【R18】電子書籍から淫魔男子を召喚したアラサー女子がおいしく食べられて溺愛されて幸せになる話

なかむ楽

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03.あんしんモードでまったりと

 ❦・01-17・❦ 

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 ・・・✦・✧︎・✦・・・
  

 仲秋の初め。千綾は、無事にマネージャー候補からマネージャーに昇進した。試用期間がようやく終わった、という感じだ。
 そして今夜は、会社の飲み会に参加している。直属の男性ディレクターが育休を取るのだ。
  
「奥さん、三人目を産む予定なんだ。だから、お姉ちゃんたちのお世話と新生児ちゃんのお世話をするんだよ~」
  
 親バカ大全開のディレクターが微笑ましい。
 新しいディレクターが着任するまで、ディレクター補佐を頼ることになる。ディレクター補佐は仕事ができる完璧な女性だから、不安はない。
 和やかな一次会が終わり、ほとんどの人は二次会に向かうが、千綾は飲み会に誘われた日から二次会の断りを入れている。
 ウェインといちゃいちゃしたい。という本音があるから、ノンアルコールに徹した。
 恋人になって、まだひと月。蜜月中の蜜月。甘い時間をすごしたい。

「それじゃ、安城さん」
「気をつけて~」

「ありがとうございます。ディレクターもパパがんばってくださいね!」

「おう! パパ活がんばる!」
「ディレクター、意味違いますって~」
「知ってるってば」

 笑い合うグループが離れていき、千綾はひとりになる。すぐにタクシーを拾うつもりだったが、繁華街のタクシーはなかなかつかまらないので、駅前まで歩くことにした。

「お嬢さん」

 ナンパにしては変わった声かけだったため、千綾はつい振り返ってしまった。
 そこには、黒い服に黒いコートを着た、背の高い男が立っていた。目深にかぶった黒いフードのせいで顔がわからない。ハロウィン先取りをしたコスプレイヤーだろうか?

「お嬢さん、悪いモノに取り憑かれますよ」
  
(うわ。やべーヤツだ)

「私は祓魔師と言います」
  
(ふつまし? どこかの県のなに市の人? ふつま市の人ってこと? 地元からの自己紹介? ヤバい人なのは確かだわ)
  
「面識のないあなたとは話すことはなにもありません。しつこいと緊急通報しますよ」

 千綾はタクシーを呼ぼうとしたスマホをかざす。不審者への脅しには充分だ。
  
「今日のところは退散してあげましょう」

 黒づくめの男は、コートをひるがえして去っていった。緊急通報をされたくない、身の上……、やはり不審者だったのか。
  
  

「──っていう、ヤバい人に声をかけられたの。気味悪いよね」
  
 ウェインと駅前で待ち合わせをして、クチコミ最良店の高級焼肉店に行った。予約した個室に入り、隣り合わせでブランド牛を焼く。
 食べ頃に育った肉はウェインがお皿に盛ってくれるから、隣り合わせで座っている。
 完全個室でウェインといると、神戸牛とハイボールは極上の完全栄養食だ。
 適度な霜降り牛には、特別な焼肉のタレは必要ない。シンプルなワサビ醤油が牛肉本来の旨味を引き出して、舌の上でとろとろにさせる。お店特製のポン酢にすると、さっぱりとした味わいになる。そして、ハイボール。永久機関になる。
  
「で、変な匂いがするんだ」
  
 千綾はクンクンと袖の当たりを嗅ぐが、焼肉とキムチの匂いしかしない。
 換気に気を使っている高級店でも、焼肉はやはり焼肉特有の匂いが染みつく。

「えー? 不審者の臭いがするの? うぇ。キモ。帰ったらお風呂直行する」
  
「嗅覚的な匂いじゃないよ。霊的なモノ。ちいは俺のものだから、簡単にマーキングされないよ」
  
 ウェインは生ビールをごくごくと喉仏を上下させて嚥下する。彼氏の喉がセクシーすぎて、千綾は見とれていた。
  
「祓魔師か……。そうだね。守りを強化しようか」
  
 少し考え込んだウェインは、千綾に耳打ちをする。

「脳イキ、覚えようよ」

 ここは人気の高級焼肉店で、完全個室だから、誰かに聞こえないだろうが。飲食店でなんてことを言うんだと、千綾は目を丸くさせた。
 でも、ウェインの欲が灯った青い目を見ているうちに、ハイボールとは違うもので顔が赤くなるのがわかる。

「さ、催眠的な?」

「俺は淫魔だからね、そういうのは特技で特性なわけ。だけど、ちいには使わないよ。好きな人に催眠術なんか使っても虚しいでしょ。それに、元からちいには俺の魅了も催眠術も効かないんだ」

「脳……どうやるの?」

「言葉や性感帯以外の場所の触れ合いでイくだけ。ちいはスケベな妄想得意だし、ナカイキも覚えたからすぐにイけるよ」

「スケ……、妄想……って。ひどいよ」

 指摘のとおり、ウェインと会うまで、えっちなマンガを読み耽っては、スケベな妄想ばっかりしていた。
 そうでなければ、未だにえろマンガを多めに買っていない。


 ・・・✦・✧︎・✦・・・

  
 帰宅をすると、先にウェインが入浴をした。その後、千綾が入浴をした。今日はふたりで入ろうと言わなかったから。久々にひとりで入浴すると、返ってドキドキしてしまう。
 秋用のペアパジャマに着替えて、寝室へ向かう。と、寝室の雰囲気が変わっていた。
 薄暗くした部屋。ロウソクの光を演出するLEDのルームランプ。心地よいルームフレグランスがほのかに香る。そして静かなチルい曲が流れている。
 大好きな人とベッドに隣り合って座る。さほど広くない部屋に、シングルベッドがふたつ並んでいる。先週、ウェインの提案でベッドを新調した。
 広々と寝るためであり、セックスのためである。余分なスペースがなくなったぶん、ふたりのための部屋という感覚がして、とってもいいなと思う。
 でも、ロウソクのようなLEDランプは買ってなかった。きっと、ウェインが前もって用意し、魔術(?)でどこかに隠し持っていてくれたのだ。千綾のために。

(細やかな心配りをしてくれる、ウェインが、好き……)

 柔らかな灯りが、ウェインのシャープな顔を縁っていて、とても淫靡だ。

「最初は目隠ししようか」
  
 目隠しプレイは初めてだ。ウェインがしてくれるのだから不安よりも、ときめきが強い。
 目隠しをする布は、ただの布ではなく、繊細な黒いレースだった。目を開けようとすれば開けられるが、目隠しというからには目を開けてはいけない。
  
「脱がすよ」
  
「うん」
  
 目隠しをしているため、ウェインがどう脱がせ、どこを見るのかわからなくて、妙な緊張とときめきが高まる。
 パジャマもナイトブラもショーツも脱がされたが、背中に布らしきものを掛けられた。ウェインのミステリアスな香水が鼻腔をくすぐるから、ウェインのシャツかなにか、薄いものだ。
 ベッドは音もなくたわむ。ウェインが買ってくれたふたつの高級シングルベッドは、軋むことを知らない。どれだけ激しくウェインに責められても、ベッドのたわみが千綾を守ってくれる。
  
(後ろに、ウェインが……)

 背後にウェインのぬくもりを感じた。期待した身体がたやすく疼き始める。
 ウェインの身体に背中どころか全身をゆだてる。深く座らされた千綾の手足をゆったりと投げ出すように彼の手と言葉で誘導された。
 ──裸を見られている。
 今さらだけれど。でも、こんな風に裸を見せると、言葉では言い表せない恥じらいがやってくる。
 さらけ出したすべてを、ウェインの青い瞳が見ている。そう、思うだけで、慣らされた身体からじゅんと愛蜜が湧き出るようだ。



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