2週間と200余年と。出会って変わったふたりの始まり。~ハロウィンダンションで

なかむ楽

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05.なにが出るかな?(フラグ的な)①

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   …✮…♱…✮…


 ハロウィン特別フィールド、第5番目・イプシロン。それまでのフィールドとは異なり、常に夜だった。一応時間は流れているようで、月と星は動いている。かなり変わった場所で、すべてお菓子でできている。ハロウィンといえばお菓子だからか?
 真っ暗ではない。夜の草原を一定時間に、ピカピカ発光ながら賑やかな音楽にノって踊っている百鬼夜行ナイトパレードがやって来る。百鬼夜行は冒険者たちを追いかけ回し、あるいは戦っている。──のを、フィーリーたちは回避して進む。

「戦わないんですか?」

「無駄に戦うとこっちが疲弊する。拠点を作って様子見ながら、必要があれば戦うよ。常に探索サーチして」

「サーチ?」

「……モンスターの気配を感じ取れるようにしておいてってこと」

「ここのモンスターは?」

「夜型。アンデッドが多いから闇系呪文の攻撃が効きにくいね。光、雷、炎、風かな? 光や炎は天使の専売だろ? ホーリーアローとか炎の矢とかさ」

「不信心者なのによく知ってますね」

「不信心者だからだよ。セムが死なないなら、治癒は後回しでもいい……と言いたいところだけど。わたしの防具は布なの。あらゆる攻撃に耐性がないからダメージ通過しやすい」

「ああ、露出魔」

「悪魔の仮装。はったおすゾ」

「気軽にDVとパワハラをしないでください」


   …✮…♱…✮…


 近くの森に仮の拠点を作り、周辺を探りサーチしながら地形を読んで、時間をかけて少しずつ進む。
 が、冒険初心者のセムは、わかりやすいトラップにひっかかるため、戦闘をよぎなくされる。
「ばか。ヘタ打ちやがって」と怒鳴ったのは初めの数回。セムは嬉々として光呪文で、上級アンデッドたちを打ち消してしまう。天使のくせにえげつないと思ったが、天使とアンデッドは相容れないものだから、仕方ない。

 10日目。フィーリーは本日の拠点で、焚き火の前で地図を見ながら考え込む。考えながら青い髪をわっさわさ掻き回す。

「……どこに出没するんだよ」

 ジャック・オー・ランタン希少種。
 この10日で戦闘は100戦を超えた。出現モンスターはアンデッド中心。どれもゴキゲンなハロウィン仮装をした中級アンデッドたちだが、特殊攻撃が多かった。そのすべて消滅させたのは、トラップに引っかかったマヌケな張本人だ。

「相変わらず変なところですね」

 焚き火を挟んで反対側にいるセムは、あたりをのほほんと見渡す。落葉樹の森であるが、木々はお菓子でできている。飴やゼリービーンズの木の実に、チョコレートのキノコ。
 クッキーやビスケットでできた木々ならもたれることはできるのに、スポンジケーキやバームクーヘンのような木だと、触るだけでねっちゃりと糖蜜が出てくる。木苺やコケモモは普通に生えているのに、その木はやはりお菓子だった。
 匂いは普通の森林なのだから、鼻はばかになっていない。が、自然の香りのお菓子は食べたくない。落ちているクッキー缶やキャンディボックス、ケーキの箱は、甘ったるい香りと味のお菓子だ。
 流れる川や泉は、ジュースであることが多いのだが、ワインボトルがなっている木に巻きついているツタを切ると、水が出てくるから、それを水筒などに突っ込んで水確保している。

「天界もそうじゃないの? 雲の上を歩いてるんでしょ?」

「天界の端はそうですけど、町は普通ですよ」

「ふぅん」

「聞いたのに興味なさそう」

「興味ない」

 フィーリーの興味は、ジャック・オー・ランタン希少種とナイトランタンだ。

「あと3日しかない」

「その、ジャック・オー・ランタンの情報って本当でしょうか?」

「あ?」

 セムは箱からクッキーを出してポリポリサクサク食べながら言う。よくもまあ、飽きずに菓子ばかり食べられるものだと、フィーリーは呆れた。

「その情報が違っていたら?」

「天使が人を疑うって?」

「人を疑ってるわけじゃないです。間違えたことを信じていたら? ってことです」

「情報屋が間違えた情報を信じてたって?」

「違いますよぅ。フィーリーが間違えたことを信じてるんです」

「素直に正直に簡潔に話せよ」



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