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はじまりはじまり。
皇子妃教育体験。
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ドラグナー皇国の『皇子妃教育体験』。
これに参加したのは、いづれも人族の貴族の娘だった。
竜族からの参加者がいないのは、『番』という習性を本能で理解する種族だからである。
決して脳筋だから、面倒だからという理由ではない。……そのはずだ。
「まずは大前提として、礼儀作法から」
この言葉から、体験は始まった。
その人の笑顔と共に。
曰く。「背中が曲がっております」
曰く。「指先まで細やかに」
曰く。「礼を初めてまだ半分の一時間しか経っておりません。もう一時間続けてくださいませ」
曰く。「歩く姿勢は真っ直ぐに。足音は抑えてくださいませ」
体験中は、講師は全員名乗らない。
だから少女達はこの礼儀作法担当の女性が何者なのか知らない。
知らないからこそ、
「たかだか講師ごときがラノーア侯爵家の令嬢である私に指図し過ぎではなくて!」
「私はシュラー辺境伯の娘ですのよ。こんなことしなくても十分に資格はありますわ」
他にも厳し過ぎるだのもっと私を褒めなさいだの、上から目線で文句を言う者多発。
「あら。やりたくないのでしたら、おやめになって構いませんのよ」
それに対し講師は崩さない笑顔で隣室への扉を示した。
「おやめになる方は彼方へ。お茶とお菓子が用意されていますわ」
「そうさせていただくわ」
「わたくしも」
「わたしも」
はい、アウト―。
残って礼儀作法の授業を受けた者はそのまま次の授業へと引き渡されるが、礼儀作法を拒絶したりお菓子につられたご令嬢達は、『不適格』としてこのまま体験終了となる。
本日の礼儀作法担当は、ドラグナー竜皇妃殿下。
最初から大物の登場に、別室で魔法具を使って観覧の保護者達も声を失ったことだろう。
文句を言いたいだろうが、各親がサインを求められた誓約書の一文には、「講師に名乗らせない、誰何しない」というのがあった。
それは、こういう事例があるからだ。
事例。うん、事例。
他にも誰かがやるとみた。
篩に掛ける気満々ですな。だってこれ十分に不敬罪だもの、退室の挨拶もしていない子も多かったし。
保護者と一緒に竜皇帝も見てる。言い訳できないよね。
次の授業は座学で一般教養と歴史合わせて二時間。
こちらは目に見える脱落者はいなかったが、講義内容についていけない者も多かったようだ。
その後はさっさと退室する者、分からなかったところを講師に質問する者、復習する者と別れた。
お昼は城内にある食堂のひとつでランチ。
何を食べても自由だが、その作法を見られていると気付いたのは果たして何人いるだろうか。
午後からは運動、ダンスマナー。
ダンス自体はデビュタントまでに覚えればいいので、初心者の令嬢が圧倒的に多い。
その為基礎からの講習となるが、やはりここでも文句を言う者が出た。
初心者に厳しいというが、やっているのは基本ステップの触りである。
その横で楽しそうに繰り返しステップを踏む令嬢もいた。男役のステップだったが。
これをワンセットとし、三日間繰り返された。
四日目には参加者は三分の一以下に減っていた。
……減り過ぎじゃない?
四日目からは、午前中は座学に経済が加わった。
五日目にはダンスマナーの後にダンジョン学が加わる。
此処で大きく親からも反発が起きた。
「貴族令嬢のすることではない? 何を言っているんだ、ドラグナー皇国では皇妃も皇子妃もダンジョンに潜るぞ」
竜皇帝の言葉に、リンフィスも頷いた。
竜皇妃殿下のメイス捌き、あれは忘れられない。
そして六日目。
『皇子妃教育体験』の最たる教育、ダンジョン体験の時がやってきた。
これに参加したのは、いづれも人族の貴族の娘だった。
竜族からの参加者がいないのは、『番』という習性を本能で理解する種族だからである。
決して脳筋だから、面倒だからという理由ではない。……そのはずだ。
「まずは大前提として、礼儀作法から」
この言葉から、体験は始まった。
その人の笑顔と共に。
曰く。「背中が曲がっております」
曰く。「指先まで細やかに」
曰く。「礼を初めてまだ半分の一時間しか経っておりません。もう一時間続けてくださいませ」
曰く。「歩く姿勢は真っ直ぐに。足音は抑えてくださいませ」
体験中は、講師は全員名乗らない。
だから少女達はこの礼儀作法担当の女性が何者なのか知らない。
知らないからこそ、
「たかだか講師ごときがラノーア侯爵家の令嬢である私に指図し過ぎではなくて!」
「私はシュラー辺境伯の娘ですのよ。こんなことしなくても十分に資格はありますわ」
他にも厳し過ぎるだのもっと私を褒めなさいだの、上から目線で文句を言う者多発。
「あら。やりたくないのでしたら、おやめになって構いませんのよ」
それに対し講師は崩さない笑顔で隣室への扉を示した。
「おやめになる方は彼方へ。お茶とお菓子が用意されていますわ」
「そうさせていただくわ」
「わたくしも」
「わたしも」
はい、アウト―。
残って礼儀作法の授業を受けた者はそのまま次の授業へと引き渡されるが、礼儀作法を拒絶したりお菓子につられたご令嬢達は、『不適格』としてこのまま体験終了となる。
本日の礼儀作法担当は、ドラグナー竜皇妃殿下。
最初から大物の登場に、別室で魔法具を使って観覧の保護者達も声を失ったことだろう。
文句を言いたいだろうが、各親がサインを求められた誓約書の一文には、「講師に名乗らせない、誰何しない」というのがあった。
それは、こういう事例があるからだ。
事例。うん、事例。
他にも誰かがやるとみた。
篩に掛ける気満々ですな。だってこれ十分に不敬罪だもの、退室の挨拶もしていない子も多かったし。
保護者と一緒に竜皇帝も見てる。言い訳できないよね。
次の授業は座学で一般教養と歴史合わせて二時間。
こちらは目に見える脱落者はいなかったが、講義内容についていけない者も多かったようだ。
その後はさっさと退室する者、分からなかったところを講師に質問する者、復習する者と別れた。
お昼は城内にある食堂のひとつでランチ。
何を食べても自由だが、その作法を見られていると気付いたのは果たして何人いるだろうか。
午後からは運動、ダンスマナー。
ダンス自体はデビュタントまでに覚えればいいので、初心者の令嬢が圧倒的に多い。
その為基礎からの講習となるが、やはりここでも文句を言う者が出た。
初心者に厳しいというが、やっているのは基本ステップの触りである。
その横で楽しそうに繰り返しステップを踏む令嬢もいた。男役のステップだったが。
これをワンセットとし、三日間繰り返された。
四日目には参加者は三分の一以下に減っていた。
……減り過ぎじゃない?
四日目からは、午前中は座学に経済が加わった。
五日目にはダンスマナーの後にダンジョン学が加わる。
此処で大きく親からも反発が起きた。
「貴族令嬢のすることではない? 何を言っているんだ、ドラグナー皇国では皇妃も皇子妃もダンジョンに潜るぞ」
竜皇帝の言葉に、リンフィスも頷いた。
竜皇妃殿下のメイス捌き、あれは忘れられない。
そして六日目。
『皇子妃教育体験』の最たる教育、ダンジョン体験の時がやってきた。
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