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第3話 魔王シルク
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え? は? いや。
魔王シルクが少女...?
いや、俺の上司が少女...?
唖然としている俺を少女はキョトンとした顔で見つめている。
「どうかしたのかの?」
「あ、いや。本当に魔王様なんですか?」
「失礼じゃの! 妾は十二人の魔王の一人、魔王シルクであるぞ。頭が高いぞ」
彼女は麦わら帽子を脱ぎ捨て、仁王立ちを始めた。立派な巻いているツノが日光に照らされる。
この人が魔王シルクなのだ。本当に信じられない。魔王というものはもっと威厳があって威圧感がすごいものだと思っていた。
こんな可愛らしい魔王が居ていいのか...
だが、本当らしい。その立派なツノがそれが真実だと言っている。敬意を表さなくては
俺は片膝を突き、少しだけ視線を上げた。
「失礼いたしました、魔王様。では、自己紹介をさせて頂きます。この度、魔王シルク様もとで...」
ん? なんか、すごい満面の笑みで顔を近づけて来る。
「どうかされましたか?」
「ん? いやぁ、嬉しくての。ささ、続けて。あ、もっとフランク? な感じで良いからの」
「は、はぁ...」
この魔王、実は部下にすごく優しいのかもしれない。部下はすごく多いはずなのに、一人一人にこんなに手厚くもてなすなんて。感服だ。こんなだだっ広い平原に二人だけにしてくれるのも彼女なりの配慮なのだろう。
「ありがとうございます! ではもう一度。魔王シルク様の幹部担当になりましたスピノです、よろしくお願いします!」
彼女は小さな手で大きな拍手をし出した。
可愛い。こう言う人形あったな。
「よろしくの、スピノ! お主が妾の最初の部下じゃ!」
「は?」
ん? まってくれ。俺が初めての部下? え、俺の同僚は? 大量の軍隊は? 召使い達は?
「え、あ、あの魔王様。私の仲間は...」
「ん? 妾はずっとお前の仲間じゃぞ!」
いや、違くてそうじゃなくて...!
「私の部下は...」
「これから作っていくのじゃぞ! 大丈夫だ安心せい、妾の魔王軍はきっと立派なものが完成する。こんなにたくましい幹部が居るのだからな!」
え、えぇ!? 嘘だろ...もしかしてこの魔王軍
俺だけ?
あぁ...いや、大丈夫だ。そう、これから強くなればいいだけだ。これから強くなって、魔王様の願望を叶える。うん! 何ともやりがいのある仕事じゃないか!
そのためにはまず拠点だな、全ては拠点から始まる。近くに魔王城は見えないようだが、いったいどこにあるのだろう。
「あの、魔王様...拠点は一体どこにあるのですか?」
「ほへ? 拠点?」
「拠点...」
まさか...
「あー、寝泊まりする場所のことな。よし。一緒に作るぞ!」
あ、詰んだ。
俺の新世界での生活、マジで一からだ。
彼女はにっこり笑顔でグーサインをこちらに向けて来ている。
はぁ、どうしてこうなったのだろう。俺の九年間の努力、どこに行ってしまったのだろうか。
この魔王と俺は生涯を共にするのだ。今更どうしようもない。決まってしまったことは仕方がない。せめて、せめてゴールだけでもきらびやかなものにしたい。
全力でサポートしようじゃないか。この人の夢を全力で叶えてやろうじゃないか。
「あの、魔王様。私たちの最終目標は何ですか?」
彼女はいきなりしかつめらしい顔になった。
「世界征服」
空にはいつの間にか大きな雲がかかっていた。
その場の空気は確かにさっきよりも重かった。彼女の声も先ほどとは違い、気合が入っていた。本気なのだろう。いや、それ以上に何か意味がありそうだ。
「分かりました」
俺はそう一言言って、片膝立ちをやめた。
「まぁ、簡単に出来ないことは妾も承知しておる。すごく長い旅になるじゃろう。でも、絶対に成し遂げたいのじゃ。絶対にやらなきゃいけないのじゃ。付き合ってくれるかの...?」
思えば俺は贅沢な生活を望んでいた。皆んなが憧れる強大な魔王の元で働きたい。ただそれだけを考えていた。
でも、考えてみてくれ。少しスリリングな方が楽しいんじゃないか?
この魔王シルクはどこかへっぽこだ。でも、何かを持っている気がする。何かは分からない。でも、俺に新たな世界を見せてくれる気がするのだ。
俺は地面に落ちている麦わら帽子を拾い、土を払った。
「勿論です。よろしくお願いします」
彼女は頬を緩ませた方思うと、いきなり顔をこわばらせ、また仁王立ちになった。
「ふっふっふっ! はっはっはっ! スピノよ、妾の僕よ。お主がもし妾の願いを叶えた暁には、この世界の半分をやろう。だから、だから少々手を貸してくれ」
「はい!」
太陽はだいぶ傾いていて、山のてっぺんにもう少しで着きそうになっていた。
ん? 待ってくれ。もう少しで夜になる...?
寝る場所...どうしよう...
魔王シルクが少女...?
いや、俺の上司が少女...?
唖然としている俺を少女はキョトンとした顔で見つめている。
「どうかしたのかの?」
「あ、いや。本当に魔王様なんですか?」
「失礼じゃの! 妾は十二人の魔王の一人、魔王シルクであるぞ。頭が高いぞ」
彼女は麦わら帽子を脱ぎ捨て、仁王立ちを始めた。立派な巻いているツノが日光に照らされる。
この人が魔王シルクなのだ。本当に信じられない。魔王というものはもっと威厳があって威圧感がすごいものだと思っていた。
こんな可愛らしい魔王が居ていいのか...
だが、本当らしい。その立派なツノがそれが真実だと言っている。敬意を表さなくては
俺は片膝を突き、少しだけ視線を上げた。
「失礼いたしました、魔王様。では、自己紹介をさせて頂きます。この度、魔王シルク様もとで...」
ん? なんか、すごい満面の笑みで顔を近づけて来る。
「どうかされましたか?」
「ん? いやぁ、嬉しくての。ささ、続けて。あ、もっとフランク? な感じで良いからの」
「は、はぁ...」
この魔王、実は部下にすごく優しいのかもしれない。部下はすごく多いはずなのに、一人一人にこんなに手厚くもてなすなんて。感服だ。こんなだだっ広い平原に二人だけにしてくれるのも彼女なりの配慮なのだろう。
「ありがとうございます! ではもう一度。魔王シルク様の幹部担当になりましたスピノです、よろしくお願いします!」
彼女は小さな手で大きな拍手をし出した。
可愛い。こう言う人形あったな。
「よろしくの、スピノ! お主が妾の最初の部下じゃ!」
「は?」
ん? まってくれ。俺が初めての部下? え、俺の同僚は? 大量の軍隊は? 召使い達は?
「え、あ、あの魔王様。私の仲間は...」
「ん? 妾はずっとお前の仲間じゃぞ!」
いや、違くてそうじゃなくて...!
「私の部下は...」
「これから作っていくのじゃぞ! 大丈夫だ安心せい、妾の魔王軍はきっと立派なものが完成する。こんなにたくましい幹部が居るのだからな!」
え、えぇ!? 嘘だろ...もしかしてこの魔王軍
俺だけ?
あぁ...いや、大丈夫だ。そう、これから強くなればいいだけだ。これから強くなって、魔王様の願望を叶える。うん! 何ともやりがいのある仕事じゃないか!
そのためにはまず拠点だな、全ては拠点から始まる。近くに魔王城は見えないようだが、いったいどこにあるのだろう。
「あの、魔王様...拠点は一体どこにあるのですか?」
「ほへ? 拠点?」
「拠点...」
まさか...
「あー、寝泊まりする場所のことな。よし。一緒に作るぞ!」
あ、詰んだ。
俺の新世界での生活、マジで一からだ。
彼女はにっこり笑顔でグーサインをこちらに向けて来ている。
はぁ、どうしてこうなったのだろう。俺の九年間の努力、どこに行ってしまったのだろうか。
この魔王と俺は生涯を共にするのだ。今更どうしようもない。決まってしまったことは仕方がない。せめて、せめてゴールだけでもきらびやかなものにしたい。
全力でサポートしようじゃないか。この人の夢を全力で叶えてやろうじゃないか。
「あの、魔王様。私たちの最終目標は何ですか?」
彼女はいきなりしかつめらしい顔になった。
「世界征服」
空にはいつの間にか大きな雲がかかっていた。
その場の空気は確かにさっきよりも重かった。彼女の声も先ほどとは違い、気合が入っていた。本気なのだろう。いや、それ以上に何か意味がありそうだ。
「分かりました」
俺はそう一言言って、片膝立ちをやめた。
「まぁ、簡単に出来ないことは妾も承知しておる。すごく長い旅になるじゃろう。でも、絶対に成し遂げたいのじゃ。絶対にやらなきゃいけないのじゃ。付き合ってくれるかの...?」
思えば俺は贅沢な生活を望んでいた。皆んなが憧れる強大な魔王の元で働きたい。ただそれだけを考えていた。
でも、考えてみてくれ。少しスリリングな方が楽しいんじゃないか?
この魔王シルクはどこかへっぽこだ。でも、何かを持っている気がする。何かは分からない。でも、俺に新たな世界を見せてくれる気がするのだ。
俺は地面に落ちている麦わら帽子を拾い、土を払った。
「勿論です。よろしくお願いします」
彼女は頬を緩ませた方思うと、いきなり顔をこわばらせ、また仁王立ちになった。
「ふっふっふっ! はっはっはっ! スピノよ、妾の僕よ。お主がもし妾の願いを叶えた暁には、この世界の半分をやろう。だから、だから少々手を貸してくれ」
「はい!」
太陽はだいぶ傾いていて、山のてっぺんにもう少しで着きそうになっていた。
ん? 待ってくれ。もう少しで夜になる...?
寝る場所...どうしよう...
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