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第11話 三人組③
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三人は老人の言葉に従い、村の中で最も大きな建物の中に入っていた。老人曰く、いつもは集会等に使っており、今日に限っては旅人の寝床として使わせる様だ。
「あー、えっと。食べ物なんですが...これからの襲撃に備えて...その...」
「あー! お気になさらず、沢山食料は持ってますので!」
「お、お腹減ったでふ...」
「ブタは黙ってろ...!」
ティノがブタのお腹にパンチする。うずくまるブタを横目にバクは続ける。
「あの、この村は全く王都の情報は入らないんですか...?」
老人は数回顎を撫で、腕を組んだ。
「そうですねぇ...全くと言ったら嘘になりますかね。数ヶ月に一度税の回収に来ますし、たまに王都へ買い出しに行くこともありますからね」
「そうですか...じゃあ」
バクは数回咳払いをし、老人の方へ向き直した。
「王都の爆弾開発について知っていることってありますか?」
ブタも立ち上がり、老人の方向へとならった。三人の雰囲気はどこか強ばったもので、その場の空気は先程よりも張り詰めたものになった。
「さぁ、聞いたことはありませんね。まぁ、この王国は大きい方なので、もしかしたらそちらの方の研究は進んでいるのかもしれませんね」
「そうですか。寝場所だけではなく情報までくださってありがとうございます」
恐縮する老人に向かって三人は軽くお辞儀をした。
「では、私はもうこの部屋から出ますので、あとはゆっくりしてください」
老人の出て行った後、三人は脱力し、その場に項垂れた。
「なんか疲れたでふ...」
「そうだなぁ...予想外のことが起きるとこんなに疲れるとは...」
「どうする? 本来ここら辺にいる人間を王都へ送るか殲滅するのが私たちの任務のひとつなんだよ?」
三人は全員天井を見上げた。天井には多数穴があり空の青色が薄らと見えていた。
ティノの目には天井の穴から一匹の鳥が写っていた。その鳥はミミズを咥え、今にも飲み込もうとしている。しかし、ティノと目のあった瞬間飛び去ってしまった。
「なぁ、別に見逃してもバレないんじゃねーか?」
「なんで?」
「俺らが強いのは自明だろ? だったらこんな村直ぐに滅ぼせる。誰も見逃すなんて思わないだろ。上司の奴らがわざわざここに来なきゃバレないんだよ」
「つまり?」
「つまり...俺らがこんなにバカだなんて誰も思ってないってこと」
ブタとバクは腕を組んで再び天井を見上げた。
「私こう見えて魔物学校主席だったんだよ?」
「そう言うことじゃないって...バカじゃん...」
「ふふ、まぁオイラ達は相当バカでふからねぇ...この中で動物以外殺傷したことある人っているでふか?」
三人はお互いの顔を見合わせた。続く沈黙、誰も手をあげることなく暫くの時間経過した。
「「「バカだなぁ...」」」
三人は床に寝転んだ。
この三人は魔王アルファの幹部であり、かつ問題児である。誰一人として他人を殺めたことがない、魔王の元で働く魔物としてあり得ない経歴の持ち主達だ。
しかし、仕事の出来は逸品もの。武力以外の能力を駆使し、その場を乗り切ってきた。
今回の仕事、殺傷を毛嫌いする彼らにとってはだいぶハードな内容なのであった。
「まぁ、上司にバレそうになったらいつでも俺が...」
__ガタンッ
物音がする方向には、ドアの隙間から三人を覗き込んでいる先ほどの少年がいた。
会話内容に怖気付いているわけでもなく、困惑しているわけでもなく、ただただ目をキラキラさせ、三人を眺めていた。
「なんだよガキ。あんまジロジロしてるとかじるぞ」
「ティノ君歯癖悪いもんねぇ...どうしたの、僕?」
少年はドアを開き、モジモジしながら部屋へと入ってきた。
「ツノのお兄ちゃんと遊びたい...」
「は? 俺?」
少年は俯いたままコクコク頷いた。
「いいんじゃないでふか? 暇でふよね?」
「いやぁ、でも。俺魔王幹部だぜ? そう言うことは...ん?」
少年の後ろを覗くと、数人の他の少年達がいた。ティノよりも若干年下の男の子達である。
仲間に入れたそうにこちらをみている。
「あー! もう分かったよ。少しだけな?」
少年たちは大喜びし、ティノを外へと引っ張って行った。
「あー! ちょっと! ツノ引っ張んな!」
扉が閉められ、ブタとバクの二人だけになった部屋の中、二人は微笑み合う。
「ふふ、ティノ君って10歳だっけ。すごい飛び級したんだよね」
「そうでふねぇ。天才でふよ、本物の。魔神に最も近い魔物の一人でふ」
バクは再び寝転がり、天井を見上げた。そして、収納魔法を使って小さな紙切れ一つを取り出し、溜息をついた。
「彼には酷だよね。こんな任務」
「そうでふねまだ小さいのに。ティノ君はこうやって遊ぶことが1番必要なことの筈なんでふよ」
任務内容
シルバ王国 国王殺害
彼女は手から出した火で紙を燃やした。煤となったそれが顔にかかる。
「ふーっ。何人死者が出ると思う?」
「さぁ...それにしてもアルバート王国。馬鹿極まりないでふね」
そう言って二人は眠りについた。
「あー、えっと。食べ物なんですが...これからの襲撃に備えて...その...」
「あー! お気になさらず、沢山食料は持ってますので!」
「お、お腹減ったでふ...」
「ブタは黙ってろ...!」
ティノがブタのお腹にパンチする。うずくまるブタを横目にバクは続ける。
「あの、この村は全く王都の情報は入らないんですか...?」
老人は数回顎を撫で、腕を組んだ。
「そうですねぇ...全くと言ったら嘘になりますかね。数ヶ月に一度税の回収に来ますし、たまに王都へ買い出しに行くこともありますからね」
「そうですか...じゃあ」
バクは数回咳払いをし、老人の方へ向き直した。
「王都の爆弾開発について知っていることってありますか?」
ブタも立ち上がり、老人の方向へとならった。三人の雰囲気はどこか強ばったもので、その場の空気は先程よりも張り詰めたものになった。
「さぁ、聞いたことはありませんね。まぁ、この王国は大きい方なので、もしかしたらそちらの方の研究は進んでいるのかもしれませんね」
「そうですか。寝場所だけではなく情報までくださってありがとうございます」
恐縮する老人に向かって三人は軽くお辞儀をした。
「では、私はもうこの部屋から出ますので、あとはゆっくりしてください」
老人の出て行った後、三人は脱力し、その場に項垂れた。
「なんか疲れたでふ...」
「そうだなぁ...予想外のことが起きるとこんなに疲れるとは...」
「どうする? 本来ここら辺にいる人間を王都へ送るか殲滅するのが私たちの任務のひとつなんだよ?」
三人は全員天井を見上げた。天井には多数穴があり空の青色が薄らと見えていた。
ティノの目には天井の穴から一匹の鳥が写っていた。その鳥はミミズを咥え、今にも飲み込もうとしている。しかし、ティノと目のあった瞬間飛び去ってしまった。
「なぁ、別に見逃してもバレないんじゃねーか?」
「なんで?」
「俺らが強いのは自明だろ? だったらこんな村直ぐに滅ぼせる。誰も見逃すなんて思わないだろ。上司の奴らがわざわざここに来なきゃバレないんだよ」
「つまり?」
「つまり...俺らがこんなにバカだなんて誰も思ってないってこと」
ブタとバクは腕を組んで再び天井を見上げた。
「私こう見えて魔物学校主席だったんだよ?」
「そう言うことじゃないって...バカじゃん...」
「ふふ、まぁオイラ達は相当バカでふからねぇ...この中で動物以外殺傷したことある人っているでふか?」
三人はお互いの顔を見合わせた。続く沈黙、誰も手をあげることなく暫くの時間経過した。
「「「バカだなぁ...」」」
三人は床に寝転んだ。
この三人は魔王アルファの幹部であり、かつ問題児である。誰一人として他人を殺めたことがない、魔王の元で働く魔物としてあり得ない経歴の持ち主達だ。
しかし、仕事の出来は逸品もの。武力以外の能力を駆使し、その場を乗り切ってきた。
今回の仕事、殺傷を毛嫌いする彼らにとってはだいぶハードな内容なのであった。
「まぁ、上司にバレそうになったらいつでも俺が...」
__ガタンッ
物音がする方向には、ドアの隙間から三人を覗き込んでいる先ほどの少年がいた。
会話内容に怖気付いているわけでもなく、困惑しているわけでもなく、ただただ目をキラキラさせ、三人を眺めていた。
「なんだよガキ。あんまジロジロしてるとかじるぞ」
「ティノ君歯癖悪いもんねぇ...どうしたの、僕?」
少年はドアを開き、モジモジしながら部屋へと入ってきた。
「ツノのお兄ちゃんと遊びたい...」
「は? 俺?」
少年は俯いたままコクコク頷いた。
「いいんじゃないでふか? 暇でふよね?」
「いやぁ、でも。俺魔王幹部だぜ? そう言うことは...ん?」
少年の後ろを覗くと、数人の他の少年達がいた。ティノよりも若干年下の男の子達である。
仲間に入れたそうにこちらをみている。
「あー! もう分かったよ。少しだけな?」
少年たちは大喜びし、ティノを外へと引っ張って行った。
「あー! ちょっと! ツノ引っ張んな!」
扉が閉められ、ブタとバクの二人だけになった部屋の中、二人は微笑み合う。
「ふふ、ティノ君って10歳だっけ。すごい飛び級したんだよね」
「そうでふねぇ。天才でふよ、本物の。魔神に最も近い魔物の一人でふ」
バクは再び寝転がり、天井を見上げた。そして、収納魔法を使って小さな紙切れ一つを取り出し、溜息をついた。
「彼には酷だよね。こんな任務」
「そうでふねまだ小さいのに。ティノ君はこうやって遊ぶことが1番必要なことの筈なんでふよ」
任務内容
シルバ王国 国王殺害
彼女は手から出した火で紙を燃やした。煤となったそれが顔にかかる。
「ふーっ。何人死者が出ると思う?」
「さぁ...それにしてもアルバート王国。馬鹿極まりないでふね」
そう言って二人は眠りについた。
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