異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ

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家族

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荷物整理の終え、しばらく部屋でゆっくりしていると、いつの間にか夜になっていた。

お腹も空いてきたので、俺は部屋を出て、リビングに向かった。

リビングでは何やら話し声が聞こえてきた。

「あら、リーシャちゃん。料理できるの?」

「はい。出来ますよ」

どうやら、リーシャが母さんの手伝いをしているようだ。

母さんは多分娘ができた気分で嬉しいのだろう。笑みを浮かべ、楽しそうしている。

俺もあんな感じで料理を習ってたな、なんか懐かしい。

久しぶりに実家に帰ってきたせいか、昔の事が脳裏に浮かんできた。
やなり実家は一番安心する。

「旬。リーシャちゃん、凄い料理上手ね」

「そうだろ」

俺がそう言うと母さんがニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

その瞬間───やられたと俺は思った。

「リーシャちゃんの料理食べたことあるんだぁ」

「っ……………」

「アマネさんには何度も助けて貰ってましたので、お礼に作ってたんです」

「あら、そうなの?ありがとね」

「いえ、私にはそれくらいしか出来ませんから」

リーシャは良い感じに誤魔化してくれた。

そんな感じで母さんにからかわれながらも、料理は進んでいく。
そうして完成に近づいてきたところで、玄関のドアが開いた。

「ただいま」

「おかえり父さん」

スーツ姿の父さんがリビングに入ってきた。

「あぁ~腹減っ…………たぁあああ!!」

父さんは台所にいるリーシャを見た途端、叫んだ。

「父さんうるさい」

「おい、旬。なんだあのべっぴんさんは?」

「母さんから聞いてないかったのか?」

「えっ、もしかしてあの子が旬のお隣さんか?」

するとリーシャは台所から出て父さんの前でお辞儀をした。

「初めまして、リーシャ・ミリセントです」

「は、初めまして。父───啓示《けいじ》です。旬がいつもお世話になってます」

緊張でもしているのか、丁寧な口調で父さんは挨拶をする。

「いえいえ、お世話になってるのは私の方ですよ」

そう言って可愛らしい笑みを浮かべるリーシャ。

すると父さんがいきなり、俺の肩に手を付き、口を開いた。

「旬。お前やるな!」

「だから付き合ってないって言ってるだろ」

「じゃあ今すぐ告白しろ!」

「いや、何でだよ!」

俺はふとリーシャの方に視線を向けた。

リーシャは何故か頬赤くし、期待の眼差しを向けてきていた。
その時、パチリと目が合い、リーシャは逃げるように台所へと戻った。

「旬。今の反応は間違いなくいけるぞ」

「父さんはもう黙っててくれ」

両親のせいでリーシャを無駄に意識してしまう。ほんとに勘弁してくれ。

「出来たわよ」

母さんはそう言ってテーブルの上にあるガスコンロに鍋を置いた。
どうやら今日の夜はすき焼きらしい。

「旬。お皿並べて」

「わかった」

俺は台所に向かい、人数分の皿を取った。
テーブルに並べ、全員が席に着いた。
俺の隣にはリーシャが座っていた。

「「「いただきます」」」

そう言ってすき焼きを食べ始める。

「はい。リーシャちゃん」

母さんがリーシャの分をついだ。

「ありがとうございます」

リーシャはお皿に入ったお肉を卵に潜らせて口に運んだ。

「美味しいです」

「リーシャちゃん、美味しそうに食べるわね」

嬉しそうにそう言う母さん。

「すき焼きは初めてだったので、すごく楽しみだったんです」

「そうなのね。なら作って正解ね」

「旬はリーシャちゃんにご飯作ってやってんのか?」

まるで同棲し始めたカップルに聞くような質問をしてくる父さん。

同棲に関しては間違えては無いが、両親は知らないはずだ。

「たまにな」

「おっ、やるじゃねぇか」

「リーシャちゃん。旬の料理は美味しかった?」

「はい。すごく美味しいですよ」

そう言った後、俺の方を見てニコリと笑うリーシャ。

俺は嬉しいような恥ずかしいような気持ちになり、目を逸らしてしまった。

「旬、顔が真っ赤よ」

「ちょ、母さん」

「珍しいな。旬がそんなに取り乱すなんて」

「当たり前だろ。今までにこんな事無かったんだから」

俺に面と向かって好きと言ってくれたのはリーシャが初めてだ。
それもこんな美少女に。嬉しくないわけが無い。

「確かに女の子を家に連れてきたことは無かったな」

「お母さんは嬉しいわよ。リーシャちゃんすごく良い子だし、娘が出来たみたい。ずっと居て欲しいわ」

母さんがそう言った時、リーシャはすごく幸せそうな顔をしていた。

「そう言って貰えて嬉しいです…………お、お母さん」

「お父さん!今リーシャちゃんが私の事お母さんって言ったわよ」

「なに!?リーシャちゃん。俺は?」

「お、お父さん」

「ありがとうリーシャちゃん……………」

そう言ってすすり泣く父さん。

「泣くほど!?」

「いや、だって。娘からお父さんって言ってもらったんだぞ」

「勝手にリーシャを娘にするなよ」

嬉しいのかもしれないが、俺からしたらすごく恥ずかしいのでやめてもらいたいものだ。

「アマネさん。家族っていいですね」

リーシャは飛び切りの笑顔を俺に向け、そう言った。

「……………そうだな」





すき焼きを食べ終わり、俺とリーシャは同じ部屋に戻った。

「まさか両親がここまでリーシャを気に入るとはな」

「お二人とも温かくて優しい人たちです。アマネさんと居る時と同じような心地良さを感じました。やっぱり親子ですね」

「それなら良かった。両親の事をそう言ってくれるのは俺も嬉しいよ」

両親はどちらかと言うと社交的で気さくな方だろう。人見知りの俺とは真逆だ。
俺は両親のようになりたいと思っていたし、今でも尊敬している。
なのでリーシャに両親のことを気に入って貰えるのは嬉しいのだ。

「アマネさんが羨ましいです。両親に気を使わず、好きな事を言って笑い合える。私の理想の家族です」

「リーシャ…………」

「私、決めました!私を捨てた両親にガツンと言ってやります!もう言うことは聞きませんって」

そう言うリーシャはやってやると言わんばかりのやる気に満ちた顔をしていた。

「リーシャもついに反抗期だな」

「はい!反抗期です!」

こんな可愛い反抗期の娘を捨てるとはバカ親だな。

「そろそろ向こう世界もリーシャを探し始めていることだろうし、終わらせに行くか?」

「はい!そしてアマネさんと家族になりたいです!」

「それはまた随分と嬉しい事を言ってくれるな」

だが実現するには勝つしかない。王子にも女神にも───そして両親にも。
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