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第二章 アウゼフ王国義勇軍編
第四十七話 モード・アングレ
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ダプリン戦術はモード・アングレとも呼ばれている。この布陣は堅守防衛の陣であり、攻め気な相手に対してその効果をいかんなく発揮する。歴史上では織田信長が行った長篠の戦いの3段撃ちもモード・アングレではないかという説もある。
義勇軍はルプゼナハ山脈の入り口にダプリン戦術の陣をとった。そして、ハープ隊が罠を仕掛けてまわり持ち場に戻ってくる。
後方ではカイルが何かをしている様子で地響きが何度か聞こえてくる。何か策を巡らしてくれているのだと察してこの場にいない事を責めるものは誰もいない。
「そろそろ近づいてきたな。流石に迫力がありやがる。」
シルビアが高台から魔獣の大群を見つめる。リザードマン、ホブゴブリン、オークにコボルト、様々な魔獣が混在しているようだ。ものすごい数の魔獣がひしめき合いながらこちらに向かってきている。今から想像もつかないような数の魔獣と戦わなければならないと思うと背筋が凍るようだが、武者震いの一種なのか何故か笑いが出た。
「この戦術は防衛ラインが崩れたら崩壊する。特にアルノート隊、ジェラルド隊、サリア隊の持ち場は負担がきついと思う。怪我をしたり、動きが鈍ったと思ったら隊列の後ろに回って回復を受けてくれ。各隊にはバロウ隊をつけてある。魔獣がいよいよ近づいているぞ!戦闘に備えろ!」
「「「オォッ!!」」」
ルーカスが最後の説明をし、全員が戦闘に備えて鬨の声をあげる。士気は悪くはない。あとは魔獣が辿り着くのを待つだけだった。
息を呑んで待っていると次第に魔獣達の唸り声と行軍の地響きが大きくなっていく。この待ち時間というのはかなり精神的にきついものがある。
そして、ついには布陣している丘の麓まで魔獣が迫ってきた。
「「「ウオオオオオォォォォ」」」
魔王軍の先頭部隊が丘の傾斜を上り始める。次々に後続が続き、どんどんと丘が魔獣で埋まっていく。
「まだだ!ギリギリまで引きつけろ!」
ルーカスの指示に従い、義勇軍側はまだ動かない。一方で魔獣達はどんどんと丘を登り迫り来くる。
「今だ!ハープ隊!」
「「ピットフォール!」」
ルーカスの合図でハープ隊がピットフォールを発動する。すると魔法陣がそれぞれの部隊の前方で横一閃に出現した。
ドゴーン!という音と共に魔王軍の先頭部隊が落下していく。いきなりの落とし穴に後続隊も逃げること敵わず押されるようにどんどんと穴に落下していっている。
「シルビア隊、ユシア隊!攻撃を始めろ!」
ルーカスの合図で、シルビア隊と弓兵が魔獣に向かって矢を放ちはじめる。弓部隊は全員がアイテムボックスを持っており、そこに大量の矢を入れている。矢切れの心配はほぼ無いと言える量だ。
「狙いは適当でいい。一本でも多く放て!後方にいる兵は曲射で敵軍に向かって放つんだ。」
シルビアが檄を飛ばしつつ、自身も次々と矢を放っていく。
「みんな、まずはあの穴を火の海にするわよ!」
「「ファイヤーボール!」」
ユシア隊が落とし穴に向かって一斉に火球を放った。すると火は穴の中で横に広がっていき、その穴は魔獣達にとって地獄の穴と化した。
「ゴルドの時と同じよ。基本はウィンドカッターで殲滅するわよ!」
「「ウィンドカッター」」
ユシア隊が一斉にウィンドカッターを放つと、風の刃がいくつも敵陣に向かって突き進む。その刃は魔獣を両断しながら敵陣の中を更に奥へと切り込んでいく。最後には次第に威力が弱まっていき消滅するがそれでも一撃で十分な威力を持っていた。
中央付近はハープ隊の罠に加え、シルビア隊の弓、ユシア隊の魔法攻撃で敵を寄せ付けない戦いぶりを見せている。これが同等数の兵力同士の戦いであればとっくに相手方の戦意を失わせるほどの戦果を上げている。
しかし、時に数の暴力というものは戦場に於いてどんな戦術をも凌ぐ強さを見せるものである。
火の海と化し、魔獣の進行を食い止める役割であった落とし穴が次々に落ちていく魔獣によって埋まりそうになっていた。そしてついには穴が塞がり、堰を切ったかのように魔獣達が進み出す。
「「パラライズトラップ!」」
ハープ隊が次に用意していた罠を発動させる。各隊の目の前で魔獣達が痺れだし動きが止まる。その痺れている魔獣に向かって、シルビア隊とユシア隊が弓と魔法を駆使して殲滅していく。
「ジェラルド隊、アルノート隊、ユシア隊。戦闘開始だ!」
ルーカスが3隊に向かって指示を出す。
オォッ!という声と共に各隊が動き出す。ここから義勇軍と魔王軍の熾烈な戦いが幕を開ける。
────────────
ダプリン戦術 (モード・アングレ)
~義勇軍 左翼高台~ 補佐役
ハープ隊(ハープ)、カイル隊
~義勇軍 左翼部隊~ 壁役
ジェラルド隊、騎士兵、バロウ隊
~義勇軍 中左翼高台~ 遠距離攻撃役
シルビア隊、弓兵
~義勇軍 中央部隊~ 壁役
レオパルド隊、アルノート隊、大盾兵、バロウ隊
~義勇軍 中右翼高台~ 遠距離攻撃役
ユシア隊、弓兵
~義勇軍 右翼部隊~ 壁役
サリア隊、騎士兵、バロウ隊(バロウ)、カイル隊(ジェイク)
~義勇軍 右翼高台~ 補佐役
ハープ隊、カイル隊
~義勇軍 中央後方~
ルーカス、募集兵
────────────
~義勇軍 中央部隊~
義勇軍中央部隊は王国騎士団が中心となった編成になっている。アルノート隊と大盾兵が敵の侵攻を防ぐ壁となり、レオパルドのスキル剣王を共有したレオパルド隊が強力なアタッカーとなり敵を倒していくスタイルをとっている。
「絶対防御!」
中央を陣取ったアルノート隊がスキル絶対防御を発動し、強固な壁となった。その両脇をレオパルド隊が攻撃役として魔獣に戦闘を仕掛けている。その更に両脇には大盾兵が盾を地面に突き刺す形で高台に向けて壁を伸ばす。
この鉄壁な防御ラインで敵の侵攻を食い止めている間に、両脇の高台からシルビア隊とユシア隊が一方的に攻撃を加えていき魔獣を殲滅していっている。
「ソニックスラッシュ!」
レオパルド隊の面々がスキルを発動させると剣撃から音速の刃が発生し、それはまるでウィンドカッターのように敵陣に向かって飛んでゆく。
「レオパルド王の力を魔王軍に見せつけてやるのだ!数に怯むなっ!」
そう叫びながら次々に敵を斬っていくこの男はレオパルド隊の副長ティーガーだ。レオパルドがその武勇を気に入り側近にしたほどであり、その強さはレオパルド隊の中でも抜きん出ている。
「アルノート!まだまだいけるか!しっかり耐えろよ!」
時折、壁役であるアルノート隊を気にしながらティーガーは鬼神の如く敵を斬りまくる。かつては戦場こそ自分の居場所だと常に最前線に身を置いていたが、レオパルドに目をかけられ側近となってからはしばらく戦場からは遠のいていた。
そして、今久々に戦場の空気を感じながら更には圧倒的な逆境のこの状況にティーガーは血が沸き立つを感じていた。
「ソニックスラッシュ!──ここは誰一人通さんぞ!かかってこい、魔王軍共!」
魔獣を蹴散らしながらティーガーが雄叫びをあげた。
義勇軍はルプゼナハ山脈の入り口にダプリン戦術の陣をとった。そして、ハープ隊が罠を仕掛けてまわり持ち場に戻ってくる。
後方ではカイルが何かをしている様子で地響きが何度か聞こえてくる。何か策を巡らしてくれているのだと察してこの場にいない事を責めるものは誰もいない。
「そろそろ近づいてきたな。流石に迫力がありやがる。」
シルビアが高台から魔獣の大群を見つめる。リザードマン、ホブゴブリン、オークにコボルト、様々な魔獣が混在しているようだ。ものすごい数の魔獣がひしめき合いながらこちらに向かってきている。今から想像もつかないような数の魔獣と戦わなければならないと思うと背筋が凍るようだが、武者震いの一種なのか何故か笑いが出た。
「この戦術は防衛ラインが崩れたら崩壊する。特にアルノート隊、ジェラルド隊、サリア隊の持ち場は負担がきついと思う。怪我をしたり、動きが鈍ったと思ったら隊列の後ろに回って回復を受けてくれ。各隊にはバロウ隊をつけてある。魔獣がいよいよ近づいているぞ!戦闘に備えろ!」
「「「オォッ!!」」」
ルーカスが最後の説明をし、全員が戦闘に備えて鬨の声をあげる。士気は悪くはない。あとは魔獣が辿り着くのを待つだけだった。
息を呑んで待っていると次第に魔獣達の唸り声と行軍の地響きが大きくなっていく。この待ち時間というのはかなり精神的にきついものがある。
そして、ついには布陣している丘の麓まで魔獣が迫ってきた。
「「「ウオオオオオォォォォ」」」
魔王軍の先頭部隊が丘の傾斜を上り始める。次々に後続が続き、どんどんと丘が魔獣で埋まっていく。
「まだだ!ギリギリまで引きつけろ!」
ルーカスの指示に従い、義勇軍側はまだ動かない。一方で魔獣達はどんどんと丘を登り迫り来くる。
「今だ!ハープ隊!」
「「ピットフォール!」」
ルーカスの合図でハープ隊がピットフォールを発動する。すると魔法陣がそれぞれの部隊の前方で横一閃に出現した。
ドゴーン!という音と共に魔王軍の先頭部隊が落下していく。いきなりの落とし穴に後続隊も逃げること敵わず押されるようにどんどんと穴に落下していっている。
「シルビア隊、ユシア隊!攻撃を始めろ!」
ルーカスの合図で、シルビア隊と弓兵が魔獣に向かって矢を放ちはじめる。弓部隊は全員がアイテムボックスを持っており、そこに大量の矢を入れている。矢切れの心配はほぼ無いと言える量だ。
「狙いは適当でいい。一本でも多く放て!後方にいる兵は曲射で敵軍に向かって放つんだ。」
シルビアが檄を飛ばしつつ、自身も次々と矢を放っていく。
「みんな、まずはあの穴を火の海にするわよ!」
「「ファイヤーボール!」」
ユシア隊が落とし穴に向かって一斉に火球を放った。すると火は穴の中で横に広がっていき、その穴は魔獣達にとって地獄の穴と化した。
「ゴルドの時と同じよ。基本はウィンドカッターで殲滅するわよ!」
「「ウィンドカッター」」
ユシア隊が一斉にウィンドカッターを放つと、風の刃がいくつも敵陣に向かって突き進む。その刃は魔獣を両断しながら敵陣の中を更に奥へと切り込んでいく。最後には次第に威力が弱まっていき消滅するがそれでも一撃で十分な威力を持っていた。
中央付近はハープ隊の罠に加え、シルビア隊の弓、ユシア隊の魔法攻撃で敵を寄せ付けない戦いぶりを見せている。これが同等数の兵力同士の戦いであればとっくに相手方の戦意を失わせるほどの戦果を上げている。
しかし、時に数の暴力というものは戦場に於いてどんな戦術をも凌ぐ強さを見せるものである。
火の海と化し、魔獣の進行を食い止める役割であった落とし穴が次々に落ちていく魔獣によって埋まりそうになっていた。そしてついには穴が塞がり、堰を切ったかのように魔獣達が進み出す。
「「パラライズトラップ!」」
ハープ隊が次に用意していた罠を発動させる。各隊の目の前で魔獣達が痺れだし動きが止まる。その痺れている魔獣に向かって、シルビア隊とユシア隊が弓と魔法を駆使して殲滅していく。
「ジェラルド隊、アルノート隊、ユシア隊。戦闘開始だ!」
ルーカスが3隊に向かって指示を出す。
オォッ!という声と共に各隊が動き出す。ここから義勇軍と魔王軍の熾烈な戦いが幕を開ける。
────────────
ダプリン戦術 (モード・アングレ)
~義勇軍 左翼高台~ 補佐役
ハープ隊(ハープ)、カイル隊
~義勇軍 左翼部隊~ 壁役
ジェラルド隊、騎士兵、バロウ隊
~義勇軍 中左翼高台~ 遠距離攻撃役
シルビア隊、弓兵
~義勇軍 中央部隊~ 壁役
レオパルド隊、アルノート隊、大盾兵、バロウ隊
~義勇軍 中右翼高台~ 遠距離攻撃役
ユシア隊、弓兵
~義勇軍 右翼部隊~ 壁役
サリア隊、騎士兵、バロウ隊(バロウ)、カイル隊(ジェイク)
~義勇軍 右翼高台~ 補佐役
ハープ隊、カイル隊
~義勇軍 中央後方~
ルーカス、募集兵
────────────
~義勇軍 中央部隊~
義勇軍中央部隊は王国騎士団が中心となった編成になっている。アルノート隊と大盾兵が敵の侵攻を防ぐ壁となり、レオパルドのスキル剣王を共有したレオパルド隊が強力なアタッカーとなり敵を倒していくスタイルをとっている。
「絶対防御!」
中央を陣取ったアルノート隊がスキル絶対防御を発動し、強固な壁となった。その両脇をレオパルド隊が攻撃役として魔獣に戦闘を仕掛けている。その更に両脇には大盾兵が盾を地面に突き刺す形で高台に向けて壁を伸ばす。
この鉄壁な防御ラインで敵の侵攻を食い止めている間に、両脇の高台からシルビア隊とユシア隊が一方的に攻撃を加えていき魔獣を殲滅していっている。
「ソニックスラッシュ!」
レオパルド隊の面々がスキルを発動させると剣撃から音速の刃が発生し、それはまるでウィンドカッターのように敵陣に向かって飛んでゆく。
「レオパルド王の力を魔王軍に見せつけてやるのだ!数に怯むなっ!」
そう叫びながら次々に敵を斬っていくこの男はレオパルド隊の副長ティーガーだ。レオパルドがその武勇を気に入り側近にしたほどであり、その強さはレオパルド隊の中でも抜きん出ている。
「アルノート!まだまだいけるか!しっかり耐えろよ!」
時折、壁役であるアルノート隊を気にしながらティーガーは鬼神の如く敵を斬りまくる。かつては戦場こそ自分の居場所だと常に最前線に身を置いていたが、レオパルドに目をかけられ側近となってからはしばらく戦場からは遠のいていた。
そして、今久々に戦場の空気を感じながら更には圧倒的な逆境のこの状況にティーガーは血が沸き立つを感じていた。
「ソニックスラッシュ!──ここは誰一人通さんぞ!かかってこい、魔王軍共!」
魔獣を蹴散らしながらティーガーが雄叫びをあげた。
応援ありがとうございます!
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