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店長の休憩
今一度
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美味しかった。あとのとき食べたブリの味。もう一度…もう一度食べてみたい。だけど、それは叶わない。だから…死ぬとわかったときに…
ぶり大根
「いらっしゃいま…せ…」
後光さえ見えるんじゃないかと言わんばかりの笑顔を見せる少年がいた。
「お母さん…いいよね…」
「…うん…」
隣の母親はとても落ち込んでいたが、少年はずっと笑顔だった。
「ぶり大根!ぶり大根お願い!」
「わ…わかりました。」
店員ちゃんも、少し目が痛くなっていた。母親は、泣きそうなほどの顔になっていた。
「ごゆっくりどうぞ~」
「母さん!あの席!あの席がいい!」
「わかった…」
二人は店の端の方へ座った。ちょうど、店長の横の席。
「久しぶりだな~!ぶりだけに!」
「…ダジャレが言えるほど余裕なのね。」
「うん。もう大体未練はないからね。」
「そう…」
嬉しそうにする少年。そんな顔をみるたび、母親はため息を付いた。
「まだ、食べないで。少し…話しましょう。」
「…いいよ。母さん。」
少年は箸を置いた。
「ほんとに…ほんとに…」
「あっ!かっちゃん!」
「てっちゃん!」
「…~二人で話しなさいな。」
母親は寂しそうにご飯を食べた。
「かっちゃん久しぶりー!いつ以来?」
「一、二ヶ月くらいかな?久しぶり~!」
「あれ?それぶり大根?ぶり、アレルギーじゃなかった?」
「そうだよ!今日は僕のめいにちだから、思い切って食べることにしたんだ!」
「めいにち?」
「えっとね………いや…やっぱり言わないでおく。」
「なんで?」
「ちょっと、言いにくくて…」
かっちゃんは顔を下げた。
「…」
母親は…なにも言えなかった。
「あそう…じゃあ今度教えてよ!」
「あっ……えと…うん…そういえば、てっちゃんはなに?お刺身?」
「うん!これ美味いらしいよ!かっちゃんしろみざかなダメなんだよね?これならいい?一まいあげるよ!」
「ありがと!じゃあ、この大根いる?」
「いる!」
笑う二人の少年に、母親は、ただ見守ることしかできなかった。
「お子さん、楽しそうですね。」
「?」
「すいませんね。突然話しかけて。」
後ろの席だった店長が、仕切り越し話しかけてきていた。
「私は店長。怪しいやつじゃないから。」
「…なんでしょうか?」
「おすすめしたい場所があってね。お子さんが食べ終わったら、行ってください。多分、間に合いますから。」
「はっ…」
店長は、母親に紙を渡した。
「母さん!これめっちゃうまい!魚ほろほろで柔らかくてジューシー!」
「大根しみしみじゃん!うまい~!」
「汁にじみ出てるよこれ!」
「…良かったね。」
「うちのぶり大根は特別美味しいはずだからね。"何度だって"食べさせたくなるほどに。」
「…!」
「お母さん。お子さんに生きてほしいなら、そこにね。」
「わかったわ。ありがとうごじいます。」
「いえいえ。私は彼にぶり大根を堪能してほしいだけだから。」
「…そうですか。」
ぶり大根
「いらっしゃいま…せ…」
後光さえ見えるんじゃないかと言わんばかりの笑顔を見せる少年がいた。
「お母さん…いいよね…」
「…うん…」
隣の母親はとても落ち込んでいたが、少年はずっと笑顔だった。
「ぶり大根!ぶり大根お願い!」
「わ…わかりました。」
店員ちゃんも、少し目が痛くなっていた。母親は、泣きそうなほどの顔になっていた。
「ごゆっくりどうぞ~」
「母さん!あの席!あの席がいい!」
「わかった…」
二人は店の端の方へ座った。ちょうど、店長の横の席。
「久しぶりだな~!ぶりだけに!」
「…ダジャレが言えるほど余裕なのね。」
「うん。もう大体未練はないからね。」
「そう…」
嬉しそうにする少年。そんな顔をみるたび、母親はため息を付いた。
「まだ、食べないで。少し…話しましょう。」
「…いいよ。母さん。」
少年は箸を置いた。
「ほんとに…ほんとに…」
「あっ!かっちゃん!」
「てっちゃん!」
「…~二人で話しなさいな。」
母親は寂しそうにご飯を食べた。
「かっちゃん久しぶりー!いつ以来?」
「一、二ヶ月くらいかな?久しぶり~!」
「あれ?それぶり大根?ぶり、アレルギーじゃなかった?」
「そうだよ!今日は僕のめいにちだから、思い切って食べることにしたんだ!」
「めいにち?」
「えっとね………いや…やっぱり言わないでおく。」
「なんで?」
「ちょっと、言いにくくて…」
かっちゃんは顔を下げた。
「…」
母親は…なにも言えなかった。
「あそう…じゃあ今度教えてよ!」
「あっ……えと…うん…そういえば、てっちゃんはなに?お刺身?」
「うん!これ美味いらしいよ!かっちゃんしろみざかなダメなんだよね?これならいい?一まいあげるよ!」
「ありがと!じゃあ、この大根いる?」
「いる!」
笑う二人の少年に、母親は、ただ見守ることしかできなかった。
「お子さん、楽しそうですね。」
「?」
「すいませんね。突然話しかけて。」
後ろの席だった店長が、仕切り越し話しかけてきていた。
「私は店長。怪しいやつじゃないから。」
「…なんでしょうか?」
「おすすめしたい場所があってね。お子さんが食べ終わったら、行ってください。多分、間に合いますから。」
「はっ…」
店長は、母親に紙を渡した。
「母さん!これめっちゃうまい!魚ほろほろで柔らかくてジューシー!」
「大根しみしみじゃん!うまい~!」
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「…良かったね。」
「うちのぶり大根は特別美味しいはずだからね。"何度だって"食べさせたくなるほどに。」
「…!」
「お母さん。お子さんに生きてほしいなら、そこにね。」
「わかったわ。ありがとうごじいます。」
「いえいえ。私は彼にぶり大根を堪能してほしいだけだから。」
「…そうですか。」
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