脱獄するつもりはないので、そんなことがわかってもっていう話なんだけれど。
 しかし、暇だなぁ…


~一方その頃、獣人国では~

「王!東部海岸に直撃した船と人間を捉えました!」

「分かった。
 船からは何か見つかったのか?」

「はい。
 全く溶ける様子のない氷の中にドラコの肉と鱗、内臓などが保存されていました。
 他にも、オキノキの樹皮やクラの薬草など、大量に採取されていました。」

「何だと?
 どれもこれも、珍しいものばかりじゃないか。
 他にも何かあるのか?」

 「ドラコの頭部には謎の穴があり脳がぐちゃぐちゃになっていました。
 他にも、2つの筒状の物や、黄土色の固形物、傷だらけでしたが、きめの細かい生地を使った服など、見たことも聞いたことも無いものばかりが見つかっています。
 どうして人間が持っているのかはわかりませんが、船に乗っていたのはたった1人だけだったので、彼は相当な凄腕か、人に化けた化け物か、人間国で噂の勇者とかいうやつかもしれません。」

「人に化けた魔物なら、鑑定士が鑑定すれば分かることだ。
 海岸領は厳重な警戒をしろ。
 相手は人間だ、油断ならない。
 もし、不可解な行動とるような場合は、即処刑しろ。
 まずは市民の安全が第一だ。」

「了解!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そんな事もつゆ知らず、牢屋に入れられているという重大な問題を起こしたことをあまり悪いと思っていない人が、暇を持て余していた。

 石を作っては消して、作っては消してを繰り返しているだけだと、流石につまらない。
 何か起こらないだろうか?
 そんな時、足音が聞こえる。
 それと同時に、獣人の兵士さんが私に言う。


「おい人間、付いて来い。」

 そう言われるがまま、牢を出る。
 すると、レンズっぽい何かを付けた耳の垂れた獣人さんが先導を切り、私を囲むように移動する。

 かなり何をするかのかが気になる。
 レンズの人はちょっと博士っぽい雰囲気を醸し出している。
 やっぱり、私の事をしっかり調べるのか?
 危なそうなことがあれば、たとえ狙われたとしても、全力で逃げに徹する気で行こうか。

 そうして、階段で上に上がって10畳ほどの机と椅子、そして羽ペンと黄ばんだ紙が置いてある部屋に入れられた。

「お前が何者か、そこに書け。
 嘘をついても分かるからな、呉々も嘘の事は書き込まぬように。」

 強い口調でそう言って、私を見張っていた獣人さんは去っていった。

 しかし、嘘の事を分かるってどう言う事なんだ?
 本当に本当のことを書いたら、信じてもらえなくなるかもしれないし、嘘を書いてもバレるってもう詰んでいる気がするんだが…
 紙が羽ペンに何かあるのかな?

『羽ペン
 ただの羽ペン』

 だろうね。
 紙はどうだ?

『真偽の黄紙
 魔法 truth真実が付与された紙』

 ん?
 これで確かめてるのか?
 ていうか、何故魔法が英語で表記されてるんだ?
 まぁ、今気にしても仕方ないか…

 取り敢えず、これで分かるなら本当の事を書いておこう。
 嘘書いて殺られるのも嫌なので。
 転移の事も全て書いておく。



~記入中~


 よし、これでいいかな。
 全部本当の事だし、所々割愛してるけど、まぁほぼ今までの経緯は書けたかな。

 終わって直後、さっきの獣人さんがきた。

「終わったか?」

「終わりましたよ。」

「分かった、紙は置いたままでいい。
 ついて来い。」

 言われたまま従う。
 次は何処へ行くのだろうか?
 少し歩いて階段を登る。
 強い光が差し込み、目を細める。
 外だ。
 でも、でっかい建物の中のようだ。
 
 さっきのレンズの獣人さんがいる。
 
「その赤い台の上に立て。」

 言われたように従う。
 レンズの獣人さんが私を見つめたり、触ったりしてくる。
 ちょっと怖くなってきた。
 獣人さんが戻っていく。
 どうやら終わったようだ。

「王に会いに行くぞ。」

 ん?
 王?私は何をどうすればいいんだ?
 考える間もなく、獣人さんが歩き出す。
 

 このでかい建物の中に王がいるのか?
 そもそも、ここに突っ込んだ私があってもいい存在なのか?
 いや、私がいうのも何なのだけども。

 そうこう考えているうちに、まさに王室って感じが溢れ出す扉の前に来た。

「入れ。」

 言われた通りに入る。
 するとそこには、何というか、覇気が溢れ出している、真黒いライオンのような獣人さんがいた。

「ようこそ、我がレイオストロへ。
 歓迎しよう。
 我は現レイオストロ国王 アニ・ライオス
である。
 以後よろしく頼む。」

 いや、以後よろしくされても困るだけなんですが。
 ていうか、以後よろしくできない立場だと思うんですが。

「はっはっ。
 表情に出ておるぞ、そんなかしこまる必要は無い。
 我はお前に1つ、質問をしたいだけなんだ。」

 質問?
 そう思って声を出そうとするが、それを遮るかのようにアニ国王さんは喋り出す。

「こちらに届いた黄紙、読ませてもらった。
 お前はオキノキの大樹林帯に転移してきた、異世界出身の異世界人なのだな?
 それが分かった今だからこそお前に質問だ。
 獣人大陸における規則は守れるか?」

 規則?
 訳も分からないが、断れる雰囲気では無い。
 どんな規則かだけでも聞いときたい。

「一体、どんな規則なんでしょうか?」

「おお、忘れていたな。
 今教える。
 我ら獣人は、人族たちを古来から嫌っておる。
 しかし、嫌っておるというても人族らそのものを嫌っておるのでは無い。
 今は友好条約を築いており、仲はあまり悪くはない。
 我らが嫌っておるのは、獣人大陸に危害を加える人族なのだ。
 仲介無しに無断で大陸に乗り込んだり、獣人大陸で獣人に危害を加えたりしたものは牢獄迷宮というダンジョンで、頭を冷やしてもらうようにしておるんだ。
 お前も、本来なら牢獄迷宮の最下層で頭を冷やしてもらうはずなのだが…
お前の事情を聞いている限りではそこまでの悪人では無いようだな。
 しかし、罰がないとなると色々問題が起こるんだ。
 そこでな、お前にはガイド兼見張りをつけたいと思っているんだ。  
 お前が規則を破らないようにな。
 そして、お前に守ってもらいたい規則は普通の人族と同じ規則だ。
 後で紙を渡そう。」

 おお、色々考えてくれててありがたい。
 見張り兼ガイドさんをつけてくれるのも本当に助かる。
 私は悪い事をするつもりもないし、ガイドさんから沢山の知識が手に入る。
 そんな事を思っていると犬耳の生えた男の獣人さんが入ってきた。

「紹介しよう。
 君の見張り役のコワ君だ。」

 見張りさんだった。
 背は中学生くらいだし、可愛い顔してるから国王の子供さんかと思った。

「よろしくお願いしますね。」

 こちらが話しかけると、コワ君は満面の笑みで答えてくれた。

「よろしくね!」

 元気な子だなぁと思っていたら国王が話しかけてきた。

「お前は身を守る手段が無さすぎるな。
 何か手に合うものを渡すから選んできたらどうだ?」
 
 「はい、お願いします。」

 こんな事を言ってもらえて受け取らない奴はいないと思う。
 国王はとてもいい獣人さんだ。
 私の返事を合図に、コワ君に案内してもらうことになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 少し歩いたところに、武器庫のような場所があった。

 種類は様々だが、やっぱり私が使えるような武器はない。
 そもそも武器など触ったことがないのだ。
 使えるわけがなかった。
 そういって、落ち込んでいるとコワ君が話しかけてきてくれた。

「何に落ち込んでいるんですか?」

「いや、武器なんて使った事なくて、どれ選んでも使わないなら意味ないなと…」

「そんな事を気にしてたんですか?
 最初っから武器を上手く扱える人なんているわけないじゃないですか。
 剣だと素振りをしたり実戦で打ち合いしたりすると技能が手に入って、段々上手くなっていくんです。
 弓も魔法も槍も盾も全て練習・実戦あるのみですよ?」


 当たり前のことを言われた。
 その通りでしかないんだけど、実際何言ってんのみたいに言われるとかなり心にくる。
 でも、本当にその通りだ。
 
 最初っから諦めてたら強くなるはずない。


「その通りですね。
 すいません、甘えてました。」

「そうですよ!
 技能取得は個人差がありますが、絶対に取得できないなんてことはないので頑張って鍛えていってくださいね!」

 と、言うことで。
 地球では剣道をちょっとかじったぐらいだけど、弓とか槍とかよりはまだ取得しやすいだろうと思うので普通の剣をもらうと、国王に告げた。

 あっさり許可してもらった。
 
 
 そして、そのままコワ君に案内されるがまま城を出た。

 これから色々知ることがあるだろうが、1つ1つを大切にしよう。
 そう心に決めて、歩き出した。


 
 
 
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