幼なじみのあいつ

ももたろ

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ずっと一緒がいい

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俺には幼なじみがいる。

小さい頃から家が近くて、どこに行くにも何をするにも一緒だった。

そんなあいつは誰とでも仲良くなれる明るい人。

反対に俺は人見知りで友達も少ない。

タイプの違う俺たちだけど小さい頃から一緒にいるおかげであいつは俺の良き理解者であり俺が心許した数少ない人間の1人だった。

そんな俺たちは小学校、中学校を共に過ごし、高校受験ももうすぐだった。

地頭がいいからやれば出来るはずなのにやらないせいでテストの点が取れないあいつと、そこそこ勉強を頑張っていい点を取っていた俺とでは目指す高校も違うだろうと思っていた。

俺が目指していた高校は少し頭のいい学校だった為、いつも以上に気合を入れて勉強をしていた時、あいつに言われた。

「俺、お前と同じところ受けるわ」

こいつは何を言ってるんだと思った。

「お前、今から勉強して間に合うのかよ」

そういう俺にお前は

「だから俺に勉強教えてよ」

そう言ってきた。

自分のことでも精一杯だったが、俺もこいつと離れてしまうことに少しの寂しさを感じていたので一緒の高校に入るべく2人で頑張ろうと決意したのであった。

それからというもの、あんなに勉強嫌いだったあいつは毎日俺と一緒に勉強する日々を送っていた。

俺自身も、人に教えることによって自分が理解しているかの再確認ができるという思わぬ収穫もあったのだった。

あいつが俺と同じ高校を受けることについて先生や周りの人から馬鹿にされていたのを俺は知っていた。

嫌いなものに一生懸命取り組んでる姿を見ていた俺はあいつのことを馬鹿にしているやつらに、何もわかってないくせに。なんて俺の方が腹立たしくて仕方なかった。

そうやって怒る俺にあいつは

「そんな怒んなよ、結果出して見返してやればいいだろ?」

そう言って笑っていた。

その時のあいつは誰よりもカッコよく見えた。

そんな日々を過ごし、ついに受験当日がやってきた。

2人ともやれる事は全てやってきたつもりだった。

受験前日、2人で神社に行ってお参りをしてお守りを買った。

受験当日、カバンにお守りをつけ会場へと向かった。

どのくらい時間が経っただろう。ようやく全てが終わった。

俺たちは2人とも疲れ切っていたが、どこかスッキリしていた。

受験が終わり俺たちは2人でご飯を食べた。

久しぶりに勉強以外の話題で盛り上がりとても有意義な時間を過ごせた。

そしてやってきた合格発表の日。

何故か俺はあいつより緊張していた。

そんな俺にあいつは

「まぁ、大丈夫でしょ。なんたってお前が教えてくれたんだから」

そう言ってあいつはまた笑っていた。

2人で紙が張り出されたボードの前へ行く。

並べられた数字を順番に目で追っていく。

ついに見つけた俺の番号。そしてすぐ近くにはあいつの番号も載っていた。

俺たちは久しぶりに抱き合って喜んだ。

「これでまた一緒だね、嬉しい?」

少し意地悪な笑みを浮かべながらそう言ってきたあいつに俺は

「俺は別に。大体、お前が勝手についてきたんだろ」

反抗するようにそういう。

それでもあいつはまだ意地悪な笑みを浮かべていた。

「なんだよ」

少し不機嫌にそう聞く俺。

するとあいつはこう言った。

「寂しかったんでしょ?だから俺、めっちゃ頑張ったのに笑」

あいつはやっぱり俺のことよくわかっている。寂しがってたのもバレていたとは。もう何も隠し事はできないなと思った。

その日は俺の為に頑張ってくれたお礼にご飯をご馳走した。

そして俺たちは無事、高校に入学した。

それからも俺たちの関係性は何も変わらなかった。

高校1年の頃、俺は慣れない生活や人に疲れ大変な日々を過ごした。そんな中でもあいつはすぐに友達をたくさん作り楽しそうにしていた。

高校2年の頃、ようやく高校生活にも慣れ普通の日々を送っていた。

高校3年、またこの季節がやってきた。俺は大学へ行くつもりだがあいつは就職か進学で迷っているようだった。進路希望調査の紙も白紙で出すあいつに俺は大丈夫なのかと少し心配だった。

そんなあいつとは逆に、俺はこの調子で行けば目指した大学に問題なく進学できそうで安定した日々を送っていた。

なのに何故か胸がざわついていた。この感情はなんだろう。あいつと違って俺は進路も決まっているはずなのに。今の生活も安定しているはずなのに。何故だろう。

俺はモヤモヤした気持ちのまま残りの高校生活を過ごしていた時だった。またしてもあいつがあの時と同じセリフを俺に言った。

「俺、お前と同じところ受けるわ」

そして俺もまたあの時と同じように

「お前、今から勉強して間に合うのかよ」

「だから俺に勉強教えてよ」

気付いたらあの時と全く同じ会話を2人でしていた。

でも今回は疑問に思ったことがある。

「なんでまた俺と同じところ行こうとするんだよ」

「だってお前、寂しそうだよ?」

そう言いながらあいつはまた意地悪な笑みを浮かべていた。

あぁ、俺、寂しかったんだ。今までのモヤモヤした気持ちはこれだったんだ。どんだけあいつのこと好きなんだろう。

それは恋愛的な意味ではなく幼なじみとして、友達として。俺にとってはもう必要不可欠な存在だった。

「俺、お前のことならなんでもわかるからさ笑」

そう言って笑うあいつはやっぱりカッコよかった。

俺はこいつに何も隠し事は出来ないなと思った。

少し嬉しくなっていた俺にあいつは続けてこう言った。

「一緒に同じ大学行って、そんで隣同士で部屋借りて住もう。これでどう?流石に寂しくないだろ?」

俺は悔しかった。なんだかこれじゃあ俺だけが寂しいみたいじゃんか。

だけどそんなのもうどうでも良くなるくらいに俺は嬉しかった。この先もずっとこいつなら俺の隣にいてくれるだろう。そんな気がした。

結局俺たちはまた2人で勉強して同じ大学へと進学した。

その後は、隣同士に部屋を借り、互いに行き来しながら楽しく過ごした。

あいつの隣は俺がいい。

そんな俺の思いがお見通しなお前は部屋までもを隣にしてくれた。

やっぱりあいつは俺の良き理解者だ。
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