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第12話 作戦
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俺の手はただ震えていた。大きくなる鼓動と同時に掠れゆく文字。
全員魔王幹部クラスの模様
内容は変わらず、俺に非情な現実を突きつけていた。
「魔王様...俺って魔王幹部の中で、その、どのくらい強いんですかね?」
魔王は俺の震える手を覗き、腕を組んで考える素振りをした後、思い切り頭を下げた。
ん? どう言うことだ?
なんでそんな動作するんだ? なんか心配になる。
「申し訳ない! 黙っていたことがある」
「え...何ですか?」
「じつは...じつはの...」
彼女は手に持っていた麦わら帽子を胸に抱き、俯いた。
「魔王幹部というのは、自身の強さの他に担当の魔王の強さが加算されるのじゃ...」
ん? どういうことだ? そんなの聞いたことないぞ。
「魔王様、なんの冗談を言ってるんですか?」
「スピノ。魔物学校では教えられないことは多々あるのじゃ。そのうち一つが精神の老化について、そして今スピノの目の前に現れた事実がこれじゃ」
魔王幹部は自身の強さに魔王の強さが上乗せされる...
これが何を意味しているか...
「スピノ、言わずもがなじゃが...妾は最弱の魔王じゃ...しかもダントツの」
そう。つまり
「スピノ、お主はかなり弱い魔王幹部なのじゃ」
最弱魔王幹部
どうしたことでしょう。我が軍は最弱魔王幹部一人。対する敵軍は最強魔王幹部三人。勝算は...
雷に当たる方が高そうだ
「シルクち...いや、魔王様。やっぱり逃げましょう? よく分かりませんけど、勝てなさそうですし」
ローゼさんが再びソワソワし出した。確かに彼女の今置かれている状況はかなり深刻だろう。
目の前に戦力がいる。敵軍に対しては取るに足らない程度であろうが、多少足止め出来る強さはあることは想像できる。
町民を守るため、自分の命を守るために俺らを利用するのもでだろう。
しかし、良心の呵責からだろうか、彼女は俺らを利用するという判断はしなかった。
「いや、戦うぞ。スピノ」
「死ぬ気でってことですか?」
魔王は麦わら帽子を被り直し、二回首を横に振った。
「妾達の勝算は100パーセントじゃ。それもただの勝利ではない、圧の字がつくほどのものになるじゃろうな」
何を言っているんだこの魔王。力の差は歴然、どうやって勝つって言うのか。
「戦争は総力戦じゃ、個人の力だけで決まるものではない。こちらには物資が山ほどあるじゃろう?」
にやけ顔でこちらを見てくる。物資...? そんなものあったか?
「ローゼさん。この町って特産品とかあるんですか?」
「そうじゃない! 妾達で取ったであろう。スライムのうんちを」
確かに俺らには今山ほどスライムジュエルがある。それもほぼ新品のゲル状のものだ。
しかし、それがどうしたと言うのだろう。
「魔王様しかし、これらをどう活用すると言うのですか?」
「ふっふっふっ。ローゼよスライムジュエルの活用法を言ってみなさい」
指を差されたローゼさんは腕を組み、空を見上げた。
「あ、薬の原料ですね」
「それ以外じゃ」
それ以外? 俺が魔王に聞かされたのはそれだけだ。他にもあるのだろうか。
ローゼさんは唸った。
「いや、知らないです」
「ふっふっふ、そうじゃろそうじゃろ」
魔王は口を押さえて笑い始め、次はこちらに指を差した。
「スピノよ! 再びスライムジュエルを取りに行くぞ! ついでにスライム達も仲間にする」
俺の憂鬱は予想以上に早くやってきた。
「あの、もしかしてピンクの子もですか?」
魔王はニコニコ顔で首を縦に振った。
あぁ...またか、またあのゴミを見るような目で見られなきゃいけないのか。
「お主もピンクの誤解を解きたいじゃろ?」
「あれはもはや誤解ではないですけどね...」
「まぁ、黙ってうんちを取ったのは悪かったの。でもじゃ、ピンクもスライムと言っては大人の年齢じゃ! 話を聞けば分かってくれるじゃろう」
彼女はそう言うと先ほど居た山の方向へと走り出した。
あぁ...今のうちにスピーチの内容考えておこう。
全員魔王幹部クラスの模様
内容は変わらず、俺に非情な現実を突きつけていた。
「魔王様...俺って魔王幹部の中で、その、どのくらい強いんですかね?」
魔王は俺の震える手を覗き、腕を組んで考える素振りをした後、思い切り頭を下げた。
ん? どう言うことだ?
なんでそんな動作するんだ? なんか心配になる。
「申し訳ない! 黙っていたことがある」
「え...何ですか?」
「じつは...じつはの...」
彼女は手に持っていた麦わら帽子を胸に抱き、俯いた。
「魔王幹部というのは、自身の強さの他に担当の魔王の強さが加算されるのじゃ...」
ん? どういうことだ? そんなの聞いたことないぞ。
「魔王様、なんの冗談を言ってるんですか?」
「スピノ。魔物学校では教えられないことは多々あるのじゃ。そのうち一つが精神の老化について、そして今スピノの目の前に現れた事実がこれじゃ」
魔王幹部は自身の強さに魔王の強さが上乗せされる...
これが何を意味しているか...
「スピノ、言わずもがなじゃが...妾は最弱の魔王じゃ...しかもダントツの」
そう。つまり
「スピノ、お主はかなり弱い魔王幹部なのじゃ」
最弱魔王幹部
どうしたことでしょう。我が軍は最弱魔王幹部一人。対する敵軍は最強魔王幹部三人。勝算は...
雷に当たる方が高そうだ
「シルクち...いや、魔王様。やっぱり逃げましょう? よく分かりませんけど、勝てなさそうですし」
ローゼさんが再びソワソワし出した。確かに彼女の今置かれている状況はかなり深刻だろう。
目の前に戦力がいる。敵軍に対しては取るに足らない程度であろうが、多少足止め出来る強さはあることは想像できる。
町民を守るため、自分の命を守るために俺らを利用するのもでだろう。
しかし、良心の呵責からだろうか、彼女は俺らを利用するという判断はしなかった。
「いや、戦うぞ。スピノ」
「死ぬ気でってことですか?」
魔王は麦わら帽子を被り直し、二回首を横に振った。
「妾達の勝算は100パーセントじゃ。それもただの勝利ではない、圧の字がつくほどのものになるじゃろうな」
何を言っているんだこの魔王。力の差は歴然、どうやって勝つって言うのか。
「戦争は総力戦じゃ、個人の力だけで決まるものではない。こちらには物資が山ほどあるじゃろう?」
にやけ顔でこちらを見てくる。物資...? そんなものあったか?
「ローゼさん。この町って特産品とかあるんですか?」
「そうじゃない! 妾達で取ったであろう。スライムのうんちを」
確かに俺らには今山ほどスライムジュエルがある。それもほぼ新品のゲル状のものだ。
しかし、それがどうしたと言うのだろう。
「魔王様しかし、これらをどう活用すると言うのですか?」
「ふっふっふっ。ローゼよスライムジュエルの活用法を言ってみなさい」
指を差されたローゼさんは腕を組み、空を見上げた。
「あ、薬の原料ですね」
「それ以外じゃ」
それ以外? 俺が魔王に聞かされたのはそれだけだ。他にもあるのだろうか。
ローゼさんは唸った。
「いや、知らないです」
「ふっふっふ、そうじゃろそうじゃろ」
魔王は口を押さえて笑い始め、次はこちらに指を差した。
「スピノよ! 再びスライムジュエルを取りに行くぞ! ついでにスライム達も仲間にする」
俺の憂鬱は予想以上に早くやってきた。
「あの、もしかしてピンクの子もですか?」
魔王はニコニコ顔で首を縦に振った。
あぁ...またか、またあのゴミを見るような目で見られなきゃいけないのか。
「お主もピンクの誤解を解きたいじゃろ?」
「あれはもはや誤解ではないですけどね...」
「まぁ、黙ってうんちを取ったのは悪かったの。でもじゃ、ピンクもスライムと言っては大人の年齢じゃ! 話を聞けば分かってくれるじゃろう」
彼女はそう言うと先ほど居た山の方向へと走り出した。
あぁ...今のうちにスピーチの内容考えておこう。
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