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第一章 はじまりのダンジョン編
第九話 猛勇のオーク
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カイルは槍を構え、オークはナタを持ちお互い睨み合っている。
ジリジリと互いに距離を詰めながら隙を窺っている。そんな中、先に動いたのはカイルだ。
「うおおおおお!!」
オークに向かって、勢いよく連突きを繰り出した。
ガギィンギィン!
繰り出した連突きを冷静に全てナタでガードされていくが攻撃の手は緩めない。
続け様に石突きを地面に突き立て、それを軸に飛び蹴りを繰り出した。腹あたりに蹴りがまともに入り、確かな感触を感じた。
(どうだ!)
しかし、オークはビクともせず平然と立っている。カイルの方は中途半端な体勢で完全に動きが止まってしまっていた。
(まずいっ!)
そう思ったのも束の間、足を掴まれ、身体ごと持ち上げられてしまった。
「うわぁぁぁ」
壁、天井と視界が急速に変わっていく。
ドンッ!という音と共に地面に叩きつけられ、背中に強い衝撃を受けた。
「ガハッ!」
吐き出されるように吐息が漏れ、まともに息ができなかった。
ドンッドンッドンッ!
右に左に持ち上げられては叩きつけられ、衝撃と激痛が幾度も襲いかかり、まるで脳震盪を起こしたかのように次第に意識が朦朧としていく。
(や、やばい。。)
ガウッ!!
かすかに聞こえたその声は蘭丸のものだった。霞む視界の中で蘭丸がオークの足に噛みついているのが見えた。
ガウウウウウ!
蘭丸は唸り声を上げながら歯を食い込ませていった。たまらずオークがカイルをぶん投げ、蘭丸を掴もうとするもそれを蘭丸は回避した。
「ぐ、、、ぐあ!」
オークに投げ飛ばされ、地面にバウンドしながら倒れ込む。
全身に激痛が走り、何箇所か折れているように感じた。
「ら、蘭丸。」
自分の事よりも蘭丸が大丈夫か気になった。
蘭丸が割って入らなければやばかった。
すぐにポケットに入れておいたポーションを出し飲む。
すると全身の痛みはスッと消え、立ち上がっても全く痛みはない。どうやら骨折も癒したらしい。
「凄まじい効果だ。」
もはやポーションというレベルではない。
全快に近い回復力を持っていた。
そう思いながらもすぐに頭を戦いに切り替え、蘭丸の方を見るとオークとまだ戦っている。
「蘭丸!一旦引け!俺がいく!」
地面に落としていた朱槍を拾ったところで、蘭丸が距離を取ったのを確認できた。
「白光一閃突き!」
光を帯びて、神速で飛び出す。
「くらええぇぇ!!」
オークの直前で着地し、そのままフィニッシュ突きを繰り出す。
しかし、ナタで刃先を弾かれ軌道が僅かにズレた。白光一閃突きはオークの左肩を掠めただけに終わってしまった。
すぐさまカイルをオークの振り下ろしが襲う。
すぐに槍を水平にしガードする。
「ぐっ!!」
ズシッ!と受け止めた槍を通じて全身に負荷がかかる。その衝撃に足が地面にめり込んだ。
(このままじゃ潰される!)
咄嗟に腕を前に振り、ナタの衝撃を受け流しながらバックステップで距離をとった。
ナタを振り回しながらオークが追い討ちをかけてきた。
振り回し、薙ぎ払い、袈裟斬りを回避に専念し、なんとか避けていく。
パワー差がありすぎるためガードをしたら衝撃で吹き飛ばされる可能性がある。
とにかくステップで避け続ける。
その中でオークが一瞬腕を引いたのが見えた。
(突きがくる!ここだ!)
予想通りナタで突いてきたところをサイドステップで避け、反撃の突きを出そうとする。
カチャ。
予想していない音が耳元でした。
何かは分からないが悪寒を感じ、音の方向を見る。
オークが手首を返し、突いたナタの刃をこちらに向けた音だった。そのまま横振りで刃が迫ってくる。
(まずい、まずい、まずい!)
死を覚悟した。その時だった。
「ガアアアアアアアア!!」
刃は止まり、突然オークが叫び出す。
蘭丸だ。首元に蘭丸が噛み付いている。
またも蘭丸が窮地を救ってくれたのだ。
しかし、噛み付いた場所が悪かった。
オークに捕まれ、壁に向かって思い切りぶん投げられてしまう。
「ギャウン!」
悲鳴のような声をあげ、蘭丸は壁に激突し、ドサッ地面に倒れ落ちる。
「蘭丸っ!!」
カイルはオークがまだ痛がっている隙をついて蘭丸に走り寄った。
ポーションをすぐに取り出し、蘭丸に飲ませる。
すると蘭丸にも癒しの効果は現れ、立ち上がってくれた。
「蘭丸、よかった。」
蘭丸の無事を確認し、如何にオークを倒すかを考える。
白光一閃突きに関して試していないがなんとなく思うことがあった。
火起こしをする時は、動きを先にイメージして発動させたらイメージ通りに動いてくれていた。
重要なのはイメージなのかもしれない。
直線的に向かっていくだけの技じゃないんじゃないか。その疑念をカイルは持っていた。
(やってみるか。最悪切られても即死しなければポーションで治せばいい。。としよう)
賭けなのはわかっているが現状打開策が他に思いつかない。
まずは動きをイメージする。
どんな動きにするかは決めている。
(イメージ、イメージ、イメージ、イメージ...)
決意を固めてスキルを発動した。
「白光一閃突き!!」
身体が光を帯びて、地面を蹴って飛び出す。
神速で突き進むが、向かっているのは斜め上方の天井だ。いきなりオークに飛び込みはしない。
動きがイメージ通りにいくか試す必要もあった。
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
天井を蹴り、地面を蹴り、壁を蹴りカイルが部屋中を飛び回る。カイルはイメージに速度調整を乗せていた。最初は少し遅めから始めていき、段々と速度をあげMAXスピードにさせていく。
ガガガガガガガガガ!
MAXスピードは普段の一閃突きの時よりも速かった。部屋を高速で縦横無尽に飛び回る。
オークは明らかにその動きについていけておらずキョロキョロしながらあたふたしている。
「終わりだぁぁぁぁぁ!」
背後からカイルが強襲する。
ズバーーン!
一閃突きが胸を貫き、衝撃波で胸に穴が空く。
そのままオークは崩れ落ち消滅した。
「よかった。なんとかイメージ通りに動いてくれた。。」
(それにしてもなんだか難易度高くないか?結構毎回必死なんだけど。。)
カイルは愚痴をこぼしながらもホッと胸を撫で下ろした。
はじまりのダンジョン 二階層 攻略
ーーーーーーーーーーーー
オークを倒し、蘭丸が走り寄ってくる。
今回蘭丸にはかなり助けられた。
正直死んでいたかもしれない場面もあった。
「蘭丸、ありがとう。助かったよ。」
蘭丸の頭を撫で、心からお礼を言う。
蘭丸も嬉しそうに頬を舐めてきた。
「ははっ!これからもよろしくな!相棒!」
頭をポンポンと触りながら立ち上がる。
とりあえずは魔石回収と、部屋の中央に出ている宝箱だ。
魔石はグレイトボアと同じ大きさだ。
次はお楽しみタイムだと宝箱に近づき開ける。
宝箱を開けると戦国武将が身につけている鎧である具足が入っている。
「戦国時代の具足じゃないか、、兜はないのが少し残念だけど。」
カイルは具足を宝箱から持ち上げ気づく。
「軽い。具足ってすごい重い筈だけど、、、いや、軽いのはむしろありがたいな。」
重たい具足を着ながら移動や戦闘はかなりきついはずだ。色々クラムの細かな配慮が見え隠れする。朱槍もそうだったが、ここは完全に自分専用のダンジョンのようだ。
(なんだかクリアしたら二度と入れなくなる気がするな。)
「んっ?!」
具足を見て何かに気付く。
「スキルオープン」
カイルは武士ウィンドウを開き、セットされている可児才蔵カードを見る。具足とカードを見比べる。
「同じだ!可児才蔵と同じ具足だぁ!」
これには思わず歓喜の声を漏らす。
「クラム、お前!この野郎!粋だなぁ。」
具足は可児才蔵と同じデザインの黒色の具足だったのだ。
「俺はこれを着続けるぞ!ありがとう!」
ひとしきり喜んだあと具足を装備し、一旦戻ろうか悩んだが結局もう少し進む事にした。
階段を降り、いざ3階層へ
ジリジリと互いに距離を詰めながら隙を窺っている。そんな中、先に動いたのはカイルだ。
「うおおおおお!!」
オークに向かって、勢いよく連突きを繰り出した。
ガギィンギィン!
繰り出した連突きを冷静に全てナタでガードされていくが攻撃の手は緩めない。
続け様に石突きを地面に突き立て、それを軸に飛び蹴りを繰り出した。腹あたりに蹴りがまともに入り、確かな感触を感じた。
(どうだ!)
しかし、オークはビクともせず平然と立っている。カイルの方は中途半端な体勢で完全に動きが止まってしまっていた。
(まずいっ!)
そう思ったのも束の間、足を掴まれ、身体ごと持ち上げられてしまった。
「うわぁぁぁ」
壁、天井と視界が急速に変わっていく。
ドンッ!という音と共に地面に叩きつけられ、背中に強い衝撃を受けた。
「ガハッ!」
吐き出されるように吐息が漏れ、まともに息ができなかった。
ドンッドンッドンッ!
右に左に持ち上げられては叩きつけられ、衝撃と激痛が幾度も襲いかかり、まるで脳震盪を起こしたかのように次第に意識が朦朧としていく。
(や、やばい。。)
ガウッ!!
かすかに聞こえたその声は蘭丸のものだった。霞む視界の中で蘭丸がオークの足に噛みついているのが見えた。
ガウウウウウ!
蘭丸は唸り声を上げながら歯を食い込ませていった。たまらずオークがカイルをぶん投げ、蘭丸を掴もうとするもそれを蘭丸は回避した。
「ぐ、、、ぐあ!」
オークに投げ飛ばされ、地面にバウンドしながら倒れ込む。
全身に激痛が走り、何箇所か折れているように感じた。
「ら、蘭丸。」
自分の事よりも蘭丸が大丈夫か気になった。
蘭丸が割って入らなければやばかった。
すぐにポケットに入れておいたポーションを出し飲む。
すると全身の痛みはスッと消え、立ち上がっても全く痛みはない。どうやら骨折も癒したらしい。
「凄まじい効果だ。」
もはやポーションというレベルではない。
全快に近い回復力を持っていた。
そう思いながらもすぐに頭を戦いに切り替え、蘭丸の方を見るとオークとまだ戦っている。
「蘭丸!一旦引け!俺がいく!」
地面に落としていた朱槍を拾ったところで、蘭丸が距離を取ったのを確認できた。
「白光一閃突き!」
光を帯びて、神速で飛び出す。
「くらええぇぇ!!」
オークの直前で着地し、そのままフィニッシュ突きを繰り出す。
しかし、ナタで刃先を弾かれ軌道が僅かにズレた。白光一閃突きはオークの左肩を掠めただけに終わってしまった。
すぐさまカイルをオークの振り下ろしが襲う。
すぐに槍を水平にしガードする。
「ぐっ!!」
ズシッ!と受け止めた槍を通じて全身に負荷がかかる。その衝撃に足が地面にめり込んだ。
(このままじゃ潰される!)
咄嗟に腕を前に振り、ナタの衝撃を受け流しながらバックステップで距離をとった。
ナタを振り回しながらオークが追い討ちをかけてきた。
振り回し、薙ぎ払い、袈裟斬りを回避に専念し、なんとか避けていく。
パワー差がありすぎるためガードをしたら衝撃で吹き飛ばされる可能性がある。
とにかくステップで避け続ける。
その中でオークが一瞬腕を引いたのが見えた。
(突きがくる!ここだ!)
予想通りナタで突いてきたところをサイドステップで避け、反撃の突きを出そうとする。
カチャ。
予想していない音が耳元でした。
何かは分からないが悪寒を感じ、音の方向を見る。
オークが手首を返し、突いたナタの刃をこちらに向けた音だった。そのまま横振りで刃が迫ってくる。
(まずい、まずい、まずい!)
死を覚悟した。その時だった。
「ガアアアアアアアア!!」
刃は止まり、突然オークが叫び出す。
蘭丸だ。首元に蘭丸が噛み付いている。
またも蘭丸が窮地を救ってくれたのだ。
しかし、噛み付いた場所が悪かった。
オークに捕まれ、壁に向かって思い切りぶん投げられてしまう。
「ギャウン!」
悲鳴のような声をあげ、蘭丸は壁に激突し、ドサッ地面に倒れ落ちる。
「蘭丸っ!!」
カイルはオークがまだ痛がっている隙をついて蘭丸に走り寄った。
ポーションをすぐに取り出し、蘭丸に飲ませる。
すると蘭丸にも癒しの効果は現れ、立ち上がってくれた。
「蘭丸、よかった。」
蘭丸の無事を確認し、如何にオークを倒すかを考える。
白光一閃突きに関して試していないがなんとなく思うことがあった。
火起こしをする時は、動きを先にイメージして発動させたらイメージ通りに動いてくれていた。
重要なのはイメージなのかもしれない。
直線的に向かっていくだけの技じゃないんじゃないか。その疑念をカイルは持っていた。
(やってみるか。最悪切られても即死しなければポーションで治せばいい。。としよう)
賭けなのはわかっているが現状打開策が他に思いつかない。
まずは動きをイメージする。
どんな動きにするかは決めている。
(イメージ、イメージ、イメージ、イメージ...)
決意を固めてスキルを発動した。
「白光一閃突き!!」
身体が光を帯びて、地面を蹴って飛び出す。
神速で突き進むが、向かっているのは斜め上方の天井だ。いきなりオークに飛び込みはしない。
動きがイメージ通りにいくか試す必要もあった。
ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!
天井を蹴り、地面を蹴り、壁を蹴りカイルが部屋中を飛び回る。カイルはイメージに速度調整を乗せていた。最初は少し遅めから始めていき、段々と速度をあげMAXスピードにさせていく。
ガガガガガガガガガ!
MAXスピードは普段の一閃突きの時よりも速かった。部屋を高速で縦横無尽に飛び回る。
オークは明らかにその動きについていけておらずキョロキョロしながらあたふたしている。
「終わりだぁぁぁぁぁ!」
背後からカイルが強襲する。
ズバーーン!
一閃突きが胸を貫き、衝撃波で胸に穴が空く。
そのままオークは崩れ落ち消滅した。
「よかった。なんとかイメージ通りに動いてくれた。。」
(それにしてもなんだか難易度高くないか?結構毎回必死なんだけど。。)
カイルは愚痴をこぼしながらもホッと胸を撫で下ろした。
はじまりのダンジョン 二階層 攻略
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オークを倒し、蘭丸が走り寄ってくる。
今回蘭丸にはかなり助けられた。
正直死んでいたかもしれない場面もあった。
「蘭丸、ありがとう。助かったよ。」
蘭丸の頭を撫で、心からお礼を言う。
蘭丸も嬉しそうに頬を舐めてきた。
「ははっ!これからもよろしくな!相棒!」
頭をポンポンと触りながら立ち上がる。
とりあえずは魔石回収と、部屋の中央に出ている宝箱だ。
魔石はグレイトボアと同じ大きさだ。
次はお楽しみタイムだと宝箱に近づき開ける。
宝箱を開けると戦国武将が身につけている鎧である具足が入っている。
「戦国時代の具足じゃないか、、兜はないのが少し残念だけど。」
カイルは具足を宝箱から持ち上げ気づく。
「軽い。具足ってすごい重い筈だけど、、、いや、軽いのはむしろありがたいな。」
重たい具足を着ながら移動や戦闘はかなりきついはずだ。色々クラムの細かな配慮が見え隠れする。朱槍もそうだったが、ここは完全に自分専用のダンジョンのようだ。
(なんだかクリアしたら二度と入れなくなる気がするな。)
「んっ?!」
具足を見て何かに気付く。
「スキルオープン」
カイルは武士ウィンドウを開き、セットされている可児才蔵カードを見る。具足とカードを見比べる。
「同じだ!可児才蔵と同じ具足だぁ!」
これには思わず歓喜の声を漏らす。
「クラム、お前!この野郎!粋だなぁ。」
具足は可児才蔵と同じデザインの黒色の具足だったのだ。
「俺はこれを着続けるぞ!ありがとう!」
ひとしきり喜んだあと具足を装備し、一旦戻ろうか悩んだが結局もう少し進む事にした。
階段を降り、いざ3階層へ
応援ありがとうございます!
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