【R18】電子書籍から淫魔男子を召喚したアラサー女子がおいしく食べられて溺愛されて幸せになる話

０１．電子書籍だとっ？

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「…………ただいま」
　 
　千綾ちあやは誰もいない部屋に帰宅を小さく告げて、部屋の電気をつける。
　区外の新築マンションの２ＬＤＫ一戸を購入したのは二年前。当時付き合っていたセフレが、家賃払うくらいなら区外に購入したほうがいいよ！　と言っていたので、ちまちま貯めていた結婚資金のなかから前金を出して、マンションを購入した。
　月々のローン返済はこれまで住んでいた区内の家賃と同額だし、自分が住みやすいようにキッチンや水周りなどある程度変更できたから、現在住み心地はいい。駅まで徒歩圏であり、勤め先へのアクセスがそこそこいいのも好条件だ。
　 
　当のセフレは、その直後に後輩を妊娠させたから結婚すると言っていたので、サクッと関係を終わらせて、連絡先もなにもかも削除した。
　セフレを持つ前は、結婚を考えていたカレシがいたのだが、心変わりをされてしまった。それが心の傷になっているのか、それ以来、恋から遠のいて久しい。が、セックスはしたかった。ウェットな付き合いやデートのない都合のいい関係を求めた千綾もたいがいのダメ女だ。でも、風俗は怖かった。
　そもそも。多大なストレスを抱え、毎日でもセックスしたいエロ女だったので、自分をセックス上手と勘違いしていたセフレでは満足していなかったのも、アッサリ別れた一因でもある。
　それ以前のカレシからは、『気と性欲が強すぎてついてけねぇよ』と言われ心変わりをされ、その前男はのはただカレシほんにんだけが気持ちよくなっているだけで、千綾は痛いだけだったし、独りよがりな性格も嫌いになった。
　他人の手で絶頂経験など、人生三十年で一度もしたことがない。きっと都市伝説なのだ。

（はー。疲れたぁ……）
　 
　食事を済ませて帰宅したから、千綾は冷蔵庫の冷凍室を引き出してコンビニアイスをしまい、風呂に向かう。
　 
（今週はヘアサロンの予定で、翌週金曜が飲み会か）
　 
　アラサーからが女よ！　少なくなった同期は力強く言っていた。
　 
（婚活しなきゃだし、メイクと着るものも男ウケ狙わなきゃなのか。うわぁ……めんど。適当にファッション雑誌の真似をすればいいのはわかってるんだけどね～。ウケ狙いする服買うのが出費が痛いわ）
　 
　スマホの某総合オンラインショップのアプリをタップする。目的のファッション雑誌をカートに入れると、（あなたにおすすめです〉マンガがピックアップされた。
　どれも目を見張るほどのえっちなマンガだった。性欲を持て余しているのがどうしてバレた？　否、えっちなマンガしか買ってないのでオススメピックアップがえっちなマンガなのだ。
　 
（あ、このマンガ。絵がかわいい。好み～）
　 
　電子化されたえっちなマンガは、書店で恥ずかしい思いをして買わずに気軽にポチれるのもいい。
　一般的なマンガなら本棚にしまえるが、えっちなマンガだと隠さなきゃいけない気がして、リアル書籍は購入をためらってしまう。しかし、買ってないとは言ってない。少女マンガっぽいえっちなマンガは、ベッド下の箱のなか。
　電子ならサクサク買えて、通勤電車のなかでも職場の休憩中、入浴中、寝る前にサクサク読め、お気軽に気になった部分をがっつりズームできるのもいい。千綾にはメリット尽くしだ。ただし、ダウンロードリストとブックマークは誰にも見せられない。
　気軽に買えるので、週に何冊も買っているし、単話が更新されるたびにウキウキする。買いすぎである自覚はあるが、ストレスと性欲を持て余しているのでマンガで日々癒しを気軽に得ている。気楽な出費のはずなのだが、普通のマンガとえろマンガの費用は月に二～三万円を軽く超えている。が、千綾の生（性）活に必要不可欠な出費なので、生活必需品なのである。彼氏がいて、どこかに出かけるなり、服に気遣うよりは出費が少ないからヨシとする。ギャンブルをするわけでもない、旅行好きなわけでもない、ゲームに重課金するわけでもない、ささやかな趣味である。そう、趣味はお金がかかるから趣味なのである。
　 
（よし、購入っと）
　 
　入浴剤を選びお風呂に入って、リラックスできるアロマを焚き、アイスを食べてビールを飲みながら電子書籍を読む。
　ファッション雑誌ではなく、えっちなマンガを先に選んだ。やりたくないことを先延ばしにしたくないが、やはり、求める癒しと持て余している性欲には勝てない。
　 
（かわいい絵なのにドチャクソえっちというギャップがいい）
　 
　イケメン淫魔男子を現実社会に召喚したアラサーが、ものすごくえっちなことをされちゃう。という内容であった。いわゆる淫魔モノである。
　試し読みでも充分えっち度が高かったから、本編ももれなくスペシャルえっちなのを確信している。
　目がコマを追い、指が次の画面をタップする。
　 
（わ。アタリだった。このマンガ）
　 
　イケメン淫魔の頭にはツノが生えて背中にはコウモリの翼があり、尻尾が生えている。それ以外は人間と変わらないが、海苔貼りされた男性器がえげつなく大きい。そして、トロトロえちえちハート目になったアラサーヒロインちゃんにとんでもなくえっちなことを……。
　 
（えっち百万倍、五兆回イイネボタン押したい。乳首責め、クリ責め、潮吹き、断面図ポルチオ責めからの種付けプレス……そして、快楽堕ちエンド。えっちフルコースだ。良書に出会ってしまった。安城あんじょう千綾えっちマンガ大賞優勝！　淫魔さんもえろかっこいい～。顔がいいアンド顔がいい！　ビジュもボディも海苔貼りガチガチ男性器も最高峰！　我がえろマンガ人生に悔いナシ最良の好みのキャラ！　スケベだけじゃなくて、ラストに堕ちたヒロインちゃんを幸せにするのもヨキかな。やっぱりハイスペ男はフィクションに限る！　残りのビールもおいしく感じる～）
　 
　上げたテンションのまま、飲み干したビールの空き缶をローテーブルにおいて、乳房に手をやり、ベッドに寝転ぶ。短パンのそこへも手を伸ばし、少し潤っているそこを慰めようとしたのだ。が。
　どん。と、なにか固いものに当たった気がした。気がしたのではなく、当たった。
　まるで、誰かにぶつかったような感触。
　慌てて座り直して、後ろを振り返る。事故物件ではなかったとギクリとする。新築だったのだから心霊的なアレではないはずだ。
　 
「へ？」
　 
「やあ。召喚したのはきみ？」
　 
「えっ？　えっ？」
　 
　マンガのなかにいた淫魔を実写化したらこんな感じのイケメンだ。という、イケメンがスーツ姿で寝転び、微笑んでいる。
　甘すぎないスマートな美貌には、海外の俳優みたいな端正さと爽やかさと、２．５次元の舞台俳優ように完成された美貌の金髪青眼の好みドンピシャを足して割って、いいとこ取りをした奇跡のイケメンがいた。そして、頭からはにょっきりと黒いツノが生えている。というか、マンガから飛び出してきたような、鑑賞的美貌を持つ優しげな、淫魔コスプレ２．５次元スーツ男子だ。
　 
「……夢？　ビールで幻覚？　んなわけないか。夢だな、うん」
　 
　夢ならば、いつ寝たというのか。寝入りばなはわからないから、いつの間にか寝てしまったのだろうか？
　ストレスを溜め込みすぎて失神するかのように寝入ったのだ、たぶん。そうに違いない。そうでなければ、自宅に２．５次元的金髪イケメンが突然現れる怪現象が起こるはずない。怪現象というか、奇跡だ。奇跡は起こらないから奇跡なのだ。
　 
「夢だと思ってるの？　残念。夢じゃないよ。でも、夢のような体験させてあげる」
　 
　声は声優みたいな破壊力のある超イケボバリトンボイスだ。好みすぎて耳心地がいい。シチュエーションボイスのようだ。
　 
「はー、なるほど。夢だから！」
　 
　夢に見るほど男に飢えているのか。性欲を持て余しているが、それはそれで悲しい。