2週間と200余年と。出会って変わったふたりの始まり。~ハロウィンダンションで

なかむ楽

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01. ハロウィン仮装でパリピになろう!①

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 神が作った(らしい)ハロウィン限定特別フィールドが今年も出現した。
 この絶賛開催中の限定特別イベントフィールドにやってきたのは、青い髪がトレードマークの銀バッジ・S級女魔法剣士のフィーリーだった。

 フィールドは、初心者向けのアルファから高レベル者向けのイプシロンまで5つに分かれており、各自・各パーティのレベルに合わせて冒険できる。
 フィーリーは初心者向けのフィールドに足を踏み入れた時に、明るい草原と派手な格好でウロウロしている低級モンスターたちに目が眩んだ。

(わー、ゴブリンたちがパリピだ~)

 仮装したパリピゴブリンたちとローティーンの新米冒険者たちが対峙しているのを見て、初々しさに感動を覚えた。
 が。助ける気は毛頭ない。
 こんな浮ついたイベントフィールドは、さっさとおサラバするつもりだ。いつものパーティメンバーが新しい深層ダンジョンに向かうため、目的をパッパと終わらせて、メンバーと合流したいのが本音である。
 いつもはイベントを無視しているが、今回足を運んだのは目的があった。ジャック・オー・ランタン希少種が落とすらしい、入手困難SS級レアアイテムのナイトランタンをゲットするためである。

 新しい大剣・星降る大剣を作るためには、ナイトランタンが5つも必要だ。その4つは、ムン・ラノク・タミドという雛鳥に似た超レアモンスターを足掛け3年で150頭以上も狩って得たものである。ムン・ラノク・タミドは、攻略困難4つ星ダンジョン・50階から成るエンペラーステー塔の最上層にしかいないし、めったに出現しない。おまけに逃げ足が早い。
 このままムン・ラノク・タミドを狩っていれば、あと2年かかるだろう。
 いつものパーティメンバーとダンジョンやクエストに出かけて所属しているギルドに戻り、休暇中にエンパイアステー塔の高層階までソロで向かい、ひとりでは立ち向かえない相手とは戦わずに身を潜める。ムン・ラノク・タミドと出会うまでひたすら歩いて戦闘を繰り返さなければならない。この2年でレベルがガツンガツン上がり、パーティメンバーのなかで2番目に高くなってしまった。

 そして、あまりにもエンペラーステー塔にいたため、通い始めて半年の時に恋人から「ナイトランタンと俺とどっちが大事なんだよ!」とネチネチ3回も言われてブチ切れた。「おめーより装備品に決まっとろーがっ!」と、蹴りをくれてサッパリ別れた。友人(既婚者・魔法剣士)から「パーティメンバーじゃなくてよかったわ」とあっけらかんと言われる始末。
 冒険者たるもの、恋より装備品・レアアイテムなのである。

『イプシロンに出現頻度は低いが、ジャック・オー・ランタン希少種ってのがいて、通常ドロップでナイトランタンが手に入る』らしい。と、情報屋から高い金を出して情報を得た。
 ナイトランタン自体、市場に出ている数も少なく、1個がフィーリーの有り金と同価格。あとひとつくらい有り金をはたいて買ってもいいが、そうすると、星降る大剣を作る金がなくなる。なんのための素材集めか。

 というわけで、ハロウィン特別フィールドに出向いたのであった。

 が、初心者向けのフィールド・アルファはいつもの防具でいいのだが、ベータから仮装しなければフィールドに入れない。

 ベータは防具の1つを。ベータは防具の2つを。ガンマは3つを。デルタは防具4つを。イプシロンは防具すべてを変えなければいけない縛りがある。
 しかも、防具のレア度は星2つまで。
 フィーリー愛用の防具はレア度星4つのライオンハート・シリーズ。苦労に苦労を重ねて大竜だと魔人だのと戦い、偏屈なドワーフのなかでも頑固な職人気質の鍛冶屋に何度も足を運んで作ってもらった一張羅。これを作る時にもナイトランタンを苦労して2つも揃えた。魔法の盾はさる国の王女からの賜り物。
 S級魔法剣士に恥じない防具の数々を、レア度星2つの魔導服にせねばならない。しかも、仮装ときたもんだ。これだからイベントごとは嫌いなのだ。

 各フィールドの出入り口近くには、妖精が営む小さな村がある。そこで防具が手に入るのだが、どう見てもゴキゲンなパリピ服である。
 さっきも白いタキシード姿の天使、モルモットの着ぐるみ、ミイラ男、ピエロに司教服、踊り子にサキュバス、シスターらの珍妙な1団とすれ違った。

「女性で1番防御率が高いのはこれですねぇ」

 防具屋の妖精が出したものは、白い超マイクロビキニだったが、フィーリーは着る勇気がなかった。下着よりも布面積がないのである。ふざけんな。
 レア度星2つというのは、初級魔導服と同じ。ちょっと丈夫な布の服だ。新米魔法使いたちがこぞって初級魔導服にするくらいには、ありふれた材質。



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