惜しみなく愛は奪われる

なかむ楽

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第二章:牡丹は可憐に咲き乱れる

 二十

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 征十郎が項垂れで出て行ったのを視界の片隅で見たのをちゃんと覚えているし、毅がすれ違い際に『痴れ者が』と言ったのもちゃんと和泉は覚えている。
 けれども、今はどうでもよかった。

 小春日和の陽射しが注ぐ小応接間サロンで恥じらいの崩れた肌をさらけだし、ソファに座っている英嗣のものを夢中になって頬張った。
 英嗣が愛しげに目を細めて微笑むと、触れられていない秘所から淫水が溢れ零れるのが和泉自身にもわかる。それが和泉の気持ちをより淫らにさせる。

「もう……いいですよ」

 頬を上気させた英嗣が立ち上がるように和泉を促した。

「上手にできなくて……ごめんなさい」
「はは。そうじゃありませんよ」

 嬉しそうに笑う英嗣が、しゅんと萎れた和泉を抱きしめる。

「果てるなら、あなたの中がいい」

 臆面なく言われ和泉の恥じらって英嗣に背を向けた。その細い背中を英嗣は幾度かくちづけて、滑らかだと和泉に教える。

「あなたはどこもかしこも優美で可憐だ。よく磨かれた象牙もあなたの肌に劣る」

 英嗣の手が座るように和泉の腰を誘導する。英嗣が見えないのが心許なくて、彼の膝に手をついた。和泉の唾液と英嗣の体液で妖しく照り光るそれが、ぐずぐずになった秘所に触れてひどく嬉しい。
 少し擦れただけでくちゅくちゅ淫猥な音がする。

「腰をおろしても……いい、ですか?」
「待ちきれない?」
「……はい……」
「なにがほしいかおっしゃい」
「……い、いえな……」

 ぬちぬち淫裂の肉を押し上げられ、たまらずに腰が動く。ゆるゆる揺れている乳房を後ろから掴まれ「あゝ」観念した声が出た。

「え、いじさんの……をください」
「僕の、なにをでしょう?」

 和泉の指の爪先が、英嗣の張り詰めたそれに触れた。

「これでいっぱいにして……。英嗣さんで……わたしを……満たして……ください」

 ぐぷと先端を挿れられただけで、和泉は息を長く吐いて歓喜した。

「和泉さん」

 肩を抱きしめてきた英嗣が、濡れた隘路をひと思いに貫いた。

「――っあ、あぁあ…………ぁ」

 ガクガク震える全身が、なかの英嗣の形を教える。あつらえたかのようにぴったり馴染んだそれは、和泉の奥襞を悦ばすように揺さぶり突く。
 激しい英嗣の動きに、呼吸の度に喘いでいるのか、喘ぐたびに呼吸をするのかもうわからない。

「僕と地獄に堕ちてくださるのですか?」
「は、はい……あっ。えいじ、さんとなら……あ、いや。そこはだめっ」
「おや、冷たい恋人だ」
「ちがうの……。いいところに、んん、あたっ……ああっ」

 耐え難い快感にいやいやと首を振る。弱い場所を知っていてなお、英嗣が追い詰めてくる。

「ここもたっぷりと可愛がってさしあげます」
「そこは――……ぁあっ」

 突き上げる英嗣は、ぐちゃぐちゃの泥濘の中の陰核を扱き始めた。身悶えすればするだけ、焦燥と快感に絡み取られる。

「……あっ、ぃい。いいの。――ひぅうっ」

 身体が勝手にびくびく跳ね上がり絶頂を迎えると、英嗣に腰を抱きかかえられた。

「少し、無体をしますよ?」
「ん……。いいです。英嗣さんになら、なにをされても……かまいません」
「じつに、あなたは健気だ」

 抱えられたまま英嗣が立ち上がった。ぐらりとした不安定さに思わず和泉はテーブルに手をついた。

「猫みたいに尻を上げて恥ずかしいですね」
「――ふ、ぅ……ぁ。おっしゃ、らないで……」

 和泉の尻の丸みを撫でながら英嗣は律動を再開した。
パンパン肉がぶつかるほど揺すられて、和泉の目の前はチカチカしっぱなしだ。
 気持ちよくて狂う――とさえ思う。

「和泉さん。地獄なんて生ぬるい場所ではなく、煉獄の炎に焼かれましょう」
「いき……ます。英嗣さんとならどこへなりと……いきます」
「一緒に」

 顎を掴まれ身体を捻らされ、くちづけられた。お互いの舌を絡ませたのち、英嗣がいっそう激しくなかを掻き混ぜ乱す。
 孕まそうとする固い先が和泉の柔らかい奥をめがけて、熱を噴き上げた。

「あ――ぁっ、あぁ……あ」

 初めて英嗣の精を受け取った和泉のなかが戦慄わななき、毒に犯されたように全身が痺れる感覚に陥った。
 ずっとほしかったものを与えてもらえたのだと、恍惚の世界の中で和泉は頬を濡らした。

「この先なにがあっても、あなたは僕のものだ」

 ずるりと出て行った英嗣の熱が、和泉の睫毛の先まで震えさせた。
 力が抜けた和泉は、英嗣の人形のように抱えられた。

「和泉さん。あなたは僕のものですが、僕はあなたのものだ。それをお忘れなきよう」
「……はい」

 もしもの考えは今はいらない。今は愛しい英嗣の腕の中にいる。
 和泉は満足し、ふたりで地獄に堕ちたのだとうっとりと目蓋を下ろした。



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