上 下
31 / 40

決戦④

しおりを挟む
「お前をこっちの世界に連れてきたのは私だ。だから私がお前を殺す!」

 シイラギは手に持つナイフを何度も何度もグリードの目に刺し続けた。

「っ…………貴様ごときに私を倒せるはずがないだろ!」

 そう言ってグリードは大きな手でシイラギを掴んだ。

 そうして勢い良く投げ飛ばした。

 バァァァン

 シイラギは建物に勢いよくぶつかった。

「危なかったっす……………」

 サカガミはそう言ったと同時にシイラギのぶつかった建物がなにかに押されたかのように瓦礫を周囲に吹き飛ばした。

 そこには結界に守られたシイラギの姿があった。

「天音くん。俺は柊さんの方に行ってくるっす」

「分かりました」

 二人は別れ、アマネはリーシャの方へと急いだ。

「リーシャ!」

 逃げる人の誘導が終わったのか、一人で道に立っているリーシャの姿があった。

「アマネさん!無事で安心しました」

 そう言ってアマネに駆け寄るリーシャ

「リーシャも無事でよかった」

 お互いの無事を確認出来たことで二人は安堵の息を漏らした。

「どこだ!どこにいる!」

 両目を潰され、視力を失ったグリードがそう叫びながら暴れ始めていた。

「まずいな……………」

 するとグリードは「もう良い」と言い、炎を無作為に放ち始めた。

 その時だった───

 突然、電気を伸びた鉄骨が勢いよくグリードにぶつかった。

「グァァァ……………」

 魔法も効かない硬い皮膚にヒビが入った。

「たく。無茶苦茶しやがって」

 そう言ってアマネ達の前に一人の女が現れた。

「店長……………」

「旬くん。あっ、琴音ちゃんは避難させたから安心してくれ」

「それは分かってますけど…………今の攻撃って───」

「鉄骨をぶつけたんだよ。私の使える魔法は電気だから、直接だと皮膚が厚いやつとかには効かないんだよね」

 フジサキの持つスキルは雷魔法だ。電気を操る魔法であり、それによって起きた磁力で鉄骨などの金属類を引き寄せることが出来る。

 竜の皮膚は魔法に対して耐性があるため、元から硬い皮膚が魔法による攻撃だと更に硬くなるのだ。だが自然にある物質に対しては耐性がないため硬い鉄骨が勢いよく当たり、ヒビが入ったのだ。

(その手があったか………………!)

 今更ながら気がついた事にアマネ。

(なら、似たようなスキルを俺も獲得すればいいって訳か)

 アマネはそんなスキルを探した。

(これいいかもな)

 そうして獲得したスキルが<念力>だ。
 離れている物質を自由に動かせるスキルである。

「許さん!許さんぞ!」

 鉄骨をくらい怯んでいたグリードが立ち上がった。無くなったはずの目の部分が何故か赤く光っていた。

「見つけたぞ!アマネ・シュン!」

 その光は<魔眼>のようだった。
 グリードの視界は真っ暗のままだが、相手の魔力だけは見えている。それでアマネを見つけ出したのだ。

 それに気がついたアマネはリーシャ達から離れるように走り出した。彼らに炎が当たらないよう自分を囮にしたのだ。

「アマネ・シュゥゥン!!」

 怒りの口調でそう叫び、炎を吐くグリード。

 アマネはそれを避けた。

「念力」

 アマネは目の前に転がる瓦礫を引き寄せ、勢い良くグリードの方に飛ばした。

 それはグリードの首あたりに当たり、皮膚を割った。

「念力、念力念力念力」

 アマネは次々に瓦礫をグリードに飛ばしていく。
 グリードの皮膚にヒビが入っていきボロボロになっていっていた。

 だが致命傷とはなっていない。

「旬くん。私も手伝うぞ」

 そう言ってフジサキも鉄骨を飛ばす。

「グァァァァァ!!」

 グリードも負けじと炎を放つ。

 だが無作為に放ったグリードの炎は避けやすく、誰にも当たることは無かった。

(そろそろ良いか)

 皮膚が割れ、身が露出し始めたグリードにアマネは別の攻撃を仕掛けることにした。

「店長。リーシャを頼みます」

「分かった」

 するとアマネは半分崩壊したマンションに登り始めた。
 たったの数秒で屋上に駆け上がったアマネは下に手をかざし<念力>を使い始めた。

「アマネ・シュン!私はお前を殺す!」

 そう言ってまたしても炎を放つグリード。

反射の結界インプレッション

 アマネのいるマンション事、覆う結界が張られ、炎が跳ね返る。

「旬くんは俺が守るっす!」

「ありがとうございます坂上さん……………」

 アマネはサカガミの結界を信じ、全力で瓦礫を引き寄せていく。

 それを空中に集めていき、気づけば大きな球体ができていた。

漆黒の炎シャドウフレイム

 その球体に黒い炎を纏わせていく。

 魔力を全て使う勢いでアマネは炎を使う。

 そうして出来た球体はグリードを遥かに超える大きさとなっていた。
 それはまるで隕石のようだ。

「な、なんだ……………その、とてつもない魔力の塊は……………!」

 魔眼を通してアマネを見ているグリードにもその球体は見えていた。
 恐怖で体は固まり、攻撃をする事も忘れているようだ。

「凄まじいな旬くんは」

「さすがアマネさんです!」

 離れたところからこの光景を目にしている二人がそう言った。

「えぐいっすね」

「フフフ。私はあんなのと戦おうとしてたのね……………」

 シイラギはどう頑張ってもアマネには勝てないと改めて気付かされ、挑んだ自分の馬鹿さ加減に苦笑した。

 アマネはグリードを睨みつけ、口を開いた。

「グリード。これで終わりだ」

「まだだ。まだ終わっておらん!」

 グリードは口から炎を放つ。

 その炎はアマネに当たることはなく、黒い炎に呑まれて消えた。

「何っ!?」

「無駄だと言ってるんだ。もうお前の攻撃は俺に当たらない」

 するとグリードは鬼の形相でアマネを睨みつけた。

「おのれ………」

 アマネは漆黒の隕石を回転させ、勢いを付ける。


「黒炎破滅岩《メテオ》」


 漆黒の隕石をグリードに向けて放った。

「……………おのれぇぇぇぇ!!」

 逃げられないと分かったグリードはそんな叫び声を上げた。

 隕石は勢い良く地面に落ち、グリードを飲み込んだ。

 大きな爆発が起き、衝撃波が発生した。
 その衝撃波は地面を抉り、周囲の瓦礫を吹き飛ばしていった。

 少ししてそれは落ち着いた。

 黒炎破滅岩《メテオ》が落ちた場所にはもうグリードの姿は無かった。

 そうして全員がシイラギの元に集まった。

 何を聞かれるのか悟ったシイラギは先に口を開いた。

「悪かったわねリーシャ・ミリセント。許してくれなんて言わない、殺したいなら殺してもいいわよ」

 アマネはリーシャの方を向いてアイコンタクトでどうするか聞いた。

 リーシャは首を横に振った。

 アマネはそれを確かめた後、シイラギに近づいた。

「柊。俺もリーシャもお前を許すつもりは無い、だが殺すつもりもない。生きて罪を償え」

「それで良いわ。ほんとに悪かったわね」

「じゃあ教えろ。なぜリーシャを狙ったのか」

 アマネはシイラギを睨みつけてその質問をした。

 彼自身まだ怒りを抑えきれていないのだ。

「分かった。全て話す───」

『それ以上は許さんぞパペット。死ね』

(何だ今の声は───)

 シイラギ含め全員の耳に入った別の誰かの声。

「う、嘘…………」

 そう言うシイラギの顔は真っ青で何かに怯えているかのように体を震えさせ始めた。

「どうした美波!」

 フジサキがシイラギに駆け寄る。

「ま、魔王………………グッ、グァァァァァ!」

 すると突然シイラギは胸を抑え、もがきだした。

 その胸からは黒い影のようなものが漏れてきていた。

「これ、呪いじゃないですか……………」

「呪いだと」

 一体どうすれば良いんだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

スクールカースト最底辺の俺、勇者召喚された異世界でクラスの女子どもを見返す

九頭七尾
ファンタジー
名門校として知られる私立天蘭学園。 女子高から共学化したばかりのこの学校に、悠木勇人は「女の子にモテたい!」という不純な動機で合格する。 夢のような学園生活を思い浮かべていた……が、待っていたのは生徒会主導の「男子排除運動」。 酷い差別に耐えかねて次々と男子が辞めていき、気づけば勇人だけになっていた。 そんなある日のこと。突然、勇人は勇者として異世界に召喚されてしまう。…クラスの女子たちがそれに巻き込まれる形で。 スクールカースト最底辺だった彼の逆転劇が、異世界で始まるのだった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

処理中です...