【R18】電子書籍から淫魔男子を召喚したアラサー女子がおいしく食べられて溺愛されて幸せになる話

なかむ楽

文字の大きさ
上 下
27 / 46
04.粘土の板から機械の板へ

 ♤・05-27・♤ 

しおりを挟む
  
  

  
 世界各国のニュースから株式市場などの金融の変動、最先端の技術から歴史や地理、物理や哲学、天文学までわかる。
 人類は地球を飛び出して月まで行き、太陽系の外に人類の情報を出そうとしている。その方や、宗教の信仰心は残っていて、信心深い人間から無宗教の人間がいるのも知った。
 映画やビデオは特権階級者のものではなく、タブレットで簡単に観られる。映画やテレビ番組から、個人が配信している世界各国の動画サイト。もちろん、そこには人間の性欲を満たす性的な映画や動画も満載だ。女の悦ばせ方、男の悦ばせ方、同性でのまぐわい方。
 チェスやカードゲームはオンラインというもので世界中の人間と遊べるし、他にもウェインが知らない娯楽ゲームが大量にある。
 寝ていたのが悔しくなるくらいだ。
  
「まさに叡智の書だね」
  
 ウェインはタブレットPCに夢中になった。あまりにも夢中になったので、三カ月も飲まず食わずで氾濫する情報を飲み込んでいた。
  
「あれから飲まず食わずの寝ずで、ネット漬けか。現代の一般的な水準を知りたきゃ、人間の心や脳を覗けばいいさ」
  
「それもそうだね。これまでそうしてきたんだし。精気搾取するときに流れてくるけれど……。ソファの上で大学のアーカイブにアクセスできるも、美術館の展示物も見れるのは楽しいよ」
  
 特権階級者や支配者階級が作らせた美術品や工芸品は、現地に行かなければ見られなかったし、オペラやバレエ、交響曲から庶民が続けた伝統音楽は、記憶のものより洗練されており、タブレットPCさえあれば鑑賞できる。
  
 世界中を巻き込んだ大戦後にもネオンや電気、ラジオなどあったが、百年も経たないうちにウェインの想像をはるか超えて、特権階級しか持たなかった技術が一般的になっていた。人間の知識への貪欲さには目を見張るものがある。
 とはいえ、ウェインはそれらを詳しく知りたいとは思わないが。広く浅くでいい。
  
「……人間の科学の進化はすごいと思うけど、根底は変わっていないね。欲だらけだ」
  
「昔に比べりゃ欲望は強くどろっどろしてるぜ」
  
「おまえはよく召還されてるんだっけか」
  
「カジノオーナーやにな。オレだけの要塞にいる、騎士団長を渡り歩くって古臭い言い方もできるが。カジノ街だけじゃなくて、違う国で召喚されることもあるな。黄金や金に対する欲望は人間が進化するごとに深くなっているのがたまらんよ。性欲の塊の人間だって昔より溢れてるさ」
  
「ふぅん」
  
「それに、投資先も増えたぞ。貿易や保険、製鉄、造船だけじゃないからな。インターネットやインフラ整備会社も。いくつか影と名前を使って運用している。昔、おまえが言ったとおりに人間により溶け込んでいるから、おれは奥さんと子供たちと地上にいられる」
  
 シュレヒターはぶ厚い胸を張る。
  
「……で、いつ奥さんに会わせてくれるんだい?」
  
 いたずらめいて言えば、シュレヒターが大声で笑ったあとで、べぇっと舌を出す。
  
「やだね。奥さんと子供たちは俺のものだし、おまえに会わせると……」
  
「俺に惚れちゃうかもって心配してるんだ。笑える」
  
 今度は、厳のような男の太い眉が困らせたように下がる。
  
「きみの奥さんは、仲間を裏切ってきみを選んだんだ。淫魔なんかの薄っぺらい美貌なんかに惹かれないよ」
  
 淫魔が真に惚れる人間など存在しないし、人間が真に惚れる淫魔など存在しない。素材や料理に惚れ込むのことはあっても。それに、シュレヒターの妻は、同族を裏切ってシュレヒターのために堕天したのだから、その愛は不変だ。
  
「で、おまえはいつ現代の魔導書に名前を刻むんだ?」
  
 タブレットで得た知識によると、召喚用の魔導書も進化していた。こういう話は、以前なら秘密結社なり隠秘学者や錬金術師、魔術師たちが密やかに暗号で伝えてきたのだが、現在はインターネット掲示板やSNSという場で話されている。もちろん、普通の人間にはただの雑談に見える暗号文として、意見交換や議論されていた。
 それによると、かなり媒体が増えている。
 たとえば紙の本。これは新聞や雑誌、小説のようなかたちだったり、コミックスというかたちだったりする。実物の本は、昔と変わらず波長の合う人間にしか見えないし手に取れない。
 たとえばインターネット。革新的な技術で作られた電子の蜘蛛の糸、あるいは仮想の海の世界のなか、らしい。いまだに、ウェインにはピンとこない話だ。
  
「うーん。もう少し先にしようかな。ニューヨークの美術館にも行きたいし、パリの美術館にも行きたいから」
  
「そうか。それなら相談に乗ってくれないか。今度はレアメタル採掘か製薬会社に投資しようと思っているのだが」
  
「レアメタルなら、きみを召喚した人間に見つけさせたほうがリスクは少ないんじゃないか? 投資するなら製薬会社だね。製薬会社だって研究するのに金はいくらでもほしいんじゃないかな? 世界的に高水準な会社や新しい組織……高レベルの大学と連携しているところがいいかもね。あと、キナ臭い国がある」
  
「こんなのどこにでもあるだろ」
  
 人間の技術や科学が発展すれば、それだけ人間が人間を屠るための技術が発展している。
 便利な世の中の平和と戦争は表裏一体ともいえる。インターネットも軍事目的の技術だったらしいとウェインは知った。
  
「……そうだね。そういうのが好きな悪魔もいるしね。そういうやつらからしたら、現代はご馳走だらけだ」
  
  
  
 ウェインはニューヨークから出発して、欧州を旅して、美術館とクラシックコンサート、オペラ、ミュージカルを楽しんだ。それから、ライブハウスや映画館も。
 やはり、実際に見て感じるものは違うし、大きな戦争の爪痕は博物館というかたちで残されていた。
 新技術搭載の自動車やバイクにも乗り、運転してみた。風脈に乗り移動するほうが速いし楽だが、自動車やバイクにはそれなりの面白みがあった。電車やトラムにも乗った。昔の汽車とは比べ物にならない速度で移動できるし、イスの座り心地が違う。
 身分よりも金。金のない貴族より金のある平民のほうがいい生活を送り、持ち上げられている。
  
 移動するあいだに、過去にシュレヒターと作った会社や投資した会社も巡っていた。そのもののかたちやシステムは違えど、根底は変わっていない。人間社会に溶け込みやすく、祓魔師に目をつけられにくいための防波堤の機能はしている。
  
(それに、この手型カードが役に立つのはわかった)
  
 黒い本革のフラグメントケースごとシュレヒターがくれた。昔はもっと大きかったし、そのはるか昔は金貨を入れる袋だった。
 悪魔や淫魔には通貨は不必要だが、祓魔師をより欺くには通貨が必要だ。
  
 一度、シュレヒターのいるホテルに戻った。電子という世界にその名を刻むためには、媒体となるパソコンなりタブレットPCが必要だからだ。やり方とパソコンなりを買えばいいのだろうが、契約という言葉がウェインを躊躇わせた。
  
「よぉ、兄弟。早い戻りだったな」
  
 一年。ウェインたちの時間感覚では、一日のような感覚だ。
  
「まあね。インターネットに名前を刻もうと思って」
  
  

 呪符や魔導書に名前を刻むのと同じ要領だった。媒体は変わっても本質は変わらない。
 召喚の魔導書は、召喚者が好むかたちに自動的に変換されるのだから、あとは召喚されるまで待てばいい。
 ウェインはシュレヒターのホテルでタブレットPCやテレビを観る隠遁ひきこもり生活をしていた。
  
(買わなきゃいけないってわかってても、寝転がってると、つい魔術でビール出しちゃうな)
  
 無から有にはならない。ウェインの手のなかにある瓶ビールは、どこかの倉庫か小売店店頭から消えている。
 インターネット通販というのも気になったので、何度か利用して現代のアダルトグッズを購入して動かし方を知ってから、シュレヒターに押しつけた。ほかにも、ジャパンのコミックスも取り寄せた。ジャパンのコミックスでは悪魔や淫魔は敵ではなく、仲間や味方である文化の違いに驚いた。
 シュレヒターの話では、祓魔師が少ない国のひとつで、シュレヒターの子供たちの好きな国らしい。
  
 イギリスの南西地の屋敷に戻り、これからどうやって暇をつぶそうかと考えていた。
 そんなある日だった。新聞を読み終えたばかりのとき、身体を魔力が満ちた光と文字が足元から立ち上った。
  
(これは……召喚だ)
  
 眠りにつく前から百年以上の召喚だ。選り好みが激しく、グルメなウェインに合う人間がウェブの大海の向こうにいた。



しおりを挟む



  ☽・:*

よかった、おもしろかった、好み…、続き読みたいな、などありましたら、イイネや★、ブクマなどで応援してもらえると励みになります!!and嬉しいです!!よろしくお願いします☺


感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪

奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」 「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」 AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。 そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。 でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ! 全員美味しくいただいちゃいまーす。

処理中です...