話し相手

糸子(イトコ)

文字の大きさ
上 下
9 / 101
店長の休憩

ある日の水曜日

しおりを挟む
「おねーちゃん」
「…」
「ねぇえ!店長のねーちゃん!」
「……ん…なに…坊や…」

あの朝食定食

ここは「不思議の定食屋」という定食屋。水曜日午前11時、男の子が来店した。たった一人で。
「ねーちゃんなんで寝てるの?」
男の子は、いつもお店の端の二人席で寝ている店長に聞いた。
「眠いからよ。」
店長は眠たそうな柔らかい声で言い、また目をつぶった。
「ふーん。ねーちゃん、食べる?」
男の子は、自分で頼んだ「あの朝食定食」の漬物の入った皿を差し出した。
「いや、いいよ。あんたが買ったご飯なんだから、ちゃんと食べなさい。」
店長は皿を返した。
「いいよ。食べきれないし。」
男の子はまた差し出した。
「…」
「…」
なんとなく、ただなんとなく、気まずいような、嬉しいような静寂が、30秒ほど続いた。
「わかったわ。」
店長は皿にある5枚の柴漬けから1枚をつまんで食べた。
「おいしい?」
男の子が目を輝かせて聞いた。
「美味しいよ。」
男の子はニコニコしながらさんまを食べた。
「おねーちゃん、ここの店長さんなんだよね?ここでねてていいの?」
男の子の純粋な質問に、店長は少し、めんどくさくなった。
「…ん~…」
店長はひとつ、
「あそこで働いてる人たちを信用してるんだよ。」
といった。
「ふーん…」
男の子は普通に興味がなさそうに聞いていた。
また、しばらくの静寂があって、男の子が淡々とご飯と味噌汁、サンマを食べていた。
やっと男の子がサンマを食べきったときに、店長が話しだした。
「あんた、なんでここにいるの?他にも席は空いてるのに。」
男の子は味噌汁を飲み干しながら、
「誰かと食べたかったから。」
と言った。店長は小さなため息を吐き、何を思ったか、男の子を撫でた。
男の子はうれしそうな笑顔して、最後のご飯と柴漬けをかき込み、箸を置いた。
「また来るね。バイバイ店長!」
男の子はからの容器がたくさんあるお盆を持って、出口に行った。
「ありがと。またいらっしゃい。」
と、店長はにこやかに見送った。
「次はいつかしらね。」
机に貼ってある、「店長休眠中。用がある方は起こしください」の張り紙を見ながら、一言放った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

はじめましての、

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ ちょっと変で下品な関係の話です。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...