【R18】社畜の異世界転移録、ステータスアップの秘密はザーメンてマジ!?【ユレネ編完結】

藤 時生

文字の大きさ
上 下
26 / 28
ユレネ編

26.クロエネダの行く道は!?※R18描写なし

しおりを挟む
 クロエネダの面々と会えたのは、その日の夕方になってからだった。ギルドの受付嬢に見かけたらセナが探していると伝えて欲しいと告げておいたおかげで、自宅で片づけをしていたセナの所にわざわざやってきてくれた。
 これまでの礼と挨拶を兼ねて夕食をご馳走したいと告げて、ギルドの側にある酒屋に腰を落ち着けた。静かな店ではないが、隣のテーブルの人間に話を盗み聞きされない方がありがたい。
「かんぱーい!」
 ずらりと並ぶ肉料理と焼野菜、パンやスープ、チーズの盛り合わせと言ったメニューに赤い果実酒で乾杯する。グイっと半分ほど一気に飲み干したウィルは、堪らないとばかりにため息をついてから本題に入った。
「んで、セナは結局どうすることにしたんだ」
「俺は冒険者ギルドの本部に行ってみようと思います。あそこには、俺みたいな人の資料がたくさんあるし、同じような人が働いているらしいので」
「ギルド本部か、ユンインの向こうだろ」
「はい」
「まあグロウがいるから大丈夫か」
 セナの隣に陣取って皆と同じようにグラスを傾けていたグロウは、任せろとばかりに蔓で自分の植木鉢を叩いて見せる。正面に座ったイモの焼いたものをグロウに向かって差し出しては、パカリと開いた口に放り込んで興味深そうにしている。
「皆さんはギルド本部に行ったことあります?」
「あぁ、一度だけな」
「どんなところですか」
「どんなって、世界で一番でかいギルドだよ」
「でかい」
 ざっくりとしたウィルの言葉に、ウィルの隣に座っているルーシャが呆れ顔で解説をつけ足してくれる。
「それじゃよくわかんないでしょ。ギルド本部は世界各地にあるギルドからの情報を集約してる場所よ。ダンジョンの情報から、モンスターの生息地、習性。スキルや魔法の研究もやってるわ。各国の支部から定期的に報告書が送られてくるらしいの。ギルド独自の情報も多いわ。セナが自分の事を知りたいなら、本部に行くのも充分アリだと思うわ」
 差し出される食べ物を美味しそうに頬張っていたグロウに、ロコが今度は酒の入った瓶を手渡す。蔓を巻き付けて受け取ったグロウが人間と同じようにそれを飲み干していく。
「皆さんはどうするんですか」
「それなんだけどさ……」
「意見が割れてるのよねえ」
 ルーシャが頬杖を突きながら焼いた腸詰をフォークで突き刺し、深いため息をもらす。そこでグロウに酒を飲ませていたロコが顔を上げてセナの方を見た。
「俺はセナと共に行く方がいいと言ったんだ」
「え?」
「スキルの研究がしたい。生態の分かっていない魔人の研究も同時にできる」
「あー……ロコさんはそうですよね」
 セナが一日何をして魔力をどれくらい消費したか、何を食べてどれくらい魔力が回復したか、という日記じみた記録を覗きに来るぐらいだ。ユレネの洞窟では成し得なかった、魔素濃度の高い場所で魔力が回復するかどうかの実験も残っている。
「アタシは予定通りケイロンがいいと思うのよね。ケイロンの先にはダンジョンも多いし、高ランククエストもあるし」
「俺はどっちでもいんだけどなー。セナにはいいとこ見せられてないし、一緒に行くのもいんじゃねって」
「僕はみんなの選択に合わせようと思う」
 そんな感じで、ウィルとゴルシュは中立を保ち、ロコとルーシャの意見が割れて決着がつかないらしい。クロエネダでは多数決ではなく、話し合いでの方針決定を基本としているようで、どちらかが折れない以上はどうにもならないのだとか。
「そもそも、セナのスキルの研究だとかなんだとかはロコの趣味でしょ?セナだって自分のこと知りたいって言ってるんだから、ロコじゃなくても誰かが研究するわよ」
「ああ、趣味だ。だがこれは確実に魔法研究の今後に役に立つ。だがセナにはまだ知識が足りない、自分の体の事だったとしてもどんな事が重要であるか分からないはずだ。そこで、魔力に精通してる俺がいれば過不足なく情報を集められるだろう」
 恐ろしく自信満々に趣味だと言ってのけたロコだが、ルーシャは納得していないようだった。ルーシャは魔法の研究などには興味がなさそうな様子だったが、当たり前と言えば当たり前だろう。
「それに、ケイロンにどうしても行かねばならん理由もないだろう。クエストの難易度はケイロンでもギルド本部でもあまり変わらない」
「ケイロンじゃなくて、その先に用事があるのよ。ケイロンの西側はほぼ未開拓の土地でしょ。未踏破のダンジョンもあるし、未発見のダンジョンも多いわ」
「ギルド本部の東もだ」
「…………」
 形勢はややルーシャが悪いようだ。つんと澄ました顔でチーズを齧るロコに、不服そうな顔をしたまま果実酒を傾けている。
「何かギルド本部へどうしても行きたくない理由があるんですか?」
「別に、そういう訳じゃないのよ」
 ふと口をついて出た疑問に、ルーシャは視線だけでセナを見て返事をする。けれど彼がなぜケイロン行きをここまで推すのかという理由は終ぞ聞けなかった。何かこの場で話すには不都合な話なのではと考えれば、セナは口を閉ざすしかない。恐らく、この場で話せない理由とは自分だろうと気づいたからだ。
「セナはいつ頃この街を出るんだ?」
「えーと、まあ、そういう事ならクロエネダの皆さんの答えが出てからにしようかと思います。急ぐ旅でもないし、急かすのもアレですから」
「そっか、ありがとな」
 ウィルが笑って言い、それから視線をずらして驚いた顔をした。ウィルの視線を追いかけて自分の隣を見ると、グロウが頭の木をぐったりとしな垂れさせている。
「え?グロウ?大丈夫?」
「飲み過ぎたみたいだな」
「あ、あー……」
 プスプスと寝息のような呼吸音を立てているグロウの前のテーブルには、空になった果実酒のボトルが置かれている。半分以上残っていたはずだから、会話している短時間に全て飲み干してしまったらしい。
「魔人も酒に酔うのか」
 ロコが身を乗り出してしな垂れた木を持ち上げても、グロウは眠ったまま反応しない。苦しそうにしている様子はなさそうなので、単純に酔っぱらって眠っているだけだろう。
「酔うみたいですね」
「その緑の部分に酒をやっても酔うのだろうか」
「やめてあげてください」
 酒の瓶をこちらに向けてくるロコも酔っているのか、その後も追加で酒を頼むたびに浴びせようとしてくる。それを手で押し返したり、あるいは代わりに飲んだりして、気が付けば大分酔っぱらう羽目になってしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話

ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org

処理中です...