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第一章 はじまりのダンジョン編

第八話 ダンジョン 2階層 

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一階層ボス部屋には地下へと続く階段があった。

階段を降り、2階層にたどり着く。
構造は階が変わっても同じようだ。

一階と同様に右と左に通路が続いている。

「とりあえず右だ。」

迷路を進んでいると小さめの生物がいるのが見えた。

「3体か。人型っぽいな」

「グギッ、ギギギッ」

なにか喋っている。3体の魔獣はゴブリンだ。
手には棍棒、ナイフ、弓を持っている。

「弓はマズイ。」

弓は戦国時代でも1番死亡率が高かったと言われている。なるほど、いざ今から戦うと考えると弓というのは非常に嫌な存在だ。
戦いの最中に意識外から矢を放たれたら避けられる気がしない。

「白光一閃突き!」

光を帯びて神速で弓ゴブリンを強襲し、弓ゴブリンを一撃で倒す。

ここは迷わず白光一閃突きを選択した。

「ゲギャーー!」

棍棒とナイフのゴブリンが逆上して飛びかかってきた。

「ハッ!ーーーハァ!」

槍を突いた状態からそのまま腕を引き石突で1体を仕留める。そのまま腕を引き切り、残り1体に突きを食らわせ仕留めた。

「なんか身体の動きが滑らかだな。もしかして、、」

「スキルオープン」

~スキルウィンドウ~
スキル:槍術2
固有スキル:武士、白光一閃突

「槍術があがってる。そうか、この数字は使うごとに上がっていくんだな。」

槍術レベルが上がった事で新たに身体の動きがイメージとして入ってきていた。スキルレベルが上がり、動作間の繋ぎもスムーズになっている。

「スキルって便利だな。」

そう呟きながら魔石を回収していると弓ゴブリンのいた位置で、液体の入った瓶を見つける。

「なんだこれ、ドロップアイテムか」

(ポーション?いや、矢に毒が塗ってあったら毒消しの可能性もあるか?)

「とりあえず持っておくか。」

続けてダンジョンを進むと今度は明らかにゴブリンに待ち構えられていた。
どうやら先程の戦闘音が聞こえていたようだ。
ゴブリンは少しは知恵が働くらしい。

4体のゴブリンが陣形を組んでいる。
前衛 ナイフ、剣
後衛 弓、弓

「これは流石に奇襲がきつそうだな。」

早速矢が飛んでくる。

「蘭丸!しっかり避けろよ!」

そう言いながら矢を避けていく。
しっかり注意をしておけば避けることは問題なかった。速いが、矢は見えている。
蘭丸も問題無く避けている。

回避に専念し、少しずつ下がりながらナイフや剣の攻撃を避けたり、柄で受けたりして凌ぐ。

少しずつだが、ゴブリン達の前衛と後衛の距離が離れていく。

「よしっ、蘭丸!いけっ!」」

「ガウッ!」

カイルは蘭丸に合図を出した。その意図を読み取ったかのように蘭丸が弓ゴブリンに向かって走り出す。

矢をステップで交わしながらついには弓ゴブリンに噛みついた。

カイルはその隙に朱槍を振り、薙ぎ払う。

「ゲギャーー!」

ゴブリンは叫びながら消滅し、剣ゴブリンが飛びかかって来たところを一突きで沈めた。

蘭丸を見るともう一体の弓ゴブリンに噛みつき仕留めていた。

やはり蘭丸は賢い。こちらの意図をすごく理解してくれている。カイルと蘭丸は名コンビになりつつあった。

「蘭丸、えらいぞ。よくやった!」

いつものように蘭丸の頭を撫で、魔石を回収していると弓ゴブリンからまた瓶がドロップしていた。

「とりあえず、戦いはなんとかいけそうだ。この階はゴブリンがでるみたいだな。」

思えば1階層は獣系だった。ボスもグレイトボアで獣だ。

(2階層のボスもゴブリン系かな。)

ダンジョンの考察をしながら、ふとドロップした瓶を見る。どうやら弓ゴブリンから頻繁にドロップするみたいだ。

「なんとかこの瓶の効果が知りたいところだけど。」

特段ダメージを受けたわけでもない。今の状態で飲んでも味しかわからないだろう。

かと言ってわざとダメージを受けたくもない。

(しかたない。とりあえずは保留か。)


なんとなく階層毎に傾向があることを感じながら先に進んでいく。


合間に現れるゴブリンと戦いながら、行き止まりになったら戻り、別の分岐へ進み。

また行き止まりになると別の分岐へ。

どんどんとダンジョンを踏破していく。
進んでいくと、通路の行き止まりに水溜め場が見える。

「水だ!助かった。」

ダンジョンに入ってからずっと水分をとっていなかった。渇き切った喉を一気に潤し、顔にも水を浴びてリフレッシュする。

蘭丸も喉が渇いていたようで水にがっついている。

「この水持っていきたいな。」

溜め水を見ながら少し考える。


「せっかくだし、こいつを試してみるか。」

そういいながら短剣を取り出し、指先をプスッと突き刺した。

血が滲み出てきた。

瓶を取り出して、ゴクゴクと一気飲みする。

「ぷはぁー!うまいっ!ちょっと甘いのがいい!」

味は満足だった。指先を見ると、綺麗に傷はなくなっている。

「うん、癒し効果だ。ポーションだな。」

(回復手段がないからな。できるだけ欲しいとこだけど。。)

そう思いながら、蘭丸をふと見ると

ハッハッハッハッといいながらこちらを見て何かを訴えかけている。

「なんだ?蘭丸?」

蘭丸の視線の先、葉っぱで作った弁当袋だと気づく。

「そうか。そういや腹減ったな。ご飯にするか!水もあるしな。」

そう言うと尻尾をぶんぶん振り出した。

焼いた肉は冷えてはいるが食べると普通にうまい。蘭丸と昼食を終え、弁当袋を畳みながら気づいた。

(これ、カバンになるじゃないか。)

思い立ったら即行動に移る。
空になった瓶に水を入れて蘭丸に声をかける。

「蘭丸!ゴブリン狩りだ!いくぞ!」

それからは弓ゴブリンを探してダンジョンを歩き回った。

ボス部屋も見つけたがそのままスルーし、弓ゴブリンを見つけて蘭丸と連携を取りながら狩り続ける。

「もう入らないか。」

弁当袋にはポーション20本前後と魔石が入っている。

「よし、ボス部屋に向かうか」

そのままボス部屋の前までやってきた。

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ボス部屋の中に入り辺りを見回す。
どうやら一階層のボス部屋と同じ作りのようだ。

中央に人型の魔獣がいる。
背が高く、かなり体格がいい。
普通のゴブリンとは明らかに格が違う、そう思わせる風格をもっている。

二階層のボスはオークだ。
手にはナタのような大きな剣を持っている。

「ゴブリンのボスときたらやっぱオークか。」

それはなんとなく予想はしていた。
だが、実際にオークを目の当たりにすると半端ない威圧感を放っている。

(こんな奴と戦うのか。。)

見れば見るほどにその身体付きに目がいってしまう。
丸太のように太い上腕二頭筋。腹は少し出ているが、脂肪の中に隠れた筋肉が詰まっているようにも見える。
まるで軽量級がヘビー級に立ち向かうようなものだ。

しかし、戦わないと何も始まらない。

「蘭丸。危ないから見てるんだぞ。ーーーー
よし、いくか」

そう決心し、槍を構えた。
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