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9.ロゼッタとマシューの正体
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しおりを挟む「やけに魔術に詳しいと思っていました。……便利な魔導具は魔術省からの支給品ですか?」
「変装の魔導具は家の屋根裏部屋で見つけたんだ。懐中時計の魔導具は魔術省の幹部クラスしかもってない。いろいろな使い方があるようだが、俺は集めた情報を文字にしてこいつに送っている」
「よく見せてください」
「だめだ。これはおまえさんのおもちゃじゃない」
「分解したら、ちゃんと組み立てますから」
「それは元に戻らないフラグだ。ほしかったら魔術省に入れ」
「わたしは……、姉さんと暮らすので……」
「はい、不正解。結婚を前提に交際してるんだから、田舎に引っ込んでられない」
「なにを、そんな勝手なことばかり」
とはいえ、照れてしまう。たとえ、今だけの夢だと知っていても。
「あ。消防師さんたちが持っている護符は知人から借りたのではなく、魔術省のものなんですね」
「魔術省の偉い人が知人なんだから、そんなものだろ」
「偉い人って、お父上のことでしょう?」
「伯父か、従兄の可能性は考えないのか」
「あっ。そうですね。普通はそうですよね。我が家は親戚がいないので忘れがちです。……って、わたしのことも姉さんのことも調査済みでしょうけれど」
「紙切れの人物と実際会って感じるものは別だ。三年前に論文・エレメンタルと魔導具を読んだが、こんなにきれいな髪の美女で変わり者だとは思わなかったよ。ファッションセンスが皆無で助かった」
「どうしてファッションセンスが皆無で助かるんですか?」
「……わからなければそれでいい。……で、どこまで話した?」
「お仕事の内容と人並みの魔術師だということまでです」
「おまえさんが規格外なんだからな」
「わかってますよ。だから、わたしはボールドウィン先生の弟子になれたんです。わたしの話はいいから、マシューさんさんの話を聞かせてください」
「そうだな。あらかた話したし、……色仕掛けの話で諦めさせようとした話を詳しくしようか」
誕生日や好きなものを教えてもらいたいが、その話もおおいに気になった。
「ロゼッタが<Queens Head>のドアを元気よく開いた時は、ライアードの詐欺について情報を収集していたんだ。美術品詐欺の次は地金投資詐欺まがいだからな。オヤジどのの後輩であるキャラウェイ卿が話を持ってきたのが、オヤジどのが興味を持ったきっかけだった」
アイザック・アデラードは、未知の錬金術に興味を持った。その日、ライアードは体調が悪いと、錬金術を使う代わりに、黄金のバラを見せられ不自然さを覚えた。
大勢が出席する愛娘の誕生日会で魔術を披露するように招待をした。ライアードが取り入ってくるかと思いきや、彼は愛娘に興味を持った。
「部下からの話じゃ、やつの金遣いは荒くなっている。そりゃあそうだ。この一か月、やつはグレイシアに贈り物を続けてるんだからな。だが、金はきちんと払っている」
「グレイシアさまのお婿さんになりたいのではないでしょうか?」
「それもあるだろうな。マフィアに金を借りているようだから、マフィアと手を切るにはアデラード家の力が必要だと考えてるんじゃないか?」
「マフィア!? 裏切り者は鼻削ぎしてサメの餌にしちゃう恐ろしい組織ですね」
「それは海賊だ。
現在調査中だが、美術品詐欺詐欺の背後にいるようなんだ。だから警察は弱腰になっている」
「警察が姉さんのことを捜査してくれなかったのも……」
「それは証拠不十分だからだろ。事実、やつの地金の話に乗った警察幹部もいるようだから、便宜を図ったのかもな」
「どうしてその警察幹部の人に話を聞かないんですか? ライアードにしてもそうです。権力をこれでもかと行使して連行しちゃえばいいんじゃないですか?」
「美術品詐欺と地金詐欺の罪状だけで、イメリアさんのことは闇に葬るのか? 下手に動いてエレクシルがマフィアの手に渡れば事態は最悪だ」
「……それは」
「第一、ロゼッタ、おまえさんが納得しないだろ。危ないことはさせたくないのは本心だ」
そう言うマシューの手がスカートの上から太腿を撫で回す。現在進行形でロゼッタの身が危険だ。
「やめてくださいっ。オヤジくさいですよ」
「……ショックだ。紳士らしからぬと言わずにオヤジ……」
「三十代からはみんなおじさんです」
「三十は若造だ」
「真っ昼間の野外なんですから、破廉恥な行為は痴漢と変わりませんよ」
「傷つく断り方をするんじゃない。含みを持たせて余裕の笑顔で夜になってからと言うんだ」
「余裕なんて無理ですよ。……だって、触れてもらったら……嬉しくなりますもん」
照れながらマシューを睨むと、彼は挑戦的な笑みを浮かべる。昼間でも色っぽいのはなぜなのか。
「今夜も楽しみにするとしよう」
「だから、そういうのがおじさんですってば」
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