話し相手

糸子(イトコ)

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ままごと

家出

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「お前らー。元気してるかー?」
「「「エイホー!」」」
「よし。…あれ?こいつ…なんでここに?」
「…」

ラブドール
「この前作られたラブドール…」
「う…うぅ…」
「なんか訳ありっぽいな。」
「ラブドールなのに?」
「しょうがねぇよ!俺たちみてぇな店長に作られた人形は、それぞれ自我を持っている。嫌なことに一つや二つあるさ。」
「歌のレッスンとか。」
「ありゃトラウマだ。」
「う…うぅぅ…」
「子どもの人形は耳を塞いでおくね。どうしたの?どうして逃げてきたの?」
「う…う…あいつキモい…」
「!」
「「!」」
「ラブドールなのに?!」
「いや…あいつ…言動があれなんだよ…なんか…ほんとキモい…」
「ラブドールにまでそう言われるレベルって…」
帰ってほしい。だけど、それはこの人形の意志に反するマナー違反。
「しかもプレイが下手なの!」
これはどうしたものか…
「ケガ、汚れなし。とてもきれいにされてるな。」
「あいつ、いろいろ下手だけど、私の世話だけは一切欠かさなかったわ。」
「いい旦那じゃないか。」
「良くないわよ!本来の使い方が下手なのよ?!」
「ラブドールの使い方はなにも性の発散だけじゃない。君のような等身大なら、一緒に生活することも一つの役割だ。」
「…でも…」
「君がどうしても嫌だと言うなら、旦那さんに連絡して、きみの新たな旦那を見つけることにする。」
「…」
「どうする?」
「なぁ、俺たち聞いてていいことか?」
「…後ろに行こう。」
「…」

「わかった。一回あの人と話し合ってみる。」
「うん。それがいい。プレイだけじゃないんだから。なんなら君は動けるんだから、他の家事とかやっていったらいい。」
「それはやってるわよ。」
「それは…普通にもう普通に愛してるレベルじゃ…」
「…」
「すいませーん!」
「お、来たみたい。ちょっと待ってて。」
「…」
「うちの、「しょうこ」来ませんでした?」
「今後ろにいるよ。話は聞いてる。」
「すいません…」

「しょうこ…」
「あなた…」
「ごめんよ…その…下手だったなんて…」
「…」
「君が望むなら、家出は許すよ。」
「…」
「だけど…もう一度だけ…考えてほしい。」
「…」
「…頼むよ…」
「わかったわよ…もうしばらくいてあげる。次こそ私を気持ちよくさせてね。」
「!ああ!君のためならなんだってしてあげるよ!」
「…ふふ。店長さん、ごめんなさいね。こんなことに付き合わせちゃって。」
「いや、いいよ。人形と人の絆に関わることならなんだって。」
「頼もしいよ店長さん。家でまた話し合ってみるよ。」
「うん。そうしてくれ。ラブドールの家出こそ介入しにくいものはないから。」
「それでは。また今度。」
「あぁ。またね。」
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