17 / 46
03.あんしんモードでまったりと
❦・01-17・❦
しおりを挟む・・・✦・✧︎・✦・・・
仲秋の初め。千綾は、無事にマネージャー候補からマネージャーに昇進した。試用期間がようやく終わった、という感じだ。
そして今夜は、会社の飲み会に参加している。直属の男性ディレクターが育休を取るのだ。
「奥さん、三人目を産む予定なんだ。だから、お姉ちゃんたちのお世話と新生児ちゃんのお世話をするんだよ~」
親バカ大全開のディレクターが微笑ましい。
新しいディレクターが着任するまで、ディレクター補佐を頼ることになる。ディレクター補佐は仕事ができる完璧な女性だから、不安はない。
和やかな一次会が終わり、ほとんどの人は二次会に向かうが、千綾は飲み会に誘われた日から二次会の断りを入れている。
ウェインといちゃいちゃしたい。という本音があるから、ノンアルコールに徹した。
恋人になって、まだひと月。蜜月中の蜜月。甘い時間をすごしたい。
「それじゃ、安城さん」
「気をつけて~」
「ありがとうございます。ディレクターもパパがんばってくださいね!」
「おう! パパ活がんばる!」
「ディレクター、意味違いますって~」
「知ってるってば」
笑い合うグループが離れていき、千綾はひとりになる。すぐにタクシーを拾うつもりだったが、繁華街のタクシーはなかなかつかまらないので、駅前まで歩くことにした。
「お嬢さん」
ナンパにしては変わった声かけだったため、千綾はつい振り返ってしまった。
そこには、黒い服に黒いコートを着た、背の高い男が立っていた。目深にかぶった黒いフードのせいで顔がわからない。ハロウィン先取りをしたコスプレイヤーだろうか?
「お嬢さん、悪いモノに取り憑かれますよ」
(うわ。やべーヤツだ)
「私は祓魔師と言います」
(ふつまし? どこかの県のなに市の人? ふつま市の人ってこと? 地元からの自己紹介? ヤバい人なのは確かだわ)
「面識のないあなたとは話すことはなにもありません。しつこいと緊急通報しますよ」
千綾はタクシーを呼ぼうとしたスマホをかざす。不審者への脅しには充分だ。
「今日のところは退散してあげましょう」
黒づくめの男は、コートをひるがえして去っていった。緊急通報をされたくない、身の上……、やはり不審者だったのか。
「──っていう、ヤバい人に声をかけられたの。気味悪いよね」
ウェインと駅前で待ち合わせをして、クチコミ最良店の高級焼肉店に行った。予約した個室に入り、隣り合わせでブランド牛を焼く。
食べ頃に育った肉はウェインがお皿に盛ってくれるから、隣り合わせで座っている。
完全個室でウェインといると、神戸牛とハイボールは極上の完全栄養食だ。
適度な霜降り牛には、特別な焼肉のタレは必要ない。シンプルなワサビ醤油が牛肉本来の旨味を引き出して、舌の上でとろとろにさせる。お店特製のポン酢にすると、さっぱりとした味わいになる。そして、ハイボール。永久機関になる。
「で、変な匂いがするんだ」
千綾はクンクンと袖の当たりを嗅ぐが、焼肉とキムチの匂いしかしない。
換気に気を使っている高級店でも、焼肉はやはり焼肉特有の匂いが染みつく。
「えー? 不審者の臭いがするの? うぇ。キモ。帰ったらお風呂直行する」
「嗅覚的な匂いじゃないよ。霊的なモノ。ちいは俺のものだから、簡単にマーキングされないよ」
ウェインは生ビールをごくごくと喉仏を上下させて嚥下する。彼氏の喉がセクシーすぎて、千綾は見とれていた。
「祓魔師か……。そうだね。守りを強化しようか」
少し考え込んだウェインは、千綾に耳打ちをする。
「脳イキ、覚えようよ」
ここは人気の高級焼肉店で、完全個室だから、誰かに聞こえないだろうが。飲食店でなんてことを言うんだと、千綾は目を丸くさせた。
でも、ウェインの欲が灯った青い目を見ているうちに、ハイボールとは違うもので顔が赤くなるのがわかる。
「さ、催眠的な?」
「俺は淫魔だからね、そういうのは特技で特性なわけ。だけど、ちいには使わないよ。好きな人に催眠術なんか使っても虚しいでしょ。それに、元からちいには俺の魅了も催眠術も効かないんだ」
「脳……どうやるの?」
「言葉や性感帯以外の場所の触れ合いでイくだけ。ちいはスケベな妄想得意だし、ナカイキも覚えたからすぐにイけるよ」
「スケ……、妄想……って。ひどいよ」
指摘のとおり、ウェインと会うまで、えっちなマンガを読み耽っては、スケベな妄想ばっかりしていた。
そうでなければ、未だにえろマンガを多めに買っていない。
・・・✦・✧︎・✦・・・
帰宅をすると、先にウェインが入浴をした。その後、千綾が入浴をした。今日はふたりで入ろうと言わなかったから。久々にひとりで入浴すると、返ってドキドキしてしまう。
秋用のペアパジャマに着替えて、寝室へ向かう。と、寝室の雰囲気が変わっていた。
薄暗くした部屋。ロウソクの光を演出するLEDのルームランプ。心地よいルームフレグランスがほのかに香る。そして静かなチルい曲が流れている。
大好きな人とベッドに隣り合って座る。さほど広くない部屋に、シングルベッドがふたつ並んでいる。先週、ウェインの提案でベッドを新調した。
広々と寝るためであり、セックスのためである。余分なスペースがなくなったぶん、ふたりのための部屋という感覚がして、とってもいいなと思う。
でも、ロウソクのようなLEDランプは買ってなかった。きっと、ウェインが前もって用意し、魔術(?)でどこかに隠し持っていてくれたのだ。千綾のために。
(細やかな心配りをしてくれる、ウェインが、好き……)
柔らかな灯りが、ウェインのシャープな顔を縁っていて、とても淫靡だ。
「最初は目隠ししようか」
目隠しプレイは初めてだ。ウェインがしてくれるのだから不安よりも、ときめきが強い。
目隠しをする布は、ただの布ではなく、繊細な黒いレースだった。目を開けようとすれば開けられるが、目隠しというからには目を開けてはいけない。
「脱がすよ」
「うん」
目隠しをしているため、ウェインがどう脱がせ、どこを見るのかわからなくて、妙な緊張とときめきが高まる。
パジャマもナイトブラもショーツも脱がされたが、背中に布らしきものを掛けられた。ウェインのミステリアスな香水が鼻腔をくすぐるから、ウェインのシャツかなにか、薄いものだ。
ベッドは音もなくたわむ。ウェインが買ってくれたふたつの高級シングルベッドは、軋むことを知らない。どれだけ激しくウェインに責められても、ベッドのたわみが千綾を守ってくれる。
(後ろに、ウェインが……)
背後にウェインのぬくもりを感じた。期待した身体がたやすく疼き始める。
ウェインの身体に背中どころか全身をゆだてる。深く座らされた千綾の手足をゆったりと投げ出すように彼の手と言葉で誘導された。
──裸を見られている。
今さらだけれど。でも、こんな風に裸を見せると、言葉では言い表せない恥じらいがやってくる。
さらけ出したすべてを、ウェインの青い瞳が見ている。そう、思うだけで、慣らされた身体からじゅんと愛蜜が湧き出るようだ。
11
☽・:*
よかった、おもしろかった、好み…、続き読みたいな、などありましたら、イイネや★、ブクマなどで応援してもらえると励みになります!!and嬉しいです!!よろしくお願いします☺
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。


義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる