桜子さんと書生探偵

里見りんか

文字の大きさ
上 下
18 / 44
第二幕 交錯

18 藤高貢の本分

しおりを挟む

 園枝有朋そのえ ありともの死から、早10日。

 桜子の生活は、多少の緊張感を孕みつつも、比較的穏やかに過ぎていった。

 以前は、皆の目をかいくぐって、ちょっとした外出をしたり、女学校帰りに銀座に寄ったりしていたが、それは、流石に出来なくなった。

 女学校の送り迎えは、人力車にイツが付き添うという鉄壁の守り。人力車は、営業所から信頼のおける者を回してもらっているという。
 そのうえ、周りをウロチョロしていた新伍も、ここ最近、めっきり見かけない。

 桜子は、ひどく退屈していた。

 藤高貢ふじたか みつぐが湖城家にやって来たのは、そんなときだった。

「こんにちは。」

 貢は、脱いだ軍帽を胸の前で押さえるように構えて挨拶をした。

「お久しぶり……です。」

 藤高貢と会うのは、あの日の園枝邸以来。

「芝居でも、ご一緒にどうかと思いまして。」
「芝居? 私が……藤高少尉とですか?」

 突然の誘いに驚いて問い返すと、貢は「えぇ、そうです」と頷いた。

「園枝有朋さんのことは、残念でした。しかし、それはそれとて、桜子さんの婚約者選びは、まだ続いているかと。」
「それは……そうかも知れませんが。」

 確かに、有力候補だった園枝有朋は、もういない。しかし、だからといって婚約者選びが中止だと、父に申し渡されたわけではなかった。

「藤高少尉…は、私と芝居を見たい……のですか?」

 聞いてから、すぐに、無意味な質問をしてしまったと後悔する。案の定、

「父から発破をかけられましてね。湖城の機嫌をとってこい、と。」

 貢の答えは、いつもこうなのだ。

 つまり、貢は、桜子自身のことなどどうでもいい。あくまで、藤高中将が湖城の家と縁を結びたい。そのために、義務的に桜子の歓心を買えと言われているから、そうしているだ。

 貢は重ねて、逆撫でするようなことを言う。

「桜子さん、今、貴女にとって一番有力な婚約者は私だと自負しているのですが、違いますか?」
「………。」
「それなら、せめて良い関係を築くのが良策かと。」

 認めたくはないが、一理ある。

 樹と結婚するつもりがない以上、残る候補は貢しかいない。貢は、態度は不遜ではあるが、間違っていない。

 父が婚約者選びなどという異例のことを言い出したから、桜子は自分の気持ちを第一にしていいというような、妙な錯覚を抱いてしまったのだ。
 結婚はあくまで、家と家の結びつき。家にとっての利益があって成立するものだ。父が挙げた候補は、その条件を満たす者たちに限られている。

(ちゃんと、分かっていたはずなのに……)

 貢の言う通り、桜子も、貢のことを理解する努力が必要なのかもしれない。

「……わかりました。」
 
 イツに頼んで、貢を客間に案内させると、支度をするからと、一旦、自室に下がった。

 服を着替え、イツに髪を整えてもらい、部屋の外へ出たところで、時津ときつに会った。

「あら、いたの?」
「はい。旦那さまも、間もなくお戻りになるかと……お嬢さま、お出かけですか?」
「えぇ。今、藤高少尉が、客間にお待ちになっていて……」
「藤高少尉と? どちらにですか?」
「お芝居に。」
「………。」

 時津が押し黙る。時津は、以前、婚約者なら樹が最適だと言っていた。貢と出かけるのは、気に食わないのだろう。

「……じゃあ、行ってくるわね。」

 何か言われる前に、早々に立ち去ろうとしたのだが、

「今日は、五島さんは?」

 ふいに新伍の名を聞いて、一瞬だけ、思考が止まった。だが、すぐに、桜子は、

「五島さん? いいえ、見ていないわ。」

 実際、近頃の新伍は、何か調べごとをしているらしく、屋敷にいないことが多い。桜子もほとんど余分な外出をしていないから、護衛の必要もないのだろう。

 ひょっとしたら、あの手紙は有朋との結婚に反対するもので、相手が藤高貢なら問題ないと判断しているのかもしれない。

「五島さんは、一緒に行かないのですか?」
「五島さんが、私たちと?」

 確かに、新伍が一緒なら心強い。でも、貢との婚約を見据えて互いに理解しようとしているのに、それではいけない。
 新伍がいたら、貢のことを考えるなんて、出来る自信がなかった。

「いいえ。今日は、藤高少尉と二人で出掛けるつもりです。」

 きっぱりと言い切ると、時津は、「わかりました。」と引き下がった。


*  *  *

 貢とともに観覧した、昨今、流行りと評判の芝居は、奇しくも、主演女優が貞岡さだおかしをだった。

 以前、しを乃が、有朋と腕を組んで歩いているのを偶然、目にしたことがある。そのときも目立っていたが、舞台上で見る彼女は、それよりさらに、華やかだった。

 あのときは驚いた派手な化粧も、女性にしては逞しい身体つきも、舞台に登れば、グッと人目を惹きつける武器になる。

 貢が、出掛け先を芝居にしてくれたのは幸いだった。芝居は、それなりに楽しめたし、会話がなくても舞台をみていれば、間がもつ。

(いえ、親交を深めようとしているのに、そんなことを考え方では駄目だわ。)

 桜子は、終演と同時に、

「面白かったですね。」

 思い切って、横の貢に話しかけたが、貢は、「そうですね。」と、素っ気なく返した。

「藤高少尉は、普段から、よくお芝居を見るのですか?」
「いえ、全く。」

 桜子のことを気にする素振りもなく、さっさと座席を立ち上がって歩き出す。桜子は、貢のあとを追いかけながら、

「で……では……なぜ、今日は、この芝居……を?」

 早足で追いかけたせいで、息があがった。

「父が言ったからです。女性から人気があって、流行っている、と。」
「………。」

 話すことが、なくなった。

 いくら理解しようと努めても、本人の思考も嗜好も何一つ分からない。取り付く島がないというのは、まさに、このこと。

 沈黙のまま、芝居小屋の外に出た。

 往来は、賑やかなのに、二人の間の空気は冷ややかだ。

(このあとは、どうするのかしら?)

 この、会話が続かない男とお茶でもしていくのか。正直、気が重い。

(あぁ、でも、やっぱり何か、適当な話題を振らないといけないかしら?)

「…………あの、藤高少尉?」
「…………。」
「えーっと……あの………藤高少尉のお名前は貢、でしたよね?」

 聞くことが思い浮かばなさすぎて、今更、知っていることを聞いてしまった。どうせまた、短い肯定だけがかえってくるのだろう、と思ったとき。

「貢献の貢、と書いて貢です。」

 貢が足を止め、桜子を振り返った。

「貢献の貢?」
「国に対して我が身を献上する、という意味です。父がつけました。」

 長身の貢は、ヒールのあるブーツを履いた桜子より、頭一つ分高い。
 いつも通りの感情の灯らぬ、細く鋭い目が、瞬き一つせず、じっと桜子を見下ろしていた。

「えっと……そ、それって……?」

 貢が、続けて何か言おうと口を開いた瞬間。

「藤高少尉ッ!」

 誰かの呼ぶ声。
 雑踏の向こうから、軍服姿の青年が駆け寄って来る。

「探しました。」
「どうしましたか? 私は本日は、非番のはずですが……。」
「それが、昨日、提出された報告書に不備があるから呼び出せと、塚原少佐が……。」

 聞いた瞬間、貢は、くるりと踵をかえした。

「行くんですか?」

 後輩らしき青年が、露骨に顔を顰めた。

「嫌がらせですよ。塚原少佐の。藤高少尉に嫉妬しているんです。」

 口を挟める雰囲気ではないので、桜子が静観していると、貢は、そんなことは何でもないことだとでもいうように、

「軍において、上官の命令は絶対です。」

 帽子のつばをキュッとなおす。

「仮に嫉妬からくるものだとしても、それに反発することは、私が同じ次元で行動するということになる。」
「………でも、お連れの女性は、良いのですか?」

 後輩が、尚、不満げに食い下がる。

「大事なお時間だったのでしょう? せっかくの逢引の最中に、放り出して行く必要があるんですか?」

 その言葉に、藤高の目つきが一際、険しくなった。

真島まじま。」

 低く響く声で呼んだのは、おそらく、彼の名だろう。青年兵がビクリと身体を震わせた。

「先の清との戦争にも関わらず、この国は平和で、民の暮らしは穏やかだ。何故だと思う?」

 貢が、周りの人たちより頭一つ突き抜けた高い位置から、周囲をくるりと見回した。
 街を歩く人々は、皆、楽しそうにお喋りしながら、団子を食べたり、寄り添い遭って歩いたりしている。

「人によって多少の幸、不幸の差はあれど、総じてみれば、皆、平穏に暮らしている。それは、我々が、軍人としての職分を十分に果たしているからに他ならない。」

 迷いのない、真っ直ぐに突き進む矢のような言い方だった。

「我々は、いついかなる時でも、この国を守るという強い信念と緊張感を持たねばならない。故に、たとえ平時であれど、軍規は絶対だ。」

 分かったか、と問う貢に、真島と呼ばれた兵士は、直立して、「ハッ」と、短い返事を返した。もう、さっきまでの軽口を叩くような雰囲気はない。

「私は兵舎に戻る。真島は、桜子さんを送ってください。」

 桜子が、慌てて、「いえ、大丈夫です。」と首を振る。

「どうぞ、私のことは気になさらず、軍務の方へ。」

 一人で帰れますからと、断ろうとしたら、

「そういうわけには、いきません。園枝さんのことも、あります。」
「辻の人力車を拾います。」
「では、人力車を真島に用意させましょう。」

 遠慮して、「いえ、本当に……」と、断ろうと思った瞬間。雑踏の中に、劇場に向かって歩く、見慣れた黒頭。

「五島さんっ!」

 思わず、呼び止めた。

 桜子の声に、新伍も気づいて、振り返った。かと思うと、こちらの方へとズンズン向かってくる。

「やぁ、桜子さんに、藤高少尉……と、軍人さんは、初めまして。」

 新伍が真島に向かって頭を下げた。真島もよく分からぬまま、つられて下げ返す。

「少尉と桜子さんは、お二人でお出かけですか?」
「……えぇ、まぁ………」

 よく考えたら、帰り期とはいえ、貢と出掛けているにも関わらず、他の男性に声をかけるなんて、失礼なことだった。
 それに、貢と二人で出掛けている、と新伍に改めて言葉にされるのも、心に何かがひっかかるような、気の重さを感じる。

(呼び止めなければ、良かったわ。)

 しかし、当の貢は、全く気にしていないらしい。

「ちょうど良かった。五島さん、桜子さんをお願い出来ませんか?」
「桜子さんを?」
「急遽、上官に呼ばれましてね。兵舎に戻らなくてはならないのです。」
「あぁ、なるほど。」

 真島の存在で、大体の経緯いきさつを察したらしい。新伍は、一瞬だけ、芝居小屋に視線を向けたが、すぐに、

「構いませんよ。」
「良かった。貴方なら安心だ。」

 貢は桜子に、送れない非礼を詫び、真島とともに歩き出した。が、すぐに、貢だけが戻ってきた。
 貢は、桜子の前で立ち止まると、

「先程、言いそびれましたが、私は、『貢』という名に恥じぬよう、命を賭して、この国に我が身を捧げる覚悟があります。この国と、この国の民を守ることこそが、私の本分ほんぶんです。」
「それを言いに、わざわざ戻って………?」
「えぇ、そうです。」

 低く落ち着いた声には、先程、真島を叱責したときのような威圧感はない。

「このことを、どうか、桜子さんの胸にも、よく留めておいて頂きたく。」

 それだけいうと、再び背を向け、去っていった。

 雑踏に混じって、狂いなく同じ速度で響く、軍靴の音。その音は、どんな雑音にも決して、阻まれはしない。自分の行先に、僅かな不安も迷いも感じていないから。

 ついさっきまで、何を考えているか分からなくて不気味だと思っていた貢が、今は不思議と、あまり怖く感じない。

(案外、得体の知れない人ではないのかも。)

 背の高い貢の姿が、時折、人波のむこうに見え隠れしている。

「藤高少尉のことが……少し分かった気がします。」

 あの人は、桜子という個人に興味はない。
 だが、もっと大きなものを守ることが、自分の生きる道だと思い定めている。

「お父さまが、なぜ藤高少尉を私の婚約者の候補に入れたのか、も………」

 桜子が呟くと、新伍が、

「だから、言ったでしょう? 藤高少尉は、悪い人ではない、と。」
「……えぇ、その通りですね。」


 貢の姿が完全に見えなくなると、新伍が

「さて、屋敷に戻りましょうか?」
「………はい。」

 返事をしたものの、このまま戻るのは、何だか名残惜しい、と感じてしまう。

「でも、五島さんは、何か用事があったのでは?」

 先程、桜子が呼び止めたとき、新伍は芝居小屋に向かっていた。

「あー……まぁ、そうなんですが………」

 歯切れの悪い返事。
 まさか、新伍も女の子と芝居でも見に行くつもりだったのだろうか。そう考えたら、いてもたってもいられなくなった。

「あの…私も一緒に行ってもいいですか?」
「え? 桜子さんもですか?」
「何か、用事があったのでしょう? お付き合いします。」
「いや、しかし………」
「駄目………ですか?」
「桜子さんが不快になるかもしれません。」

 やはりそうなのだ。新伍は、女性と会うに違いない。
 手紙のことを調べるって言ったのに。私の護衛をしてくれるって言ったのにーーー。

「お相手の女性のことなら……私は気にしません。」

 腹立ち紛れに、思わず言ってしまい、すぐに後悔した。
 もし本当に女性との逢引だったら、ついていっても、惨めな気持ちになるだろう。やっぱりやめるべきだ。慌てて、取り消して、謝ろうとしたのだが、

「なんだ。僕の用事に気づいていたのですね。」

 それなら、かえって好都合かな、などと呟く。

「桜子さんが、気にしないというのなら、一緒に来ますか? 貞岡しを乃さんのところに。」
「はい!………っえ?」

 勢いよく返事をしてから、『貞岡しを乃』の名に気づく。

 貞岡しを乃。
 今日の舞台の主演女優でーーー園枝有朋の愛人。

「これから、貞岡さんに、お話を聞きに行こうと思っていたんです。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RoomNunmber「000」

誠奈
ミステリー
ある日突然届いた一通のメール。 そこには、報酬を与える代わりに、ある人物を誘拐するよう書かれていて…… 丁度金に困っていた翔真は、訝しみつつも依頼を受け入れ、幼馴染の智樹を誘い、実行に移す……が、そこである事件に巻き込まれてしまう。 二人は密室となった部屋から出ることは出来るのだろうか? ※この作品は、以前別サイトにて公開していた物を、作者名及び、登場人物の名称等加筆修正を加えた上で公開しております。 ※BL要素かなり薄いですが、匂わせ程度にはありますのでご注意を。

【完結】少女探偵・小林声と13の物理トリック

暗闇坂九死郞
ミステリー
私立探偵の鏑木俊はある事件をきっかけに、小学生男児のような外見の女子高生・小林声を助手に迎える。二人が遭遇する13の謎とトリック。 鏑木 俊 【かぶらき しゅん】……殺人事件が嫌いな私立探偵。 小林 声 【こばやし こえ】……探偵助手にして名探偵の少女。事件解決の為なら手段は選ばない。

没入劇場の悪夢:天才高校生が挑む最恐の密室殺人トリック

葉羽
ミステリー
演劇界の巨匠が仕掛ける、観客没入型の新作公演。だが、幕開け直前に主宰は地下密室で惨殺された。完璧な密室、奇妙な遺体、そして出演者たちの不可解な証言。現場に居合わせた天才高校生・神藤葉羽は、迷宮のような劇場に潜む戦慄の真実へと挑む。錯覚と現実が交錯する悪夢の舞台で、葉羽は観客を欺く究極の殺人トリックを暴けるのか? 幼馴染・望月彩由美との淡い恋心を胸に秘め、葉羽は劇場に潜む「何か」に立ち向かう。だが、それは想像を絶する恐怖の幕開けだった…。

時の呪縛

葉羽
ミステリー
山間の孤立した村にある古びた時計塔。かつてこの村は繁栄していたが、失踪事件が連続して発生したことで、村人たちは恐れを抱き、時計塔は放置されたままとなった。17歳の天才高校生・神藤葉羽は、友人に誘われてこの村を訪れることになる。そこで彼は、幼馴染の望月彩由美と共に、村の秘密に迫ることになる。 葉羽と彩由美は、失踪事件に関する不気味な噂を耳にし、時計塔に隠された真実を解明しようとする。しかし、時計塔の内部には、過去の記憶を呼び起こす仕掛けが待ち受けていた。彼らは、時間が歪み、過去の失踪者たちの幻影に直面する中で、次第に自らの心の奥底に潜む恐怖と向き合わせることになる。 果たして、彼らは村の呪いを解き明かし、失踪事件の真相に辿り着けるのか?そして、彼らの友情と恋心は試される。緊迫感あふれる謎解きと心理的恐怖が交錯する本格推理小説。

意識転移鏡像 ~ 歪む時間、崩壊する自我 ~

葉羽
ミステリー
「時間」を操り、人間の「意識」を弄ぶ、前代未聞の猟奇事件が発生。古びた洋館を改造した私設研究所で、昏睡状態の患者たちが次々と不審死を遂げる。死因は病死や事故死とされたが、その裏には恐るべき実験が隠されていた。被害者たちは、鏡像体と呼ばれる自身の複製へと意識を転移させられ、時間逆行による老化と若返りを繰り返していたのだ。歪む時間軸、変質する記憶、そして崩壊していく自我。天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、この難解な謎に挑む。しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、想像を絶する恐怖と真実への迷宮だった。果たして葉羽は、禁断の実験の真相を暴き、被害者たちの魂を救うことができるのか?そして、事件の背後に潜む驚愕のどんでん返しとは?究極の本格推理ミステリーが今、幕を開ける。

人体実験の被験者に課せられた難問

昆布海胆
ミステリー
とある研究所で開発されたウィルスの人体実験。 それの被験者に問題の成績が低い人間が選ばれることとなった。 俺は問題を解いていく…

リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴
ミステリー
 『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。  主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。  それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。  物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。  翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?  翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

マクデブルクの半球

ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。 高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。 電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう─── 「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」 自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。

処理中です...