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来訪者

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「明日は天気が荒れそうだ、なるべくなら外出を控えたほうが良い。」

何時ものように羽繕いをしていると、獣人さん全員に忠告された。雲を見たり風の音を聞いてもよく解らないが、酉族の獣人さん達は何か感じるらしい。買い物や明日の分までトレーニングを済ませ、眠りについた。

深夜、雨音で目が覚める。閉じようとする瞼を開けながら、暖炉に火をつけた。明かりが欲しかったのでは無く、安心感が欲しかった。バケツをひっくり返したような水音が、勢いを増しながら近づいてくる。雨音がこんなに怖いとは思わなかった。地面に叩きつけられた雨の衝撃が、耳に直接送り込まれるような。そう錯覚するほど耳に負担が掛かっている。

「怖い」

普段は聞かないようにしていた村の獣人達の音を探す。しかし、集中するほどに雨音を拾い、時間が経つにつれ消されてしまう。屋根に雨水が当たる頃には、僕は音の世界から孤立してしまった。薪の燃える音も、自分の歩く音も聞こえない。

怖い、ただ怖い。

手で耳を抑え、布団で隠れるように自分を包む。雨音は強くはならないが、弱まらない。時間が長く感じる。

どれくらい経ったのか、それても直ぐなのか覚えていない。布団が剥ぎ取られ、耳から手を外された。そして、疑問も恐怖も感じる間もなく、耳に何かを装着される。耳栓だろうか?

「大丈夫かい?俺の声が聞こえるか?」
「・・・は、はい。聞こえます!」
「それはノーキャンと言う道具で、耳がいい種族の為の道具だ。効果は装着者が望まない音を減らす。」

確かに雨音が気にならなくなったのに、女性の声ははっきり聞こえる。暖炉に耳を澄ませば、薪が燃える音がはっきり聞こえた。

「結果的に良かったが、勝手に入って悪かったな。」
「いえ、ありがとうございます。」

改めて声を声の主を見る。そこに居たのは酉族ではな、獣耳が生えた秋田犬のような獣人だった。
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