獣の国～獣人だらけの世界で僕はモフモフする～

魔物の音

烈火隊。飛行音を聞く限りでは、ボーリングのピンのように並んで飛んでいる。風に乗るように飛行して、羽ばたきは最小限まで抑えているようだ。

「運悪く遠征に出掛けていたが、危機を察して戻って来てくれた。それにグリーンスワロが現れたのは警邏隊の本部付近。強者との戦いには慣れている連中しか居ない筈だ。」

確かに模糊さんは狩ると言っていたし、囮に慣れている蓮流さんと隠密の静葉さんは会費は得意そうだ。それでも自分の中で、何かが引っかかる。カイトを倒すために散々眺めた空を見つめた。姿は見えないが飛行音と暴風の音が近づいていく。吹き飛ばされた時は薄暗かった空は、今は眩し・・・

「静葉さんが危ない！」

何時もより黒くなった毛は、夜出ないと隠密には役立たない。むしろ違和感を感じやすい筈。気づいた時には走り出していた。村の人達の声がどんどん遠ざかり、聞こえなくなってくる。代わりに暴風のような羽ばたきが、危険を告げるように大きくなっていく。やがて、模糊さんに降ろされた場所に辿り着いた。

音が聴こえる上空を見上げる。緑色の燕が、優雅に空を舞っていた。でも獣人の姿は見えない。僕は目を閉じて、必要な音を選別する。

そして自分の耳を疑った。
音が正しければ、あの魔物の大きさは、飛行機と同等。そんな巨体が舞うように飛んでいる。当たり前だが静葉さんの羽ばたきは聞こえない。それどころか模糊さんと蓮琉さんの羽ばたきも聞こえなかった。

僕はグリーンスワロから隠れつつ、三人を探し始めた。