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2.神童目指して頑張ります

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転生してから、早3ヶ月が経った。
どうやら俺は家の規模やメイドや執事が大勢いる事からそれなりの家に生まれたようだ。
ナイス女神!
父親はでっぷりと太っていて、まるで悪徳貴族の様な風体をしているが、俺の事を溺愛している。
母親は出産の時に体調を崩し、今は実家に戻って居るらしい。

他にも兄妹が上に4人いて、男と女が半分づつだ。
こちらの兄妹達は太って居なかったので一安心出来た。
顔の出来についてはよく分からない。
まあ、一番上の長男ですらまだ7歳だからこの歳の子は全員可愛く見える。

突然だが、赤子の俺の一日の始まりは物凄く早い。
初めのうちは赤子の身体は動けないし喋れないので精神的に追い詰められたが、満月の日だけ暇潰しに女神があの空間に呼んでくれたのを希望に生きていた。
だが、ある日乳母の一人がステータスオープンとか、非常にそそられる単語を言って何かを確認していたのを見てからは生活が一変した。

早速ステータスオープンと言おうとして『あうあーうあーう』としか言えなかったが結果としては女神が出したスキルボード(名前が分からなかった)によく似たものが出てきた。
それがこれだ。

レオン.アルフォード
Lv1
職業:***(ギフト:開封条件を満たしていません)
称号:神の子.女神の愛子.転生者(非表示)
体力:F
魔力:E
筋力:F
耐久:F
俊敏:F
回復:F
運:B
スキル
計:10

そう!ステータスボードだ!
転生者なら、いや異世界好きなら誰もが憧れるであろうステータスボードだ!
ステータスが恐らく最低値なのは赤子なので仕方ないとしても、魔力はEだ。
魔法の一つ位は使えるだろう。
この時ばかりは感動して泣き笑いしてしまった。

さて、魔力に赤子と言えばあれだろ。
そう思い始めたのは、魔力を永遠に放出し続けて魔力値を上げると言うラノベ式人外化訓練だ。
勿論初めは魔力を動かすどころか、どれが魔力かすら分からなかったが、何時かのラノベで血管を意識しろと言っていたので血管を意識してみたらものの見事に魔力を放出出来るようになった。

それから毎日魔力を限界まで放出して気絶して魔力回復で直ぐに回復して気絶を繰り返していた。
気絶するのは流石にキツいが、微妙に放出する魔力の量が増えているのでそれすらも気持ち良く思えてしまう。
元の世界とは違って、ステータスボードで目に見えて成長するのが分かるから、キツくてもモチベーションが保ち続けられる。



「レオン様ー!レオン様ー!どこに行っちゃったんですかーっ!」

転生してから1年以上が過ぎた。
この頃になると立つことは出来ずともハイハイで家中を移動する事が出来る。
と言っても所詮は赤子なので移動出来る範囲は限られているが。

ステータスはほとんど変わる事は無かったが、魔力の所だけはEからDに変わった。
魔法も初級魔法程度なら使える様になり、スキルの種類もいくつか増えた。
今はその内の一つの認識阻害のスキルを使って俺付きメイドの目をくぐって近くの書斎に向かっている所だ。

「ちゅうきゅーまほうびょん……あっちゃ」

滑舌はまだまだだし、話しすぎると直ぐに息切れを起こしてしまうが、言葉自体は話せる様になった。
滑舌自体も毎日のように話しているのでそのうち気にならない程度にはなるだろ。

「……ちゅかうにはまりょくがびみょーにたりまい」

今読んでいる本は闇属性中級魔法について書かれているものだ。
何故闇属性なのかと言うと単純に一番適正が高かったからだ。
初級魔法はこの書斎内にある本に載っているものは全て使える様になった。
中級魔法も必要な魔力量が少ないものならギリギリだが発動する様になった。
だが、中級魔法にもなると魔力はD判定の中でも最低ラインのせいなのか、技量以前にそもそも発動させるだけの魔力が用意し切れないことがほとんどだ。

「あ!やっぱりここに居ましたねレオン様!」
「りゅにゃ」
「まーたそんな難しい本当にを読んで。私も分からないような本をまだ赤ちゃんのレオン様が読める訳も無いのに」
「それはりゅにゃがバカなだけ」
「……レオン様って本当にまだ1歳なんですよね。既に私よりも賢い気がするんですけど」

先程から残念すぎる頭の持ち主だと暴露しているこの傍付きメイドはリュナと言い、俺の乳母の一人でもある。
この世界の今期は15~17歳辺りだと言うのに21になっても男の気配一つ無い悲しい行き遅れだ。
とにかくこのリュナは明るく、金髪なのでどうしても元の世界の頭の緩いJKを思い出してしまう。

「レオン様、何か失礼な事を考えてませんか?」
「………………」



あれら更に2年近く過ぎ、俺も今年で3歳になる。
勿論魔力の訓練は欠かさず行い、自主的に体力作りや剣の訓練を始めている。
魔力はいつの間にかBに代わり、筋力はと体力はDに、その他はEに上がった。
体力作りは見つかると家に連れ戻されるので、隠れながら走り込みなどをしている。
剣の訓練は、前の世界で剣道を小4から高校2年までしていて、元々は異世界に出てくる剣術をしてみたくて習い始めたのもあって、我流で練習していて、それを今も頑張っている。
我流と言っても8年間本気で打ち込んでいたのでそれなりに見れる程度には仕上がっているつもりだ。

「坊ちゃん、また隠れて練習ですかい」
「ハイスか、お兄様達に剣の手解きをしていたんじゃないか?」

俺用に重い金属で出来た短剣を更に細くしてもらったもので素振りをしていると、無精髭が妙に似合う男に声を掛けられる。
ハンスと言ったこの男は、父さんが雇ったAランク冒険者で上二人の兄に剣の手解きをしている人だ。

「あっちは基本を叩き込んだんで、後は屋敷の兵士達と模擬戦で技量を上げるだけですわ。それにしても坊ちゃん、随分と綺麗な素振りをしてますね。誰かに剣術でも教えて貰ったんですかい?」
「素振りはな。その他は全部我流だ」
「ほぉー、その歳で魔法が使えるだけでも十分上等なのに剣まで使えたらもしかすると坊ちゃん、Sランク冒険者になれるんじゃないですかい?」
「さぁな、だがそこを超えないと俺の目標には届かないがな」
「さっすが神童!言うことが違いますわ!」

ハンスは俺が剣の訓練をしている所を見ても、家に連れ戻す訳でもなく、何か教えるでも無いので引き続き素振りを繰り返す。
素振りを終えると今度は足さばきを練習しながらそれに合わせて剣を振る。
まるで演舞の様にスムーズに剣を振れるようになったら剣術スキルの技を連続で発動し、実戦でも使える型を作っていく。
その間ハンスは一言も喋ること無く、ただじっとその様子を見ているだけだった。

「坊ちゃん、少しいいですかい?」
「なんだ?」

身体が慣れてきた所で咄嗟の自体に反応出来るよう、スキルの起動を無理矢理変える練習も忘れずにしておく。

「一回俺と模擬戦してみません?勿論手加減はしますんで」
「は?Aランクと俺がか?」

あまりに馬鹿げたことを言うのでつい、手を止めてしまった。

「勿論模擬戦なんで普段使ってる魔道具は使いませんしスキルも使いませんから。どうですかい?」

どうだろうか、これは良い機会なのではないだろうか?
現状、自分がどれ程出来るか測るのには格上は丁度いい。

「家の人間に見つかれば即連れ戻されるからな。俺も魔法と魔法剣は使わない。これでどうだ?」
「魔法剣ってこれまたどえらいもんを……。Aランク冒険者でもそれをまともに使える奴なんて数が知れてますのに」

そうは言いながらもハンスは鞘に収めた長剣を数度振り、感触を確かめる。
俺も練習用の重い剣から軽い鉱石で出来た短剣を鞘に収めた状態で構える。

「それじゃ坊ちゃん、先手は譲りますんでそれまでは好きに強化しておいてくだせぇ」

一見舐められている様な言い草だが、そもそもハンスは戦闘職である冒険者の中でも最強のSランクに次ぐAランクだ。
それに歳だって10や20以上離れている。
3歳児相手なら本来これでもやり過ぎなくらいだ。

スキル発動

身体強化.筋力強化.俊敏強化.速度強化.五感強化.隠密.隠蔽.気配緩和.

「もしかして坊ちゃん、今盗賊系のスキルを使ってやす?少し坊ちゃんの姿が見えにくいんですけど」

俺が使ったスキルは単純な強化系スキルと隠密系スキルの二種類だ。
ちなみに隠密系スキルはどれも上位スキルで、普通はこれだけ重ねがけしてたら見えにくい程度じゃ済まないんだがな。

「行くぞ」

そう言うと姿勢を低くし、ハンスの右足を短剣で切りかかる。
年齢のせいもあり、身長はまだ100センチも無い俺が更に意図的に姿勢を低くすればそれだけで脅威となり得る。
だがハンスは事も無げに足で短剣を逸らす。
いくらスキルで強化しようとも俺のステータスはBにも満たない。
Aランクにまで上り詰めたハンスには技量でも地力でも勝てない。
ユニークスキルを使えば流石に勝つ事は難しくないが、それは最早訓練では無く死闘の域にまで達してしまう。

「一殺必閃ッ」
「ん!暗殺系の上位スキルですかい」

逸らされた瞬間腰で踏ん張り、起動を無理矢理変え、アッパーカットに近い形でスキルを発動する。
ただでさえ高火力の暗殺系スキルの上位スキルは、流石のハンスもスキル無しでは防げないと悟ったのか、身体を後ろに倒す事で回避した。
一殺必閃は本来下から上への切り上げ技なのだが、身長の都合上アッパーカットになってしまい、それによりハンスに避けられてしまう。

「ほいっ、ほいっ、ほいっ。なかなかすばしっこいですね坊ちゃん!」

ハンスの圧倒的なステータスで繰り出される連撃は、俺の凡庸なスキル発動よりも遥かに鋭く重かった。
ハンスの剣を短剣で受け止めるには何もかもが足りないので、見極めた上でその小さな体格を活かし、避け続ける。

「我が拳は万里の断り……絶拳」

最早短剣での攻撃は見切られ、簡単にいなされるので苦し紛れに短剣を投げつけ、その間にスキル発動の詠唱を終える。
ハンスの剣が拳を拒むが剣ごと砕いてしまう。

「はは、俺の負けですわ坊ちゃん」

そう言ってハンスは柄だけとなった剣を地面に放り投げるのだった。
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