14 / 20
初LIVE
初LIVE1
しおりを挟むバンドを結成した日からもうすぐ3ヶ月が経とうとしていた。ガロンが予告した大会の1週間前である。
「キッド! ギター走ってるわよ? ちゃんと周りに合わせようとして!」
「わりい…」
「ま、まぁ、エレナ少し落ち着いて」
「分かってるけど、大会まで後1週間しか無いのよ? エレナも、もう少し自分のギター主張して欲しい。キッドと私の音に消されてる」
「すいません……」
「エバも心全然篭ってないよ?それじゃあ観客には伝わらない。」
「ごめん」
「ちょっと休憩にしましょう……私飲み物買ってくるわね」
そう言って演奏室から出て行ったエレナ。順調に滑り出したと思われたTDIMだったが、ここ最近は毎日ピリピリとした空気が漂ってる。
「エレナさんここ最近毎日ピリピリしてますね」
「あいつは苦労してきた分見返してやりてえって気持ちが強いんだろ」
「分からなくも無いけど、少し怖いよね」
「私達このままで大会で結果を残せるんでしょうか……」
「ここまで来たらやるしかねえだろ」
「そうよ!やるしか無いのよ!」
「エレナ……」
毎回飲み物を買って帰って来ると目の下を赤く腫らしたエレナに気付いていたアメリが心配そうな声で名前を呼ぶ。
「さーて! もうひと頑張りしましょう!」
大会3日前。
「何回も言うようだけど、キッドはギター走り過ぎだって! 何で合わせようとしてくれないのよ!そんなに1人で弾きたいなら1人でやれば良いじゃない!」
「エレナ!」
「あ?」
慌てて止めたアメリだが、一歩遅かったようだ。今まで我慢していたキッドだが、さすがにエレナの一言に今までの不満が爆発した。
「合わせろ合わせろってお前はどうなんだよ!毎回毎回上から目線で偉そうに文句ばっかりじゃねーかよ!1人でやりたいなら1人でやれだと?だったらそうしてやるよ!」
「キッド! いくらなんでも言い過ぎだよ……」
「ちっ……ドンッ!」
「待ってキッド!」
舌打ちをして演奏室から出て行ってしまったキッドとその後を追うエバ。演奏室には何も話さないアメリとエレナが残った。
「はぁ……やっちゃったわ。キッドに酷いこと言っちゃったわね……」
「エレナ……」
目頭を赤くして、涙がこぼれないように上を向くエレナにアメリが近寄った。
「最近大会で結果を残す事しか考えてなくて、みんなにキツくなってたわね、アメリもごめんね?」
「私は良いんです……ただ、ここ最近エレナがとても辛そうに見えて」
「辛かったわね。みんなに言い過ぎてるなって、毎日後悔してるんだけど、やっぱりムキになっちゃうのよね。私だって全然満足のいくパフォーマンス出来てないのに」
「1人で抱え過ぎるのは良くないですよ? 何の為に私が居るんですか」
「アメリ……」
「私達同じバンドメンバーなんですから、ちゃんと話し合いましょう! 言いづらい事なら私にだけでも相談してください!いつでも相談に乗りますから」
「ありがとう……アメリ。ひっ……ひっぐ……」
今まで我慢していたものが溢れ出るかの様に泣き出したエレナ。
「我慢する必要なんて無いですよ? 思いっきり泣いてスッキリして下さい」
そう言ってエレナを優しく抱きかかえたアメリ。アメリの優しさにしばらく甘えていてエレナが落ち着きを取り戻すのは少し時間がかかった。
「落ち着きましたか?」
「ええ。ありがとうね」
「いつでも歓迎です!とりあえずキッドに謝って今後のこと話し会いませんか?」
「そうね。キッド達帰ってくるかしらね」
「必ず帰ってきますよ」
そう言ってキッド達の帰りを待つアメリとエレナであった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【6/5完結】バンドマンと学園クイーンはいつまでもジレジレしてないでさっさとくっつけばいいと思うよ
星加のん
青春
モブキャラ気取ってるくせにバンドをやってる時は輝いてる楠木君。そんな彼と仲良くなりたいと何かと絡んでくる学園一の美少女羽深さんは、知れば知るほど残念感が漂う女の子。楠木君は羽深さんのことが大好きなのにそこはプロのDT力のなせるワザ。二人の仲をそうそう簡単には進展させてくれません。チョロいくせに卑屈で自信のないプロのDT楠木君と、スクールカーストのトップに君臨するクイーンなのにどこか残念感漂う羽深さん。そんな二人のじれったい恋路を描く青春ラブコメ、ここに爆誕!?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる